「木刀か、何気に初めて使うな。いつも兄さんと父さんとの立ち会いは鉄刀を使ってたから」
今ミコトと煉獄は鬼殺隊本部から少し離れた所にある稽古場で、お互い向き合う形で離れて立っている。その2人を離れた位置からお館様を取り囲むかの様に柱の人達も立っていた。
お館様、もの凄く柱に囲まれてる。あの場所は今の時間ではこの世で1番安全な位置なんだろうな~。
「ミコト少年!準備は良いか?」
「はい!でもその前に、勝利条件はどうしますか?」
「そうだな。相手を戦闘不能!又は参ったと言わせることでどうだろうか!!」
「分かりました。それでは」
ミコトは木刀を腰に差すと煉獄を見つめる。
「?」
「俺は桃目の鬼狩り、大和ミコトと申します!」
「?」
いきなりのミコトの自己紹介に煉獄は少し頸を傾げる。そしてそれを見ていた犬さんが説明をする。
「煉獄!悪い、ミコトは何時も立ち会いの時はちゃんと名乗って礼を尽くすのは絶対と教えられてたんだ!合わせてやってくれ!」
「うむ!コレは失礼した!では改めて!」
煉獄も木刀を腰に差しミコトを見る。
「俺は鬼殺隊 炎柱 煉獄杏寿朗!」
「「立ち会い!」」
「宜しく頼む!」「お願いします!」
2人は木刀を構える。
「先手は譲ろう!」
「それはどうも。 では」
木刀を片手で担ぐ構えを取る。
「――第参秘剣 落雷」
落雷音と共に一気に煉獄に接近して木刀を振り下ろす。
(・・・!速い!?これで本当に呼吸が使えないのか!?だが)
「――炎の呼吸 弐ノ型 昇り炎天」
ミコトは木刀を振り下ろし、煉獄は振り上げる。
――ガンッ!!
天に昇る猛炎と地に落ちる稲妻がぶつかり合い、鈍い音が鳴る。
「ック!」
拮抗したかと思われたが、ミコトは力負け上に振り払われる。だがすかさず両手で掴むと勢いよく振り下ろす。それに煉獄も合わせて技を放つ。
「第伍秘剣 一刀両断兜割!!」
「参ノ型 気炎万象!!」
お互いに振り下ろした木刀は、またもや鈍い音が鳴り、鍔じり合いになる。そしてミコトは木刀を横向きにする。
「第壱秘剣! 火斬!」
木刀を右向きに引きずらすかの様に切る。
「ッ!」
突如として力を横にずらされた事により、煉獄は一瞬だけバランスを崩す。そこをミコトは見逃さ無かった。刀片手で持ち刃を上にして腰の高さまで持ってくると勢いよく喉元を狙い突く。
「第弐秘剣 氷天ノ一突き!」
崩れた体制の相手に技を放つ。だが、流石は鬼殺隊の柱。首を傾けるだけで攻撃を躱し逆にチャンスを作り技を放つ。
「壱ノ型 不知火!」
完璧なタイミングで放たれた技はミコトに当たる――と思われたが寸前での所でミコトは背中を逸らし、アクロバティックなバク転で後方に下がる。
「逃がさん!!」
地面に着地するところを煉獄は狙い駆け出す。ミコトとの距離を詰め先ほどと同じ型、不知火を放つ。だが、その攻撃がミコトを捕らえる事は無かった。唯一捕らえれたのはミコトの髪だけだった。
「よもや」
煉獄は目を見開き下を見る。
ミコトは着地を狙い攻撃を仕掛けに来ることが分かっていた為に、つま先が地面に着いた瞬間に右膝を曲げ左足は前に伸ばす形で地面に座る。
「第弐秘剣 氷天ノ一突き」
先ほどとは逆になり、ミコトはピンチをチャンスに変え煉獄の鳩尾を狙い攻撃をする。だが煉獄はとっさに後方に飛ぶことで攻撃は煉獄の服を掠めるだけとなった。
「よもやよもやだ!好機と思い仕掛けに行ったが!思わぬよけ方に驚き一撃をもらうとはな!柱として不甲斐ない!!穴が張ったら入りたい!!」
「一撃もらって無いでしょ!?服かすっただけじゃん!」
てか煉獄さんは何で木刀で俺の髪を切れたの!?・・・あ、髪が若干短くなってる。あとなんであの体勢で俺の攻撃が服掠るだけ?・・・これが柱の実力?なんなのあの反射神経は、化け物かよ。
2人は木刀を構えた状態で動かずに止まる。
「すごい」
甘露寺が呟く。
「あれで本当に呼吸が使えないのかァ?」
「どう見てもそこら辺の隊士より遙かに強い!」
「でも力では煉獄さんに敵いませんかね?」
「それは違うよ甘露寺さん」
「え?どうしてですか?無一郎君」
「最初の攻撃では、ミコトは片手で煉獄さんは両手で木刀を持っての打ち合いだった。それでミコトは打ち負けたけど、二回目では両手で持っていたから煉獄さんと打ち合えてた」
(そ、そうだったんだ!?)
その後に他の柱達も各感想を言っていた。
「産屋敷。よこ失礼するぞ」
犬さんはお館様の横に行くと、お館様の手に頭を当てる。それに気づいたお館様は犬さんの頭を優しく撫でる。そして犬さんは自己紹介をしていなかったのでお互いに自己紹介をすると、お館様は犬さんにどちらが勝つかの質問をする。
「そうだな。ミコトが往生際が悪く抗わなかったら煉獄の勝ちだろうな」
「ほぉ。ミコトが勝つとは思わないのですか?」
「思わ無い、それは断言できる。理由は見てたら分かる・・・すまねぇ、今のは無神経な言い方だったな」
「構いませんよ(犬さん、貴方はやはりあの――)」
なにかを思っていたが、お館様はミコトと煉獄を見つめる。因みに立ち会いの間はずっとお館様は犬さんを撫でていた。
さてさてどうしよう。煉獄さんの強さは数回の打ち合いで分かった・・・マジ強い!!!!どう攻略しようかな?
「ミコト少年!次は此方から行かせてもらう!!」
「なら・・・・・・迎え撃つまでぇ!!」
ミコトは最初と同じく第参秘剣落雷の構えを取る。
そして煉獄は杏寿郎は大きく息を吸い、呼吸を整え、最大限に集中する。出す技は
――――炎の呼吸 壱ノ型 不知火。
その最大威力。
「行くぞ!!」
「来い!!」
「――炎の呼吸 壱ノ型 不知火!!」
煉獄の不知火の速度は全集中最速と言われる雷の呼吸 壱ノ型にも匹敵する・・・いや、一般の雷の呼吸の使い手を遙かに上回る速度だった。その速度は見ていた柱達すらも「疾い」と驚愕させる程だった。
そしてミコトに灼熱の刃が迫る。だが――。
「――第参秘剣 落雷!!」
――ゴロゴロゴロゴロ!!!
ミコトは煉獄の技を真っ向から迎え撃つ。本来、第参秘剣は自分から仕掛ける技では無く、相手の攻撃の後から放ち迎え撃つ、すなわちカウンター技である。その為に自分から仕掛けに行く時よりも、迎え撃った時の方が威力は増し高威力となる。
更に放つときには一歩前に踏み出すことによって相手はいきなり間合いを詰められ狂わされたことにより被弾率が高くなる。だが今回ミコトは煉獄では無く煉獄の刀を狙って技を放った。
――ガンッッ!!!!
木刀同士がぶつかり、鈍い音が大きく響き渡る。2人のぶつかり合いの余波はお館様や犬さん、柱達の居るところまで届いていた。
「はは。ミコト楽しそうにしてるな」
犬さんは楽しそうに煉獄と打ち合いをしているミコトを見て嬉しく思っていた。
「それに珍しいな」
珍しいの意味は簡単だった。何故かミコトの目は桃眼になっていたからだ。至近距離で戦っている煉獄は勿論その事に気づいていた。
(これが噂に聞く桃の眼か!この目になってから増したこの闘気!・・・だが!)
「退けん!!うぉぉぉぉぉぉおおおお!!」
煉獄さんの力が増した!?まずい!また押し負ける、なら!
「第肆秘剣 木枯らし風牙!」
木枯らし風牙、相手の威力を利用して回転して攻撃する技。
煉獄の技の威力を利用して左回転して、煉獄の技をいなすと即座に右薙ぎで煉獄を狙う。
「弐ノ型 昇り炎天!!」
煉獄はいなされたことを即座に理解して、ミコトの斬撃を上に弾き回避する。だが、ミコトはがら空きになった煉獄の腹に蹴りを全力で打ち込む。
「ゥ!」
2人の間は再び距離が空く。
――パキ
どちらかの木刀に罅が入る音が聞こえる。だがそれを気にせず2人はすぐさま新たな型の構えを取る。
煉獄は刀を右後ろにに持っていき、構える。
そしてミコトは、かなり前のめりの体勢になる。その構えは奇しくも雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃の構えに似た構えだった。だが、唯一違うのは霹靂一閃は抜刀の型だがミコトは切っ先を地面に付けているところだ。
「炎の呼吸 伍の型――」
「第捌秘剣――」
お互いに息を大きく吸い駆け出す。
「炎虎!!」
「八岐大蛇!!」
燃えさかる紅き虎、炎虎と大地から這い出て地を這う八首の龍、八岐大蛇が凄まじい音を上げながらぶつかり合う。その凄まじい威力により抉れた地面の一部や石が周囲に飛び散る。
無論それはお館様達の方にも。
「水の呼吸 壱拾壱ノ型 凪」
凪、それは水柱 富岡義勇が編み出した技。彼の間合いに入った石とかは全て消え失せる。凪、それは全ての攻撃を回避するための技である。富岡のお陰で、お館様の服には塵一つ付かなかった。
「ハアハアハア」
「ハアハア ゴクン はあ~」
土煙が晴れ、2人を月明かりが照らす。
――バキ、バキバキバキ
片方の持っていた木刀は持ち手だけを残して砕け散る。
「・・・参りました」
降参したのはミコトだった。
「ミコト少年!良い勝負だったな!」
「そうですね。・・・煉獄さんは先に皆さんの所へ」
「分かった!」
返事をすると煉獄は先に皆の所に戻る。
そして見ていた柱達はミコトの戦い方と強さに感心していた。
「八岐大蛇、派手な技じゃねえか!」
「アイツ、風の呼吸みたいなのも使ってたなァ」
「雷、火?、氷?、風、土?。色んな技使ってましたね。煉獄さんと同等までに渡り合ってあ、あれで本当に呼吸が使えてないんでしょうか?」
甘露寺の言葉に全員が考え込む。
「あーそれだけどいいか?」
その沈黙を犬さんが破る。
「ミコトは呼吸が使えないと言ってたが、あれは嘘だ。正確には呼吸が使えてるのにその自覚が無いだけだ」
「そうなんですか?」
「ああ、ミコトは兄と父から先祖代々の呼吸を教えてもらったがミコトが身に付けたのは完全に別の呼吸、いや派生かな?まあそれをその日に作り身に付けたんだ。それのせいで自分は呼吸を使えてないと思い込んでるんだ」
「それでもやっぱり彼は凄いね」
(無一郎君がここまで人を評価するなんて珍しいわ!)
「やはりミコト少年は呼吸を使えていたんだな!!」
煉獄はミコトが呼吸を使えていたことに納得する。
「知ってたんですか?煉獄さん」
「いや、確信したのは今だが、呼吸を使えて無いとあの速さや力は出ないからな!」
「そうか」
「うむ。ところでミコト少年は何してるんだ?」
皆の目線には座り込んでブツブツ何かを言っているミコトの姿が有った。
「あーあれはアイツの癖の一つだ。立ち合いをした後は何処が悪かった、何処をこうしたら良かったとかを考え込むんだ」
「そうなんだな!」
その後、犬さんは帰って来たミコトに駆け寄るとお疲れ様と声をかける。
「・・・うん」
「どうした?」
「・・・えへへ、負けちゃった。やっぱ俺なんかじゃ煉獄さんには勝てなかった。やっぱり俺には兄さんや父さんみたいな才は無いみたい」
「それは――」
違う!と犬さんは言うことが出来なかった。ミコトは立ち合いで負けた時はとことん自分を卑下する癖があるのを犬さんは知っていたためである。
そして兄や父に立ち合いで負けたときも自分を卑下していた時に兄と父は強いと才能はあると慰めていた、それは勿論犬さんもだ。だから自分が言っても家族だから優しい言葉を掛けているとしか思われない為に犬さんは何も言えなかった。
「そんな事は無いぞ!!ミコト少年!!」
だがそんな犬さんの心を知ってか知らずか煉獄が代弁する。
「それに君は負けと言ったがそれは違うぞ!君は負けてない!」
「?」
「この立ち合いは引き分けだ!」
「何故ですか?勝利条件は相手に参ったと言わせるか戦闘不能にする事。俺はその両方、木刀は砕け戦闘不能になり、参ったと言いましたよ?」
「うむ、そうだな。だが君が負けたのは木刀が砕けた所為だ! 木刀が砕けれなければ君はまだ戦えた!もしこれが木刀では無く鉄刀、ましてや本身であれば結果は違っていたであろう!!故に君は負けてない!この立ち合いは引き分けだ!!」
「!」
「ミコト少年!君には剣技の才能はある!その才は俺以上だ!だから胸を張れ、君は決して弱くない!!」
「煉獄さん」
やば!煉獄さん格好いい!いま何か凄く胸がキュン?ってなった・・・なった!!これもし俺が女だったら絶対に惚れてたぞ!いやまじで。
「そうだぞミコト、
「・・・うん、善処するよ!」
(そこは分かったって言って欲しかったな)
「杏寿朗、ミコト、素晴らしい戦いだったよ」
「「ありがとう御座います」」
「それじゃあ、今回の柱合会議はこれでお開きだね」
この後は胡蝶さんと一緒に蝶屋敷に帰る予定だ、また泊っていって良いって言ってくれたから。因みに産屋式家を離れるときに煉獄さんに今度、家に来ないかと誘われた。何か気に入られたみたい。
因みに、煉獄さんが使っていた伍の型炎虎、あれは今作ってる新しい技に取り込めそうだ!
~大正コソコソ噂話?~
お館様は立ち合い中ずっと犬さんを撫でてましたがそれは、犬さんの
良ければ評価や感想お願いします。
出来れば桃並みの甘さで。