いったいどうなるのか...
今回もお楽しみください!
三人称side
IS学園の学園長室。
今此処には本来ならいるはずの十蔵すらいないこの状況で。
とある姉妹が2人きりで、お互いの目を見つめ合っていた。
「.....」
「あ、あ、あ...」
妹である簪はただ静かに。
姉である楯無は、口を開いて閉じてを繰り返しながら。
暫くの間2人とも何も言葉を発していなかったが、2人きりになってから10分ほど経った時
「...お姉ちゃん、こうやって2人でいるのは久しぶりだね」
と、簪が口を開いた。
「え、ええ!久しぶりね、簪ちゃん...」
楯無が慌ててそう返すが、そこで会話が終わってしまう。
また、暫くの間学園長室内を重苦しい空気が包み込む。
(ど、如何しよう如何しよう!?)
楯無は内心そんな事を考えながら、アワアワと視線をあっちこっちに向けている。
今の楯無からは、姉や生徒会長、そして暗部の長といったありとあらゆる威厳を感じなかった。
(...お姉ちゃん.....私は、如何したいんだろう?許したいのかな?それとも、もう関わりたく無いのかな?)
そんな楯無を横目に見ながら、簪は自分にそう尋ねる。
そうして考えているうちに思い返したのは、操との初対面の時の操の言葉。
『人間、いや、動物は1人で出来る事には限界がある。だからこそ、生き物は支え合うんだ。そうする事で、1人での限界は、乗り越えることが出来るから』
(支え合い...それが生み出す強さ...)
『お姉さんと簪さんは、違うだろ?』
(お姉ちゃんとは違う、私の強さ...)
此処で、もう1度簪は楯無の顔を見る。
顔を見られた楯無はビクっと大袈裟に身体を震わせる。
(私の、やるべき事は...)
「...お姉ちゃん」
「ピッ!?な、なに!?」
簪に名前を呼ばれた楯無は、信じられないくらい変な声を出す。
そんな楯無を無視して簪は話し始める。
「私は、お姉ちゃんと比べられて凄い嫌だった。私だって努力してるのに、お姉ちゃんを超えられない。そして、周りはその事で馬鹿にしてきた。私は努力してるのに、それを認めてくれない。そんな状況が、途轍もなく嫌だった」
「簪ちゃん...」
簪の淡々とした話を聞いた楯無は、簪の顔を見て名前を呟く事しか出来なかった。
「勿論、お姉ちゃんに悪意が無かったのは分かってる。寧ろ、お姉ちゃんには守って貰ってたのも分かってる。でも、それでも、周りから比べられるのは嫌だった。お姉ちゃんを超えるために、お姉ちゃんを見返すために、ISを1人で造ろうとした。本音が止めてくれたけど、言う事聞かなかった。でも、私は今はクラスのみんなと協力してISを作ってるんだ」
「.....」
「ねぇ、お姉ちゃん。私って、何で変われたと思う?」
簪は、楯無の目をしっかりと見ながらそう質問をする。
「な、何でって言われても...」
分かる訳が無いと言わんばかりの表情で、楯無はそう呟く。
「私が変われたのは、操さんと出会ったからだよ」
そんな楯無に対して、簪は笑顔でそう言う。
その言葉を聞いた楯無が呆けた表情を浮かべているのを見ながら、簪は口を開く。
「操さんが言ってくれたの、生き物はバラバラだから支え合うって。私とお姉ちゃんは違う人間なんだから、違う強さがあるって」
そう語る簪の表情は笑顔で。
そんな簪を見る楯無の表情は、驚いたような表情で。
「だからお姉ちゃん」
「な、何?」
簪はジッと、楯無の目を見ながら、覚悟の決まったような表情で言葉を発した。
「もう、私の事を守ろうと頑張らなくて良いから。私は、私なりに頑張るから」
その言葉を聞いた楯無は、ギリッと奥歯を噛み締めた。
そして、その表情を悔しそうなものに変えていく。
握っているその手は手から血が出るんじゃないかという程に強く握りしめられていて、プルプルと震えている。
「.....ってに....」
楯無は、そうボソッと呟いた。
だが声量が小さすぎて簪には届かなかった。
「お姉ちゃん、何?」
簪がそう聞き返すと、楯無は一度俯いた。
そして
「私の気持ちも分からないのに、勝手に言わないで!」
ガバッと顔を上げた楯無はそう叫ぶように言葉を発した。
簪は驚いたようにビクっと身体を震わせるも、それを気にしないように楯無は言葉を続ける。
「私は、簪ちゃんが何よりも大事だから!だから今まで頑張って来たのに!そんな、急にそんな事を言われて!」
そう言う楯無の両目からは、少量の涙が流れ出ている。
「お姉ちゃん...」
「周りが簪ちゃんに何か言ってるのは知ってた!でも!それでも、私は簪ちゃんを守るためにいろいろな事をしてきた!でも、それでも無理で!そして、簪ちゃんにあんな事言われたら、私はこれからいったいどうすれば...」
泣きながら喋る楯無の表情は、ぐっちゃぐちゃに濡れていた。
「お姉ちゃん!」
「何、簪ちゃ...っ!」
簪に呼ばれ、顔を見た楯無は言葉を詰まらせた。
何故ならば、簪も泣いていたからだ。
楯無に比べると、涙の量は少ないかもしれない。
でも、確実に涙を流していた。
「私は、別にお姉ちゃんがもういらないって意味で言った訳じゃない!」
「簪ちゃん...」
「私は、私はぁ...!!」
簪はここで大きく息を吸って、吐いた。
「お姉ちゃんと、支え合いたいの!!」
その言葉を聞いた楯無は、
「えっ......?」
涙を流しながらもそんな呆けた声を漏らした。
「私1人じゃ限界なのはもう分かってる!それに、お姉ちゃんが私の為にいろいろしてくれた事も、その苦労も分かってる!だから!」
簪はそう言うと楯無に近付き、そのまま抱きしめる。
「お姉ちゃん、今まで避けててごめんなさい!そして、仲直りしてください!また一緒に、笑い合える姉妹に戻ろう!」
そう言った簪は、涙を流しながらそのまま楯無の事を抱きしめ続ける。
「簪ちゃん...」
楯無は簪の名前を呟くと、そのまま抱きしめ返した。
「簪ちゃん、私こそ...私こそごめんなさい!簪ちゃんの事を守ろうとして、1番大事な簪ちゃんの心が疎かになってた!こんなお姉ちゃんで、本当にごめんなさい!そして、こんな私と一緒に居たいって言ってくれてありがとう...!」
「お、お姉ちゃん...」
「私からも、言わせて。簪ちゃん、今まで本当にごめんなさい!また、昔みたいになりましょう!また、2人で一緒にいましょう!」
楯無がそう言うと、簪と視線を合わせる。
暫くの間、2人はそのまま見つめ合っていたが、やがてどちらからともなく笑い合った。
「お姉ちゃん、本当にごめんね。そして、改めてよろしくね」
「簪ちゃん、私こそごめんなさい。これから、よろしくね!」
そうして、また暫くの間2人は抱きしめ合って、暫くの間2人きりで雑談をした。
2人の表情は、穏やかな笑顔だった。
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操side
「お嬢様と簪様は、大丈夫でしょうか?」
簪と更識生徒会長を学園長室の中に残して廊下に出た瞬間に、虚さんが心配そうな表情でそう呟く。
「あの2人なら大丈夫だよ~~、お姉ちゃん」
「ええ、大丈夫だと思いますよ」
そんな虚さんに、のほほんさんと学園長がそう声を掛ける。
「...俺は更識生徒会長と関わりが無いので、何も言えないですけど...」
そもそも、盗聴器事件の犯人の可能性があるとして学園長に聞いていただけだったし。
でも、それでも...
「...あの嘘で騙されるくらいには簪を大事にしているんですから、大丈夫ですよ」
「......そうですね!」
俺達3人の言葉を聞いて、虚さんは僅かな笑みを浮かべた。
まぁ、本当にこればっかりは2人が自分たちで解決しないといけない事だから、俺達に出来るのは信じるだけだけどな。
「...それにしても、良く協力して頂けましたね。こんなに強引で、状況を利用するような計画に」
虚さんとのほほんさんの事を見ながらそんな質問をする。
この計画の相談をした時、正直に言うと断られると思っていた。
虚さんやのほほんさんにとって、簪と更識生徒会長は幼馴染で、主に当たる人だ。
そんな大切な人達を騙す計画なのだ。
断られても仕方が無かった。
俺の言葉を聞いた虚さんとのほほんさんは暫くの間視線を合わせると、やがて口を開いた。
「...操さんがかんちゃんに話をしてくれるまで、かんちゃんはほんと~~にただ1人でISを作ってて、かなり心配だったからね~~」
「それが門藤さんと関わる事で年相応の、少女のような顔をされています。だから、私達は計画に乗る事にしたんです。成長した簪様なら、きっと大丈夫だと思ったので」
「そうですか」
そう言われると、此方としても安心する。
「ところで、そこまでしてお嬢様に頼みたい事は、本当にデュノアさんの事だけなのですか?」
ここで、虚さんが俺と学園長の事を見ながらそう質問をしてきた。
「はい、頼みたい事はそれだけです。ただ......」
「ただ?」
「...1つ聞きたい事はありますけどね」
虚さんとのほほんさんは俺の言葉を聞いて首を傾げていたが、学園長は頷いていた。
そんな学園長の反応を見て、2人は更に首を傾げさせる。
そこから暫くの間、声が学園長室内に入らないくらいの声量で4人で簡単な雑談をする。
学園長が混ざってても普通に会話出来ているのだから、学園長の人の好さが分かる。
たった1人の生徒の為にここまでしてくれるのだから、本当に良い人だ。
学園長だなんて絶対に暇な訳が無いのに。
そんな事を考えながら雑談をする事十数分。
ガチャ
扉が開く音がした。
バッと視線を学園長室の扉に向けると、そこには当然ながら簪と更識生徒会長がいた。
2人の両目は泣いた後なのか真っ赤だったけど、その表情は笑顔だった。
「仲直り出来た~?」
のほほんさんがそう2人に問いかける。
だけれども、のほほんさんの表情は答えが分かり切っているようなものだった。
「「...うん!」」
簪と更識生徒会長は、より一層濃い笑みを浮かべながらそう返答した。
そんな2人を見て、安心したのでほっと息を吐いた。
俺と同タイミングで学園長と虚さんも息を吐いていた。
「操さん、わざわざこの場を用意してもらってありがとうございました」
「いやいや、気にしないで」
簪がお礼を言ってきたので、慌ててそう返す。
寧ろ俺は謝らないといけないのでは?
そう考えて口を開こうとした時、
「あの...」
と、更識生徒会長が声を掛けて来た。
「はい、何ですか?」
「あの、その...ごめんなさい!さっき、後を付けるような真似をして!」
「ああ、全然気にしないで下さい。寧ろ付けてもらわないとこうやって話し合いさせる事も出来なかったですし」
俺がそう言うと、更識生徒会長はアハハと笑みを浮かべた。
「改めて、IS学園生徒会長の更識楯無です。これからよろしくお願いします」
「門藤操です、よろしくお願いします。あ、操で大丈夫ですよ」
「なら、私も楯無で大丈夫です」
「分かりました、楯無さん」
そう言って、楯無さんと握手をする。
さて、ここからが俺にとっての本番だ。
「実は、楯無さんに頼みたい事が1つと聞きたい事が1つありまして...」
「簪ちゃんとの仲を取り持って下さったので、可能な限りでかなえますよ」
楯無さんが自身タップリといった感じでそう返事をしたのを確認したので、取り敢えず再び学園長室に入る
そして、そのまま先ず頼みごとに必要な説明をした。
学園長から更識がどんな組織のかはもう聞いている事。
シャルル・デュノアがデュノア社のスパイであることが高い事。
その上で、骨格から判断して女性である可能性もある事。
でも、スパイ行為は本人の意思では無い可能性もある事。
「なるほど、つまりデュノア社の調査をすればいいんですね」
「はい、お願いできますか?」
「分かりました。元々デュノア社には黒い噂が多いので、更識内でも調査する案が出ていたんです。この調査はお引き受けします」
「ありがとうございます」
頭を下げながらそう言う。
そして暫くしてから頭上げる。
「では、次に聞きたい事なんですけど...学園長、現物はまだありますか?」
「はい、少し待っていてください」
学園長はそう言うと、学園長室に置いてあるロックが掛かった棚の中から袋に入っている例の盗聴器を取り出すと、そのまま楯無さんに見せた。
「あの盗聴器、何か知ってますか?」
「いや、初めて見た奴ですけど....何ですか、あれ?」
「.....4月の始め、俺が使用している教員寮の部屋に仕掛けられていたものです」
「「「「えっ!?」」」」
俺の言葉を聞いた学園長以外の4人が、そう驚愕の声を発する。
「操さん、本当なんですか!?」
「ああ、初日に一応調べてみたらあったんだよ。あの時調べてなかったら、この量の盗聴器からいろいろ聞かれていたことになる」
簪の疑問に、そう返答する。
しかし、今自分で言っておいて何だが恐ろしいな...
「犯人に心当たりは無いの~~?」
「...正直、暗部の話を聞いたから楯無さんも怪しいと思ってた」
「ま、まぁそれはしょうがないです」
「でも、今違う事が分かったから、残りの怪しい人は...」
「織斑先生、ですね」
俺の言葉に続くように、学園長がそう言葉を零す。
その言葉を聞いた4人は、また驚いた表情を浮かべていた。
まぁ、それは当然だろう。
俺や学園長は織斑先生のいろいろ面倒な行為を知っているが、他の人達はそれを知らないのだ。
その為、ブリュンヒルデでもある織斑先生が怪しいと聞いたら驚くに決まっている。
「ほ、本当なんですか?」
「はい、みなさんは知らないかもしれませんが、織斑先生は今年に入ってから何処かおかしいのです」
「如何やら、何年か前に亡くなった弟さんと俺の顔が似ているらしい。それで、勘違いをして俺に迫ってきているんだ」
「織斑先生の弟さんは、織斑春十君なのでは?」
「それが、かつてはもう1人おられたようなのです。確か名前は...織斑、一夏君ですね」
学園長がそう言うと、4人がはぁ~~、と頷いた。
...織斑一夏は、過去の俺なので何となくこそばゆい。
でも、門藤操と織斑一夏は違う。
だから気にしないことにしよう。
「なるほど、それで織斑先生が怪しいんですね」
「はい、しかし確定的な証拠は無いので、何も出来ないんですよね」
虚さんが呟くように言った言葉に、学園長が同調する様に頷く。
「ま、まぁ!取り敢えず重い話はここまでにしましょう!」
何となく重苦しい雰囲気になったのでそう声を発する。
いや、もとはと言えば俺が言った事なのだけれども。
でも、折角簪と楯無さんが和解した後なのだ。
重い話はここまで!
「学園長、今日は場所をお借りして申し訳ありませんでした」
「いえいえ、気にしないで下さい」
「「「「「失礼しました」」」」」
最後に学園長とそう短く会話した後、5人纏めて学園長室から出る。
「お腹空いた~~」
その瞬間にのほほんさんがそんな事を言うので、思わず苦笑いを浮かべてしまう。
「じゃあ、食堂で何か食べようか」
「そうしましょう、偶にはケーキでも」
「ケーキ!食べよ~!」
簪と虚さんが言った事に、のほほんさんが心底嬉しそうにそう反応する。
「操さんは如何しますか?」
「折角だから食べようかな」
「分かりました」
簪はそう言うと、楯無さんの前に近付き、
「お姉ちゃん、行こ?」
と手を差し出しながら言う。
「ええ、行きましょう!」
楯無さんは笑顔でそう返答すると、簪の手を掴み食堂に向かって歩いて行った。
「もう心配はいらないな」
「そうですね」
「じゃあ、私達も行こう~~!」
1歩遅れて、俺と虚さんとのほほんさんも食堂に向かって歩き出すのだった。
操は1年生だから楯無たちに敬語を使うけど、操の方が年上だから楯無たちも敬語を使う。
おかしくないのに、何となく変に感じる。
次回も何時になるか分かりませんが、楽しみにしていてください!
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