今回もお楽しみください!
操side
クロエさんに束さんの所に案内されていろいろ説明を受けた後に、酒に酔った山田先生と榊原先生を首トンさせたりした翌日。
今日は装備試験の日だ。
装備試験とはその名の通り、国や企業から送られてきた専用機向けの装備を試験するというものだ。
まぁ、とはいっても今日はドイツ以外からの装備は送られてこない。
簪の専用機は開発元から捨てられてるから送られてくる事は無い。
セシリア・オルコットは専用機の所有権が無くなったし、織斑春十の専用機...えっと...そう、白式はなにやら追加武装が無いらしい。
そして俺のジュウオウザワールドはISじゃないので追加武装など無い。
だから、ラウラへの武装以外は送られてこないのだ。
因みに、専用機を持たない一般生徒は訓練機を使用しIS学園のアリーナではなかなか出来ない訓練をするという訳である。
そして今は浜辺に整列し、1年生全生徒が集合するのを待っているのだが...
「......織斑と篠ノ之とオルコットはどうした?」
織斑先生が腕を組みイライラした表情を浮かべながらそう言葉を零す。
そう、もう既に集合時間なのに織斑春十、篠ノ之箒、セシリア・オルコットが来ていないのだ。
「...アイツ等は何をしているんだ?」
「さぁ...?」
隣に立っているラウラが疑問の声を発し、その更に隣に立っている簪が同調する様に首を傾げる。
1人だけならまだしも、3人も遅れるだなんて何かあったのだろうか。
正直、日差しガンガンで気温も湿度もムシムシの中ずっと立ってるのキツイから早くして欲しい。
あ、一般生徒列にいるのほほんさんが暑くて逆に眠そうにしてる。
それになんか山田先生と榊原先生の顔が青い。
まぁあの2人は多分2日酔いだろうから取り敢えずは良いか。
辛そうだったら声を掛けよう。
そう考えながら待つこと数分。
旅館の方からバタバタと走る音が聞こえて来た。
生徒全員と教員全員がそっちに視線を向けると、慌てた様子で走って来るISスーツ姿の件の3人が居た。
「貴様ら!遅いぞ!」
『ご、ごめんなさい!』
砂浜に到着した3人に対して、織斑先生が開口1番怒鳴る。
まぁ、これはあの3人の自業自得だ。
特に何とも思わない。
それにしても、束さんは何時来るのだろうか?
来るという事しか知らないからタイミングが分からない...
「織斑先生、時間も時間ですし一先ずこのへんで...」
「む、そうか...なら、これより訓練を開始する!一般生徒はこのまま私の指示に従って順番に訓練だ!専用機持ちは追加武装のあるものはテスト!無いものは各々山田先生に確認を取り訓練しろ!」
わお、何ともアバウトな指示。
なんだよ山田先生に確認取って各々訓練って。
山田先生も苦笑いをしていらっしゃるぞ。
まぁ、兎にも角にも指示を出されたから行動をしよう。
「そう言えば、簪の専用機ってどうなったんだ?」
「フフフ...それがですね......なんと完成したんですよ!」
「「おお!!」」
遂に!
「とはいっても完成したばかりなので、あんまり激しい動きをせずに取り敢えずは訓練しようかなと」
「なるほどな...それくらいが良いだろう」
ラウラと簪と共に軽く雑談をしながら山田先生の元に移動しようとする。
そうして1歩踏み出した時に
ドドドドドドドドドド!!
なにやら遠くの方からそんな爆走する足音が聞こえて来た。
ガバッとこの場にいる全員がその音が聞こえて来た方向に視線を向ける。
するとそこには
「お~い!!みっちゃ~~~~ん!!」
と、俺の名前を叫びながら爆走する束さんがいた。
おいおいおい!
なんて派手な登場なんだ!
そう考えるのも束の間。
束さんは勢いを緩めることなく俺に突っ込んで来た。
「グへぇ!?」
「操!?」
束さんの突進を避ける事など出来ず、感じた衝撃に思わず変な声が出る。
その声を聞いたラウラが驚きの声を出す。
「みっちゃん!久しぶりだね!!」
「...はい、お久しぶりです、束さん」
本当は昨日ぶりなのだが、束さんがそういう事にするらしいので合わせよう。
なんか周りから驚愕の視線を向けられてるし、なんかザワザワしてる。
まぁ、急に爆走してやって来た機械ウサミミエプロンドレスの女性と俺が話してるんだからそりゃそうか。
「3月末にジュウオウザワールドを受け取って以来ですけど......取り敢えず周りに自己紹介をしてもらっても?」
「しょうがないなぁ~~」
俺の言葉に素直に頷いた束さんは未だ驚愕の表情を浮かべているみんなの方向にくるりと身体を回転させる。
そして満面の笑みを浮かべて両手でピースしながら言葉を発する。
「やぁやぁ!ISの開発者にしてみっちゃんの友達!世紀の天才篠ノ之束だよ!!」
束さんはそこまで言って可愛らしくウインクする。
するとその瞬間に、ビシリと空気が固まった音が聞こえた。
俺は咄嗟に簪の耳を塞ぐ。
『えええええええええええええええええええええええええ!?!?!?』
殆どの生徒と教員がそう驚愕の声を発する。
「ぐぅ...!!」
なんて声量なんだ...!!
チラッと隣を見るとラウラはしっかりと自分の耳を塞いだようだ。
「操さん...ありがとうございます...」
「き、気にしないで気にしないで......」
耳キーンなってるけど。
結構耳キーンなってるけど。
俺がその場に蹲って自分の耳を押さえていると、束さんは視線をギロリとある方向に向ける。
そっちの方に俺も視線を向けると、そこには呆けた表情を浮かべる件の問題児3人が居た。
束さんが1歩そっちの方向に踏み込むと
「束、待て」
と、織斑先生が束さんに声を掛けた。
束さんはピタッと止まると視線を織斑先生の方向に向ける。
その表情は、先程までのニコニコしたものではなく冷たいものだった。
「束、いったい何の用だ」
「お前に関係ない」
「なっ...!?何だその言い分は!」
「ちっ...束さんは、アイツに用があって来たんだよ」
織斑先生の言葉に束さんは面倒くさそうな表情を浮かべ、舌打ちをしてからそう言うと視線を元の方向に...もっと正確に言うのなら、篠ノ之箒に向ける。
視線を向けられた篠ノ之箒はビクっと身体を震わせる。
そんな篠ノ之箒に向かって束さんは歩いて行く。
生徒達はザッと篠ノ之箒から離れていく。
「ね、姉さん...」
「久しぶり。もう2度と顔を合わせたくなんて無かったんだけど、しょうがないから来てあげたよ」
束さんは先程までよりも更に冷たい表情でそう言う。
「今日はプレゼントがあるんだ。今日は、誕生日だからね」
「っ!!」
え、今日篠ノ之箒の誕生日なの?
知らなかった。
「もしかして、あいえ「ほら、これだよ!!」」
篠ノ之箒の言葉を遮って、束さんは懐から取り出した1枚の紙を叩き付ける。
その紙を見た篠ノ之箒の表情が青ざめていく。
「ね、姉さん、これって...」
「見たらわかるだろ、絶縁状だよ!!」
絶縁状。
その言葉を聞いた周囲の人達はザワザワとし始める。
そりゃ、急にそんなのを聞いたら驚くに決まってる。
「お前言ってたよなぁ!?『私は姉さんとは関係ない』ってなぁ!!だから、束さんはわざわざそれを叶えてやるんだよ!!」
束さんは篠ノ之箒に向かってそう叫ぶ。
まるで今まで耐えて来たものを吐き出すかのように。
「ね、姉さ「黙れよ!!」ひぃ...!!」
「ああ、そうだ。良い事教えてやるよ」
束さんはそう言うと視線を生徒や教員たちに向ける。
そうしてニヤリと笑みを浮かべてから言葉を発する。
「たった今、この瞬間!束さんのメッセージが全世界に向けて発表されてる!」
「め、メッセージ...?」
「ああ...束さんは篠ノ之箒を始めとした篠ノ之家と絶縁する。こいつ等に何をしても、束さんは何もしないってね。ねぇみっちゃん!」
「はい?」
なんで急に俺に...
「スマホでさ、見てみてよ!ネットニュース速報!」
束さんに言われたのでそのままスマホを取り出し、ネットニュースを確認する。
これは...
「...『篠ノ之博士、全世界に家族との絶縁の声明を出す!!いったいその意味とは!?』......30秒前の記事ですね」
「でしょでしょ?他の人達もさぁ、見て見なよ!」
その言葉と同時に、教員のみなさんがタブレットを操作する。
するとすぐにその表情を驚きのものに変える。
生徒達はISスーツに着替えてる関係上スマホを置いて来てるから自分たちでは確認できない。
それを教員の人達も理解しているので生徒達の所に歩いて来て何となく全員に画面を確認させている。
俺もスマホを隣のラウラと簪に見せる。
すると、やはり全員が驚いた表情を浮かべる。
そして一通りみんながネットニュースを確認したので、再び束さんと篠ノ之箒に視線が集まる。
「......そういう訳だから、もう束さんの事を『姉さん』だなんて呼ばないでね。赤の他人なんだから」
「......」
束さんの言葉を篠ノ之箒は黙って聞いている。
その表情は、目の前でお気に入りのおもちゃが壊された子供の様だった。
......ん?
なんで織斑春十まで同じような表情を?
いや、急な事で驚くのは分かるが...
なんで同じく絶望したような表情なんだろうか?
........まぁ良いや。
取り敢えず後で。
なんか俺って取り敢えず後にしたことを確認した事って無いかもしれない。
「これからは、束さんの名前で守られないんだから、自分の罪はしっかり100%自分で償えよ」
「えっ...?」
束さんの言葉を聞いた篠ノ之箒は、呆気に取られたような表情を浮かべる。
え、あの反応...
まさか...?
「はぁ...お前、まだ自分の罪を理解していなかったんだな。もういいや」
やっぱり...
篠ノ之箒はまだ自分のやらかしたことを理解していなかったみたいだ。
束さんはもう興味を無くしたようで篠ノ之箒の事を見もせずこっちのほうに歩いてくる。
「みっちゃ~ん!!馬鹿との会話疲れた~~!!」
「あ、あはは...よしよし?」
あんまり人を馬鹿と言ってはいけないのだが...
まぁ、これは仕方ないか。
そんな事を考えながらなんとなく束さんの頭を撫でる。
ウサミミが邪魔だが、まぁこれくらいなら問題ない。
そもそも頭撫でるのに問題とは?
「ほぉ...これはなかなか......」
すると束さんは顎に手を当てて目を細めてそう呟いた。
なにがなかなかなんだ?
「「......」」
『......』
それにラウラに簪にみんなや。
ジッと見ないでくれ。
居心地が悪い。
「それじゃあみっちゃん!束さんはそろそろお暇「束!待て!!」んあ?」
束さんの言葉を遮るように、織斑先生が声を発する。
心底面倒くさそうな表情を浮かべながら束さんは振り返る。
「なに?もう束さん帰るんだけど?」
「束!!お前、今自分が何を言ったのか理解しているのか!?」
「束さんは天才だよ?自分の発言くらいしっかり意識してるさ。どっかの単細胞と違って」
誰だろう、単細胞って。
篠ノ之箒の事なのか、織斑先生の事なのか...
正直、俺に対する態度だけで考えるとどっちも単細胞としか言えないんだけど。
まぁ、どっちでも良いか。
「お前!!自分の妹に何を言ってるんだ!!」
「部外者のお前に関係ない」
「束!家族になんてことを言ってるんだ!」
「家族ぅ?あんなんがぁ?ないない」
織斑先生の言葉に束さんはケラケラと笑みを浮かべる。
暫く笑みを浮かべていた束さんだが、やがて織斑先生に冷たい視線を向ける。
「お前もさ、いい加減いっくんの死を受け入れたら?家族に執着してもいい事なんて無いよ」
「なっ...!?」
束さんの言葉に、織斑先生はそう固まる。
織斑先生の反応を見た束さんはまたケラケラと笑みを浮かべる。
「束ぇ!!お前、一夏に関する何かを知ってるのか!!」
「ん~~?いっくんはあの日に死んだんだよ?あの、お前がいっくんを放って大会に出たあの日に」
「ふざけるな!一夏は死んでない!まだ、一夏は!!」
「しつこいなぁもう。いい加減にしたら?いっくんに迷惑だよ」
なんだろう、この会話。
俺からするとすっごい複雑なんだけど。
「束ぇ!!知ってることを全部話せぇ!!」
「ちっ...」
織斑先生が束さんに突っ込んでいくと、束さんは織斑先生に回し蹴りをくらわせる。
バキィ!!
「ぐぅ...!?」
なんか鳴ってはいけない音が鳴ったと思ったら、織斑先生が吹っ飛んでいった。
バシャア!!
「あ、が、あああぁぁぁ...」
海の方から、織斑先生が海に落ちた音と唸り声が聞こえてくる。
そんな織斑先生を見て、束さんはニヤリと笑みを浮かべる。
「それじゃあ、もう2度と束さんに顔見せないでね。不愉快だから」
束さんは織斑先生と篠ノ之箒の事を見てからそう言うと、俺の方に向かってくる。
「それじゃあみっちゃん!!束さんはここでお暇するね!また後で!!」
「後ってどれくらい後ですか!?」
「アハハハハ!!バイビー!!」
束さんはそのまま瞬きをしていないのにも関わらず一瞬でこの場から消え去った。
なんだろう、直ぐに戻ってくる気がする。
そうして、何とも言えない重苦しい空気があたりに漂う。
どうしよう、これ。
「......取り敢えず、どうするんだ?」
「どうするんですか?」
「どうするんだろうか?」
ラウラ、簪、俺の順番でそう呟く。
この重苦しい空気、どうするんだろう?
なにすりゃええか分からん。
「はっ!!お、織斑先生!大丈夫ですか!?」
「あ、そうだ!織斑先生!!」
そんな事を考えていると、山田先生を始めとした教員たちが海に落ちた織斑先生に駆け寄っていく。
「あ、あ、あ......」
「織斑先生!大丈夫ですか!?」
「っ!だ、大丈夫だ...」
「一応保険医に診てもらいましょう」
「は、はい...」
まぁ、さっきなってはいけない音が鳴った気がするからな。
織斑先生は教員の1人に連れられて保険医の先生の所に向かって行った。
そうして、再びこの場を静寂が支配する。
「え、ええと......取り敢えず、一般生徒のみなさんは榊原先生たちの指示に従って訓練を開始してください!」
『はい!』
如何やら山田先生がいったん仕切ってくれるらしい。
山田先生の指示を聞いた一般生徒達はしっかりと返事をする。
それを聞いた榊原先生たち一般生徒を担当する教員の人達は一般生徒達の所に向かって歩いて行く。
「門藤君、ボーデヴィッヒさん、更識さん、織斑君は私の所に来て下さい!!」
「「「はい!!」」」
「は、はい...」
山田先生に言われたので俺達は山田先生の所に小走りで移動する。
俺達に数歩遅れる形で織斑春十もやって来る。
「それでは、みなさんは専用機持ちという事で各個人での訓練になります。現状での予定を教えてください」
「はい。私は本国から送られてきた武装の試験をします」
「俺はそれのサポートをします。ドイツ国籍なので問題はありません」
「私の専用機はついこの間完成したばかりなのでそこまで激しい事はせず、数値計測範囲の訓練をするつもりです」
ラウラ、俺、簪の順で山田先生にこれからの訓練の説明をする。
そして、俺達4人の視線が織斑春十に集まる。
すると視線をあちこちに泳がせる。
あ、これはもしかして...
「あ、あの、えっと...特に決まって無いです......」
やっぱり...
何んとなくさっきの反応で察したが、織斑春十は特に訓練内容を思い付かなかったらしい。
まぁ確かに急に織斑先生に言われたからまだ決まって無くて当然か。
当然......か?
「そうですか...なら、織斑君は加速の訓練をしましょう。織斑君の白式は近接戦しか出来ないので早く動けて損は無いですし、今日は壁も無いので思いっ切り出来ますよ」
「わ、分かりました。そうします」
おお、流石は山田先生。
この一瞬で思い付くだなんて。
昨日酔った勢いで『生徒に話を聞いて貰えない』と愚痴っていた人とは思えない。
「それじゃあ、早速門藤君とボーデヴィッヒさんは武装の準備を...」
山田先生は、此処まで言って言葉を途切れさせた。
いや、途切れざるを得なかった。
ピロン
と、山田先生が手に持つタブレットが通知音を鳴らした。
山田先生はちらりとタブレットの画面を確認する。
すると、ドンドン表情が青ざめていく。
「す、すみません!た、大変です!!」
山田先生は焦ったようにそう言うと他の教員の人達の所に行って話し始める。
「......何かあったみたいだな」
「ああ、確実に何かが....トラブルが、発生したと考えて良いだろう」
俺とラウラがそう会話していると、
「トラブルが発生しました!!訓練は中止です!!一般生徒は旅館の中で待機してください!!専用機持ちは私達について来て下さい!!」
山田先生がそう叫んだ。
急な事で一般生徒達はザワザワとしだすが
「旅館内に入って!!」
「自室で待機よ!!」
教員の方たちによって誘導されていく。
「...ラウラ、簪、行くぞ」
「ああ!」
「はい!」
そうして、俺達は山田先生の所に走っていく。
いったい何があったんだ...!!
さぁ、遂に事件発生。
操、如何する!?
次回も何時になるか分かりませんが、楽しみにしていてください!
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