辛い。
寂しい。
何も感じない。
何も見えない。
声も出せない。
ボクはいつもここにいるのに。
誰もここにこない。
無だ。
無の世界だ。
<>
僕はこの世界の創造主の体の一部でできている。
真っ白で特徴がない。
他人から見れば靄がかかって見えるらしい。
生まれた時期はわからない。
ただ何をすべきか、自分の使命だけがはっきりしている。
僕の名前は人神。
人の世界を司る神だ。
何んでもできるってわけではないけれど、信頼してもらえる力を持っている。
この世界の人々は皆、ひ弱だ。
他の世界の生き物と違って脆い。
すぐに病気にかかるし、すぐに死ぬ。
けど、欠点ばかりじゃない。
生きるために必死だから知恵が回る。
文明の発展する速度はどの世界を見てもピカイチだ。
ぶっちゃけ僕はいらないんじゃってほど良く回っている。
じゃぁ一体僕は何をしているかって?
そうだねぇ…主に他の神々と交流をとって情報交換を頑張っているかな。
なんたって人族は弱い。
人族の次に弱い天族に攻め入れられても絶対に滅ぶ。
高度な技術を持っていると他の神に嫉妬されかねないからね。
仲良くしなきゃ。
もっとも、一番強い龍神と深い関係にあるから万が一もないと思うけど。
きっと守ってくれるさ。
僕が悪いことさえしなければ。
そう、龍神といえば最近彼が出生不明の魔族と龍族のハーフを保護したとかなんとか。
ちょっと見てみたけどこれがまぁ、髪の色が不思議でねぇ。
鳥肌が立っちゃったよ。
誰が親なのかは分かっていない。
この世界、六面世界は大きく六つに分かれているわけだけど、普通の生き物に世界をまたぐ力はない。
僕たち神と、同伴者一名だけが渡れる。
六面世界は色々と歪だからねぇ。
不具合が生じているのかもしれない。
世界が崩壊することはないだろうけど、気を引き締めないといけないかもね。
---
初めて音を聴いた気がする。
初めて他の生物を感じた気がする。
何も見えないけれど、優しそうな雰囲気だ。
ボクがこんなにも苦しんでいたというのに。
あんなにも悲しんでいたというのに。
いつも孤独で、冷たくて。
死んでしまいたいのに何も見えなくて出来なくて。
なのに目の前のこいつは笑っている。
同情したように話しかけてくる。
「やぁ、僕は人神」
むかつく。
「こんなところでどうしたんだい?
いつもここにいるなら、君も僕の世界に来ないかい?」
気に入らない。
「心配することはないさ。
ほら、おいで。」
死ねよ。
死ねよ。
死ねよ。
---
目が覚めた瞬間、初めて色が見えた。
何もない世界だけど、初めて"白色"が見えた。
ボクは体を手に入れた。
あいつの体を乗っ取ってやったんだ。
体を手に入れたその日から毎日が楽しくて仕方がなかった。
無条件に信頼される力は素晴らしい。
騙すだなんて赤子の手を捻るようにできる。
勝手に自滅して、破滅して。
あぁ、気分がいい。
ボクは苦しみから解放された。
ボクはなんだってできる。
ボクは神なんだ。
ボクの名前はヒトガミだ。