仕事終わりの帰り道。
凍るような風がボクの頬を突き刺す。
きっとボクの鼻の先は真っ赤になっていることだろう。
あたり一面は綺麗な雪景色だ。
白く輝く雪は月の光を反射している。
ここ、シャーリアに冬が来た。
屋台が立ち並ぶ賑やかな大通りにはは美味しそうな匂いが漂っている。
そこのアシータ鳥の燻製なんかは身が柔らかくてハズレを引きにくい。
簡易的な調理道具で大量に作る料理は味にバラつきがある。
スパイスが多めにかかっているものもあれば全然かかっていないはずれがある。
筋が多いものもあれば全くないものだってある。
いかに美味しそうなものを見つけるかではなく、いかに個体差が少ないものを選ぶかが重要なのだ。
美味しそうな見た目に惹かれてキノアの実クッキーを買ったら最後、砂糖が混ざり切らずにそのまま焼いて固まったものを買わされてしまうかもしれない。
ボクは今、お腹が空いている。
久しぶりに刺客がやってきたのだ。
問題なく対処した。
けれど、ちょうど昼ごはんを食べていた時に奴らはやってきたのだ。
せっかくルディが作ってくれたお弁当がぐしゃぐしゃになってしまった。
頂点にあった気持ちが一気にどん底だ。
そのまま、食欲が出ないまま護衛の任務は終了した。
食堂のものはいまいち好きになれない。
けれどルディはボクのために晩御飯を作って待ってくれている筈だ。
先に寝ててもいい時間なのに起きていてくれる。
ルディはボクにぞっこんなのだ。
そう言うボクもぞっこんだ。
似たもの同士。
そう考えるとたまらなく嬉しい。
そろそろ住宅街に入る。
ボク達の家はでかくて目立つ。
凄くわかりやすい。
でかい煙突から煙が上がっている。
道に並び立つアノンの木の枝に、雪の花が咲いている。
つららは鈍くひかり、存在感を放ってる。
街灯のあかりに照らされた帰路を急足で進む。
ルディはすぐそこで待っている。
おもい門を開けて、最後に鍵を閉めた。
玄関の前にあるマットで靴についた雪を落とす。
あっという間に足が軽くなる。
ゆっくりとドアを開けると暖かい空気がボクを家へ迎え入れてくれる気がした。
テーブルにはパンとコーンスープが並べられている。
お椀からは湯気がたち上っていて、できたてだ、と言うことが容易にわかった。
二つある椅子のうちの一つに、ボクの旦那さんのルディが優しい目でボクを見つめる。
「ただいま、ルディ」
「お帰り、シルフィ」
ボクは家に帰ってきた。
ただいまの挨拶が、はっきりと夫婦を感じさせ照れくさい。
席についたボクは夕食をいただく。
かぶりついたパンの中にはとろけたチーズが、冷えた口内を優しく温めてくれる。
コーンスープを両手で持てば、かさついたボクの手のひらにぬくもりを戻してくれる。
牛乳の柔らかいとろみがパンと混ざり合えば飲み込みやすい。
喉を通り越す感覚が気持ちいい。
食べ終わったボクは食器を洗い場に置いて、暖炉のそばのソファに深く座り込む。
続いてルディもやってくる。
少し体を寄せ合えば彼の体温が伝わってきて心がこそばゆい。
抱き寄せようとする彼の逞しい腕に身をゆだねた。
ルディの匂いに包まれると体が熱くなる。
冷め切った体は彼から伝わる体温で、中心からゆっくり、ゆっくりと溶かされていった。
耳をすませば、とくんとくんと心音が聞こえる。
暖炉の火がゆらゆら揺れて眠気を誘う。
彼のぬくもりに包まれながら、ボクは夢の世界へ旅立った。