今回もお楽しみください!
操side
シャルロットは泣き止むのに、大体20分くらいかかった。
泣き止んだシャルロットは顔を上げて生徒会室備え付けとティッシュで鼻をかんだ後、俺に視線を戻す。
「え、あ、そ、その、ごめんなさい!」
すると、急に何故か謝って来た。
視線を自分の身体に向けると、シャルロットの涙でスーツが濡れてしまっていた。
「いやいや、気にしないでよ」
確かに、スーツはシャルロットの涙で結構濡れてしまっている。
でも、こんなの全然気にならない。
だってシャルロットが心を開いてくれたんだから。
例えそれがほんのちょっとだったとしても。
最悪の事態にはならなかった。
それだけで良いじゃないか。
「さて、みなさん入って貰って良いですよ」
扉に視線を向けながらそう声を発する。
それにつられてシャルロットも視線を扉に向ける。
だが、暫くしても扉が開くことは無かった。
アレ?おかしいな...
「入っても良いですよ?」
もう1度そう言うも、やはり反応が無い。
如何したんだろう...
もしかして、長く話し過ぎて帰った?
そう思い時間を確認する。
話し始めてからもう45分も経っていた。
う、帰られてても不思議では無い...
少し不安になったので立ち上がって扉の前に移動する。
「...気配は感じる」
勘違いでは無い。
確かに扉の前に6人分の気配を感じる。
6人って事は、ラウラ、簪、のほほんさん、楯無さん、虚さん、学園長かな?
扉の前にいるなら、なんで入ってこないんだ?
そう疑問に思いながら扉を開ける。
「え、あ、ちょ!?」
「......如何しました?」
扉を開いたら、そこには予想通りの6人がいたのだが...
何故か全員が泣いていた。
「あう、そ、その...」
「あの、その、だなぁ...」
簪とラウラがそう口を開いて、口を閉じるを繰り返している。
本当に如何した?
そう考えていると、虚さんが口を開く。
「...操さんとデュノアさんの会話を聞いて、少しウルッと来てしまいまして...」
「......したんですか」
正直、そんなに聞いてる人を泣かせるようなことを言った気はしない。
ただただ俺の考えてる事を言っただけだ。
偽善だのなんだの言われようとも、俺の本心を只話しただけ。
それだけなんだけどなぁ...
「まぁいいや、取り敢えず入って下さい。シャルロットも待ってます」
「そうだね、入ろ~」
のほほんが頷いたのを確認したので、生徒会室の中に戻る。
俺の後ろではまだ泣いたあとが残っている楯無さんが消そうといろいろしていたが、結局消えなくてそのまま入って来た。
「え、あなた達は...」
「しっかりと顔を合わせるのは初めましてですね。IS学園学園長、轡木十蔵です」
「初めまして、シャルロットちゃん。IS学園生徒会長の更識楯無よ」
「えっ...!?」
学園長と楯無さんの自己紹介を聞いたシャルロットはそう驚きの声を発する。
まぁ、今まで会った事が無かった学園長と生徒会長に急にあったら驚くに決まってる。
それに、今は状況が状況だし。
そんな事を考えながら全員分の紅茶とコーヒーを準備する。
う~ん、と...俺と学園長がコーヒーで、残りの人達が紅茶でいいか。
そう判断し準備を進めているうちに、虚さんや簪もシャルロットに簡単な自己紹介をしたようだ。
「紅茶とコーヒーです」
「あ、ありがとうございます」
「ありがとぉ~ございま~す」
俺から紅茶とコーヒーを受け取ったみんなは飲み始める。
...俺の座るスペース無いや。
少々行儀が悪いが立って飲むしかない。
「あ、美味しい。操さん、紅茶淹れるの上手なんですね」
「そうですかね?自分では良く分からないんですけど...」
「謙遜する事は無いですよ。コーヒーもとても美味しいです」
「...ありがとうございます」
虚さんと学園長が言うならそうなんだろう。
「さて、じゃあシャルロットちゃん。美味しい紅茶と共に楽しいお話をしたいんだけど...そうはいかないのは分かってるわね?」
「...は、はい」
楯無さんがさっきまで涙だだ流ししてた人と同一人物とは思えないほどの真面目な雰囲気でそう言う。
それにつられシャルロットの表情も固いものに変わる。
「スパイ行為は未遂、そしてそれは本人の意思では無かった。それでも、罰則がある事に変わりが無いのは理解してるかしら?」
「それは...はい、理解しています」
「ならデュノアさん、デュノア社とのやり取りは記録として残っていますか?」
「記録として...ですか?」
学園長が言った事に、シャルロットが疑問の声を発する。
「ああ、例えば送られてきた指令書だったり、通話での音声データだったり、スパイ計画書だったり...とにかく、スパイ行為が本人の意思ではない事を証明できるものが欲しい」
「操さんの言う通りよ。証拠が無いと、デュノア社からシャルロットちゃんが勝手にやった事と切り捨てられてしまう可能性があるわ。だから、絶対に証拠は欲しいの」
俺の説明に楯無さんが補足を付け加えると、シャルロットは考えるように額に手を当てた。
パッと出てこないって事は、つい最近にそう言うものは無かったという事...
あってくれ...!
「あ、そうだ!」
シャルロットは突然がばっと顔を上げそう声を発した。
「会社との通信機器は、自動録音機能が付いていたはず!」
「それに、シャルロットちゃんの意思が関係ない内容は入ってるの?」
「はい、僕は1回拒否を言って怒鳴られた記憶があるので...」
「なるほど、それなら大丈夫ですね」
シャルロットの返答を聞いた虚さんは安心したようにそう声を発した。
それにつられて楯無さん達も少し表情を緩める。
でも...
「......妙だな」
『えっ?』
俺の呟いた言葉に、学園長を除く全員が呆気に取られたかのような声を発する。
「わざわざ通信機器に自動録音機能を付ける必要がある?」
「ええ、こうなった場合の事を想定していなかったのでしょうか...」
俺の呟きを肯定するように、学園長が呟く。
そう、わざわざ通信機器に自動録音機能だなんてものを付けておくメリットが感じられないのだ。
「それは...後でもう1度確認するためではないのか?」
「後で確認が必要なら文章で送ればいい。しかも、シャルロットの言ってた内容的に確認が必要とも思えない...」
ラウラの言葉を否定すると、この場の空気が少し重くなる。
...もしかして。
「なぁ、その通信機器を用意したのは誰だ?」
「え、お父さんですけど...」
なら、なら...!
「......なら、もしかして、シャルロットを守るためだったのかもしれない」
「......え?」
「社長本人は、これに反対だったのかもしれない。だから、せめて娘が誰かに助けてもらえるように証拠を残せるようにしたのかもしれない」
俺がそう言うと、全員が驚きの表情を浮かべる。
まぁ、それはそうだろう。
だってシャルロットの話を聞く限りこういう行動はしなさそうだから。
でも、俺はその可能性があると十分思ってる。
だって、血の繋がりのある子供の事を考えない親はいないだろうから。
親は子供の事を支えるためにいるんだから。
「...まぁ一先ず、そこの議論は置いておきましょう。じゃあシャルロットちゃん、その通信機器を持って来て頂戴な」
「はい、分かりました」
「それを使えば大丈夫だと思うけど、他にも証拠は欲しいわ。だから、私達がデュノア社に関して根掘り葉掘り調べるわ」
「え、会長さんが...ですか?」
「ええ、操さんが言っていた情報屋は私達の事よ」
楯無さんがウインクしながら言った言葉に、シャルロットは驚きの表情を浮かべる。
まぁ、生徒会長がそういう事をしていると知ったら驚くに決まっているか。
「ですが、その調べている間デュノアさんの身柄をどうしましょうか。このまま学園で生活をしていると他の生徒にもバレる可能性があります」
「なら、更識の屋敷で保護したらどうでしょうか。ねぇ、お姉ちゃん」
「ええ、そうね。幸いにも屋敷にはあまりの部屋があるし、不自由なく生活できるわ」
「なら早速連絡をしておきます」
「虚ちゃん、お願いね」
流石虚さん、仕事が早い。
もう既に生徒会室から出てるし。
「そうなりますと、学園は1度休学扱いにしておきましょう。理由は後で考えておきます」
それで良いのか学園長。
まぁ、良いか...
「フム、それは良いのだが織斑春十は如何するのだ?同室なんだろう?」
「それは~、今日最低限の荷物をもってぇ~、そのまま黙って出て~、そして朝のSHRで病院に言ってるとかでっち上げれば良いんじゃな~い?」
「その喋り方とは合わない内容だ」
ラウラのその言葉に思わず苦笑いを浮かべてしまう。
まぁでも、それが良いか。
「お嬢様、準備完了との事です。直ぐにでも迎え入れられると」
「分かったわ。シャルロットちゃん、善は急げっていうし、早速荷物を回収しましょう。織斑君に見つかる前にね」
「分かりました」
そうして、直ぐにでも行動する事が決まった。
まぁ確かに、織斑春十に見つかると面倒くさいからな。
「デュノアさん、今後更識生徒会長たちが情報を掴んだらデュノア社は崩壊します。それと同時にあなたも裁判にかけられるでしょう」
「......はい」
「ですが、デュノアさんは私達の大事な生徒であることに変わりはありません。たとえIS学園を強制退学になっても、私達はあなたのサポートをします」
「そうよ。それに、何ならずっと私達の屋敷で生活しても良いのよ?そうなったら、お掃除とかのお仕事をしてもらう事になるけどね♪」
学園長と楯無さんが次々とそう言う。
...これは俺も言わねぇとなぁ。
そう判断したので、シャルロットに少し近付き、また頭を撫でる。
「如何いう結果になっても、俺達が味方な事に変わりはないから。心配しないで。全部が終わったら、釣りにでも行こう。楽しいからさ」
そう言ってから笑顔を浮かべると、シャルロットは暫く呆けた表情を浮かべた後
「...はい!」
と笑顔になって返してくれた。
...こんなにも良い笑顔を浮かべてくれるなら、もう大丈夫だろう。
「じゃあ行きましょう。モノレール駅までは付いて行くわ」
「私も同行します」
「あ、ありがとうございます」
そうして、3人は立ち上がる。
「みなさん、今日はありがとうございました...!!」
最後にシャルロットは頭を下げながらそう言うと、楯無さん達と共に生徒会室から出て行った。
「...じゃあ、俺達も解散しようか」
「そうですね、みなさんお疲れ様でした。私は仕事が残っているのでこれで失礼します」
学園長は1足早く帰って行く。
って言うかまだ仕事あるのか...
お疲れ様です...
「...食堂でご飯食べようか」
「そうしよ~」
そうして、俺達残った4人は食堂に向かって歩いて行く。
「みんな、今度のトーナメント頑張ってね」
「当然だ!」
「勿論です!まだ完成はしてないですけど、丁度このトーナメントで私の最新データが揃ったら後1歩!全力で頑張ります!」
「私も~やるときはやりますよ~!!」
三者三様の答えが返って来る。
これは、どんな戦いになるのか楽しみだな。
そんな事を考えながら、歩いて行くのだった。
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三人称side
シャルロットとの会話から暫くたち5月末。
今日はとうとう学年別トーナメントの初日だ。
参加をしない操と体調不良の数人以外の生徒達は全員朝からテンションMAXで気合いを入れていた。
シャルロットはあの会話をしたその日のうちに学園からこそっと出て更識の屋敷に移動していた。
当然同室の春十はシャルロットがいない事、そして荷物の一部が無くなっていたことに非常に取り乱していた。
そして、次の日の朝のSHRでシャルロットは体調が悪くなったので暫くの間学園を休むことが告げられた。
この事を聞いた春十は
「ふざけんなよ..ふざけんなよ!シャルが暫く休む?そんなの原作になかっただろうが!まだ正体バレイベントも起こって無いだろうが!」
と、再び1人部屋になった自室で叫んでいたとかなんとか。
そして、楯無たち更識家が行っているデュノア社調査。
1週間も経過していないのに叩けば叩くほどにいろいろ不正の証拠が出て来ているようだ。
幹部の横領、違法取引、掲示詐称等々。
もう黒も黒、真っ黒だった。
今まで1つも露見してこなかったのが不思議なくらいには証拠が出て来ていた。
その中には当然、今回のスパイ計画の計画書、それに加えシャルロットに対する扱いの酷さを証明するものまで出て来た。
これでもう言い逃れは出来ない。
後はこれをフランス政府や国連に告発すればデュノア社には正式に捜査が入るだろう。
だが、学年別トーナメントでバタバタしている学園の事を考慮し取り敢えず調査を続けながらタイミングを見計らっているとの事だった。
更識の屋敷で保護されているシャルロットだが、屋敷でのびのびと生活をしていた。
もともと田舎で母親と2人きりで過ごしていたシャルロットの家事能力は高く、屋敷での掃除や料理を手伝いながら生活をしている。
屋敷のお手伝いさんと共に笑いながら過ごしているシャルロットには、もうこれ以上の心配はいらないだろう。
そして、今IS学園では
「フム、私は初戦か」
「そうみたいだな」
操たちが学年別トーナメントの対戦組み合わせを確認していた。
「そしてラウラの対戦相手は...」
「......織斑、春十」
そう、初戦のラウラの対戦相手。
それは春十だった。
「ラウラなら大丈夫だろ、勝てるさ!俺でも織斑春十に勝てたんだしな!」
「操と比べるな!...まぁでも、そうだな。私は私の全力を出すだけだ!」
ラウラは口元に笑みを浮かべながらそう言う。
「私も結構序盤...対戦相手は、ティナ...」
「ティナか...ティナは2組の中でもかなりの実力者だからな...いけるのか、簪?」
「当然です!私の全力でぶつかるだけです!」
操の言葉に簪は気合十分と言った感じでそう返答する。
「私の相手は~、キヨキヨカぁ~。全力で頑張るぞぉ~!!」
「本音、それいまいち気合いを感じない」
「かんちゃん!?それは酷いよぉ~!」
本音の間延びした喋り方に簪がツッコミを入れ、本音がそれに反論する。
その少しコミカルな様子に操とラウラは微笑を浮かべる。
「じゃあ、俺はそろそろ観客席に行くから。みんな、頑張ってね!」
「ああ、私の戦いを見ていろ!」
「頑張ります!」
「頑張るぞぉ~!!」
そう会話した後、操は観客席に向かっていった。
残ったラウラ達はISスーツに着替えるために更衣室へと向かっていった。
もう直ぐで、学年別トーナメントの幕が開ける...!
〈...さぁ......コンテニューだぁ.........〉
Q ISなのに恋愛要素が殆どないのはどうして?
A 操は23歳だし、もう既にリリアンという恋人がいるからさ!
次回も何時になるか分かりませんが、楽しみにしていてください!
評価や感想、誤字報告何時もありがとうございます!
今回も是非よろしくお願いします!