今回もお楽しみください!
三人称side
「クソ!クソ!何なんだよぉ!!」
操とラウラが医務室で会話しているのと同時刻。
IS学園の生徒寮、春十の部屋で。
春十はそう言いながらベッドの事を殴っていた。
「クソ!クソ!クソォ!!」
春十は最後に思いっきりベッドを殴り、はぁはぁと肩で息をする。
そうして春十はベッドの縁に腰掛けると、そのまま頭を抱えるような体制になる。
「なんでだよ!なんでだよ!暴走が全然原作と違うじゃねえかよぉ!」
春十は、ラウラの暴走が原作と違う事に苛立っていた。
原作でのラウラの暴走はVTシステムに飲み込まれて起こった事だった。
黒いドロドロとしたものに巻き込まれ、千冬の専用機だった暮桜を模倣したものになっていた。
だが、今回ラウラはレーゲンから溢れたメダルに飲み込まれ、白い化け物になった。
「それに、なんで俺が活躍出来なかったんだよ!結局門藤操に良いとこどりされたじゃねえか!」
良いとこどりでは無く、そもそも操が行かなければラウラは助かっていなかったし春十は何も出来ていなかったのだか、春十にそれは理解できない。
だから何時まで経っても何も変わらないのである。
「クソ!クソォ!!鈴は学園からいなくなって、箒とセシリアは停学になって!その上シャルは惚れさせる事も出来ないまま入院して!ラウラは門藤操に取られた!どうなってるんだよ!俺は神に選ばれた転生者だろ!なんで俺の思う通りに事が進まねぇんだよ!俺は主人公だろ!」
春十はそう言うと、自分が座っているベッドの事を殴る。
ギシッ...
ベッドに入ってるスプリングがそう悲鳴を上げるも春十は特に気にしていない様だった。
「まだだ、まだだ!もう直ぐ7月には臨海学校がある!その前には箒とセシリアも学園に復帰し、シャルも退院してる!そうして、臨海学校では銀の福音の暴走事件がある!そこで今度こそ俺が活躍するんだ!そして俺が主人公だと証明するんだ!そうすれば、シャルもラウラも俺に惚れる!そうして俺はハーレムを作るんだ!!」
春十はそう叫ぶと、そのまま立ち上がって窓に近付き外を見る。
そうして、何処か虚ろな目をしながら
「俺が主人公だ。俺は主人公だ。俺は主人公だ。俺は主人公だ。俺は......主人公だ」
そう、狂ったように呟くのだった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ラウラの暴走事件から暫くたった6月のある日の昼休み、生徒会室で。
「はい、みなさんの分のお弁当です!」
操は作ったお弁当を手渡していた。
「ありがとう」
「ありがとうございます!」
「ありがとぉ~ございまぁ~す!!」
「ありがとうございます♪楽しみ!」
「わざわざ私にまでありがとうございます」
その相手はラウラ、簪、本音、楯無、虚の5人だった。
何故生徒会室で操が弁当を5人に渡しているのかというと、操が
「みんなに手作りのお弁当食べてもらいたい!」
と言い、楯無が
「折角ですからご飯食べながら談笑会でもしましょう!」
そう言ってそれに乗り、場所として生徒会室を使用する事になったからだ。
操からお弁当を受け取った5人はそのまま包みを解き、弁当箱の蓋を開ける。
その瞬間、
ビシッ
そんな擬音が聞こえてきそうなほど、全員が固まった。
「...?如何しました?」
操は固まった5人を見て不安そうな表情を浮かべる。
自分の作ったお弁当を見た人が固まったら誰だって不安になるだろう。
だが、5人が固まるのも無理はない。
それは何故か。
「......なにこの見るだけで美味しいお弁当!?」
そう。
お弁当の完成度があまりにも高いからだ。
白米におかずが数品のオーソドックスなお弁当。
おかずの彩は良く、食欲をそそられる。
そして、白米もおかずも丁寧に作られているのが1目で分かるほど綺麗だった。
このお弁当を23歳成人男性が作ったという事実が、5人の女心を抉ったのである。
「あ、ありがとうございます」
先程の楯無の驚愕の声を素直に称賛の声だと受け取った操はそうお礼を言いながら自分の分のお弁当を開ける。
「さて、じゃあいただきます」
「「「「「いただきます」」」」」
操の声に続くように、5人はそう言う。
そうしておかずの1つであるミニハンバーグを箸でつまむと、そのまま口に放り込む。
その瞬間。
ビシッ!パリィン!
今度は何かが砕けるような擬音が聞こえてくるように5人が固まった。
「ど、如何したんですか?」
操は再び心配そうにそう呟く。
「「「「「ま、負けた...」」」」」
「???」
5人が呟いた事に操は首を捻る。
だが、5人がそう呟くのも無理はない。
固まってしまうくらいには、操の料理は美味しかった。
素材の味を生かすための薄味、だけれども物足りないという訳では無く、寧ろ素材の味を高めて濃厚な味を生み出している。
そんなお弁当を食べたことにより5人のプライドは打ち砕かれた。
「ここまで、とは...」
「負けた...」
「これには勝てないよぉ~」
「料理にはそこそこな自身があったのだけど...」
「これに勝とうとするのは、寧ろばかばかしいですね...」
「???」
5人はそう呟きながらも箸は止まらない。
箸を止めていられない程美味しいという事なのだろう。
操はそんな5人の様子に首を傾げながらも、自分のお弁当を食べ進める。
(う~ん、もう少しだけ塩入れた方が良いかな?でもそうすると素材の味薄れちゃうんだよなぁ...まぁ、今度やってみよう)
そうして、そこから暫くの間6人はお弁当を食べながら談笑をしていた。
「いやぁ、ラウラが無事で本当に良かったよ」
「そうだな。もう運動や訓練をしても問題ないという事だ」
操の言葉にラウラが自分の身体を見下ろしながらそう返答する。
一時は身体を動かすだけで激痛が生じていたラウラだが、月も変わった事で以前までと変わらない生活が出来るくらいまでしっかりと回復していた。
「それに、我が国は多少の責任を負う事になったが全然問題ないしな」
「なんでだろうね?」
「操がいるからに決まってるだろう」
「そうなのかな?」
そう、ラウラと操の言う通り、ドイツは今回の暴走の件で責任を負う事になり世界各国からの経済制裁を受ける事になったのだが、それはそこまで深刻なものでは無かった。
それもこれも、操がドイツ国籍だからだろう。
圧倒的な戦闘力を持つ男性IS操縦者がいる国に対して強気に出れないのだろう。
「まぁ、レーゲンも手元に戻って来たしもう問題無いだろう」
「専用機と言えば、簪の専用機ってどうなったの?」
操のその言葉を受け、全員の視線が簪に向けられる。
簪は急に視線を向けられた事に驚きつつもそのままその質問に返答する。
「もう機体自体は完成してて、後は演算処理機器が出来れば良いんですけど...それが難航してて......」
簪は言い終わった後少し俯いてしまう。
「かんちゃん、最近ずっと計算してるんだけど全然上手く行かなくて...」
「でも、あと少し、ほんのあと少しなんです」
「簪ちゃん、大丈夫?お姉ちゃんが手伝ってあげようか?」
「手伝ってくれるのならお姉ちゃんより虚さんが良い」
「ちょっと!何でよ簪ちゃん!お姉ちゃんが信頼できないの!?」
「信頼できないんじゃなくて、もっと単純に整備課の虚さんの方が頼りになる」
「なら私が参加しても良いじゃない!」
「生徒会の仕事、如何するの?」
「あっ......」
簪に言われて、楯無は固まった。
完全に忘れていたんだろう。
そんな楯無を見て操とラウラは苦笑浮かべる。
「そういう訳だから、本音、虚さん、手伝って」
「もちろ~ん!!」
「当然です!生徒会の仕事はお嬢様に一任しましょう!」
「チョッと虚ちゃん!虚ちゃんまでそんな事言うの!?」
「「...ハハハハハ!」」
「操さんにラウラちゃん!声を抑えながら笑わないで下さい!」
遂には耐えられなくなった操とラウラが笑い声を漏らすと楯無が必死の形相でそう叫ぶ。
すると
「「「「「アッハハハハハ!!」」」」」
このやり取りに耐えられなくなった楯無以外の5人が声を出して大笑いする。
「むぅ~~!!」
そんな5人の反応を見て、楯無は不満を覚えたのかそう頬を思いっ切り膨らませながらそう唸る。
それを見て更に5人は爆笑する。
「楯無さん、もう完全に簪に負けましたね」
「ううううう...簪ちゃんの成長は嬉しいけど、こう手玉に取られるのは...」
「手玉に取って無いよ。お姉ちゃんが勝手に取られてるって言うか、私の手の中に勝手に入って来ただけだよ」
「ぐふっ!?」
簪に心を抉られた楯無は地面に両手をつき身体を震わせる。
「おおお~~、かんちゃんが凄い成長してる~~~」
「成長したのかな?」
「ハハハ、してると思うよ?前までだったら楯無さんにそこまで言えて無かったと思うし」
「はい、操さんの言う通りです。簪様はかなり成長していらっしゃいます。これからも自信をもって下さい」
「操さん、虚さん......そうですね、これからも頑張ります!!」
操と虚に言われて自身が付いたのか、簪は眩しい笑顔を浮かべる。
「お~、楯無様が地面に突っ伏してる~~」
「昼食を食べたばかりだし消化に悪いんじゃないか?」
本音とラウラは、そんな会話を聞いてもう完全に地面に倒れた楯無を見てそう感想を漏らす。
「楯無さん、いくら生徒会室が綺麗に掃除されてるとはいえそこら辺はさっき歩いた所で汚いので顔をあげてください」
「うぅううううう...操さんのお弁当に女としてのプライドを砕かれ、簪ちゃんには心を抉られ......」
楯無は幻覚の涙が見えるくらいのテンションで立ち上がりながらそう呟いた。
「そう言えば、お弁当箱返してください。まだまだ使い回すので」
「あ、忘れてました。お弁当ご馳走様でした!美味しかったです!」
「ごちそ~さまでした~!ありがと~ございました~!!」
「ご馳走様でした。とても美味しかったです」
「ご馳走様。かなり美味しかったぞ」
「ううううう......ご馳走様でした」
操がお弁当箱を回収しようとすると、各々感想を言いながら操にお弁当箱を返していく。
ショックを受けていた楯無も何とかといった感じで操にお弁当を返す。
「お粗末様でした。喜んでくれて良かった!」
操は素直に笑顔でそう返事をすると、そのまま自分の分のお弁当箱を含め6個のお弁当箱を包みに仕舞う。
「お嬢様、そろそろ立ち直って下さい。みっともないですよ」
「みっともないって言わないで!!」
虚に言われた楯無は今度はがばっと少し元気を取り戻したかのようにそう反論する。
「いや、みっともないよお姉ちゃん。いつまでも引きずるだなんて」
「簪ちゃぁあああん!!なんでそんなこと言うのぉおおおおお!?」
「...なぁ、操」
「如何した、ラウラ」
楯無が嘆いているのを見たラウラが操に話し掛け、操はそれに反応する。
「あの人が本当に生徒会長で、暗部の長なのか?」
「ああ。あの妹や従者に心を抉られているのが、我らがIS学園の生徒会長にしてデュノア社の闇を暴くことも出来る力を持った暗部の長、更識楯無さんだ」
「操さん?馬鹿にしてませんか?」
「してませんしてません」
楯無は操に詰め寄る形で質問し、操は首を振りながら否定する。
「まぁ、それなら良いんですけど」
楯無は違和感のない操の様子にそう納得すると、そう引いたのだった。
そうして暫くの間、生徒会室を静寂が支配する。
が、
「ぷっ、あはははは!」
「はっはははははは!」
楯無と操が同時に吹き出し、それにつられ他の4人も笑みを浮かべる。
「さぁ、まだまだ昼休みはあるんだし、もう少しお話でも...」
ピピピピピピピピピ
楯無の言葉は、そんな電子音によって途切れた。
その音を聞いた楯無と虚の表情は今までの緩やかな物から一気に険しいものに変わる。
そんな2人を見た操たちもつられて真剣な表情になる。
「お姉ちゃん、もしかして」
「ええ。更識家からよ」
楯無はそう言うと電子音が鳴っている端末を手に取りそのまま生徒会室の隅の方に移動する。
「楯無よ。......ええ、分かったわ。ええ、それで?...なるほど、そうなっちゃうか。身柄は?......ええ、分かったわ。じゃあそういう風に手配して。ええ...じゃあ、よろしく」
通話を終わらせた楯無はそのまま通信端末を仕舞い、操たちの近くに戻って来る。
「お嬢様、内容はいったい?」
「デュノア社に関する事よ」
「「「「「!!!」」」」」
その言葉を聞いた5人は一斉に表情を驚きのものに変えた後、真剣な表情に変える。
「楯無さん、今、聞いても?」
「はい。じゃあ説明しますね」
操の言葉に頷いた楯無はそのままソファーに座り直す。
そうして、説明を開始した。
「私達が入手したデュノア社の情報。それをフランス政府、並びに国際IS委員会、国際連合に報告しました。その結果、近々デュノア社には強制捜査が入るとの事です」
「そうですか...」
「はい。強制捜査に乗り出たらニュースにも報道されるでしょう。そして、社長や社長夫人、幹部の人達は逮捕される可能性が高いです」
「......シャルロットは、どうなりますか?」
「確実に専用機は国に返還、代表候補生は辞めさせられることになります。その後は...国際社会や、調査機関の判断になるので私達には分かりません」
それを聞いた全員は少し表情を重いものにする。
折角救われたシャルロットがこの先どうなるのか分からない。
つまり逮捕される可能性があるというのが、全員の顔を暗くしているのだ。
事実、話をしている楯無も表情は重い。
「シャルロットちゃんの身柄はまだ家で保護できるみたいですが、引き渡しの話になったら素直に引き渡すしかありません」
「それはそうですね...仕方のない事ですが」
楯無の言葉に、虚がそう返す。
先程までとは異なる静寂が生徒会室を支配する。
「......取り敢えず、生徒会室から出ましょうか」
「そうだな。もう直ぐ昼休みも終わるしな」
操の言葉にラウラが同調し、残りの4人は時計を確認する。
すると確かに、昼休みがもう直ぐで終わる時間だった。
その為6人はそのまま自分の荷物を持ち生徒会室から出る。
「操さん、今日はお弁当ありがとうございました」
「では、また」
「はい、また」
そうして学年が違う楯無と虚とは分かれ、残った4人は1年生の教室に向かう。
「......そう言えば、もう直ぐ臨海学校ですね」
「あああ~!!そうだった~!!忘れてたよぉ~~!!」
その道中、簪がそう呟き本音がそれに反応する。
臨海学校。
学園では出来ない実習を行う事を目的とした校外実習で、花月荘という旅館に2泊3日で泊まり様々な実習をするのである。
実習という名目だが1日目は完全自由であり、海で遊ぶ事も可能なのである。
「あ~、なら準備の買い物しないとな」
「フム、ならば今度全員で買い物に行くか?モノレールの駅の近くには、確か商業施設があるんだろう?」
「うん。レゾナンスっている大型総合施設があるね。多分、水着のお店とかもあると思う」
「じゃあ買い物行こ~!!」
その会話を聞いた操は視線を少し泳がせる。
「あー、俺は個人的に...「行くんですよね?」...はい」
そうして、何となく簪に手玉に取られながら操はそう反応する。
(あれ?成長し過ぎじゃね?)
(なんか~、成長し過ぎな気がする~)
(聞いてた人物の印象と違うぞ?)
簪の何となくの成長を感じた3人は内心そう考えながら簪を見る。
簪は3人の視線に気が付かないようにそのまま歩く。
「それじゃあ、また後で」
「ああ、また後で」
そうして簪と別れ3人は1組の教室に入っていった。
(...重い話は有ったけど、漸く平和だった気がするな。買い物...なんだかんだで楽しみな自分がいる)
操はそんな事を考えながら自分の席に座るのだった。
平和だなぁ。
......ヘイワダナー。
次回も何時になるか分かりませんが、楽しみにしていてください!
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