「お邪魔します」
「いらっしゃいませ。ミコトさん!犬さん!」
「よ!千寿朗!」
蝶屋敷で世話になって数日たった今、俺は煉獄家が所有している山にある鍛錬場に来ている。
今日は煉獄さんの任務がお休みだから会いに来たのと再挑戦しに来た。にしても・・・
「なんか人多くない?」
「父上が育手として鬼殺隊に復帰してからは炎の呼吸の使い手の練度の底上げや見込みの有る人を剣士として育てています」
「ほへ~。カナエさんも似たような事してたな、花の呼吸の使い手を育ててたけか?」
ざっと数えただけでも三十近くは居るよな?気配的にはもう少し居るかも?
「父上!兄上!ミコトさんを連れて来ました!」
「来たな、ミコト少年!」
煉獄・・・杏寿朗さんは相変わらず元気だな。・・・ん?なんか杏寿朗さんの周りだけもの凄く強そうな気配の隊士が数人倒れてるけどなんで?皆バテてる・・・?
「この間ぶりです、杏寿朗さん」
「うむ!元気そうでなによりだ」
「杏寿朗さんも・・・そして槇寿朗さんもこの間だぶりです!」
「そうだな、ミコト君」
でも本当に槇寿朗さん、無精髭や目の下の隈とか無くなって。何か頼れる人!って感じに成ったな~。
「な、何かなミコト君。そんなにじっと見て」
「いや、本当に立派な人になったな~と」
「ミコト、失礼だぞ」
「あ、すみません」
「いや、気にしなくて良いよ。それでミコト君は杏寿朗に用事があって来たのかな?」
「そうなのか?ミコト少年!」
「はい。杏寿朗さんに再戦を申しに来ました!前回はやはり俺の負けです!なので今回は俺が勝ちます!!」
元気に言うミコトに槇寿朗と千寿朗は驚き杏寿朗は
「うむ!その申し出を受けよう!!」
即答で受ける。
「即答!?でも丁度良い!」
「そうだ! 兄上、ミコトさん此方をお使い下さい」
「ありがと千寿朗君。・・・これは!」
☆
「うん。良い重さだ」
ミコトは渡された刀を振り感覚を確かめていた。
渡された刀は木刀では無く真刀だった。ただし刀身に刃は付いておらず、鉄刀状態だった。
「前回ミコト少年は木刀を初めて使ったと犬殿に聞いてな!鍛治師の方に頼んで作って貰ったんだ!」
「俺の為にわざわざですか?鞘まで付いてるし」
「そうだ!」
「それはありがとう御座います!」
「うむ! それでは始めるか! ミコト少年!」
「そうですね。 俺は桃眼の鬼狩り大和 ミコト」
「俺は鬼殺隊炎柱! 煉獄 杏寿朗」
「「立合い」」
「よろしくお願いします」「よろしく頼む」
二人は正眼の構えを取る。
「今回は先手をどうぞ!」
「・・・!そうか。ではありがたく使わせて貰う!」
力強い踏み込みから一気にミコトとの距離を詰め刀を振るう。
「炎の呼吸 壱ノ型 不知火!」
強烈な袈裟斬りの攻撃をミコトは
「第伍秘剣 一刀両断・兜割り!」
刀の側面から叩き落とす。
「・・・っ! 弐ノ型 昇り炎天」
「・・・まじ!?」
煉獄は刀が折られる前に刀身を立てて昇り炎天で押し返す。二人は鍔迫り合いになり火花が舞う。そして二人は一旦後方に跳び下がるがミコトは着地と同時に異様なまでの低姿勢から一気に駆け出す。
「第弐秘剣改 氷狼牙突!」
とてつもない速さで駆け抜ける一匹の氷狼。
その切っ先は何の躊躇もなく煉獄の胸目掛け突き進む。だが煉獄も走り出す。
「陸ノ型 烈火炎狼!」
炎の呼吸唯一の突き技、烈火炎狼。
吹雪を纏う氷狼と炎を纏う炎狼が真っ正面からぶつかり合う。その余波は見ていた槇寿朗や千寿朗、そして炎の呼吸の使い手の者達まで驚かせるものだった。
「ック、なら!」
「・・・!」
ミコトは刀を引く。それ故に対抗していた力が無くなった事で煉獄はバランスを崩すが直ぐ立て直しミコトの次の一手を見極める。
「我流剣術 乱れ突き!」
残像が残る程の速さの突きを放つ。それに対して煉獄は前面に刀を振るう。
「肆ノ型 盛炎のうねり!」
自身を中心にして前面に渦巻く炎の障壁で攻撃を全て防ぐ。
「これならどうだ! 第参秘剣 落雷!」
「弐ノ型 昇り炎天!・・・!?」
刀を振り上げ迎え打つ。だが、迎え打った刀は軽く・・・否、余りにも軽すぎな手応えに驚く。
理由は簡単だった。ミコトは刀同士がぶつかる寸前に手を離していたのだ。それにより煉獄は大振りをする事になり大きな隙が出来る。
「・・・抜刀」
鞘を抜刀の要領で抜き煉獄のがら空きになった腹に撃ち込む。
「がっは!?」
初めての手応えが有りミコトは満足する。そして煉獄は後ろに吹き飛び数回地面を跳ね、転がって止った後に見たのは鞘を上に掲げ落ちてきた刀を納刀して一回くるりと回ると抜刀の構えを取るミコトの姿だった。
「初めて見る技だな」
「木刀だけでは絶対に出来ない技ですからね。コレが本来の俺の技です」
「前回は手加減していたと?」
「まさか!前回のあれは出せる技の範囲で本気でした。でも今回は俺の力に耐えられる刀身に鞘もある。全力を出せるだけです!」
「そうか!にしても今のはかなり効いた!流石だなミコト少年!」
「えっへん!じゃなかった。 次の技は俺の1番使い慣れた得意な技ですよ」
「うむ、なら来い!ミコト少年!」
ミコトは眼を瞑り重心を低くして右足を前に出し左足で体重を支える。そして煉獄は正眼の構えに構え直す。
「第陸秘剣 三途の川!」
(速い!? コレがミコト少年の1番の得意技か!?)
ミコトの速度に驚くがすぐに脇構えを取り、地面に少し罅が入る程強く踏み込み左薙ぎで迎え打つ。
「㭭ノ型 連々紅炎」
――カキーン!!
辺り一帯に甲高い音が鳴り響く。その音は見ていた者達が耳を塞ぐぐらいに大きい音だった。
少しの間鍔じり合いになるが、煉獄の連々紅炎は何度も繰り出す連撃技。
「クッ!」
それを受け止め、躱し、受け流す。だがどれだけ耐えてもじり貧になるために大きく後方に跳び後退する。
そして着地と同時にミコトは左手を顔の近くに持ってきて刀の切っ先が左側から後ろに行くよう構える。
「我流剣術――」
煉獄は正眼の構えから勢いよく振り上げる。
「炎の呼吸 伍ノ型――」
そして二人は烈火の如く駆け出す。
「水虎!!」
「炎虎!!」
お互いが繰り出す技は虎の姿を形どる。
一歩一歩踏み出すごとに水飛沫を上げる虎、水虎。
熱く激しく燃えさかる炎の虎、炎虎。
二匹の虎はめまぐるしく混ざり合い噛みつき合う。
「はああああああああ!!」
ミコトは激流の如く激しく素早く刀を振るう。
「はああああああああ!!」
煉獄は猛炎の如く熱く激しく刀を振るう。
――がキーン
二人の激しい攻防にお互い後方へ大きく吹き飛ぶ。
「っ!?」
即座に体勢を整え前を見た煉獄は信じられない物を見た。それは既にミコトが抜刀の体勢で眼前に迫っていたのだ。
「我流剣術 雷虎!!」
一筋の稲妻が走り煉獄を貫いた。
その直後煉獄の後ろではミコトが倒れ地面を転がる。
「「「・・・」」」
見ていた者達は誰も声を出せる者は居なかった。いや、皆空いた口が塞がらなかったのだ。
見た感じでの決定打を打ったのはミコトだ。でも、そのミコトは煉獄から少し離れた後方で息を荒くして倒れていた。そして煉獄はその場に立ち尽くしてるだけだった。
「ち、父上、これはどのような結果に・・・?」
「これはミコト君の勝利だな」
「「「!?」」」
その言葉を聞いた人は全員驚き、倒れてるミコトを見る。
「見た限り神速の抜刀。元鳴柱 桑島殿の霹靂一閃と同等の速度だった」
「ミコトさん・・・・・・・・・凄い」
「それだけではありません父上。ミコト少年が俺に与えたのは一撃ではありません。ほぼ同時に二撃入れられました」
「「「!?」」」
殆どの隊士は一撃を入れるどころか抜刀の瞬間すら見えず、元柱の槇寿朗ですら一撃しか入れてないと思っていたがまさかの二撃。入れていた所を見れていなかった者達は驚き声を失う。
そして見られてるミコトはというと・・・
「・・・」
気を失っていた。
ズコ!
それを見た隊士達は全員ひっくり返ったとか。
「地面を転がったときに変に頭を打って気を失ったか」
「は、はは」
「み、ミコトさん!」
槇寿朗はもう笑うことしか出来ず、千寿朗は急いでミコトに駆け寄る。
☆
「・・・う、うう。此所は?」
「お、起きたか」
「あ、犬さん・・・何か覚えのある展開」
「何言ってる? てか何処まで記憶ある?」
「最後煉獄さんに雷虎を撃ち込んだとこ」
「そうか、頭に異常は無いな」
「でもあの後に気を失ったな」
「良い攻撃だったと思ったんだけどな~」
「あれは痛かったぞ!ミコト少年!」
「・・・! ギャァアアアアアアアア!!」
目を覚ましてから気配感じなかったのにいきなり真後ろから声が聞こえたから振り返ったら煉獄さんが目の前に居た。めっさ怖かった。正直ちびりそうになった。
「元気そうで何よりだ」
「そうだな。犬殿」
「兄上、叫び声が聞こえたのですがどうしたのですか!!?」
ミコトの叫び声を聞きつけ慌てて千寿朗が部屋に駆けつける。
「ミコトさん目覚めたんですね!」
「ついさっきね」
「凄かったですよミコトさん! 兄上から1本取るなんて!」
「いやー嬉しいね~。まあ、あの後気絶しちゃったけどね」
「それでも凄かったぞ!ミコト少年」
「あれは炎虎に近い太刀筋に水の呼吸と雷の呼吸の足運びを合わせたものか?」
「あ、槇寿朗さん」
「大きな怪我をしてなくて良かった。菓子を持ってきたんだ、食べてくれ」
「やった!桃だ!吉備団子だ!!槇寿朗さん大好き♪」
「ミコトがチョロインに思えてしまう・・・(いや、餌付けされた犬か? 犬はオレか)」
ミコトは満面の笑みで桃と吉備団子を食べ始める。
「それでミコト少年、あの水虎は他の呼吸の技を混ぜたものか?」
「そうですね~。前に立合いした時に見せて貰った炎虎。あれが考えていた技に使えたので狭霧山で技を作りました」
「狭霧山ということは元水柱の鱗滝殿に水の呼吸の足運びの教えを請うたのか?」
「少し違います。鱗滝さんに教えて貰おうと思ったのですがその時に居た鱗滝さんの弟子の真菰に教えて貰ったんです。教えて貰った足運び水流飛沫・乱は自分より真菰の方が洗練されてると言って真菰を進めてくれたんです」
「なるほど! それで完成したのが水虎と言うわけだな!」
「そうです」
「それでミコトさん。最後に兄上に使ったえっとー・・・雷虎?は元鳴柱 桑島様のところまで行って教えて貰ったんですか?」
「違うよ。鱗滝さんの所に行った時に桑島さんも居たんだ。だからその時に教えて貰った。因みに型は霹靂一閃だよ」
「やはりミコトさんは天才ですね!」
「違うぞ千寿朗、ミコトは天才じゃ無くて天の災いの天災だぞ」
「犬さん酷い!」
「水虎を完成させるために狭霧山の木何十本斬り倒した?地面どんだけ抉った?ん? ん!」
「あーあー聞こえなーい」
「おい!」
「そろそろ暑くなるし犬さんの毛全部剃るか」
「なんでや!」
犬さんのツッコミに皆楽しげに笑う。その場には最初初めミコトと槇寿朗にあったようなギスギスした物は無くなっていた。
「ふーごちそうさまでした!」
「ミコトお前本当に一人で桃と吉備団子全部食べやがった」
「あ、ごめんなさい」
「気にしなくて良いぞ!ミコト少年」
「そうですよ。あんなに動いたんですからお腹も空きますよ」
「そうだな。甘露寺君も似たようなものだったしな」
「ほへー」
「千寿朗、お茶を入れ直して来くれるか?」
「はい兄上」
千寿朗はミコトが食べた後の皿を持って部屋を出る。
「・・・杏寿朗さん。なにか任務関連で大きな話が有るんじゃ無いですか?」
「よく分かったな亅
「直感ですよ」
「そうか。 短期間にとある列車で四十人以上の者が行方不明になり、そして送り込んだ複数の隊士も全員消息を絶ったんだ」
「それはまた・・・」
「そして俺はその列車を調べる任に着くことになったんだ。それで参考までにミコト少年の意見を聞きたいんだ」
「そうですね。その列車が怪しいとすると鬼に協力する人間がいると考えるのが妥当でしょう」
「「!?」」
「ミコト君!そんな事あるのか!?」
「はい。昔に薬物の効果に似た血鬼術をもった鬼と会った事が有ります。その時に数人は鬼の命令を聞いてました。その血鬼術で幸せな時間を過ごすために人間を生け贄にしていました」
「では今回もその場合があると?」
「可能性の一つですね。後は建物自体に憑依?融合?して入って来た人を喰らう鬼とかいました」
「もしそうだとしたらかなり厄介だな」
「まあその会った鬼は下弦の壱でしたので早々無いと思います。二つ目に関しては相当な頭な鬼じゃ無い限りやろうとは思わないでしょう」
「・・・なるほど。いい事件例を聞きました。ミコトさん」
「「「!?」」」
少しの沈黙の後に首元にフサを巻いてもの凄く流暢に喋る鎹烏が現れる。
「この烏他のと違う?」
「私は産屋敷 耀哉様の直属の鎹烏、です」
「これは御丁寧に。初めまして俺は桃眼の鬼狩り 大和ミコトです」
「知っています。弟がミコトさんの話ばかりしますので」
「はひ?」
「白桃は私の弟です」
「え?」
「ミコトさんが藤襲山に入った頃から弟はずっとミコトさんにバレないように追っていましたから」
「ファ!?!?」
「話がそれましたね。この度私が訪れたのはミコトさんに鬼の討伐の依頼をしに参りました」
「・・・あ、杏寿朗さんが言ってた列車の件ですか?」
「それとは別件です。お受けして頂けますか?」
「はい」
~大正コソコソ噂話~
本来ミコトへの任務のお願いは白桃だが、今回依頼しに来たのが白桃兄だったのは
弟をよろしくとお願いするためだったようです。
良ければ評価や感想お願いします!
出来れば桃並みの甘さで!