無職転生短編ず   作:れもんぬ

2 / 14
原作ネタバレ注意です!


人神

辛い。

 寂しい。

 何も感じない。

 何も見えない。

 声も出せない。

 ボクはいつもここにいるのに。

 誰もここにこない。

 無だ。

 無の世界だ。

 

<>

 

 僕はこの世界の創造主の体の一部でできている。

 真っ白で特徴がない。

 他人から見れば靄がかかって見えるらしい。

 生まれた時期はわからない。

 ただ何をすべきか、自分の使命だけがはっきりしている。

 僕の名前は人神。

 人の世界を司る神だ。

 何んでもできるってわけではないけれど、信頼してもらえる力を持っている。

 この世界の人々は皆、ひ弱だ。

 他の世界の生き物と違って脆い。

 すぐに病気にかかるし、すぐに死ぬ。

 けど、欠点ばかりじゃない。

 生きるために必死だから知恵が回る。

 文明の発展する速度はどの世界を見てもピカイチだ。

 ぶっちゃけ僕はいらないんじゃってほど良く回っている。

 

 じゃぁ一体僕は何をしているかって?

 そうだねぇ…主に他の神々と交流をとって情報交換を頑張っているかな。

 なんたって人族は弱い。

 人族の次に弱い天族に攻め入れられても絶対に滅ぶ。

 高度な技術を持っていると他の神に嫉妬されかねないからね。

 仲良くしなきゃ。

 もっとも、一番強い龍神と深い関係にあるから万が一もないと思うけど。

 きっと守ってくれるさ。

 僕が悪いことさえしなければ。

 

 そう、龍神といえば最近彼が出生不明の魔族と龍族のハーフを保護したとかなんとか。

 ちょっと見てみたけどこれがまぁ、髪の色が不思議でねぇ。

 鳥肌が立っちゃったよ。

 誰が親なのかは分かっていない。

 

 この世界、六面世界は大きく六つに分かれているわけだけど、普通の生き物に世界をまたぐ力はない。

 僕たち神と、同伴者一名だけが渡れる。

 六面世界は色々と歪だからねぇ。

 不具合が生じているのかもしれない。

 世界が崩壊することはないだろうけど、気を引き締めないといけないかもね。

 

 

---

 

 

 初めて音を聴いた気がする。

 初めて他の生物を感じた気がする。

 何も見えないけれど、優しそうな雰囲気だ。

 

 ボクがこんなにも苦しんでいたというのに。

 あんなにも悲しんでいたというのに。

 いつも孤独で、冷たくて。

 死んでしまいたいのに何も見えなくて出来なくて。

 なのに目の前のこいつは笑っている。

 同情したように話しかけてくる。

 

 「やぁ、僕は人神」

 

 むかつく。

 

 「こんなところでどうしたんだい?

 いつもここにいるなら、君も僕の世界に来ないかい?」

 

 気に入らない。

 

 「心配することはないさ。

 ほら、おいで。」

 

 死ねよ。

 死ねよ。

 死ねよ。

 

 

---

 

 

 目が覚めた瞬間、初めて色が見えた。

 何もない世界だけど、初めて"白色"が見えた。

 

 ボクは体を手に入れた。

 あいつの体を乗っ取ってやったんだ。

 

 体を手に入れたその日から毎日が楽しくて仕方がなかった。

 無条件に信頼される力は素晴らしい。

 騙すだなんて赤子の手を捻るようにできる。

 勝手に自滅して、破滅して。

 あぁ、気分がいい。

 ボクは苦しみから解放された。

 ボクはなんだってできる。

 ボクは神なんだ。

 ボクの名前はヒトガミだ。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。