無職転生短編ず   作:れもんぬ

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国語力、クソ雑魚です


理想の君

 これは直感だった。

 これは確信だった。

 迷宮が崩壊するなんてミリも思わなかった。

 ただこのまま行けば会える気がして。

 けど、急がなきゃダメな気がして。

 俺はただ前に進んだ。

 

<>

 

 氷の彫刻に囲まれてる人がいる。

 懐かしい人がいる。

 透き通るような青色の髪。

 ジトっとこっちを見る大きな目。

 中学生みたいな小柄な体つき。

 やっと会えてホッとした。

 嬉しさで体の芯が震える感覚がする。

 ブエナ村の時と何一つ変わってない師匠を見て、抱きしめたい気持ちが溢れた。

 いつか会えると思っていたけれど。

 その日がこんなにも嬉しいなんて想像も出来なかった。

 

 

---

 

 

 絶対絶命だと目を瞑った時。

 未練たらたらなまま生きる事を諦めた時。

 私はいつもしている想像どうりの出来事が起きるなんて思いもしなかった。

 

<>

 

 魔物に囲まれた私は死ぬはずだった。

 けど私の王子様が助けてくれた。

 私なんかが使う魔術とは別物とでさえ思えてしまう圧倒的なまでの魔術。

 剣士だと言われても疑問に思わないほど鍛えられた身体。

 整った顔立ち。

 この男性がルディだと知ったときはものすごく驚いた。

 子供だとは思えないほど賢く、謙虚で魔術の才能もあったルディ。

 それほどの力がありながらも馬を怖がっていた可愛いルディ。

 小さいイメージしかなかったけど久しぶりに姿を見せたときには私の理想の人になっていて。

 私の胸は彼を見た時からドキドキが止まらない。

 

 私が救出されたと待機組が知ったとき、どんよりしていた空気が少しマシなものになった。

 掘った穴を埋めただけだけど、何一ついい出来事がなかったから喜んでもいいのかもしれない。

 とりあえずみんなに挨拶を終わらせた私は、リーリャさんにお風呂に案内された。

 久しぶりの水浴びだ。

 やっと体のベトつきが落とせると思うと心が躍る。

 

 お風呂を出た私はもう一度みんなにお礼を言った。

 話している途中途中、何故かルディと目が合ってしまう。

 できれば目を逸らしたくないけれど、それ以上に恥ずかしい。

 髪もボサボサで一ヶ月間も水浴びを出来なかった私を見て幻滅されていないか気が気でない。

 けど、笑いかけてくれるし話しかけても嫌そうにはしていない。

 むしろあっちから話しかけきてくれる。

 今までにないほど好感触だ。

 すごく嬉しい。

 

 今日までまともに睡眠を取れていなかったからすごく眠たい。

 フカフカのベッドが心地いい。

 死にそうになって、王子様が現れて助けてくれて、それがあの小さかったルディで、すごくかっこよくなってて。

 いろんなことが起き過ぎて疲れた。

 けど今日見る夢はきっととびきり素敵に違いない。

 

 

---

 

 

パウロさんが死んだ。

 その事実を呑み込むのにそう時間はかからなかった。

 上半身真っ二つだ。

 確実に息をしていない。

 さっきまで剣を振っていたのに今はもう動かない。

 

 エリナリーゼさんが指示を出す。

 私たちは指示に従う。

 亡骸をそのまま放置すると魔物にになってしまうのできちんと処理をした。

 奥の大きな魔石が溶け出してゼニスさんがはっきり見えてくる。

 一通り処理は終わったので持ち帰れるだけの魔石を持って帰路につく。

 治癒魔術は施したはずなの脚が重い。

 思うように前に進まない。

 もしかしたらこれは悪い夢なのかもしれない。

 そう思えば気が楽になる思ったが、亡くなったパウロさんを侮辱する行為だ。

 ルディはもっと悲しんでいる筈だ。

 先生である私が頑張んなくてどうする。

 そう思いながら、悲しみに呑まれないように、進む脚に力を入れた。

 

 

 

---

 

 

 

 ゼニスさんに異常があると分かった日以来、ルディは酷く落ち込んでしまった。

 滅多に部屋から出てこない。

 解決方法を思いつかない自分に嫌気がさす。

 結局私は助けてもらうだけで、恩を返すことはできない役立たずだ。

 悪いことばかり考えてしまうけど何も意味がない。

 

 「ここにいる奴らで飲むぞ

  ほら、お前も立てよ」

 

 ギースさんがみんなを元気づけようとしている。

 たくさんお酒を飲めばなんとかなると思う。

 飲もう。

 そうしよう。

 

 

---

 

 

 酔っ払いは勢いのある生き物だ。

 思い立ったらすぐに行動に移す。

 深く考えなんてしない。

 酔っ払いだから。

 

<>

 

 ルディにお嫁さんがいることはわかった。

 今1番いて欲しいのに、ここにいないのもわかった。

 エリナリーゼさんは夫がいるから抱けないのもわかった。

 娼婦に頼んでも効果が薄そうなのもよく理解している。

 なら私がするしかない。

 

 私はなんとなくそう思った。

 誰もできないのなら私が、と。

 どんな罰が待っているかなんて考えなかった。

 どんな後悔が待っているなんかわからない。

 どうでもよかった。

 酔っ払いだから。

 

 酔いも覚めたのにバカみたいな言い訳をしながら。

 私はルディの部屋のドアを叩いた。

 

 

---

 

 

 目が覚めたと同時に優しいにおいが私の鼻腔をくすぐる。

 ルディの匂いだ。

 大好きな彼のにおいだ。

 調子はどうか聞いただけなのに、私の感想を言ってきてびっくりした。

 よかったらしい。

 胸がじんわりする。

 嬉しい気持ちでいっぱいだ。

 弱みに漬け込んだ感じになってしまったけど、後悔だけはしていない。

 

 彼にはいろんなものをもらった。

 死にそうになった私の命を救ってくれた。

 私の初めてももらってくれた。

 ブエナ村での生活は楽しかった。

 あの時の思い出だけで幸せに暮らしていけるぐらい楽しかった日々だった。

 彼を手に入れることはもうできないけれど、最後に役に立ててよかった。

 ありがとう、ルディ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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