無職転生短編ず   作:れもんぬ

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ご都合です


君と一緒に空を飛びたい

我々人類には飛行能力は備わっていない。

 故に、誰もが空へ憧れを持つ。

 しかし憧れだけでは空へと飛び立つことはできない。

 

 我々の祖先たちは常に地上で生きることを前提に進化してきた。

 知能を手に入れ、二足歩行できる足腰を手に入れた。

 音を聞くこともできれば、物を見ることもできる。

 

 大きく発達した脳を持つ人類は大抵のことはなんでもできた。

 車輪を応用すれば移動手段ができ、蒸気を利用すれば灯りができた。

 しかしどれだけ頑張っても空は飛べなかった。

 骨は重く、空気に真っ向から抵抗していく。

 適応力が皆無だったのだ。

 

 それもそうだ、陸上で生息するために立派な脚があるのだから。

 どれだけ重くたって、地上で生きる分には障害にはならなかった。

 けれど、飛行を実現するには大きな壁となってしまった。

 

 人類は常に進化する。

 失敗をもろともしない偉人が世界にはいる。

 

 工夫に工夫を重ね、努力に努力も重ねたのだろう。

 考察に考察も重ねたのだろう。

 努力を惜しまない人には必ず成果の実がなる。

 

 そしてついに、長い年月をかけた人類の空への挑戦は成功したのだ。

 今では飛行機を使って気軽に空の旅を楽しむ事ができるが、その背景には数多くの挫折があった事だろう。

 

 街がいつまでも明るい、別の国へ旅をすることができる。

 それらの何もかもが当たり前なのは数多くの努力があってこそだったのだ。

 だからこそ、我々は常に感謝の気持ちを忘れてはいけないのだ。

 

 

---

 

 …というのは前世の世界のことで。

 この世界の魔術は非常に便利だと思う。

 なんでもできる。

 万能なのだ。

 火を起こせれば、水だって出せる。

 天候もコントロールして農作物に被害を与えないことだってチョチョイのチョイだ。

 

 世界の偉人がこっちきたら失神するんじゃないだろうか。

 少しかわいそうだ。

 長年頑張ってきたのに、ここでは全てが魔術の一言で努力が意味をなさなくなる。

 どんまいだ。

 

 でも飛行機は存在していないらしい。

 風魔法使えば一発で飛べると思う。

 なぜないのだろうか。

 

 そもそも空を飛んでるやつなんて…

 いました。

 アトーフェ飛んでました。

 ソーカス茶もらいに行った帰りに回り込まれてました。

 赤竜も空を飛んでいた気がする。

 

 まぁ頑張れば空飛べそうなので空飛ぶ乗り物を作ろうと思う。

 最近平和だし問題ないだろう。

 新たな移動手段をアリエルに売りつけてやるのだ。

 こっちの言い値で売りつけて大儲けしよう。

 

 とりあえず仲間を集めよう。

 そうしないと何も始まらない。

 

 

 俺の友達出てこい!

 ザノバ!クリフ!

 プリチーショウカーン!!

 ショウカーン!

 

 ---

 

 「師匠、本日はどうされたのですか?」

 「あぁそうだな。またなんかやばいやつ作るのか?」

 

 うむうむ。

 割と協力的だ。

 

 「実は空飛ぼうと思ってて。そんなの欲しくない?」

 「なんと!空を!」

 「これまたすごいことになりそうだな。」

 「しかしどのようなものを?」

 

 んー。

 どっかのビーター剣士は円盤をいじくって飛ばしてた気がする。

 UFOによう。

 かっこいいし。

 

 「円盤の下から風魔法で風を起こすとか?」

 「それはお前レベル魔力がなかったら無理だろ。」

 

 そうかもしれない。

 魔力量の平均がわからないのは不便だ。

 是非とも定規的なのも作りたい

 

 確かにそうだよな。

 うーむ。

 

 空飛ぶ乗り物…のりもの……

 気球…

 そうだ、気球ならどうだろうか。

 火を起こすだけでいけそうだし。

 思い立ったら即行動!

 れっつごー

 

 

 まずアリエルにでっかい布と、紐を用意してもらった。

 燃えないマジックアイテムだそうだ。

 すごく高いやつ。

 また借りを作ってしまった。

 悪い顔してたなぁ。

 

 次にザノバ商会のツテででっかい籠を作ってもらった。

 人がギリ四人乗れるぐらいのやつを。

 土魔法でちょっと補強もした。

 そこが抜けて落下なんてやだからな。

 

 足りないものは頑張って作った。

 アイシャにも手伝ってもらった。

 彼女のセンスは最強だ。

 曖昧なイメージを実物にしてくれる。

 一番乗りの権利を授けよう。

 

 

 一通り組み立てが終わったので後ろに引いて全体を眺めてみる。

 まんま記憶の中の気球だ。

 達成感が半端ない。

 いけそうだ。

 

 明日飛ぼうと思う。

 楽しみだ。

 

 

---

 

 

 ボクは転移災害の被害者だ。

 目が覚めた時には空にいた。

 もがいても、焦っても体は落下する。

 火を起こしても水を出しても落下する。

 けど風魔法を使って速度を落とすことで、奇跡的に両足骨折で済んだ。

 命は助かった。

 

 昔、家に一冊だけあった御伽噺ではお姫様が白馬に乗って王子様と楽しそうに空を飛んでいた。

 いつしかボクはルディと一緒に自由に空を飛んでみたいと思うようになった。

 すごく素敵に違いないと夢見ていた。

 

 けれどそんな憧れは一度の恐怖によって塗り替えられた。

 落下した恐怖が脳内に張り付いている。

 空飛ぶ生き物を見ると足が震えるのだ。

 髪の毛が一生真っ白になるぐらい怖かった事を思い出すのだ。

 だからボクは極力上を見ないようにしている。

 

 今ではだいぶマシになってきたけど。

 空が怖いのは変わらない。

 

 

 

 そんなボクは今、ルディに抱き締められている。

 そんなボクは今、空を飛んでいる。

 ルディの腕は筋肉があって頼もしい。

 

 もう建物が小さく見える。

 あの日もそうだった。

 下を見ると黒い粒が見えるのだ。

 それがだんだんと大きくなっていって。

 

 けど、ボクは今ルディに守られている。

 仮に落ちてもボクを護ってくれる。

 下にオルステッドさんも待機している。

 その事実がボクに絶対的な安心をくれる。

 

 いつもルディは過去のトラウマを溶かしてくれる。

 克服させてくれる。

 いじめられていた件だって立ち向かう術を教えてもらった。

 

 今まであんな恐怖があったけど。

 寝る前の子供たちに本を読む時に、心のどこかでたまに思っていたのだ。

 ルディと一緒に空を飛びたい、と。

 

 ボクは懲りずに馬鹿な思いを抱いていた。

 いつまで経ってもボクは夢を見ていた。

 

 けど、その夢をルディに叶えてもらった。

 今がすごく楽しい。

 もうボクのトラウマは頬を撫でる風と共にどっかに行ってしまった。

 また一つ克服させてもらった。

 

 助けてもらわないと何もできないボクを導いてくれて感謝しかない。

 愛してるよ、ルディ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

またもや何も知らないルディ氏。

ただシルフィ氏の事を抱き締めたかっただけだった模様。

結果的にいい方向に進んで良かったね、ルディちゃん!

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