INFINITE・THE WORLD   作:ZZZ777

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かなりお待たせしました。
サブタイどおり学園祭の準備回です。

今回もお楽しみください!


準備がなんなら1番大事

三人称side

 

 

学園祭に向けた話し合いを行ってから、少しの時が過ぎた。

IS学園の空気は、学園祭一色に染まっていた。

 

 

それは操が所属している1年1組も同様である。

学園祭が近付いていくにつれ、クラスのテンションはそれに比例する形で高まっていっていた。

 

 

そんなこんなで、学園祭開催1週間前。

土曜日であり、通常なら警備員と時間外労働をしている教員以外校舎にいないはずの日。

 

 

「おーい!赤のペンの予備何処だっけ!?」

 

 

「そこ!エリシィさんの机の下!」

 

 

「模造紙足りないんだけど!?」

 

 

「えっ!?あ、この間の修理で結構使っちゃったんだ!直ぐに先生に注文しないと!」

 

 

「衣装出来たよぉ!」

 

 

「かわいい~~!」

 

 

だが、この日のIS学園からは、生徒達の楽しそうな、そしてとても元気な声が至る所から聞こえてくる。

学園祭が迫ってきているので今日と明日は各教室を解放し、作業が出来るようになっているのである。

学園祭前最後の休日で、前日を除けば終日作業が出来るのはこの2日間だけという事で、各クラス、各部活が本気を出しているのだ。

 

 

そしてそれは、1年1組も同じ事。

メイド・執事喫茶を行う1年1組。

当日は役割を大きく4つに分ける予定だ。

 

 

1つは接客。

メイド(執事)のコスプレをして、やって来るお客さんの席に案内したり、注文の品を給仕する。

また、メイド喫茶の特徴である萌え台詞なども担当の為、当日の主役と言っても過言ではない。

 

 

2つ目は調理。

喫茶店は、当然ながら商品は飲食物である。

そして買ってきた既製品をそのまま提供するのはルール違反なので、飲み物をコップに移したり、盛りつけしたり、一部メニューは実際に調理する。

 

 

3つ目は集客。

当日は自分達の出し物の告知をするために、ポップを持って学園内を歩く事が可能。

その為、衣装を着用しポップを持ち学園中を練り歩くのだ。

担当する人数は少ない。

 

 

最後に4つ目、店長。

当日店の全体を仕切り、トラブルが起こったときの対処等を行う。

担当はクラスで唯一本物のメイド・執事喫茶でのバイトを続けている操。

店長とはいっても、ほぼ裏方なので余程の事態が起こらない限り表に出る事は無い。

 

 

そして、今操が何をしているのかというと…

 

 

「おお!凄く良いと思う!」

 

 

「ですよねですよね!これは我々衣装班の自信作です!」

 

 

教室で接客班の衣装の確認である。

自信作という言葉通り、その完成度はかなり高い。

それはもう、バイトで本当に接客をしているプロが着用しているものを間近で何度も見ている操が見ても、かなり完成度が高いと言えるものだった。

 

 

「へぇ~、ここフリルにしたんだ」

 

 

「そうなんですよ!これが1番のこだわりです!どうですか、可愛いでしょう!?」

 

 

「………うん、可愛いと思う」

 

 

操としては、ただフリルについて話しただけだったのだが、衣装担当代表、岸原理子の思った以上の反応に若干引いてしまう。

やはり操も男。

『可愛い』という言葉に対する認識は女子とはやっぱり違うらしい。

 

 

「それで、メイド服しかないけど、織斑は…君が着る執事服は?」

 

 

操がそう疑問を口にするもの当然だった。

何故なら、目の前にあるのはメイド服のみ。

店長をする操を除けば、唯一の男子生徒である春十はほぼ強制的に接客担当になった。

別に春十がメイド服で接客してはいけないという決まりは無いが、春十の性格から考えてメイド服を着用するとは考えにくい。

 

 

(いや、もしかしたら本当にメイド服の可能性も……)

 

 

操はメイド服を着用した春十を一瞬だけ想像して、春十の顔が自分の顔とほぼ同じ事を思い出し、なんとなく嫌な気分になったので直ぐに止めた。

だがしかし、春十がメイド服を着用する可能性が無くなった訳では無い。

操は理子に視線を向ける。

理子は分かってますと言わんばかりに頷くと、

 

 

「実は、何人かにもう衣装を着てもらっているのです!」

 

 

と胸を張って言う。

 

 

「ああ、なるほど。それで」

 

 

「そうなんです!では、全員入って来て!!」

 

 

理子の言葉と同時に、2人は視線を教室の扉に向ける。

 

ガラララ

 

教室の扉が開き、数人が教室の中に入って来る。

 

 

「おおっ!全員似合ってる似合って…る……」

 

 

操の声のボリュームはだんだんと小さくなっていく。

だが、目の前の光景を考えればそれも仕方が無いだろう。

 

 

先ずは執事服を着用した春十。

性格や価値観は兎も角、見た目はイケメンなので似合っている。

執事服のクオリティーもメイド服同様かなり高く、プロの現場で実際に着用している操が見ても、かなりの完成度だとハッキリ言えるものだった。

顔が自分に似ているので、なんとなくバイトの時の自分を客観視しているようで気恥ずかしい事と、春十の今までの態度という懸念点を除けば、春十に関しては完璧だろう。

 

 

その評価を下し、操は視線を少し横にずらす。

そこにいるのは銀髪黒眼帯メイド。

そう、ラウラである。

操がさっきまで見ていたメイド服とサイズが違う事以外同じものを着用している。

医療用じゃない眼帯という、メイド服にミスマッチすぎるものをしているのに、ラウラの綺麗な銀髪や整った容姿のお陰で不思議と似合っていた。

顔を真っ赤にしているのはご愛敬。

 

 

操は再び視線をずらす。

そこにいるのは、同じくメイド服を着用した静寐、神楽、癒子、さゆかの4人。

ラウラとは異なり、そこまで恥ずかしがっては居ないようだ。

とても自然にメイド服を着こなしており、似合っている。

 

 

ここまでは良い。

ここまでは。

 

 

操は最後に表情を懸念のものに変えながら視線をずらす。

そこにいるのは、1年1組マスコット枠のほほんさんこと本音。

本音が此処にいる事事態は別に何の問題は無い。

本音も1年1組の生徒なのだから。

だが、問題があるのはその身に纏う服だった。

 

 

ラウラ達と同じメイド服でもなく、ましてや春十と同じ執事服でもない。

その身に纏うは、全身を覆う着ぐるみパジャマ。

なんとなく気だるげな表情に見えるキツネのような動物の顔が頭の上に来ており、とっても似合っている。

そう、とても似合っている。

似合ってはいるのだが……そう言う問題じゃない。

 

 

「全員似合ってるよ。織斑君も格好いいし、ラウラ達は可愛い」

 

 

「っ!可愛いって直接言うなぁ!!」

 

 

「ちょっ!?ラウラ、暴れない暴れない!」

 

 

「折角のメイド服破れちゃう!」

 

 

「ぬぁあ!私達の3時間がぁ!!」

 

 

「えっ!そんなにかかったの!?」

 

 

予備も含めてザッと30着ほどのメイド服が完成している。

1着3時間かかるとしたら、単純計算で90時間。

私『達』と言っているので、1着を何人か手分けして作った可能性大。

手分けして3時間かかったとなると、その労力は90時間よりもはるかにかかっていると言っても過言ではない。

そんなもの、余計に欠損させる訳にはいかない。

 

 

そうしてなんとかラウラを落ち着ける事に成功した。

だが、未だに恥ずかしいらしくメイド服を汚さないようにしながら、器用に教室の端で縮こまっている。

 

 

因みに操はしれっとラウラの事を写真に撮り、クラリッサに送ってあげた。

恐らく1時間後には全隊員に写真が共有されているだろう。

後日操の元にはクラリッサ達からの感謝の連絡が大量に来たというのは余談である。

 

 

「それで、のほほんさんはなんでチベットスナギツネの着ぐるみパジャマなの?」

 

 

「お、流石操さん!初見でチベスナを見抜けるなんて!」

 

 

「チベットスナギツネってそう略すんだ…」

 

 

本音の着ぐるみに使われている気だるげなキツネことチベットスナギツネ。

哺乳類ネコ目(食肉目)イヌ科キツネ属の動物である。

猫なの?犬なの?狐なの?とは言ってはいけない。

チベットスナギツネである。

 

 

「って、チベットスナギツネの話題はそこまで重要じゃないんだよ」

 

 

「え、でもチベスナの話題自体が結構レアなイメージあるんですけど」

 

 

「カップ麺が原因じゃない?」

 

 

「あ、それですね。操さんって実際に見たことあるんですか?」

 

 

「標本は見たことある。流石に生きてるのは見た事無いけど」

 

 

「おお、流石は動物学者のアシスタント!」

 

 

「ありがと~」

 

 

「「あはははは」」

 

 

「操さん操さん、結局話それてますよ?」

 

 

「ハッ!?」

 

 

静寐に指摘されて、理子の話術に丸め込まれていた事に気が付いた操。

そのハッとした表情を浮かべる操を見て、静寐達は珍しいものを見たなぁ、といった表情を浮かべる。

操はみんなの前では何時もしっかりしていて、操にはあまりこういったポンコツ行為のイメージが無い。

その為こうして物珍しく見えるのだろう。

 

 

まぁ、その内気で卑屈な性格がまだ酷かった頃はジュウオウジャーのメンバーに散々迷惑かけたのだが…静寐達がそれを知る由は無い。

 

 

「こ、コホン。それで岸原さん、なんでのほほんさんは着ぐるみパジャマなの?メイド・執事喫茶だよね?」

 

 

「本音にはメイド服よりこっちの方が似合うので、これで客呼びでも」

 

 

「……岸原さんは店長と同じ感性の持ち主のようだ」

 

 

夏休みの体験バイトの時に同じ様な事を喋っていた店長の事を思い出し、遠い目で教室の窓から@クルーズがある方向を見つめる操。

ブンブンと頭を振り、改めて本音の着ぐるみパジャマを見る。

チベットスナギツネというそこそこマイナーな動物をセレクトした以外は、ツッコミどころの無い完成度。

顔と指先以外肌が見えていないので、よりチベットスナギツネ度が上がっているのもまた良い。

果たしてメイド・執事喫茶にチベットスナギツネが必要なのかは謎だが。

まぁ、動物と触れ合えるカフェは繁盛してるし、マスコット枠がいても問題は無いだろう。

多分。

 

 

「ともあれ執事服も、メイド服も、チベットスナギツネも確認OK…と」

 

 

ひと悶着どころかふた悶着くらいあったので、ドッと疲れたような表情を浮かべながら操はチェック用の用紙に記入していく。

 

 

「操さん操さん」

 

 

「ん?どうしたさゆか」

 

 

「調理室行かなくて良いんですか?」

 

 

「え゛!?」

 

 

さゆかの指摘を受け、慌てて時計を確認する操。

操は衣装チェックの次に調理室に行き、提供するメニューのチェックもしないといけない。

そして、今日の調理室の使用状況は結構カツカツなので、たとえ1秒でも遅れる訳にはいかない。

時刻は操が調理室に居なくてはいけない時間の4分前。

調理室は家庭科の調理実習でも使用する、いわゆる移動教室の1つなので2、3分で移動が出来る範囲ではある。

だが2、3分掛かってしまうのは事実。

つまり……

 

 

「ごめん!俺もう行く!今日は解散で良いから!お疲れ様!!」

 

 

操は慌てて教室から飛び出て、走らない程度での最高速度で調理室へと向かって行った。

操にとっては早歩きだったとしても、常人から見ればかなりの速度の為、教室に残っている静寐達は暫く驚いた表情を浮かべていた。

 

 

「取り敢えず、みんな着替えよっか」

 

 

「そうだね。ほら、何時までもそんなところで蹲らないで」

 

 

「ううう…」

 

 

メイド服に傷をつけないように気を付けながら、静寐達はラウラを更衣室へと引きずっていく。

理子もメイド服を回収しないといけないので後に付いて行く。

 

 

「あ、織斑君!執事服、教壇の上においてくれたら帰って良いから!」

 

 

「あ、ああ…」

 

 

理子の言葉に春十は呆然とした表情で返事する事しか出来なかった。

そうして、1人でポツンと教室に残された春十。

暫くの間呆然とした表情を浮かべていた春十だが、やがてとても疲れたような表情を浮かべて椅子に座り込む。

 

 

「クソッ…なんだよ、なんなんだよぉ!なんで学園祭であんなもん着てんだ!?そんな描写なかっただろうが!!」

 

 

春十は憤りを露わにし、机の事を殴る。

未だに原作との違いに対して憤る春十。

 

ガン!ガン!ガン!

 

何度も何度も机を殴る春十。

今まで、気に食わない事があれば物にあたり、罵詈雑言を発していた。

何一つ変わらない…つまり、何一つ成長していない行動。

そんな事すら、春十は理解していない。

 

 

「クソッ!クソッ!クソッ!!」

 

 

結局、春十が執事服から着替えたのはそれから10分後だった。

 

 


 

 

「う~~ん…ついに明日かぁ…」

 

 

ドタバタしていた準備の日から約一週間後。

学園祭前日の放課後。

操の姿は屋上にあった。

 

 

もう既に、学園祭で使用する教室という教室は全て学園祭仕様になっている。

まぁ、まだ準備がギリギリ終わっていないクラスや部活もちょこちょこあったりしているのだが、その作業ももう終わりに近いだろう。

 

 

1年1組の教室も、完璧にメイド・執事喫茶仕様になっている。

当然、元が教室の為学園祭感というか、学生クオリティー感がどうしても拭いきれていないが、そもそも学園祭なのだ。

手作り感がある方が味があって良いだろう。

 

 

もう準備は明日の朝、服装や提供品などの最終チェックをするくらいである。

全員既に解散しており、全員が寮の自室に戻っているか、部活の方に顔を出しているだろう。

 

 

そんな中で、操は1人空を見上げていた。

空は生徒達の期待に応えるかのようで、何処までも青く広がっていそうだった。

 

 

「綺麗な空だなぁ…あ、鷲…」

 

 

IS学園は日本の本土に無い。

こんなところにまで鷲が飛んでくるのは珍しい。

その鷲が見えなくなるまで、操は鷲の事をボーッと眺めていた。

自由気ままに、だが凛々しく、堂々と飛ぶ鷲。

全く関係が無い筈なのに、操はその姿に今は会えない友人の姿を重ねていた。

 

 

「今頃みんなどうしてるかなぁ…会いたいなぁ……」

 

 

操はそう呟くと、ポケットからキューブモードのキューブクロコダイルとキューブウルフを取り出し、空に掲げる。

キューブライノスはキューブモードに変形できず、空に掲げるのも一苦労なので今回ははぶった。

 

 

手の中でクロコダイルとウルフを弄りながら、思いをはせる操。

視線を再び空に向ける。

時間が経っている訳では無いので、空はさっきまでと変わらず青く澄んでいる。

そして、その先には地球という枠組みから外れ、生物が存在していない宇宙が広がる。

 

 

「こうしてると、束がそこを目指した理由がなんとなくわかる気がするな。まぁ、あの天災の思考を完全に理解できるとは全くもって思わないけど」

 

 

操は苦笑交じりにそう言葉を零すと、クロコダイルとウルフをポケットに仕舞い、屋上の端に移動する。

そうして学園の敷地……大きく言うと地球を見下ろしながら、優しい表情を浮かべる。

 

 

「でも、俺はやっぱり宇宙より地球が好きだな。いろいろな生物がいて、互いを支え合って生きるこの惑星(ほし)が」

 

 

この世界でも、向こうの世界でも。

地球では今この瞬間にも何処かで新たな命が生まれ、また別の何処かでは消えている。

生とし生きるもの、何時かは死が訪れる。

そんな限りある生命は、一個体だけでは生きてはいけない。

いろいろな個体が支え合って、前を向いて生きている。

勿論、そこには食物連鎖等の命の奪い合いはある。

だがそれも、地球という惑星の摂理だ。

 

 

そんな、生命を感じられる地球が、操は好きだ。

だからこそ、操は宇宙へのこだわりがあまりない。

 

 

「もし俺が宇宙に行く事があるとしたら……地球で戦うとヤバいくらいの巨大な敵と戦う時くらいかな?」

 

 

操はそう言葉を漏らし、苦笑を浮かべる。

 

 

「まぁ、トウサイジュウオーに飛行能力が無いから連れて行ってもらわないといけないけど」

 

 

そろそろ帰ろう。

そう思った操が身体の向きを屋上の扉に向けた時、

 

 

ガチャ

 

 

と音を立て、屋上の扉が開いた。

操が扉の方を向いていたため、必然的に顔を合わせる事になる。

 

 

「あ、楯無さん」

 

 

「操さん!」

 

 

屋上に入って来た楯無は操の事を視界に確認すると、パタパタと駆け寄る。

 

 

「操さん、こんなところで何してたんですか?」

 

 

「あ~、宇宙(そら)地球(ほし)を見ながら思いにふけってました」

 

 

「ふふふ、なんですかそれ」

 

 

操の言葉に、楯無がクスクス笑いながらそう返す。

そんな反応が帰って来ることは重々承知だったのだが、事実ではあるので冗談だという事も出来ず、操は苦笑いを浮かべる事しか出来なかった。

だが、頭を振って切り替えると、

 

 

「楯無さんこそ、どうしてわざわざ屋上まで?生徒会、忙しいのでは?」

 

 

と質問し返した。

その質問を聞いた楯無は、何処か疲れたような笑顔を浮かべ、遠くを見ながら言葉を発する。

 

 

「仕事の息抜きです。5分だけ許可を虚ちゃんから貰ったんです。勿論、この後も最終下校時刻ギリギリまでやる事がありますよ?なにせ明日は色んな国から外部の人が来ますし、中にはスカウトも……」

 

 

「お、お疲れ様…であってますかね?っていうか、なんで前日にその作業してるんですか?そもそも、それは本当に生徒会の仕事なんですか?」

 

 

いくら楯無が偶に仕事をさぼって簪の観察に行くとは言え、流石に学園祭に関する事を、前日までため込むなんて愚かな行為はしないと操は理解している。

それと同時に、操の脳裏には1人の教師の姿が思い浮かんでいた。

 

 

(もしかして、こんな事態になった原因は……)

 

 

「織斑先生が、仕事ためてました?」

 

 

操の言葉に、楯無がブンブンと首を縦に振る。

 

 

「そうなんですよぉ!織斑先生が、1学期の内からやっておかないといけない仕事をため込んでてぇ!!教師の人達で必死に消化してたんですけど、それでも間に合わないみたいでぇ!!私達にぃ!!回って来たんですぅう!!!」

 

 

「うわぁ……」

 

 

あの楯無が若干涙目に見えなくもない表情で叫ぶ。

その内容に、思わず操は表情を引きつらせた。

楯無は暫くの間そう騒いでいたが、やがて落ち着くとはぁはぁと肩で息をする。

 

 

「す、すいません、なんか思い出したら怒りが止まらなくて……」

 

 

「それで暗部務まるんですか?」

 

 

「うっ、痛いところを…生徒会長モードだからこうなってるんです!暗部モードならこんなに感情は動かないです!」

 

 

「……生徒会長モードでも、冷静でいるべきでは?」

 

 

あまり深く考えてない操の正論に、楯無は心にダメージを受けた。

胸を押さえ、その場に蹲る。

そんな反応を見た操は慌てて楯無に駆け寄っていく。

 

 

「す、すみません、なんか生意気なこと言って」

 

 

「き、気にしないで下さい…事実であることには間違い無いので…簪ちゃんに嫌われないように頑張りますっ!!」

 

 

「あ、はい。頑張って下さい」

 

 

楯無がガバッと立ち上がり、決意に満ちた表情でそう言う。

その気迫に、操はただ応援する事しか出来なかった。

ここで、ふと操は気が付いた。

 

 

「楯無さん、時間大丈夫ですか?さっき休憩5分って……」

 

 

「え?」

 

 

操に言われ、楯無は時間を確認する。

すると、その表情からさぁっと血の気が引いていく。

 

 

「い、今すぐ戻らないと!!」

 

 

楯無は慌てて走り出そうとするが、急に走り出したためかバランスを崩し、顔面から倒れていく。

 

 

「ちょっ!危ない!!」

 

 

操が屋上の床を蹴り、楯無と床の間に滑り込むと、その身体を優しく受け止める。

 

 

「ふぅ…大丈夫ですか?慌てて行動して、怪我したら元も子もないですよ」

 

 

「はい……気を付けます……」

 

 

「ところで提案なんですけど、俺で良かったら手伝いますよ?生徒会じゃない人間が見て良いのか分からな「手伝って下さい!!!!」あ、はい」

 

 

食い気味で来た楯無に若干引きながら、操は首を前に倒す。

 

 

「操さんが手伝ってくるなら百人力!早く行きましょう!時間は有限です!!」

 

 

「わ、分かったので生徒会長が走らないで下さい!っていうか、その腕の何処に俺を引っ張れる力があるんですか!?」

 

 

楯無に思いっきり引っ張られる形で、操は生徒会室へと向かった。

結局休憩時間を過ぎていたため虚に怒られそうになったが、そんな事してるほど余裕が無いので、すぐさま仕事にとりかかった。

そうして、仕事が終わったのはそこからキッチリ2時間後だった。

 

 

疲れ果てた表情で職員室に提出に行ったとき、教員達はそれ以上に疲れていた。

如何やらこの後も残業確定らしい。

だが、悲しい事にこれ以上は何も手伝えないし、手伝う気力もわいてこないので全員大人しく帰宅した。

 

 

(前日がこんなんで、明日本当に大丈夫か…?事件なんか起こりませんように……)

 

 

どうやっても拭えない不安を感じながらも、操は明日に備えベッドに横になる。

疲れも溜まっていたので、直ぐに夢の世界へ旅立つことになった。

 

 

こうして夜は更けてゆく……

 

 

 




なんともはた迷惑な教師。
でも、それを定期的に確認しなかった学園側にも問題はある。
はてさて、どうなってしまうのやら。

次回も何時になるか分かりませんが、楽しみにしていてください!

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