遂に2学期!
作者の忙しさが当分変わらなさそうなので投稿ペースを戻すことが不可能だと判明しました。
申し訳ありません。
今回もお楽しみください!
2学期の始まり
操side
学園長と山田先生と共に釣りに行ってから暫くが経った。
夏休みも昨日で終わり、今日からとうとう2学期である。
「んぁああああ…朝だぁ…」
そんな日の朝、カーテンの隙間から覗く太陽の光で俺は目を覚ました。
身体を起こし、伸びをしてから時計を見ると時刻は5:50。
まだまだ始業式には余裕がある。
だけど、もう1回寝る気分にもならない。
「起きるかぁ…」
ベッドの上で寝るか起きるかの検討の結果、起きる事にした。
時計のアラームを止めてからベッドから降りる。
そしてもう1度伸びをすると、着ている服が結構びしょびしょで、身体もベトベトになっている事に気が付いた。
如何やら寝汗を大量にかいてしまったらしい。
取り敢えずシャワーを浴びよう。
そう思い、下着とサマースーツを準備してからシャワールームに入る。
シャワーを浴びてさっぱりしたので、身体を拭き下着を履いてから髪を乾かす。
そうしてサマースーツを着用する。
「朝ご飯は…そうだ、昨日面倒くさくなってなんも下準備してないや」
此処で朝ご飯の用意を何もしていない事に気が付いた。
どうしようかな……
今から準備するとなると大したものは出来ないし、時間に余裕があるとはいえ遅刻する可能性もある。
……よし、食堂に行こう!
今日から夏休みが空けるという事は、今日から食堂の朝営業も再会するという事。
食堂ならばお金を払えば出来立てのご飯を食べる事が出来る。
こんな状況にピッタリ!
そうと決まれば早速準備だ。
食堂は朝の6時からやってる。
シャワーを浴びたしもう6時過ぎている。
そんな訳で、今一度洗面所で身だしなみを整える。
整えた後は腕時計を付け、スマホや課題とか教科書とかを鞄に入れる。
IS学園は入学式の日に授業があったが、それは2学期も共通。
つまり、今日もバリバリに授業があるのだ。
「仕方が無いとはいえ、やっぱり気分は上がらないな~~」
そんな事を呟きながら鞄を閉じる。
生徒としたら全くと言って良いほど気分が上がらない初日授業。
だが教員のみなさんからしても初日授業は気分が上がらないだろうし、何より普通に大変だろう。
何せ前に夏休みにバイト延長申請に職員室に行ったときでさえ、教員のみなさんは大変そうだったのだ。
夏休み明けで生徒と会うのも久しぶりなのに、その上で授業だ。
いくら事前準備をしていてもきついだろう。
だからまぁ、俺みたいな生徒が文句を言うのはお門違いなのは分かってる。
けど、やっぱり気分は上がらないのだから心の中で思うくらい許して欲しい。
いやぁ、俺もちゃんと学生してるなぁ~~。
織斑一夏の時からすると、こんなまともな学生の考えを持つ日が来るとは思わなかった。
まぁもう23歳、っていうか今度の誕生日で24歳なんだけど。
って、来年俺アラサーじゃねぇか…
28歳以上とか言う人もいるけど、25歳以上って言う人もいるし…
なんか、心が傷つくからこれ以上考えるのは止めよう。
そんな事を考えながら財布とかを準備する。
そして、最後にジュウオウザライトをポケットに仕舞おうと手を伸ばす。
手に取り自分の元へ手繰り寄せる。
シィィィン……
「ん?」
すると、ジュウオウザライトのライト部分が一瞬光った。
ように見えた。
「なんで今光って…」
ジッとジュウオウザライトを見つめてみる。
しかし、それからは何も変化しなかった。
「……」
さっきは何かに共鳴しているようにも感じた。
だけど、ジュウオウザライトと共鳴しそうなのはジュウオウチェンジャーと向こうの地球くらいしか思いつかない。
暫くの間考えてみたけど、俺1人じゃ結論を出せる訳が無かった。
頭の片隅に残しておこう。
そうしてジュウオウザライトをポケットに仕舞い、鞄を手に持つ。
「いってきます」
返事が返ってこないとは分かっていても、やっぱり言いたくなるのは人間だからだろうか。
そんな事を考えながら部屋に鍵を閉め、食堂に向かって歩いていく。
食堂でご飯を食べればそのまま教室に行けるから、ちょっとゆっくりできるな。
歩く事数分。
食堂へとたどり着いた。
えっと…朝食セットで良いか。
食券を購入し、食堂のオバちゃんに手渡す。
「あら、門藤君!食堂に来るなんて珍しいわね~。それに、朝に来るなんて初めてなんじゃない?」
「あはは、昨日の夜面倒になって朝ご飯の下準備サボっちゃって」
「偶にはそれでいいのよ。朝食セットね、待ってて」
なんだろう、今までまともに話した事が無い人にここまで知られてるとなるとムズムズする。
これも男性IS操縦者の宿命か…
まぁ、変な噂じゃないから別に良いんだけど。
「はい、お待ちどうさん」
「ありがとうございます」
オバちゃんから朝食セットを受け取り、そのまま席に向かって行く。
まだ朝早い時間でもあるからか、結構食堂は空いていた。
いや、結構自炊する生徒も多いのかな?
俺には特に関係ないんだけど。
「いただきまーす」
料理は出来立てが1番美味しい。
料理を放置する事は、その料理に関わった人や食材に失礼な行為だと思う。
そんな訳でさっさと食べよう。
箸で白米をつまみ口へ運ぶ。
おお、美味しい。
やっぱり丁寧に調理されてる白米はそれだけでも十分美味しいなぁ。
そんな事を考えながらパクパクと食べ進めていく。
なんか数少ない生徒達からの視線を感じるような気がしないでも無いが、特段害がある訳じゃ無いから別に良いか。
「お、操」
「ん?」
ここで誰かから声を掛けられた。
誰か、とは言っても俺の呼び方で大体分かる。
俺の事を下の名前で呼び捨てで呼ぶ人だなんて学園では1人しかいないんだから。
「おはよう、ラウラ」
「ああ、おはよう操」
声が聞こえてきた方向に振り向くと、そこには予想通りお盆を持ったラウラがいた。
「向かい、大丈夫か?」
「それはもう全然」
会話の後、ラウラは俺の向かいに座る。
「久しぶりだな」
「夏休みちょこちょこ会ってたけどね」
「それでも大体1週間ぶりくらいだろう?」
「確かにそうか」
最後の方はバイトしたり学園長達と釣りに行ったりしてたし。
そこからラウラと会話しながら朝食を食べ進める。
「結構少ないけど、それで足りるの?」
「…だ、ダイエット……」
「あ、ごめん。でも、軍人なんだからある程度は食べとかないと」
「分かってる。これがその最低限だ」
「なるほど」
やっべぇ、かなり失礼な事を言ってしまった。
ラウラは特に気にしてないみたいだけど、次からそう言う事も思考に入れて話さないとな。
「操」
「ん?どうした」
脳内反省会を繰り広げていると、ラウラが話し掛けてきた。
何時の間にか空になっていた茶碗を机の上に置き視線をラウラに向ける。
すると、ラウラはニコッと笑みを浮かべると
「2学期にはいろいろな事が予定されているからな。頑張ろう」
と右手を出してきた。
「ああ!頑張ろう!」
俺も笑みを浮かべ返すと、コツン、と自分の右手を突き合わせる。
そうして、朝食を食べ終えたので食器類を返却して2人で教室に向かう。
久々に会うクラスメイト達との会話もそこそこに整列して体育館に行く。
ラウラの言う通り、2学期にはいろいろあるからな!
さぁ、気合い入れていきますか!!
IS学園、体育館。
今此処では2学期の始業式が行われていた。
学園長や教師からの長い話も終わり、今は表彰の時間。
その名の通り、夏休み中に部活で好成績を残した生徒を表彰するのである。
『全国高校生水泳大会、女子400m自由形、優勝、立川六花』
「はい!」
『記録、4:23.59』
パチパチパチパチ
表彰される生徒が元気よく返事をし、堂々とした足取りでステージ上へと歩いていく。
その表情はとても晴れやかなものだ。
そんな彼女の事を見ながら生徒や教員達は盛大な拍手を贈る。
「いやぁ、全国優勝かぁ。凄いなぁ」
拍手をしながらそんな感想を漏らす操。
水泳に関してはずぶの素人でも、全国優勝が凄いという事は流石に理解できる。
「ああ、国の中で1番という事だろう?凄いな」
操の隣に立つラウラも同じような感想を漏らす。
「それにしても、1つ疑問に思う事があるんだが」
「どうした?」
「なんで『全国』で日本全体の事を言うんだ?」
「……分からん」
『全国高校生吹奏楽コンクール、3位入賞、吹奏楽部。代表して、部長、ルーサー・エランリィ』
「はい!」
『副部長、青木楓』
「はい!」
「おっと」
パチパチパチパチ
ラウラが小声で発した疑問に操が遠い目をしながら同じく小声でそう返すと、丁度そのタイミングで次の表彰者2人が呼ばれた。
少し慌てて拍手を贈る。
そうして暫くの間表彰の時間が進む。
表彰される内容の殆どが全国区規模の大会のものの事に、操とラウラは驚きの表情を浮かべる。
「IS学園って、IS以外の事でも普通に優秀校なんだなぁ」
「そうみたいだな。部活動をしていなから詳しくは知らなかったが、まさかここまでとは」
『以上で表彰を、終わります』
司会をしていた教員は最後に礼をすると、マイクの前から離れて行った。
それと入れ替わるように、真耶がマイクの前に立つ。
『ありがとうございました。では、最後に大切なお知らせです。学園長、お願いします』
「はい」
真耶の声の後、十蔵がステージ上のマイクの前に立つ。
先程もう既に学園長からの話しは終わっているので、生徒達は不思議そうな表情を浮かべる。
『みなさん、今日は大事なお知らせがあります。今日からIS学園で働いて下さる方がお1人増えます』
その言葉を聞いた生徒達は一瞬ざわつくも、直ぐに静かになり十蔵に視線を向ける。
そんな中、操とラウラは察した。
何故なら臨海学校の時に、2学期からIS学園に来る予定だという人の話を聞いたからだ。
『それでは、ナターシャ・ファイルス先生、挨拶をお願いします』
「はい」
十蔵の言葉の直後、ステージ袖に控えていた金髪の美女…元アメリカ軍所属のナターシャ・ファイルスがマイクの前に歩いていく。
殆どの生徒達は美人なナターシャに同性ながら思わず見とれ、操とラウラは予想通りと笑みを浮かべる。
マイクの前についたナターシャは緊張しているような表情だったが、ニコリと笑みを浮かべ話し始める。
『初めまして。本日からIS学園に勤務させて頂く事となりました、ナターシャ・ファイルスです。教員免許は今試験中な為所有していませんので、全学年の実技授業のサポートをします。慣れない事も多く、迷惑を掛ける事もあるかもしれませんが、精一杯頑張りたいと思いますので、よろしくお願いします』
パチパチパチパチ
ナターシャはマイクの前でお辞儀をし、生徒達は一斉に拍手を贈る。
ナターシャは少し安心したかのような息を吐くと、そのままステージから降りて行った。
『それでは、これにて2学期修行式を終了します。各学年の1組から順に各教室に戻って下さい』
真耶の指示に従い、生徒達が各教室に戻っていく。
この後、10分間の休憩を挟み2学期最初のLHRだ。
成績表の返却や夏休みの課題の提出、2学期にあるイベントに関する話など重要な時間になっている。
そんな時間の前なので、教室に戻った操は直ぐにトイレに向かう。
始業式前にも一応行っておいたとはいえ、なんとなくもう1回行っておこうと思ったのだ。
IS学園は特殊な環境にあるため男子トイレというものが非常に少ない。
その為トイレに行くにはそこそこな距離を移動しなければならないのだ。
大変という訳では無いが、それでも気楽に立ち寄れないという点では不満を覚えてしまう感じだ。
だからといって、自分(と春十)の為だけに新しくトイレを立てる事など不可能だと分かっている操は愚痴をこぼすことも無く、スタスタとトイレに向かう。
「はぁ…ずっと立って話を聞いてると腰が…」
その帰り道、操はボソッと呟くと腰をさする。
するとピタッと立ち止まり、そのまま暫くの間思考を続ける。
大方今の動作は年なのかどうかを検討しているのだろう。
「大丈夫だ!まだアラサーじゃないぃ!」
操は周囲に誰もいないのに必死に言い訳するかのような声を発する。
はぁはぁと肩で息をした後、息を整え教室へと向かい歩き出す。
「あっ、門藤君!」
「ん?」
そんな操は背後から声を掛けられた。
反射的に振り返り、少しだけ驚きの表情を浮かべる。
何故なら、そこにいたのは
「ナターシャさん!」
さっきまでステージに立っていたナターシャだったからだ。
ナターシャは操の近くに駆け寄って来る。
「ナターシャさん、お久しぶりです」
「ええ、久しぶり」
「あ、ナターシャ先生の方が良いですかね?」
「どっちでも良いけど…ふ、2人の時はさんの方が…」
「?分かりました、ナターシャさん」
少しもじもじしながら話すナターシャに操は首を傾げるも名前で呼ぶ。
「2学期はいろいろなイベントがありますから、ナターシャさんみたいなしっかりした人が新しく来てもらえると生徒側からしても安心感がありますね」
「逆にしっかりしてない人ってどんな人なのよ」
「……織斑先生とかですかね」
「え?あのブリュンヒルデが?」
ナターシャの中では世界最強のIS乗りとしての千冬のイメージしかなく、IS学園で見せる駄目教師としての姿を知らないのだ。
そんな反応になるのも仕方が無い。
ナターシャの反応を見て、そう言えば千冬のあの態度はIS学園内でしか(というかほぼほぼ自分の前でしか)見せてないものだと思い出した操。
頬をポリポリとかきながら苦笑いを浮かべる。
「ああ、まぁ、その…暫くすれば分かると思いますよ」
「そ、そうかしらね?」
操がふわっとした返事をしたので、ナターシャもまだ半信半疑のようだ。
だが、ナターシャもそこまでしないうちに千冬の野蛮な行動を目の当りにする事だろう。
「おっと、そろそろLHRが始まっちゃいますね」
「あら、そうね」
ここで2人はもう直ぐLHRが始まる事に気が付いた。
千冬にとやかく言われると絶対に面倒な事が起こると操も理解しているので早急に戻ろうとする。
「それでは、俺は直ぐ教室に戻りますね。ナターシャさん、改めましてよろしくお願いします」
操はニコッと笑顔を浮かべるとナターシャに向かって右手を差し出す。
その意図を直ぐに理解したナターシャは笑みを浮かべ返すと同じく右手を差し出し、2人は握手をする。
「ええ、よろしくね、門藤君」
「あ、2人の時は名前で良いですよ」
「えっ…よ、よろしくね、操君」
ナターシャは若干気恥ずかしそうにしながらも操の事を下の名前で呼ぶ。
操はもう1段上の笑みを浮かべると急ぎ目に教室へと戻っていった。
ナターシャは暫くの間気恥ずかしそうな雰囲気を醸し出しながらその場に留まっていたが、自分の仕事もあるため足早に職員室へと向かうのであった。
その後、操はギリギリだがLHRの開始に間に合ったため、千冬にぐちぐち言われることは無かった。
提出物の提出後、初日の授業が行われた。
とは言っても夏休み明け初の授業だ。
夏休みの課題のやり直しや解説をして全ての授業が終了した。
そうして放課後。
操は生徒会室を訪れていた。
理由は簡単で、夏休みに動物園に行って以来楯無と虚に会っていなかったので、顔を見せに来たのだ。
1度寮の部屋に戻り前日までに用意していた手土産が入った袋を抱え、生徒会室へとやって来た。
ノックをし、いざ部屋の中に入った時目の前に広がる光景に操は表情を固まらせた。
「あ、操さん」
「さっきぶりで~す!」
先ず簪と本音。
この2人は良い。
操へ入室の許可を出したのは2人だからだ。
生徒会室のソファーに座って紅茶を飲みながら、操と同じ方向を見て遠い目をしている。
問題はここからだ。
「…あ…あ……あぁぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
生徒会長の机に突っ伏し、ゾンビのようなうめき声をあげている楯無と
「……」
そんな楯無の前で仁王立ちをし、恐怖を感じる笑みを浮かべている虚の2人だ。
生徒会室に入った瞬間にこんな光景が広がっているのだから、いくら操でも固まってしまう。
「えっと…どういう状況?」
操は困惑した声色を発しながら簪と本音に視線を向けながらそう質問をする。
2人は紅茶の入ったカップを机の上においてから操に視線を向け説明を始める。
「事の発端は、確かお姉ちゃんが夏休み中に終わらせるはずだったお仕事をまだ残してて、期限ぎりぎりだったから虚さんが怒ったんです」
「それで~、その怒りに怯えながら凄いペースで仕事をして~~、それで提出が終わったからさっきまで雷を落とされてたんで~す」
「なるほど、大体理解した」
2人の説明で事情を理解した操はどうしようかと思考を巡らせる。
説教が終わってどのくらいたったタイミングで自分が来たのかは分からないが、虚がまだ恐怖の笑みを張り付けているという事は、怒りは収まっていないという事だ。
となると、自分の来訪にすら気が付いていない可能性が高い。
「良し…」
操は覚悟を決めると、袋をいったん置いてから虚の前にまわりこみ声を掛ける。
「虚さ~ん、こんにちは~」
「はいっ!?」
操に声を掛けられた操はビクっと驚いたように身体を震わせる。
操の仮説通り、来訪にも気が付いていなかったようだ。
「あ、やっぱり気が付いてませんでしたか」
「み、操さん…い、何時の間に…」
「さっきノックして簪達に許可を貰って入ってきましたが?」
苦笑しながら操がそう言うと、虚は気恥ずかしそうに視線をそらした。
「虚さん、事情は聞きましたが、この辺にしておきましょう。これ以上怒るのは虚さんの方が辛いでしょう?次やらかさない為にしっかりお灸を添えといたらこの場は良いと思いますよ」
「…そうですね、この辺にしておきましょう」
操に宥められ、虚は楯無への説教を止めた。
「…という訳なので、楯無さんも虚さんの事が大事なら仕事はちゃんとしましょう」
「は、はーいぃぃぃぃ……」
楯無はうつ伏せの状態から背もたれに全体重をかける体勢に変わると、そんな気の抜けた返事をする。
普段の楯無からは想像もできない程弱っている姿を見て、操達はついつい苦笑いを浮かべる。
「それで操さん、わざわざ生徒会室に何か用ですか?」
「ああ、楯無さんと虚さんは動物園行って以来会って無かったので、顔を出しておこうと」
「その為に、わざわざありがとうございます」
「いえいえ、自分の意思で勝手にやっただけですし。あ、そうだそうだ。手土産があるんです」
虚との会話で手土産の存在を思い出した操はさっき置いた袋の元に向かう。
背もたれにもたれかかっていた楯無を含め、全員が操に視線を向ける。
操は袋の中から手土産を取り出すと、
「これです!」
笑顔を浮かべながらバッと楯無達に見せる。
持ってきたのは、操手作りのデフォルメぬいぐるみ。
以前シュヴァルツェ・ハーゼの隊員達に作ったものと同様のものである。
可愛らしくデフォルメされた楯無、簪、虚、本音の4人。
縫い目も綺麗で完成度も高いぬいぐるみは、一目見ただけで丁寧に作られている事が分かるものだった。
「そ、それは…?」
「自作のぬいぐるみです!そこそこ自信作です」
操は胸を張りながら自慢げな笑みを浮かべると、それぞれにぬいぐるみを手渡していく。
可愛らしい自分のぬいぐるみを見た4人。
「「……」」
操のぬいぐるみ制作技術を知らなかった楯無と虚は、料理での敗北で壊れたプライドを、更に踏みつけられて粉々になったかのような感覚を覚えた。
「「あぁぁ…」」
以前ラウラにぬいぐるみを見せてもらった簪と本音は、傷口に塩を塗られた。
「ど、如何しました…?」
4人の表情が暗くなった事で不安になった操がそう質問すると、4人はハッと笑顔を浮かべる。
「ご、ごめんなさい!凄く嬉しいです!ありがとうございます!」
「私、ここまで裁縫が上手くないので参考になります!」
「お、おお、どういたしまして」
4人とも、プライドは砕かれたがぬいぐるみを貰って嬉しくない訳では無い。
笑顔でお礼を言い、操はその勢いに若干気圧されながら言葉を発する。
ここで、ゴホンゴホンと楯無が咳ばらいをする。
全員の視線が自分に集まった事を確認した楯無は口を開く。
「今日から2学期、そんな訳で……」
言いながら楯無は右手を前に突き出す。
その行為でやりたい事を大体察した操達。
((((さっきまで怒られて疲れてた人がやっても締まらないなぁ))))
と考えながら同じく右手を前に出し、手を重ねる。
「頑張っていきましょう!!」
「「「「おーーー!!!!」」」」
5人は右手を上にあげ、同時に笑顔を浮かべる。
波乱万丈が予想される2学期の始まりは、こうして幕が上がったのだった。
二十歳超えてるけど高校生な操だから生じる年齢の葛藤。
頑張ってくれ。
次回も何時になるか分かりませんが、楽しみにしていてください!
評価や感想、よろしくお願いします!