今回もお楽しみください!
操side
「ふぁぁあああああ...もう直ぐで着くのか?」
「そうだな。予測ではもう直ぐ着く」
ユラユラと揺れるバスの中。
俺の呟きに隣に座っているラウラが俺の呟きにそう反応した。
俺達がバスに乗っている理由。
そう、それは!
今日から臨海学校だからである!
それに伴い、バスの中も物凄い盛り上がっている。
『次歌う人!』
「ラウラ、歌わないのか?」
「...いや、私は歌を知らないんだ。だから遠慮させてもらおう」
「まぁ、俺も最近の曲は良く知らないんだが」
つい最近...とはいってももう7月だから3ヶ月と少しか。
それくらい前ではこっちの世界にいなかったのだ。
こっちの世界の曲なんて分からない。
そもそも俺はそんなに歌を聴かないからな...
クラスメイトたちのカラオケでの歌声を聞きながら俺はボーッとする。
もう、なんか疲れた。
なんで移動で疲れるのかな...?
まさか、年...?
いや、まだ23歳!
全然若い!
多分、周りの高すぎるテンションについて行けてないだけだ!
......あれ?
それって結構おっさんじゃね?
.......もうこれ以上考えるの止めようっと。
「海!見えたぁ!!」
「お」
クラスメイトの誰かがテンション高めの声でそう叫んだので、ラウラと共に窓の外を確認する。
すると、確かに青く綺麗に輝く海が見えた。
「あれが海か...綺麗だな」
「行ったこと無いんだっけ?」
「軍事演習であまり綺麗とは言えない海に2回ほど行ったことがある程度だ。だから、あそこまで綺麗な海を見るのは初めてだ」
「そっか」
確かに、軍に所属しているとそう簡単に海に遊びに行くなんてこと出来ないか。
更にシュヴァルツェ・ハーゼの基地はドイツの中でもそこそこ内陸の方なので地理的な影響でも行きにくいのか。
「そういう操は如何なんだ?」
「俺は...あれだ、釣りの為だったら何回も行ってるけど、海水浴場には行かないな~~」
「そうなのか...」
「ああ。まぁ、折角の泳げるところだけど水着が無いんだけど」
「それは......」
「ああ、ごめんごめん。気にしないで気にしないで」
折角の臨海学校前なのに空気を悪くしちまった。
「そろそろ降りる準備をしておけ!」
ここで、織斑先生がそう怒鳴るように指示を出す。
全く、もうちょっと穏やかに出来ないのかな?
そう思いながら、荷物を纏める。
とはいっても23歳の男の荷物はクラスメイト達と比べると全然少ない。
今日は泳がないから海で使うものはせいぜいジャージとタオルくらいしか持って来てないし、化粧水とかなんかそういう美容関係の物もないしゲームとかも持って来てないから本当に少ない。
正直ゲームくらいは持ってこようかと思ったけど23歳成人男性と遊んでても楽しくないと思うから止めた。
そして、キューブアニマルたちはお留守番である。
なんか見られたら臨海学校におもちゃ持って来てるヤバい奴に診られると思ったからである。
そうして、織斑先生の指示があってから大体5分後。
バスは駐車場に着いた。
荷物を持ち、順番に降りていく。
バスを降りた目の前には、何とも風情がある大きな旅館。
此処が、臨海学校でお世話になる旅館『花月荘』である。
「はぁ~、デカいなぁ~」
「そうだな。管理が大変そうだ」
あはは、それが最初に出て来るか。
...なんか視線を感じる。
しかも、普通の視線では無く、なんか刺すかのような視線が。
「操、見られてるぞ」
「ああ、分かってる」
ラウラも気が付いているようだ。
いや、当然か。
ここまで露骨に視線を向けられたら誰だって気が付く。
俺とラウラは同時にその視線の元を見る。
そこには、俺を睨んでいる黒髪ポニーテールの生徒と、金髪ロール髪の生徒...篠ノ之箒とセシリア・オルコットがいた。
「はぁ......」
思わずため息をついてしまう。
そう、完全に存在を忘れていたのだが、少し前くらいからこの2人の停学が明け復帰したのだ。
因みに、それと同時に凰鈴音の退学が正式に発表された。
だが、正直にいってみんなあまり驚いたりしてなかった。
俺と同じように存在を忘れていたってのもあるし、あれだけの事をやらかしたのでこれくらいが妥当だろうと思っているのだろう。
寧ろ、あの2人が復帰したことに驚いている人の方が多かった気がする。
それと、ティナとかは鈴の退学を聞いて喜んでいた。
まぁティナは鈴に脅されたりしたのだ。
もう2度と学園に来ることが無いという安心感は凄まじいんだろう。
「操、あの2人と何があったんだ?話を聞く限りあの2人は以前違反行為をしたんだろう?何故操を睨む?」
「さぁ...?俺は退学になった奴と一緒に違反行為していたアイツ等を倒しただけだぞ」
「...それが原因では無いのか?」
「だったらただの逆恨みじゃない?」
「確かにな。悪いのはあの2人なんだからな」
全く、理由はもうどうでもいいから睨むのを止めて欲しい。
凄い気になって仕方が無い。
そんな事を考えていると他のクラスのバスからも続々と生徒達が降りて来る。
すると、旅館の方から1人の着物を着用し優しそうな笑みを浮かべている女性が出て来た。
「さて、諸君!此方が今日から3日間お世話になる花月荘だ!挨拶をしろ!」
織斑先生は全員にそう怒鳴るかのように指示を出す。
『よろしくお願いします!!』
「フフフ、みなさんお元気ですね。私は当旅館の女将、清洲景子と申します。今日から3日間、皆様のサポートをしてまいりますのでよろしくお願いしたします」
その女性...清州さんはそう言うとぺこりとお辞儀をした。
「あの体幹...凄まじいな」
「確かに。ブレてないもんな」
流石は旅館の女将さん。
IS部隊の隊長から見ても凄い体幹なのか。
「今年は異例の男性2人が在籍中でご迷惑をお掛けしました」
「いえいえ、気にしないで下さい」
「おい、挨拶しろ」
織斑先生は俺と織斑春十に視線を向けながらそういう。
もうちょっと優しく言えないのか。
「あ、え、あ...お、織斑春十です......」
「門藤操です。ご迷惑をお掛けしてしまうかと思いますが、よろしくお願いします」
「フフフ、ええ、よろしくお願いします」
織斑春十と俺の挨拶を聞いた清州さんはまた微笑むと軽くお辞儀をする。
しっかし汗1つかいてないなんて凄いな...
もう7月で暑いなかで着物を着てるのに...
「それでは、海に行かれる場合は離れの更衣室をお使いください。海に直通ですので、直ぐに泳ぐことが出来ますよ。場所が分からなかったら、遠慮なく従業員にお聞きください」
『は~い!』
清州さんのその言葉には、全員がそう返事をする。
元気で良い事だ。
「それでは、全員自分の部屋に行って荷物を纏めろ!その後は自由時間だ!」
織斑先生の指示に従い、ぞろぞろと順番に旅館の中に入っていく。
だが、ここで1つ問題がある。
「操さ~ん!」
「ん?のほほんさん、どうしたの?」
「操さんの部屋って何処なんですか~?部屋割りに書いてませんでしたけど~」
「さぁ?俺も分からない」
そう、その問題とは俺の部屋が何処か分からないのだ。
部屋割り表に書いてないし、空き部屋なども無いっぽい。
「廊下なのかな?」
「夏だし~良いかもしれないですね~。あ~、冷たいって」
「寧ろ海風が来て寒いかもしれないから、部屋が良いな...」
まぁ、良いか。
取り敢えず織斑先生に...
「あれ、織斑先生は?」
「さっき織斑春十を連れて旅館内に入っていったぞ」
俺の呟きに、ラウラがそう反応する。
マジかよ...
「...山田先生に確認するか。ラウラ達は部屋に荷物を置いてきていいよ。早く遊びたいでしょ」
「分かりました~!!」
俺がそう言うと、のほほんさんがかな~りゆっくり歩いて行く。
そんな様子にラウラが苦笑いを浮かべながら後を追いかけて行き、直ぐに抜かした。
「さてと、山田先生は...」
俺も山田先生を探すために旅館内に入る。
「まぁ、教員部屋かな?」
そう呟き、教員部屋の方向に歩いて行く。
そうして歩く事約2分。
「あ、門藤君!!」
「山田先生!」
教員室の方から山田先生がやって来た。
「良かった、これから門藤君を探しに行こうと思ってたんですよ」
「もしかしなくても部屋割りですか?」
「そうです!」
良かった。
こう言われるって事は廊下ではないらしい。
「それでは、早速門藤君の部屋に案内します!」
「よろしくお願いします」
山田先生に先導される形で移動を開始する。
結構奥の方なんだな...
そう考えながら歩く事約5分。
「此処です!」
「此処って...?」
山田先生がそう言った場所の扉は、旅館の襖では無く、ニスが塗られただけの無機質な扉。
ドアノブとか蝶番はなんか錆びてるような気がする。
「如何見ても物置部屋ですか...」
「はい、元々は物置部屋です」
「いじめですか?」
なんで旅館に来て物置部屋で寝ないといけないんだろうか。
いや、廊下よりかはマシだけど。
「いやいや!そういう訳では無いんです!!ほら、見てください!!」
山田先生は焦ったようにそういうと、その無機質な扉を開く。
ギィィィィ
と、潤滑油を注油したくなるような音を発しながら開いた扉の向こうは、カーペットが敷いてあり、簡易的な机があり、部屋の隅の方に畳んである布団一式が置いてある。
特に何か段ボールとか荷物とかがある訳では無く、部屋の中も埃とかは無く綺麗な状態だった。
「ほら!キチンと掃除して、セッティングしたんですよ!」
「...確かに」
想像していたものよりも格段にいい部屋だ。
此処が物置とは思えない...寧ろ、此処が格安ホテルの1室だと言われても信じられる。
「それで、えっと...なんで物置部屋なんですか?」
「はい、門藤君は男性なので、女子生徒と同室には出来ないんですよ」
「流石にそれは分かってます」
同室だって言われたら俺はそれこそ廊下で寝るぞ。
「それで、1人部屋とか織斑君と同室だと睡眠時間を無視した生徒が部屋に突撃してくると思ったんです」
「そうですかね?」
わざわざ23歳成人男性の部屋に女子高生が突撃してくるとは思わないけど。
「その為、織斑君はお姉さんである織斑先生と同室、門藤君は生徒達の部屋から離れて、なおかつ分かりにくい
山田先生は元の部分を強調しながらそう言う。
なるほど、そういう事情だったのか...
だからさっき織斑先生は織斑春十を連れてどっかに行ったのか。
「なるほど、把握しました」
「理解してくれて良かったです」
山田先生のその言葉を聞きながら俺は取り敢えず部屋の入口近くに荷物を置いておく。
ふぅ~
ずっと荷物持ってたから少し肩が痛い。
あ、そうだ。
教員屋台に関しての事を聞いておかないと。
「山田先生、教員屋台って何時からスタートですか?」
「えっと...大体11時からスタートですね」
「という事は、大体10時半くらいから準備すればいいですか?」
「そうですね。そこら辺からお願いします。門藤君は、焼きそばとフランクフルトを作ってくれるんですっけ?」
「はい!自家製のソースを持ってきたので焼きそばはすっごい自信があります!」
今日の為にいっぱい作って来たからな!
みんなに食べてもらうのが楽しみだぜ!
「分かりました。では、私はこれで」
「はい、部屋への案内ありがとうございました」
山田先生はそう言うと、何処かへと歩いて行った。
多分、教員の人達はいろいろ会議とかがあるんだろう。
教員の方は大変だ。
「えっと、今何時だっけ?」
時計を確認すると、9時半を示していた。
準備までの時間は後1時間。
「...海風に当たろうかな?」
折角だから海感は味わっておきたい。
そう思ったのなら、早く行動しよう。
そう判断したので、IS学園の制服から動きやすい黒のジャージに着替える。
冷感生地を使ってるらしく、ひんやりしていて気持ちいい。
熱気も籠らないし、凄いな。
「さて、海に!!」
俺はそう言うと、そのまま部屋から出て行く。
え~っと、離れの更衣室ではみんなが着替えてると思うからそこを通らないルートで...
「一夏、待て!!」
俺が旅館の外に出ようと歩いている時、背後からそんな声が掛けられた。
まぁ、俺は一夏なんて名前じゃないし俺じゃないな。
さてさて、早く外に行こうか。
「待てと言っているだろう!!」
そう言われると同時に、肩を思いっ切り掴まれた。
「...名前は一夏では無いのですが?」
そう言いながら振り返ると、そこには。
俺の肩を掴んでいる織斑先生がいた。
「一夏!まだそんな事を言っているのか!?」
「だから、俺の名前は門藤操だ!織斑一夏ではない!」
全くもう!
面倒くさいなぁ!
いい加減諦めれくれよ!
「一夏、私の所に帰ってこい!春十と一緒に、家族3人で暮らそう!」
「もう!俺は織斑一夏じゃ無いんです!いい加減にしてください!」
4月の最初の方...っていうか初日からだぞ!
もう3ヶ月は経ってるし、その間ずっと否定してたんだからさぁ!
「何を言う!私が弟の事を見間違えるはずがない!」
「あなたの弟さんは今年で16ですよね!?俺は23歳!今年で24!年齢があって無いんです!」
「そんな嘘はつかなくていい!お前は騙されているんだ!」
「誰にですか!?俺は自分の意思で生活してますよ!」
これじゃあ水掛け論だ!
何時まで経っても終わらないぞ...
どうする?
そう考える俺の視界に、なにやらあたりをキョロキョロしている教員の人が見えた。
確か...そう、榊原先生だ!
お願いします、気が付いて下さい!
「だから、それが騙されていると言って「織斑先生!ここにいたんですか!」チッ...」
織斑先生がまだ何か言おうとした時、榊原先生が織斑先生に声を掛けて話を中断させてくれた。
助かったぁ...
「織斑先生!もう直ぐ職員会議が始まりますよ!早く行きましょう!」
「し、しかし...」
「いいから!行きますよ!」
榊原先生はそう言うと、そのまま織斑先生の事を引きずっていく。
「ふぅ~~、助かったぁ...」
榊原先生、本当にありがとう!
しかし、何故織斑先生はあそこまで織斑一夏に固執するんだろうか。
第2回モンド・グロッソの時に織斑一夏は死んだ事になってるんだから、普通はそこで死を受け入れ、気持ちを切り替えるんじゃないのだろうか。
う~ん......良く分からない。
「今何時だ?」
腕時計で時間を確認する。
すると
「10時...」
もう既に10時近くになっていた。
う~ん...
この時間で海風を浴びると、準備開始まで結構ギリギリか?
1度戻って、ソースとかの材料を持って行って、手を洗って、調理器具の準備をして、また手を洗うから...
うん、ギリギリだな。
「やめとくか」
はぁ......
なんでまだ遊んだり調理したりしてないのにこんなに疲れてるんだ?
いや、まぁ、理由は分かってるんだけどさ。
愚痴も言いたくなるじゃん。
本当にいい加減にして欲しいな...
「学園長に連絡入れとくか...」
そう呟いてから、自分の部屋に戻る。
スマホを取り出し学園に電話を掛ける。
『はい、こちらIS学園、事務の斎藤が承ります』
「あ、もしもし。1年1組の門藤なんですけれども」
『門藤君、どうかしましたか?今は臨海学校なのでは?』
「はい、そうなんですけど、少し相談したい事があって..学園長に変わって頂けますか?」
『分かりました、少しお待ちください』
そうして、保留音に切り替わる。
大体10分後、保留音が終了すると
『はい、学園長の轡木です。門藤君、どうしましたか?』
「あ、学園長。実はですね、さっき織斑先生が絡んで来まして...」
『......またですか』
「はい。私の事を『一夏』と呼んで来て、執拗に絡んで来たんですよ」
俺がそう言うと、暫くの間無言の時間が続く。
なんだろう、学園長の姿は見えないのに、眉間に手を当てている学園長の姿が簡単に想像できた。
『...分かりました。後日織斑先生に注意しておきます』
「ご迷惑をお掛けします。よろしくお願いします」
『ええ。それでは私はこれで』
「はい、わざわざありがとうございました」
ここで学園長との通話を終了させる。
「はぁ...俺も学園長に迷惑しか掛けてねえや」
夏休みにでもお詫びしよう。
ふぅ。
さて、気持ちを切り替えて!
「早速出店の準備をしよう!」
みんなに美味しい焼きそばとフランクフルトを食べてもらうぞ!!
作者の別小説だと仕事が入って遊べなかった主人公。
この作品では千冬に絡まれ、水着が無く遊べない主人公。
あれ、私は主人公に遊ばせたくないのか?
次回も何時になるか分かりませんが、楽しみにしていてください!
評価や感想、何時もありがとうございます!
今回も是非よろしくお願いします!