ラブライブ!サンシャイン!!×ウルトラマンZ~遥かに輝き!0から1へ!! 作:ワーラー
私、桜内梨子は海の音を聴く為海中を泳いでいる。高海さんと約束をしダイビングをしているが、今の所海の音は聴こえてこない。高海さんや、渡辺さん、夏川君の幼なじみである松浦先輩のアドバイスをもう一度思い出してみた。
「イメージ?」
「水中では人間の耳には音は届きにくいからね。ただ景色はこことは大違い。見えてる物からイメージする事はできると思うよ。」
想像力を働かせるということだろうかと思いながら海中を泳いでいるが海の音が聴こえる気配は感じられず、一端海上に上がる。
「ダメ?」
渡辺さんの問いに頷き高海さんが「イメージか…。確かに難しいよね…。」と呟く。そんな中、夏川君が「海中の中ってどんな様子ッスか?」と聞いてくる。
「分からないわ…。景色は真っ暗だし、何も見えなくて。」
その言葉に何か閃いたのか高海さんがもう一度潜るようにジェスチャーをする。
再度海中を泳いでいると、あの日のコンクールの事を思い出す。あの時からピアノが弾けなくなり、鍵盤に向かっても何をしたらいいのか分からず、真っ暗な空間にいるような感覚にいつも悩んでいた。そんな事を思っていると先頭を泳いでいた高海さんと渡辺さんが真上を指差し、視線を向ける。
そこには太陽の光が海中に差し込み、周囲を明るく照らしていた。何もない所から一つの事がきっかけで新しい物が生まれるような感覚に、私はピアノを弾く為の構えを取る。
海の音が聴こえた気がした。
俺、夏川ハルキは桜内さん達が海からあがった後、果南ちゃんと他愛も無い話をしていた。
「桜内さん、晴れやかな顔してたッスね。」
「そうだね。海の音が聴けて前に進むきっかけになったなら船を出した甲斐があったよ。」
と果南ちゃんも嬉しそうな顔をしていた。
「でもハルキ、アンタは珍しく潜らなかったね。どうしたの?」
と俺が今回潜らない事について聞いてきた。ストレイジでの出撃や訓練が無い時は良く潜っていた事を果南ちゃんは良く知っている。
「この前から怪獣の出現が頻発しているし、いつ出撃命令が出るか分からないッスからね。」
と果南ちゃんに返す。水中での運動は思いの他体力を消耗する。羽目を外して遊んでいるといざという時に万全に動くことが出来ないからだ。
「そっか…。怪獣、段々と出てきているよね。ハルキやストレイジ、ウルトラマンがやっつけてくれているから被害は最小限になっているけど…。」
果南ちゃんが不安に思うのも無理はない。入学式からこの日曜の約一週間で二体の怪獣が出現した。今後も怪獣が現れる事は明らかだ。
「すんません。俺達がもっとしっかりしていれば…。」
俺には謝る事しか出来なかった。怪獣の被害が原因で誰かの家や大切な物が壊されてしまう。だが眠っている怪獣を無理やり殲滅する事で周辺に大きな被害を起こしてしまう事は出来ず、ストレイジはどうしても後手に回る事しか出来ないのだ。
「いやいや、ハルキが謝ることじゃ無いよ。むしろ感謝の方が大きいんだから。学校に行きながら皆の暮らしを守る為にストレイジの隊員として頑張ってるんだし。」
「ありがとうございます…。」
果南ちゃんの言葉にお礼を言う。「でも、無理はしないでね。」と釘を刺されたが。
さて、と果南ちゃんが一端部屋の奥に行き、箱形のケースを持ってくる。
「久しぶりに…やる?持ってきてって言ったでしょ?」
と箱から青い水龍のイラストが描かれたカードを見せてニッと笑う。
「いいッスね。」
俺も自分のポケットからケースを取り出し、全身機械で出来た三つ首龍のイラストを見せる。
俺達が小さい頃から人気のカードゲームを久々にやることにした。
翌日の学校で私は、高海さんと渡辺さんに曲作りを手伝うことを約束した。
「ええ!嘘?」
「本当に!?」
渡辺さんと高海さんが聞き返す中、私は再度協力する事を約束する。
「ありがとう…、ありがとう!!」
と高海さんが私に抱きついてくるがそれを避け、高海さんはその拍子に他のクラスメイトに抱きついてしまう。
そんな状況で夏川くんが教室に入ってきて高海さんに怪訝な目を向けていた。
「千歌ちゃん…、何してるんスか?」
「いや、ちょっといろいろあって…。それより聞いてよ。梨子ちゃんがね!」
高歌さんが何か勘違いをしているのでは無いかと思い、もう一度伝える。夏川くんもマネージャーみたいだし、丁度いい。
「待って、勘違いしてない?夏川くんも来たからもう一度言うけど、私は曲作りを手伝うって言ったのよ?スクールアイドルにはならない。」
私の言葉に高海さんは悪態を着くが渡辺さんは「無理は言えないよ」と高海さんに言う。夏川くんは私に
「でも協力ありがとうございます。作曲は俺達三人ではちょっと難しいッスから。」
とお礼を言う。私は彼に「どういたしまして。」と返すと高海さんに向き直りあるものを貰おうとする。
「じゃあ高海さん、詞を頂戴。」
「詞?」
まるで頭に?マークを浮かべたような顔をして外をみたり鞄をみたりしながら「“し”」を探す。
夏川くんが再度怪訝な目をしているが何かに驚いたのか「うおっ!」と突然声をあげる。こっちが驚いたんですけど…。
「“し”って何~」
「多分~歌の歌詞の事だと思う~」
高海さんと渡辺さんのオペラのような子芝居を聞きながら落ち着きを取り戻した夏川くんが「多分歌詞出来てないッスよ、全く。」と耳打ちする。その事を聞き私はガックリと肩を落とした。
俺は放課後千歌ちゃんの家である旅館「十千万」に来ていた。
桜内さんの「ここ旅館でしょ?」の疑問に曜ちゃんが「時間気にせず作業できるし、バス停も近いしね」と説明している。説明している最中、旅館の中から20代半ばくらいのおっとりとした女性が出てきた。
「いらっしゃい。あら曜ちゃん、相変わらず可愛いわね」と曜ちゃんを褒める。
「ハルキ君も久しぶり。ストレイジのお仕事、頑張ってるみたいね。」
「オッス。お久しぶりです、志満姉さん。」
と俺は先程の女性、志満姉さんに声をかける。
「そちらは千歌ちゃんが言っていた子?」
と千歌ちゃんに聞いている。桜内さんも志満姉さんに挨拶をし旅館に入ろうとすると、その先にいる大型犬、しいたけを見ると若干顔が強ばっている。
「志満姉~。おっ、ハルキ久しぶり!元気だったか?」
奥から金髪のヤンキーのような見た目の美都姉が俺に向かって手を振ってきた。
「元気ッスよ!」
と俺も軽く手を振る。その手には空っぽになったプリンのパックがあり、千歌ちゃんが怒りながら美都姉を追いかけていった。
「酷い、酷すぎるよ!志満姉が東京で買ってきた限定物のプリンなのに!」
と頬を膨らましながら千歌ちゃんが愚痴を言う。
「それより、作詞を…。」
と桜内さんが作業に取りかかろうと声を掛けた時、
「いつまでも取っておく方が悪いんですぅ~」
と美都姉が、お前が悪いと言わんばかりに指を指し煽る。
「うるさい!」
千歌ちゃんが自分が抱いていた海老のぬいぐるみを投げるが桜内さんの顔面に辺り、美都姉の投げた浮き輪も同じく桜内さんにはまってしまう。
曜ちゃんが「うわぁ…」と悲痛な声をあげるがもう遅く、ぬいぐるみと浮き輪を払い落とした桜内さんの青筋が立った顔に全員が恐怖した。
『この子ウルトラ怖いであります。』
Zさんの声が頭の中で聴こえてくる。学校で“し”について千歌ちゃんが探している際、『酸っぱい調味料でございますか?』と声がした時は心臓が止まるかと思った。
俺はその日の授業を聞きながら、「ウルトラの空間に入らなくても会話は出来るんスね。」とZさんに訪ねると長い話になりそうな時や、変身する時に使用するものらしいとの事であった。
今は四人で作詞を考えているが、良いフレーズが思い浮かばす行き詰まっていた。
「やっぱり恋の歌は無理なんじゃない?」
桜内さんがハードルが高いのでは無いかと千歌ちゃんに聞いている。
「いやだ、μ'sのスノハレみたいな曲を作るの!」
恋愛ソングを考えるが俺も桜内さんと同じく同意件。こういうのはある程度作詞をして慣れてから作るものでは…と思っていた。
「そうはいっても恋愛経験無いんでしょ?」
「何で決めつけるの?」
桜内さんは「あるの?」と再び問うが無言の千歌ちゃんに経験が無い事を察し、それならちょっと難しいよと、別の歌詞を作るように提案をする。そんな中、千歌ちゃんは俺に目線を向けるが「いや、俺もちょっと無いかな…。」と答える。もしかしたらZさんならと思いテレパシーで伝えてみる。人生の大先輩だ。もしかしたらきっと沢山…。
「Zさん!あの、つかぬ事をお聞きしますがご自身の恋愛経験について教えてもらえないでしょうか?」
『無いでございます!』
ガクッと肩を落とす俺を曜ちゃんが「肩を落とすタイミングかなりずれてるよ!」と驚く。確かに端から見ればそうだろうな。
「μ'sがこの曲を作った時誰かが恋愛してたってことだよね?ちょっと調べてみる。」
と千歌ちゃんは作業そっちのけでインターネットでμ'sの事を検索している。
「なんでそうなるの?」
と桜内さんがため息をつきながら呟くと曜ちゃんのある一言から俺達3人は何かを閃いた。
「千歌ちゃん、スクールアイドルに恋してるからね!」
俺達のこれだ!というリアクションに千歌ちゃんだけピンと来ていない。
「今の話聞いてなかった?」
「スクールアイドルにドキドキする気持ちとか大好きって気持ちとか」
「発想の転換ッスよ。それなら書ける気がしないッスか?」
俺達の言葉に千歌ちゃんも何かを閃き、凄まじい速度でノートに文字を書き進めていった。
異様な程のスピードで歌詞を作り四人で修正を加えながらたった1日で作詞が完成した。
今日の作業を終え俺は千歌ちゃんの家で晩飯をご馳走してもらい自分の家に帰宅した。
私、桜内梨子は自分の家に帰宅し暗い部屋の中携帯でとある動画を見ていた。
【ユメノトビラ】作詞作りの際に高海さんが参考にと書いてくれた歌詞が手元にある。彼女はそれを聴いてμ'sのようになりたいと言っていた。その時の目はとてもキラキラしていて、自分がピアノが楽しかった時もこんな目をしていたのだろうなと思い羨ましかった。
動画が終わり、私は部屋のピアノの鍵盤に指を置き先程の曲を弾いてみる事にした。
久々に歌いながらピアノを弾いていると外から「梨子ちゃん!」と言う声に気付き窓の外を見る。外にはお風呂から上がり、寝巻き姿の高海さんがいた。
「今の、ユメノトビラだよね?梨子ちゃん、歌ってたよね!」
自分の歌声を聴かれたのが少し恥ずかしく、はぐらかそうとする私に構わず高海さんはユメノトビラの歌詞を言う。
「高海さん、私どうしたらいいんだろう。」
そんな高海さんに自分の思いを打ち明ける。何をやっても楽しく無くて、変われない自分の悔しさを伝える。それを聞いた高海さんは再度スクールアイドルをやってみないかと私を誘った。
「ダメよ…。このままピアノを諦める訳には…。」
「やってみて笑顔になれたら、変われたらまたピアノを弾けばいい。」
諦める事はないと言う高海さんに対し、このまま中途半端な気持ちでピアノとスクールアイドルを掛け持ちしてしまうのでは無いかと思い、私は変わらず断らざるを得なかった。
「失礼だよ、本気でやろうとしている高海さんにそんな気持ちで…。」
「梨子ちゃんの力になれるなら私は嬉しい。皆を笑顔にするのがスクールアイドルだから!」
そう言いながら高海さんは手を伸ばす。
「千歌ちゃん!!」
このままじゃ落ちてしまう。そう思った私は思わず名前を呼んでいた。私も手を伸ばし、お互い落下する事無く体を元の状態に戻す。
「さすがに届かないね…。」
諦めた私の言葉にお構い無く、千歌ちゃんの諦めるな!と言わんばかりに手を伸ばし続ける。私も必死に手を伸ばしお互いの指が触れ合った。
ここから私も変わりたい。スクールアイドルをやってみようと思った私の顔はきっとあの頃の楽しかった時と同じ顔をしていた筈だ。