そして4場面あるので1場面分は短いです。
今回もお楽しみください!
三人称side
「......帰って、来るのか」
操たちが買い物に行っているのと同日。
生徒寮の寮長室にいる千冬は呆然とそう呟いていた。
千冬の視線の先にはカレンダーがあり、今日の日付から3日後に赤丸がしてあった。
その赤丸がしてある日。
その日はイギリスに帰国しているセシリアがIS学園に帰ってくる日であり、拘束室にて生活している箒が解放される日でもあるのだ。
「しかし、鈴は...!!」
千冬は悔しそうにそう呟くと拳を握り込んだ。
他2人と違いもう既に退学が決定している鈴はもうIS学園に...いや、日本に帰って来る予定は無いのだ。
クラス対抗戦での違反行為に加え、脅しの容疑。
そんな危険人物がIS学園にいられる訳が無い。
今のところはまだ中国からもIS学園からも鈴が代表候補生の資格と専用機の剥奪、並びにIS学園退学は発表されていないものの、もう直ぐ公表のタイミングなのは千冬でも理解しているのだ。
「クソ...!!何故周りの奴らは私と春十の邪魔をするんだ...!!」
千冬はそう恨めし気に言うと壁を殴った。
「クソ、クソ、クソ...!!春十にとって必要な人間はIS学園からいなくなったり、専用機を奪われたり...そして、一夏は私の所に帰ってこない...!クソ、クソォ!」
千冬はそう叫んだあと足の踏み場もないくらい散らかっている室内を移動する。
そうして台所に着いた千冬は洗ってあるのかも怪しいコップを手に取ると水道から水をコップに注ぎ一気に飲み干す。
「はぁ、はぁ...クソッ!」
乱雑にコップを置いた千冬は誰もいない空中を睨みながらそう言葉を絞り出した。
そうしてベッドまで移動し縁に腰掛けた千冬は考え込むように頭に手を置いた。
「何故、何故私の思う通りに物事が進まないんだ...!!」
千冬は奥歯をギシギシ言わせながらそう呟く。
自分の思い通りにならない事の方が多いというのは誰しもが分かっている筈の事。
それに、教員である千冬は尚更知っていなくてはならない。
それなのにも関わらず、千冬はまるで幼稚園児の様な事を考えている。
いや、ブリュンヒルデという名誉称号を持つだけの実力があり、女尊男卑の狂信者たちなどにはかなりの発言力があるだけ幼稚園児よりたちが悪い。
「クソ...!何故一夏は私の所に帰ってこないのだ!姉と兄のいる場所に帰って来るのが普通だろう!」
操本人が自分は千冬の弟ではないと言っているのだが、もはやそれは千冬には届いていないらしい。
自分の考える事が真実だと思い込み、そうして構築した自分の妄想の世界の通りに行かない事に苛立っている。
妄想の世界は、自分の都合のいい事しか起こらない。
現実の世界では自分の都合の悪い事も勿論起こる。
だから自分の思い通りに物事が進まない方が普通なのである。
そんな当たり前の事を、千冬は理解しきれていない。
「誰が一夏を騙し、洗脳しているんだ...!今すぐにでも見つけ出して懲らしめないと...!」
千冬は開いていないカーテンの方を見ながらそう呟く。
その表情は、口元に笑みを浮かべながらも狂気を含んでいるものだった。
「一夏を私のもとに連れ戻す...そうして家族3人で幸せに暮らすんだ.......」
呆然とそう呟く千冬は、如何見ても狂っていた。
コンコンコンコン
此処で、唐突に寮長室の扉がノックされた。
『織斑先生。もうそろそろ臨海学校に向けた1年生職員会議が始まりますよ?』
そうして、部屋の外からそんな真耶の声が聞こえてくる。
それを聞いた千冬は視線はカーテンから扉に向けられる。
「ああ、すみません...今から準備するので、先に会議室に向かって下さい」
『分かりました。絶対に来て下さいね』
そんな声の後に足音が聞こえる。
そうして、部屋の前から気配が完全に消えてから千冬はベッドの縁から立ち上がるとそのままこの汚部屋の中ではかなりマシな場所からスーツを引っ張り出してくる。
けだるげに着替えた千冬は散らかっている床から会議に必要な書類を引っ張り出すと寮長室の外に出る。
扉に鍵を掛けた千冬は視線を上げると会議室に向かって歩き出す。
「春十、一夏...お前たちの事は、姉である私が何とかするからな...!!」
千冬は、未だに狂った表情のまま、そう呟くのだった。
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「ふぅ...」
IS学園、学園長室。
今日も休みなく仕事をしている十蔵は目元を抑えながらそう息を吐いた。
十蔵の隣の机には、処理済みの書類の山が3つほど出来ていた。
しかし、もう反対側の机には未処理の書類の山が5つあった。
「ここ最近に起こったトラブルが多くて、かなり仕事が多いですね...」
疲れたような表情を浮かべながら十蔵はそう呟いた。
ラウラの暴走事件。
これだけでもかなりの書類が送られてきているのに、もう直ぐで停学処分だったセシリアと箒が帰って来る。
それに加えもう直ぐでデュノア社の事も公表されるだろう。
そうなったら今もこんなに処理しないといけない書類があるのに更に増える事になるわけで...
「......想像するのは止めておきましょう。胃が痛いです」
十蔵はなんとなく左手でお腹をさすると、右手で麦茶が入っているコップを手に取り少し飲む。
そうして軽く息を吐くと席から立ち上がり窓の近くに移動する。
空を見上げると、何処までも続いているかのような青空が広がっていた。
「空はこんなに平和で、この先には永遠に広がる宇宙があるんですがね...」
十蔵は苦笑いを浮かべながらそう呟くと、今度は視線を地面に向ける。
「地上では人類が争い合っている...ISとは本来宇宙に行くためのもの...全く、宇宙に行くためのものを使用して地球で争ってどうするんですか」
十蔵のその声は、学園長室に、空に消えて行った。
暫くの間外を見ていた十蔵だったがやがて視線を机の上に戻すと仕事を再開する。
「はい、はい...なんですと!?門藤君が学園外で襲われた!?大丈夫なのですか!?...はい、はい、分かりました」
途中、十蔵は操がレゾナンスで襲われたと報告を受けた。
黙々と仕事を続ける十蔵。
外が暗くなり始めたので時刻を確認すると、もう19:00になっていた。
「もうこんな時間ですか...時間が過ぎるのは早いですね」
十蔵はガチガチに固まっていた肩を自分で揉みながらそういう。
しかし、自分んを肩を自分で揉んでも特にコリが改善される事は無い。
数度揉んだだけでそれを再確認した十蔵は苦笑いを浮かべると肩から手を離すと学園長室から出る準備をする。
コップを洗い、処理済みの書類は何時でも配送できるようにして置く。
そして今日新たに届いた未処理の書類はまた明日直ぐに仕事に取り掛かれるように、それでいて外部の人間が侵入してきても簡単には見つからない場所に入れておく。
「ふぅ...それでは帰りましょうか」
十蔵はそう呟くと学園長室を出て、扉をしっかりと施錠する。
そうしてそのまま帰ろうと身体の向きを変えた時、
ピピピピピ
と、教員用の通信端末から着信音が鳴った。
十蔵はポケットから通信端末を取り出すとそのまま通話に出る。
「こちら十蔵です」
『あ、学園長。山田です。今お時間大丈夫ですか?』
「はい、大丈夫ですよ。どうかしましたか、山田先生」
通話の相手は真耶だった。
十蔵が話の内容を尋ねると真耶は話し始める。
『臨海学校での教員出店の事なのですが...』
「はい、何か問題が発生しましたか?」
『いえ、そういう訳ではありません。門藤君に出店を手伝っていただいても問題は無いですよね?』
「門藤君に...ですか?」
『はい、門藤君、如何やら水着を購入できなかったようで...』
「ああ、なるほど...」
今この世界での男性用の物の品数は少なく、通販で購入するとかなり高いのは十蔵も理解している。
折角の臨海学校なのに泳げない操の事を考えると同じ男性として十蔵は心が痛くなった。
「分かりました。私の方からは許可します」
『はい。ありがとうございます。では、私はこれで...』
「すみません、1つ聞きたい事があるのですが宜しいですか?」
通話を終わらせようとした真耶の言葉を遮って十蔵はそう言葉を発した。
『はい、問題ないですが...何かありましたか?』
「...今日の職員会議で、織斑先生の様子は如何でしたか?」
十蔵が聞きたかったこと。
それは千冬の様子だった。
ここ最近...というより、1年生が入学してからの千冬の様子がおかしいと十蔵は日に日に感じていた。
その為、自分がいなかった会議での様子を聞いておきたかったのだ。
『織斑先生、ですか...特に変な行動はしていなかったですけど、雰囲気は少しおかしいと感じましたね』
「雰囲気が...ですか?」
『はい。何と言うか...口で説明するのは難しいんですけど...その...機械のような感じで、何か1つの事についてずっと考えていたって感じました』
「1つの事についてずっと考えていた、ですか...」
『あくまで私がそう感じ取っただけなのでそれ以上は何とも言えないですけど...』
「分かりました、ありがとうございました」
『はい、それでは』
最後に真耶からの言葉を聞いて、十蔵は通話を終了させる。
そうして通信端末をポケットに仕舞うと思いっ切りため息をついた。
「絶対に、門藤君関係ですね...」
そう呟いた十蔵は歩き始める。
「今年は、本当に大変です。ですが、それ以上に門藤君が大変そうです」
そう呟いた後十蔵は
「はぁ...」
と、重い足取りで歩くのであった。
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操たちの買い物、そして職員会議の日から2日後の夜。
「箒さん...お久しぶりですわ」
「ああ、久しぶりだな...」
IS学園拘束室にて2人の少女...セシリアと箒がそう会話していた。
この2人は、明日から停学処分が解除されIS学園に復帰するのだ。
その為、今日まではこの拘束室で生活する事になっておりセシリアも此処に来たのである。
「お前は、確か専用機が無くなったんだったか?」
「ええ...代表候補生も辞めさせられ、専用機も剥奪されました...そして、家が、家が...」
「それ以上は何も言わなくていい...」
セシリアと箒はそう会話した後、セシリアは凄く簡素なベッドに座る。
「春十さんは、如何していますの?」
「それは分からない。教員に聞いても無視された」
箒は悔しそうにそう呟く。
「生徒からのお願いを無視するだなんて...この学園の教員はおかしいですわ!」
「そもそも私達を此処に閉じ込めている時点でおかしいんだ!」
セシリアと箒は何とも身勝手で我儘で、醜い事を言い合う。
4月末のクラス対抗戦からもう2ヶ月近くたっているのに、改心どころか反省もしていない。
というよりかは、自分たちがこんな目に合っている事に納得していない様だ。
「そう言えば鈴さんは何処ですの?鈴さんも明日から復帰なのでは?」
「確かに...だが、鈴はまだ此処に来ていないぞ」
「もしかして、鈴さんにはこれよりひどい仕打ちがされているというのですの!?本当に許せませんわ!」
「ああ、許せないな!」
2人はいかにも怒っていますといった表情を浮かべながらそういう。
ひどい仕打ちでは無く、これくらいが妥当、いや、もっと重くても良いくらいの事を鈴はやらかしているし、自分たちもやらかしているのだ。
だが、その事に気付けない。
気付こうともしない。
「そう言えば、もう直ぐで臨海学校だな」
「そう言えばそうでしたわ...それなら、春十さんに水着を見せませんと!!」
「何を言う!春十に最初に水着を見せるのは私だ!!」
そこからギャーギャーと2人で揉める。
停学になる前だったら千冬が出席簿アタックで強制的に黙らせていたやり取りなのだが、此処は拘束室。
千冬が来ることは無いので2人の言い合いは終わらない。
そうして言い合う事大体30分。
「「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ......」」
ずっと騒いでいた2人は肩で息をしていた。
よくもまぁそんなに騒げると思わず感心してしまう程である。
「...待てセシリア。ここは1回休戦だ」
「どうかしましたか?」
「私達には共通の敵がいるのを忘れていた。」
「共通の敵...ああ、なるほど。確かに忘れていましたわ」
箒とセシリアはそう言い合うと、怒りに満ちた表情を浮かべる。
「「門藤、操......!!」」
そうして、奥歯をギシりと軋ませながらそう呟いた。
2人の表情は、親の仇を見つめるかのような表情だった。
この場には操本人がいないのにも関わらず、だ。
そこまで操が憎たらしいという事なのだろう。
「あの下種な男程憎たらしいものはありませんわね!」
「ああ。春十の活躍の機会を奪い、私達が不当に捕まる事になった原因!」
清々しいほどの八つ当たりに逆恨みなのだが、生憎2人にそんな事を指摘する人間などいない。
「セシリア、何時かアイツを排除して春十に跪かせるぞ!」
「ええ!そして、もう2度と逆らえないようにさせますわ!!」
そう言い合って、箒とセシリアは笑い合うのだった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「「......」」
世界の何処かにある束のラボ。
巨大なディスプレイ前に座っている束とクロエは、怒りの表情を浮かべながらディスプレイの事を見ていた。
そのディスプレイには、笑い合う箒とセシリアが映っていた。
「ねえ、クーちゃん」
「何でしょう、束様」
「束さん、キレた」
「私もです」
束は手に持っているジャンク品のパイプを握りつぶしながら、クロエは拳に力を入れながらそう会話する。
この2人が何故IS学園の拘束室の様子を監視しているのかというと、束が停学が終わる箒があの電話からどれくらい反省したのかを確認したかったからである。
しかし、いざ確認してみると全くといって良いほど反省していない。
その上でまだ操に手を出そうとしていたりしているのだ。
聞いていた2人がキレないわけがない。
「いやぁ、まさかあんなに愚かだったとは...アイツ、本当に束さんと血繋がってるの?そんな事実認めたくないんだけど」
「しかし、いくら束様がそう思ってもそれは事実な事に変わりありません。私もあんなに酷い人間が束様の身内だと考えたくないのですが」
束とクロエはそう言い合うと同時にため息をついた。
「クーちゃん、もう束さんは我慢の限界だよ。あんなのが束さんの妹だっていうくだらない理由で罰が軽減されてるのだ」
「束様...つまり、全世界に向けて発表するのですね」
「うん、するよ」
束は立ち上がると、1つのUSBメモリーを手に取る。
そうしてそのままUSBメモリーを手元で弄りながら束は言葉を続ける。
「もうあの愚かな篠ノ之箒に手を出しても、束さんは何もしないって」
そう言う束の表情は、決意の固まったものだった。
「ねぇ、クーちゃん。アレ持って来てくれるかなぁ?」
「分かりました。少々お待ちください」
束はクロエにそう指示を出し、クロエはとある書類を持ってくる。
その書類には、『絶縁状』と書かれてあった。
「束さんはこれを持って臨海学校に乗り込む。みっちゃんには迷惑掛かっちゃうかもしれないけど、もうこのタイミングしかない」
「はい、分かりました...束様のご両親は、如何するおつもりなんですか?」
「ん?あの馬鹿2人?あ~...考えてなかったねぇ」
両親の話題なのに、馬鹿2人。
つまりは、そう言う事なのだろう。
「良いのですか?」
「うん。だってアイツ等織斑春十と篠ノ之箒が道場でいっくんに暴力振るってても止めなかったんだもん。そんな奴ら、束さんには必要ない」
束は冷酷な視線を浮かべながらそう呟く。
その強すぎる眼光を向けられたクロエは思わず1歩後ずさってしまう。
束はそんなクロエを見て慌てて表情を柔らかいものにする。
「ごめんごめん、クーちゃんを怖がらせるつもりはなかったんだ。ただ、如何も束さんはイライラしちゃって」
「それは仕方のない事だと思いますよ。あんな低レベルな会話を聞いた後なのですし」
クロエがそう言うと、束は視線をディスプレイに...そこに映っている箒に戻した。
そして
「もう、お前の自由は無いからな?お前は散々言ってた、束さんは関係ないって。それを現実にしたらどうなるのか教えてやるよ」
ディスプレイの中の箒を睨みながら、そう呟くのだった...
セシリアと箒の会話を書いている私はイライラしてました。
なんだコイツら。
なんで帰って来たんだ?(自分でやってる)
次回も何時になるか楽しみにしていてください!
評価や感想、誤字報告何時もありがとうございます!
今回も是非よろしくお願いします!