INFINITE・THE WORLD   作:ZZZ777

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実はしれっと1周年記念日を過ぎました。
お待たせしました!

今回もお楽しみください!


学園祭開幕

三人称side

 

 

ドタバタした前日から一夜明け、朝。

今日は待ちに待った学園祭当日である。

 

 

前日、最終下校時刻ギリギリまで生徒会の仕事を手伝い、教員達の更なる残業を見た操。

大丈夫なのかと気が気ではなかったが、無事に開催され、操はホッとしていた。

 

 

裏側でギリギリの戦いが繰り広げられていたことはつゆ知らず、生徒達は朝から非常に盛り上がっていた。

今日の為に、ずっとクラスで頑張って来たのだ。

テンションが上がらない訳が無い。

 

 

そして、そのテンションが高いのは1年1組も同様である。

完璧にメイド喫茶仕様になった教室には、もう既に生徒全員と真耶が集合していた。

元々教壇があった場所に操が、その隣に真耶が立っており、2人の前には各々の衣装に身を包んだ生徒達が立っている。

本来ならば担任である千冬もこの場に居ないといけないのだが、教室にその姿はない。

先程説明を求められた真耶曰く

 

 

「職員室には居た気がしたんですが……今は何処にいるか分からないです……」

 

らしい。

それを聞いた操は思わずイラついてしまったが、本人がいない場所で怒っても仕方が無いのでグッと堪えた。

 

 

「さぁみんな、今日は待ちに待った学園祭だな!」

 

 

クラスにそう語り掛ける笑顔の操。

この喫茶の店長という設定なので、身に纏うのは何時ものビジネススーツだ。

唯一何時もと違うのは、その胸にIS学園の校章を着けていない事ぐらいだろうか。

だが、その校章は23歳である操の、IS学園の生徒らしい唯一の持ち物。

それが無くなった事で、店長だと言われても自然に信じられるようになっている。

 

 

「今日の為に、クラスみんなで頑張って来た。だから、今日は全力で楽しもう!!」

 

 

『おおぉぉぉ!!』

 

 

操の言葉に、真耶を含めたほぼ全員が盛り上がりの声を発する。

殆どの生徒達は制服だが、午前の接客班の生徒はもう既にメイド服を着用しているので、その動作は若干違和感があるかもしれない。

だが、これは学園祭なのだ。

これくらいがちょうど良いだろう。

 

 

だが、そんな明るい雰囲気の中。

前に立つ操に、恨みがましい視線を向ける人物が3人。

 

 

「「「……」」」

 

 

そう、春十、箒、セシリアの問題児組である。

3人は、というより箒とセシリアは、操が仕切っているのが気に食わないのか学園祭にあまり乗り気ではない。

言われた事は一応やるのだが、逆に言うと言われた事しかしないし、明らかに嫌々やってるので、周りの雰囲気を悪くする。

春十は真面目にやっているものの、問題児2人が言い合う原因になりがちで、その言い争いを止めず(止められず)、結果として周囲の負担を増やしてしまいがちだ。

その結果として、3人一括りで問題児だというのがクラス内での共通認識になりつつあるのだ。

 

 

因みに、唯一の男子なので春十は強制的に接客班なのだが、箒とセシリアは違う。

調理班が作ったものを、接客班に渡す係である。

元々は調理班か接客班をやってもらう予定だった。

だが、ただ盛りつけるだけのはずのメニューでも、見た目がかなりぐちゃぐちゃになったり、勝手に何か足したのか味が刺激的になったりするので、調理班はクビになった。

そして接客なのだが、箒はメイド服を断固として拒否し、セシリアは一応貴族なので自分で給仕するという行為になれて無さすぎてみてる側がヒヤヒヤするので、接客班もクビになった。

集客班は人数が規制されているのでこれ以上増やすことが出来ない。

 

 

その為、本当の職場だったら左遷と言われても仕方が無い役職に落ち着いた。

本人達は不服そうなのだが、そもそも理不尽なパワハラとかではなく、自分達が原因なのだからこれくらいは許して欲しい。

 

 

「そんな訳で、最終準備!」

 

 

『はいっ!!』

 

 

操の指示に従い、全員での最終確認を行う。

因みに、千冬は1回も顔を出さなかった。

 

 

『それでは、これよりIS学園学園祭を開始いたします』

 

 

「良し、それでは、午前の人は営業開始!午後の人は、解散!!」

 

 

学園祭開始のアナウンスが流れたので、操がそう声を発する。

 

 

「周ろう周ろう!」

 

 

「何処行く?」

 

 

「う~ん、3年生の……」

 

 

その声に従い、午後担当の生徒達は幾つかのグループに別れ、各々の好きな場所に向かって行く。

そんな中、グループに入っておらず孤立する箒とセシリア。

最初から2人を働かせると不安でしか無かったので、午後に回された2人。

自分達から周囲に声を掛けたりという事をしなかったので、結果として孤立してしまったのだ。

 

 

「……」

 

 

「……行き、ましょうか?」

 

 

「そうだな……」

 

 

いくら問題児でも、ずっとこの場に居ると迷惑だと分かっている。

2人はトボトボといった足取りで教室から外に行く。

 

 

学園祭は開始されたが、お客さんが来ないと営業は開始されない。

そして、外部からのお客さんはまだ手荷物検査等を受けているので、そこまで直ぐに来ないだろう。

なのでこのタイミングで来るとしたら、IS学園生という事になる。

外部からのお客さんは、自分を招待してくれた人の所や、自分達が目を付けている生徒の所に1番最初に行くが、学園生にそういったものはない。

つまり、自分達が行きたいと思える出し物をしている所に行くのだ。

 

 

そして生徒達が行きたいと思える出し物は、それだけ斬新な物だろう。

特に去年等を経験している2年生3年生はよりその傾向にある。

 

 

1年1組の出し物はメイド喫茶。

学園祭だと考えると、言ってしまえば定番のもの。

ある程度のお客さんは来るだろうが、開店からとても混むという事も考えづらい。

 

 

だが、操は直感的に感じていた。

直ぐにお客さんは来ると。

何故なら此処には……

 

 

 

 

 

操と春十という、男子生徒(1人は23歳)がいるのだから。

 

 

ガラガラガラ

 

 

「お帰りなさいませお嬢様。何名様でしょうか?」

 

 

「あ、はい。1人です」

 

 

「お席にご案内します。どうぞこちらに」

 

 

操の予想通り、直ぐに1人目のお客さんが来た。

さゆかによって席に案内される。

 

 

「やっぱりな…」

 

 

操がそう呟いたのも束の間、次のお客さんがやって来た。

 

 

「お帰りなさいませ」

 

 

そのお客さんの後にも、続々とお客さんがやって来る。

学年、個人、団体関係なくやって来て、席は直ぐに満席になる。

続々と注文が入り、接客班が駆り出される。

メイド喫茶なので指名システムがあるが、やはり人気なのは春十のようだ。

1組の生徒からは問題児だと扱われているが、他の生徒達はあまり春十と関わっていないので、それ程人気等が落ちてないという事だ。

結構引っ張りだこになっている。

 

 

全員が全員自分の仕事を行う中、操は教壇があった場所にずっと立っていた。

理由は単純で、操の仕事が店長だからだ。

本物のお店なら1番忙しい役職なのだが、これは学園祭。

トラブルに咄嗟に対応するのが仕事だが、逆に言うとトラブルが発生しないと暇になってしまう。

 

 

「そろそろ良いかな……?」

 

 

だが、操にはもう1個仕事がある。

ボソッと呟いた操は、懐からそこそこ立派なカメラを取り出す。

ジュウオウザライトやジュウオウザガンロッドをポケットに仕舞えるのだから、大きいレンズがあるカメラもポケットに入るのだ。

 

 

そう、操のもう1個の仕事とは、写真撮影である。

これは卒業アルバム等に使う写真である。

肖像権とかが問題になりそうだが、IS学園生は入学の際に許可の書類を提出してもらっているし、外部からのお客さんにも、招待券に注意事項としてしっかり記入してあり、学園祭に来たという事は同意したという事。

つまり、此処にいる時点で学園が写真を撮っても問題無いという事である。

 

 

因みに、この仕事は元々真耶の仕事だった。

だが店長としての仕事があまりにもなさ過ぎて相談に来た操にカメラと共に託したのだ。

真耶は、ただでさえ教員としての仕事に加え、万が一千冬が何かやらかした場合のリカバリーもしなければいけない。

写真を撮っている暇など無いので、真耶としても操に託せて良かったのだ。

 

 

まぁ、写真はそう何枚もいらないので、午前数枚、午後数枚程度だろう。

 

 

「早速1枚……」

 

 

パシャッ!!

 

 

良い感じに商品を運んでいるラウラと静寐と神楽の3人を写真に収める。

 

 

「ッ!……///」

 

 

メイド服姿を撮られたラウラ。

一瞬恥ずかしそうに操の事を睨んだが、操が左の人差し指を唇の前に置いた事でなんとか理性を保ち、そのまま配膳を続ける。

 

 

それから暫くの間操はクラス中を見回していたが、やがてある事に気が付いた。

 

 

(あれ?なんかやけにお客さん多くない?お客さんが退店してから、その席に次のお客さんが座るまで1分も無くないか?)

 

 

それは、やけに来店人数が多いという事だ。

開店直後から人は多かったが、それにしても多い。

というより、IS学園生よりももはや外部のお客さんの方が多くなってきた。

良い歳のおっさんやおばさんが、女子高生にご主人様と呼ばれている光景はなかなか変だが、まぁ特に問題は無い。

問題は無いのだが、やはり多すぎる。

それに、なんとなく全体を監視している操に向けられる視線がだんだん多くなっていっている気もする。

 

 

(これは……マズイか?)

 

 

取り敢えず、どれだけ並んでいるか、そして入り口に立っている本音達はどういった状況なのか。

それを確認しないといけない。

操はスッと教室の方の扉に移動する。

今日は前方扉が入り口、後方扉が出口、というように出入口を分けている。

その為、仮に混雑していた場合前方から確認すると余計に混雑してしまう可能性があるので、操は後ろから確認する事を選択した。

 

 

扉を開け、1歩踏み出し教室の外を確認する。

その瞬間に、操は驚愕の表情を浮かべる事になる。

 

 

「ッ!?」

 

 

(お、多い!?多すぎる!!なんだこの人数!?)

 

 

列に並ぶ人数があまりにも多い。

それに、学園生よりも外部のお客さんの方が割合的に圧倒的に多い。

操があっけに取られているような表情を浮かべながらその列をしばし見ていると、外部のお客さんがギラリと操に視線を向ける。

それはまるで、狩りの得物を見るライオンの様で、操は思わず表情を引きつらせる。

 

 

(くっ…男性IS操縦者というネームバリューを甘く見過ぎてた……のほほんさんは大丈夫そうか……って、こんな人数来てちゃんと回ってるか?ヤバい、直ぐ確認に行かないと!)

 

 

操は直ぐに切り替えて、教室の中へと戻る。

店内は先程までより慌ただしい雰囲気だが、今のところなんとか出来ている。

 

 

(接客班は大丈夫。調理は!?)

 

 

接客班が取り敢えずは機能しているのを確認した操。

すぐさま移動を開始し、調理班の様子を伺う。

 

 

「大丈夫!?」

 

 

「あわわわ、だ、大丈夫じゃないです!」

 

 

調理班の光景を見た瞬間、操がそう声を発し、とても焦った様子の返答が帰って来た。

所詮高校生が作る学園祭のメニュー。

調理行程はとても簡単なものしか無いのだが、それでも調理班はパンクしそうなほど忙しかった。

 

 

(男性IS操縦者への接触目的なら変に注文するんじゃねぇ!)

 

 

「俺も手伝う!直ぐ手を洗ってくるから!」

 

 

「分かりました!」

 

 

操は慌てて調理班の加勢に入る。

予備のバンダナを頭に巻き、マスクを着け、水道で手を洗い、消毒する。

その後、予備の調理用手袋を着用し、その上からもう1回消毒してから調理に入る。

 

 

「コーラ4、コーヒーブラック1、コーヒーミルク3……」

 

 

「は、早い…」

 

 

「手を動かして!」

 

 

「は、はい!」

 

 

バイト先ではホールの操だが、元々の家事能力がかなり高いのだ。

これくらいお茶の子さいさいである。

 

 

「はい、これよろしく!4番!」

 

 

「分かりました!」

 

 

「次の注文です!」

 

 

「了解!」

 

 

操が加勢した事で、調理班はなんとかパンクせずに持ち直した。

互いに掛ける声が学園祭のメイド喫茶のものではなく、お昼時の中華料理屋みたいになっているのだが、それも気にならないくらい忙しい。

そこから大体1時間後。

 

 

「ピーク過ぎたぁ…」

 

 

「も、もう疲れた…」

 

 

「みんな、お疲れ様」

 

 

なんとかピークを乗り越えた。

調理班の生徒達はとても疲れた様子で膝に手を置いていたり、肩で息をしている。

生徒達より体力がある操は、そのまま1人で調理を進めている。

 

 

「俺もう1回接客班確認したいから抜けて良い?」

 

 

「あ、はい、大丈夫です。助けてくれてありがとうございます」

 

 

「お礼は良いって。俺は店長だからな。それじゃ、後は任せた!」

 

 

「はい!」

 

 

調理班の面々に後を託し、操は再び接客班の様子を確認しに行く。

マスクと手袋をゴミ箱に捨て、バンダナを外す。

元のスーツ姿に戻った操は、そのままの足取りでホールに戻る。

 

 

(調理が大丈夫だから多分大丈夫だとは思うが、接客はただ運ぶだけじゃないからな…心配だ。特にラウラ)

 

 

そんな事を考えていると、直ぐにホールに着く。

操はすぐさま状況を確認し、

 

 

「……」

 

 

思わずその場で足を止めた。

理由は至って単純明快。

目の前の光景に驚いたからだ。

 

 

先程はバタバタとしていた店内だが、今はかなり落ち着いている。

空席がある訳では無いが、それでも生徒達の表情は切羽詰まったものから、ある程度余裕があるものになっている。

そんな店内で、とあるテーブルだけが異様に目立っていた。

それだけだったら操は特に足を止めたりしなかっただろう。

操が足を止めるくらい驚いた理由。

テーブルに座っているお客さんが知っている人間だったからだ。

 

 

「良い、とっても良い…」

 

 

「これは素晴らしい…」

 

 

「う、ううう…」

 

 

操の視線の先にいるのは、顔を真っ赤にしながらお盆をギュッと抱えるように持つラウラと、椅子に座ってラウラの事を見ているクラリッサとネーナという、ワクワク黒兎セットの3人だった。

クラリッサはラウラから、ネーナは操からもらった招待券でやって来たのだ。

 

 

しばしの間操がその場に立ち止まっていると、ラウラ達の方が操に気が付いた。

席に座っている2人がホクホクの笑顔で操に手を振る。

ラウラのメイド服姿を直接見れたのが、余程嬉しかったようだ。

操は手を振り返しながら、視線をラウラに向ける。

 

 

(みっ、操!助けっ!助けて!!)

 

 

ラウラは部下たちにメイド服姿を見られたのが恥ずかしすぎるのだろう。

若干涙目になりながら、視線で必死に助けを求める。

 

 

(これ、絶対助けてって言われてるよな…)

 

 

操は当然のように視線の意図に気が付いている。

なんとかしようと思考を巡らせるが、こんなにワクワクしている2人を如何にかできる方法が考え付かなかった。

 

 

「…是非、お楽しみください」

 

 

操は笑顔でそれだけ言うと、そそくさと退散し始める。

 

 

(操!?操ぉ!!)

 

 

(すまんラウラ。俺には無理だ。頑張ってお嬢様方を楽しませてくれ)

 

 

アイコンタクトのみで会話するラウラと操。

ラウラはまだ何か言いたそうにしていたが、席に座り嬉々とした表情を見ると、もう何も言えなくなってしまう。

 

 

「隊長!1回、1回で良いので『生萌え萌えキュン』を私に見せてください!」

 

 

「も、萌えっ!?」

 

 

「手でハートを作って、可愛く!」

 

 

「う、ううう……」

 

 

普段と立場が完全に逆転している隊長と部下達。

だが、此処で逃げるのは羞恥心の中に残っているラウラのプライドに反する。

暫くの間葛藤をしていたが、やがて覚悟を決めたように手でハートを作り、

 

 

「も、萌え萌えキューン……///」

 

 

真っ赤を通り越して、良く分からない顔色になりながらも、要望通り萌え萌えキュンを行う。

 

 

「「最高…!!」」

 

 

クラリッサとネーナの2人は、ラウラの可愛さに思わず悶える。

 

 

因みに、こんな3人のやり取りは当然ながら周囲に知られており、この事を知ったラウラが半狂乱に陥るのはまだ先のお話である。

こうして学園祭の午前中は過ぎていく……

 

 


 

 

「操さん操さん」

 

 

「ん?どうした静寐」

 

 

営業開始から暫くたった、もう直ぐで午前が終了するという時間。

静寐から声を掛けられた操は、身体の向きを静寐に向ける。

 

 

「そろそろ操さん休憩したらどうですか?」

 

 

「休憩?」

 

 

静寐にそう言われ、パッと腕時計に視線を向ける操。

確かにさっき色んな事が起こったので疲れている。

休憩できるのなら休憩したい。

だが…

 

 

「みんながまだ働いてるのに、俺だけ休むのは気が引けるよ」

 

 

「いやいや、私達は午後から交代ですけど、操さんは午後も仕事じゃないですか」

 

 

「まぁ、店長だしね」

 

 

「だから、今この余裕あるときに休憩しちゃってくださいよ」

 

 

「……分かった。お言葉に甘えさせてもらうよ」

 

 

このまま言い合っても平行線になる未来が見えた操は、降参を示すように両手を上げた。

その後、操はクラスメイト達にこの事を伝え、休憩に入った。

午後の開始には教室に戻っておきたいので、時間自体はさほど長くは取れない。

なので短いこの休憩時間を、のんびり過ごそうと決めた。

 

 

行く当てもなく、ブラブラと学園内を練り歩く操。

全身に突き刺さる視線になんとなく4月を思い出しながら、キョロキョロと周囲を見る。

 

 

「いやぁ、この感じ良いなぁ」

 

 

向こうの世界では高校に通ってない操。

高卒資格は試験で取ったので、もう高校に通う必要は無いと考えていた。

だが、少々…否、かなり特殊な高校とはいえ、こうやって通って学園祭に参加してみると、良いものだと感じる。

 

 

「あれが門藤操…」

 

 

「チフユ・オリムラと似ているような気がするな…」

 

 

「けど、血縁関係は無いらしい」

 

 

「フム、確か今はドイツ国籍だったな…如何にか引き抜けないものか……」

 

 

(聞こえてるよ……はぁ、こういう話題の中心になるのは苦手だ……)

 

 

周囲の大人たちのヒソヒソ話は、当然のように操に届いていた。

まわりで自分の事に関する話をされていたら、誰だっていい気はしない。

その話の内容が、もしかしたら自分の立場や学園の安全等々が脅かされる可能性が、少ないとはいえはらんでいるのだったら尚更だろう。

 

 

(出来るだけ気にしないで行こう。注目はされてるが、声を掛けられる訳では無いし)

 

 

操はなるべく気にしないようにしながら学園を散策する。

時折、他クラスや部活の宣伝に声を掛けられるが、混んでるところに寄ってると時間が無さそうなので当たり障りない言葉で華麗にスルーする。

 

 

「そろそろトイレに行っておかないとな……」

 

 

改めて時間を確認した操はそう呟くと、進路をトイレの方に変える。

学園祭でも、男子トイレは1ヶ所しかない。

ISの会社やどの国の政府でも今は女性の方が多いし、権力がある。

したがってIS学園にやって来る人も女性の方が多いのだ。

男子トイレが少なくても、何も問題は無い。

 

 

道中でバンダナを頭に巻いた赤髪の男子とすれ違いながらも、トイレに到着した操。

そのまま用を足し、手を洗ってから教室へと向かう。

 

 

「やっぱりここら辺は人いないなぁ…」

 

 

男子トイレという、普段は片手で数えれる人数しか使用せず、それに伴い付近でも自分以外の人間と遭遇する事が滅多にない場所。

学園祭で、少ないとはいえ男性が外から来ているのに、此処は全くと言って良いほど人が居ない。

何時もと違う学園で、何時もと変わらず人が居ない場所。

思わず苦笑を浮かべてしまう。

 

 

「って、こんなことしてる場合じゃない。さっさと戻らないと」

 

 

少し急ごう。

そう考え1歩踏み出そうとした、その瞬間だった。

 

 

「門藤操さんですね!?」

 

 

と、操の名を呼ぶ女性の声が()()()()聞こえて来て、操は踏み出そうとした足を踏みとどめた。

遂に話し掛けられた、面倒だと考えたのも束の間。

 

 

(背後から?何でだ?後ろには男子トイレしか無い筈なのに……!!)

 

 

操は違和感を感じ、バッと振り返った。

そこに立っていたのは、オレンジ色の髪を下ロングヘア―の女性。

ビジネススーツを身に纏い、柔和な笑顔を浮かべており、パッと見だったら普通のキャリアウーマンだと思うだろう。

だが、ジュウオウジャーとして戦ってきて、戦いという事だけに関してはベテランの域に達していると言って良い操は、直感的に感じ取っていた。

目の前に立つ女性も、同じく戦いに慣れている手練れだと。

 

 

「あなたは?」

 

 

操はジュウオウザライトとジュウオウザガンロッドのどちらも直ぐに取り出せるようにしながら、その女性に語り掛ける。

 

 

「初めまして、私、IS装備開発企業『みつるぎ』の巻紙礼子です」

 

 

女性…礼子は丁寧にそう言いながら、操に名刺を差し出す。

受け取らないと話しが進まないと察した操は、なるべく警戒心を出さないようにしながらその名刺を受け取る。

名刺自体には何も細工は無く普通のものだったのだが、礼子の視線が一瞬、まるで値踏みするかのようなものになっていたのを、操は見逃さなかった。

 

 

(少なくとも、何か企んでは居そうだ……)

 

 

「ご用件はなんですかね?」

 

 

「はいっ!門藤さんに是非、わが社の製品を使用して頂きたく!」

 

 

礼子はまくしたてるような勢いでパンフレットを取り出す。

だが、そのパンフレットを開かれる前に操が言葉を発する。

 

 

「すみません、私は今新しい武装を考えていないので、申し訳ありませんがお引き取りお願いします」

 

 

「そこを何とか!!」

 

 

「急いでいるので。失礼します」

 

 

強引に話しを終わらせた操は急ぎ足でその場を去る。

礼子は追いかけようとしたが、1歩踏み出した時には操は角を曲がっていた。

礼子も角に来た時には、もう既に操の事を見失っていた。

 

 

その場に残された礼子。

暫くの間黙っていたが、

 

 

「クソがっ!!」

 

 

と、さっきまでの態度が嘘のように、荒々しくパンフレットを床に叩きつけた。

イライラした様子を隠そうともせず、礼子は歩き出す。

 

 

「チッ!アイツ、俺の事疑ってたな…フン、だがその程度でこのオータム様から逃げれると思うなよ…!!」

 

 

自身の事をオータムと呼び、交戦的で狂気的な笑みを浮かべながらそう呟いた。

 

 

 

 

 

「ふぅ…ヤバすぎる…よく俺攻撃されなかったな…」

 

 

男子トイレからかなり離れたところまで来た操。

ポケットからハンカチを取り出し、額に浮かんでいる冷や汗を拭きとる。

礼子と対面していた時は大丈夫だったが、離れて落ち着くと対面していた相手のヤバさを実感する。

 

 

あの女は、絶対に何かを隠している。

そして、あの状況だったら自分の首は飛んでいてもおかしくなかった。

それを今になってヒシヒシと感じている。

 

 

「俺も、鈍ったな…」

 

 

苦笑しながらそういう操。

だが、首を振って表情を敷き詰める。

 

 

「久々に、訓練でも模擬戦でもない戦いになりそうだ…」

 

 

操はそういうと、微笑を口元に浮かべる。

そうする事で自分の中の闘争心を高める。

その姿は、まさしくジュウオウジャー。

さっきまでのプレッシャーを感じていた操は、もうどこにもいなかった。

 

 

「もう遅刻確定だな…」

 

 

もう既に午前の生徒と午後の生徒は入れ替わっている時間だった。

 

 

「みんなには申し訳ないけど、今は戻っている場合じゃない…」

 

 

そう呟いた操は、ポケットからスマホを取り出す。

そして電話帳のアプリを開き、登録されている電話番号を呼び出す。

そのまま通話ボタンを押し、スマホを耳に当てる。

数回のコールの後、相手が電話に出た。

 

 

『もしもし?』

 

 

「もしもし、操です。虚さん、忙しいのにすみません。今大丈夫ですか?」

 

 

『はい、大丈夫ですけど……どうかしましたか?』

 

 

電話の相手…虚は少し困惑したような声色でそう尋ねる。

電話される心当たりがなく、しかも今は学園祭の真っ最中なのだ。

困惑するのも当然だろう。

 

 

「……戦闘になる可能性が高そうです。信頼できるメンバーを集められますか?」

 

 

『っ……分かりました。操さんですから、嘘は無いでしょう。30分後に生徒会室まで』

 

 

「はい、分かりました。迷惑を掛けてすみません」

 

 

『いえいえ、気にしないで下さい』

 

 

ここで通話は終了した。

操はスマホをポケットに戻す。

 

 

「…謝りに行くか」

 

 

取り敢えず、クラスに一声かける必要はあるだろう。

操は全速力で教室に向かう。

 

 

IS学園を舞台として、戦闘は起こってしまうのだろうか……

 

 

 




なんか、最後の文が今までにない書き方です。
良い言葉が思いつきませんでした。

次回も何時になるか分かりませんが、楽しみにしていてください!

評価や感想もよろしくお願いします!
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