最近、マジで執筆する余裕が無いんです……
サブタイが格好いい!(と思う)
今回もお楽しみください!
三人称side
IS学園、学園祭の真っ最中。
昼休みが終了し、午後の部が始まった直後。
生徒会室には操と、操から連絡を受けた虚が集めたメンバー、楯無、簪、ラウラ、本音、十蔵の7人がいた。
「急ですみません」
「いえ、学園の危機になる可能性があるのなら、生徒会長である私が対応しない訳にはいきませんので。それに、操さんがわざわざ言うんだったら、間違いは無いでしょうし」
「更識会長の言う通りです。門藤君が異変を感じたのなら、それは本当なのでしょう」
「…ちょっと信頼が高くて、若干恐れ多いです」
操の謝罪に、楯無が真面目な表情でそう返答する。
ラウラ達も同じ様な表情を浮かべている。
IS学園の学園長と生徒会長という2トップに加え、友人達からのかなり高い信頼がある事に、操は苦笑する。
だが、そんな事してる場合ではないので、直ぐに切り替え説明を開始する。
「事の発端は、午後の部開始直前です。男子トイレに行った帰り、女性に話し掛けられたんです」
「女性に…」
「はい。ただ、教室がある方向を向いていた時に、背後から話し掛けられたんです」
「っ…それは……」
操の言葉に反応したのは十蔵だけだった。
だが、それも仕方が無いかもしれない。
男子トイレ付近の事をよく知っているのは、男子トイレを使う人ぐらいだ。
わざわざそんなところにまで行く機会などない楯無達は、反応など出来ないだろう。
「男子トイレ付近って、どんな風になってるんですかぁ~?」
本音が手を上げながら、少し重たい雰囲気をぶち壊すかのような間延びした声で尋ねる。
そう質問が来ることは予想済みだったので、特に間をおかずに説明する。
「男子トイレは、IS学園校舎の端も端、行くのがとても面倒な場所にあるんだけど……」
「「……」」
一生徒の、遠回しと言うほどでもない、トイレが使いづらいという苦情に、十蔵と楯無はスッと視線を逸らす。
それを無視し、操は続ける。
「それで、男子トイレから出て、そのまま教室の方を向くと、自分の後ろには男子トイレ以外何もない筈なんだ」
『っ!』
立地の説明を受け、ラウラ達も漸く理解した。
操は、男子トイレしか無い筈の方向から、女性に声を掛けられたのだ。
「つまり、その女は偶々操を見つけたから声を掛けた、という訳ではなく、操と接触する機会を伺っていた可能性が高い、と」
「ああ、しかもわざわざ後を付けて、2人きりになれる場所で、な」
ラウラが呟いた言葉に、操が頷く事で肯定する。
取り敢えず、今起こった事の状況は理解できた。
「何というか、かなり怪しいな」
「ああ、かなり怪しい」
百人が聞いたら、百人が同じ反応をするほど怪しさプンプンな話である。
「それに、対面した感覚でしか無いんですけど、恐らく相当な手練れです。あの時交戦になってたら、多分俺の首は身体から1人立ちしていました」
操は自分の首に指を当てながらそういう。
「操がそこまで言うのなら、相当な手練れである事に間違いは無いな…」
ラウラが顎に手を置きながらそう反応する。
その表情は、若干身構えているものだった。
楯無達としても、思うところは同じだった。
操の、ジュウオウザワールドの戦闘力はもはやIS学園に関わるものなら、知らない人等いないだろう。
そんな圧倒的な強さの操が、さっき交戦してたら負けると言っているのだ。
身構えてしまうのも仕方が無い。
ずっとこうしている訳にもいかないので、操は話題を切り替える為に懐を探る。
「これが、受け取った名刺なんですけど…」
そう言いながら、先程受け取っておいた礼子の名刺を机の上に置く操。
その名刺を見た瞬間、楯無と虚が眉を顰める。
「『みつるぎ』…?虚ちゃん、この企業って……」
「はい。確かほぼペーパー企業だったような気がします」
「ペーパー企業?」
楯無と虚のその言葉に、簪が首を捻る。
2人は頷くと、説明を開始する。
「此処にいる人間全員、更識の事を知ってるから言うけど、今は裏社会もISが中心。どの組織もISのコアや、情報、武装等を常に狙っています」
「まぁ、それはそうでしょうね」
なんの誇張も無く、ISは1機有るか無いかで、かなり変わって来る。
単純な戦力強化に加え、交渉の有利化等々様々な事が起こる。
裏社会でも、喉から手が出るほど、という表現じゃ足りない程欲しいだろう。
「裏社会に生きるからといって、表社会の情報が要らない訳ではありません。寧ろ、表の情報があってこそ、裏での暗躍が出来るというものです。そして、表社会で最も入手したい情報は、やはりISです。つまり……」
「なるほど。IS関係のペーパー企業を立てておくことで、表の、それもIS関係の情報が入って来やすいと」
「流石ラウラちゃん。飲み込みが早い!」
楯無の言葉に、ラウラが顎に手を置いたままそう呟く。
楯無がウインクをしながらそういう中、十蔵が口を開いた。
「つまり、門藤君に接触したその女性は、裏社会の関係者である可能性が高い、と……」
「そうなりますね。テロリストなのか、スパイなのか、それはこれから調査しなければなりませんが」
十蔵の言葉に、虚がそう反応する。
これで、今どういった事が起こっているのか、そして対処するべき相手がどういった存在なのかが、かなり大まかにだが、理解できた。
次に話し合わなければいけないのは、これからの行動だ。
寧ろ、ここからが本番だ。
「先ず、この巻紙礼子の目的だけど…見当は?」
「俺に接触をしてきた時点で、恐らく男性IS操縦者だとは思いますけどね。殺すのが目的なのか、研究サンプルとして持ち帰るのか。はたまたISだけ持ち帰るのか……」
「さっき、すぐさま交戦しなかったから、殺すのは無いと思いますけど……」
「それは断定できないわ簪ちゃん。いくら男子トイレが、その……IS学園の端とは言え、交戦になったら目立つのには間違いない。大騒ぎになるのは向こうだって避けたいはずだし」
「みつるぎの名を使っている以上、巻紙礼子は何かの組織の一員である事は間違いない。そう考えるのが妥当だろうな……」
「目的を断定してしまうのは危険ですが、やはり男性IS操縦者狙いだと考える方が自然です。それらへの対処を最初に考えた方が良いですね」
虚の言葉に、この場に居るほぼ全員が頷く。
そんな中、この重苦しい雰囲気の中で唯一ニコニコした表情を崩さない本音。
誰もその事について言及しないのは、
(本音だからなぁ)
と思っているからか、
(こんな状況でも雰囲気や表情が微塵も変わらない…?えっ、なんかもう怖くなってきたんだけど……)
と思っているからか。
「じゃあ、取り敢えず午後から予定してた生徒会の出し物は中止した方が良さそうね…勿体ないけど」
「その方が賢明かと。あのようなふざけた出し物、中止した方が学園の為です」
「虚ちゃん!?それは酷いんじゃない!?」
「事実です」
虚があまりにもバッサリと切り捨てるものだから、いったいどんな事を企んでいたのか気になった操達。
そんな場合では無いが、ついつい聞いてしまった。
「因みにですが、何をやらかそうとしていたんですか?」
「操さんまで!変な事なんか、私は提案してな「観客参加型即興劇です」うっ!?」
「……なんですか、その聞いた事の無いものは」
「言葉の通りです。台本無しの即興劇で、観客の方も巻き込むつもりでした。因みに、主演は門藤さんです」
「聞いてねぇ~~!」
「お姉ちゃん、それはふざけてる」
「良くそれで通ったな……」
「生徒会特権だ~~!」
「「「なるほど、そろそろ没収」」」
本音の言葉に、操、ラウラ、簪が寸分変わらない言葉を同時に発する。
十蔵は苦笑し、楯無はへなへなと力の抜けたような表情を浮かべ、虚は当然だと言わんばかりに鋭い視線を楯無に向けている。
「んんっ!男性IS操縦者狙いなら、織斑春十への連絡も必要だな」
「うん。だけど、うちが暗部って事を知られる訳にもいかない。そこはかとなく、頭の片隅に残す程度が限界かも」
「ああ。それは俺からやっておくよ。あと、考えなきゃいけないのは、巻紙礼子が如何やってここに来たのか、だが……」
「招待券を偽造した…とか?」
「いえ、それはあり得ません。学園祭の招待券は、現在流通している貨幣などよりも高度な偽造防止を施しており、招待券を読み込む機械も最新式のものです。不正入場はほぼ不可能です」
「となると、1番可能性が高いのは……」
「IS学園生の誰かが、巻紙礼子に招待券を渡した、だな……」
操がその言葉を発した瞬間、生徒会室内の空気がより一層重くなる。
本音は表情を変えない。
まだ仮定ではあるが、裏社会の人間である可能性の高い礼子。
そんな人物に招待券を渡すという事は、つまり。
その生徒は裏切り者という事である。
「……間違いだったら、どれほどいい事か」
「作戦を立てるのに、間違いだったらを考える必要はありません。その場合は『いろいろと変に考えてごめんなさい』で済むだけですので」
「そうですね。切り替えていきましょう」
ここで重い空気になるのは間違いだ。
人間という生き物は、自分の心の持ちよう……いわゆる、テンションや気合いといったもので、発揮されるパフォーマンスにかなり差が出るのだ。
これから交戦が起こる可能性もあるのだから、気持ちは常に前を向いていなければいけない。
「招待券から、誰が巻紙礼子に渡したのかは分からないんですか?」
「流石にどの生徒にどのシリアルナンバーの招待券を渡したのか分からないので、それは不可能です」
「なら、裏切り者がいるとしても、今は考えない方が良さそうです」
「そうですね……じゃあ次に行きましょう」
「はい。巻紙礼子を誘いだし、本当にその手のものか見分け、場合によっては拘束する必要があります。その際、他生徒や招待客のみなさんの安全確保が前提です。どのようにして……」
虚がそこまで言った、その瞬間だった。
ドガァアアアアン!!
『っ!?』
そこまで遠くない場所から、爆発音が聞こえてきた。
生徒会室にいたメンバーは、突然の事に驚きはしたものの混乱はしない。
何故なら、交戦の為の話し合いをしていたからだ。
「此処にいる全員に、有事の際の特別行動権を認めます!ISの展開、交戦、また学園施設の使用、並びに破壊を一律許可します!生徒、並びに来賓の安全を確保してください!」
『了解っ!』
十蔵の指示に、全員が同時に返事をしてから生徒会室から飛び出る。
「虚ちゃんは放送室!緊急避難の放送をして!」
「はいっ!」
「私達はみんなの安全確保!破壊許可は貰ってるから、万一防犯施設のシャッターが誤作動したら破壊して!」
「楯無会長!今この場には、私の部下が2名います!協力させますか!?」
「お願い!」
「本音!私達はこっちから!」
「うん!任せて~!!」
虚は放送室に向かい、簪と本音は途中で別れ、手分けして避難誘導をする。
本音が珍しくテキパキ動いている事に、操は謎の感動を覚えながらも走る。
「クラリッサ!私だ!ネーナと共に周囲の人間の避難誘導をしろ!場所の把握は!?……よし、なら問題ない!行動開始!」
「2人は何処にいるって!?」
「1年生教室近くです!」
「分かった!」
「楯無さん!俺が巻紙礼子を引き付けます!その間に!」
「えっ…でも…!」
「生徒会長が悩んでる場合ですか!?さっきは後れを取ったようなものですが、今は大丈夫です!任せてください!」
操はジュウオウザライトを取り出し、力強い視線を楯無に向ける。
「分かりました!ラウラちゃん、私達はこっちよ!」
「了解!」
楯無とラウラも、避難誘導の為別れる。
その瞬間、
ドガァアアアアアアン!!
「っ!そっちか!!」
再び爆発音が鳴り、操は進行方向を変更。
直ぐに出来るだけの全速力で爆発音が鳴った方向に向かう。
「今の方向的に、男子更衣室!!」
虚による放送、そして教員達による避難誘導を確認しながら走る。
(あ、ナターシャさんだ。スゲェ、1ヶ月経ってないのにもうあんなにテキパキと…元軍人だし、こういう有事の際には慣れてるのかな?……そういえば織斑先生マジで何処行った?こんな緊急時だってのに…いや、楯無さん達の方にいるのかもしれない。その事は後だ!もっと、もっと早く走れ俺!!)
緊急時だというのに、姿を見せない千冬。
操は千冬の事が好きでは無いが、その実力が高いのは知っているので、こういう緊急時くらい役に立ってくれと思うのだが、居ないならば仕方が無い。
緊急時のたらればは無駄な行為でしかない。
今操がする事は、全速力で爆発音がした場所へ向かい、避難完了まで紙巻礼子を引き留める事だ。
走って、走って、走って。
遂に目的地である男子更衣室前にたどり着いた。
ドガァアアアアアアアン!!!!
「ハハハハハ!!踊れ踊れぇ!!」
「うわぁああああああ!?!?」
「そこか!!」
3度目の爆発音。
否、ここまで近くに来れば分かる。
これは、火薬を使用した爆発ではない。
床や壁や天井が、物理的な攻撃で破壊されている音だと。
ガッシャアアアアアン!!
「ぐふぅっ!?」
「っ!織斑君!?」
更衣室の壁を突き破り、専用機である白式を展開した春十がゴロゴロ転がって来た。
スラスターはひしゃげており、装甲もかなりボロボロになっている。
「くくくくく!男って言うのはどいつもこいつもやりがいがねぇなぁ!」
破壊された壁の向こうから、そんな笑い声が聞こえてくる。
ガシャン、ガシャンと音を立てながらゆっくりと何者かが近付いてくる。
操は腰を落とし、いつでも、どんな行動でも出来るように構える。
姿をあわらしたのは、1機のIS。
まるで蜘蛛のようなシルエット。
それを形成しているのは、背中に存在する8本のサポートアームだ。
各々が独立し、蠢いている事によってとても怪しい雰囲気を醸し出している。
そのISの名はアラクネ。
アメリカが開発したものである。
ヘッドパーツが顔全体を覆っている為その顔を確認する事は出来ないが、先程の言葉の内容や、感じる雰囲気からその表情は嬉々としたものであると、操は直感で感じた。
ISの操縦者も、操がこの場に来た事に気が付いた。
「ハハハハハ!門藤操!お前までやって来るとは好都合だ!!」
「その声…巻紙、礼子だな?」
ISに乗っている女は、操の事を見ると再び笑い声をあげる。
その声を聞き、操は視線を鋭くし、更に警戒心をバリバリにする。
聞こえてくる声は、先程聞いた紙巻礼子のものだ。
だが、操の発した言葉が疑問形なのは単純明快。
先程までの喋り方とかなり印象が違うからだ。
胡散臭い匂いはプンプンしていたが、とても丁寧だった口調の礼子と、今目の前にいる荒々しい喋り方のIS操縦者。
声が同じものでも、一瞬疑いたくなるのは仕方が無い。
それに、操があっちの世界で戦っていた奴らは人間じゃないし、メーバという発せられる音がほぼ同じような戦闘員がゴロゴロいたのだ。
余計にそんな反応になる。
「ハハハハハァ!!そうだぜ、門藤操ォ!だがな、紙巻礼子ってのはただの偽名だ!俺様の名はオータム!覚えておきな!!」
笑いながら自分の名前を叫ぶオータム。
「わざわざ名前を教えてくれるなんて、随分と丁寧だな。自分が捕まった時の事を考えていないのか?」
「そんな事考えてる訳無いねぇ!何故なら、お前ごときが勝てる訳無いからなぁ!!」
自信満々といった様子でオータムがそういう。
だが、その言葉は自意識過剰という訳ではなく、確固たる自信と、それを裏付ける実力があってのものだった。
操も、目の前オのオータムから発せられる尋常じゃないプレッシャーを、全身で感じていた。
「それは、どうかな?」
そんなオータムの意見をぶった切り、操は志う不敵に笑う。
否、それは笑みであって笑みではない。
まるで、犀のように大胆で。
狼のように猟奇的で。
鰐のように凶暴な表情だった。
端的に言うと、戦う覚悟は等に出来ている、という事だ。
「はっ!やってみろ!」
「ああ、やってやるさ!」
《ザワールド!》
オータムの声に、操はジュウオウザライトの後部スイッチを押す。
「本能覚醒!」
《ウォーウォー!クロコダーイル!》
ジュウオウザワールド、クロコダイルフォームへと変身。
同時にジュウオウザガンロッドを取り出し、ロッドフォームで構え、そのままオータムに向かって走り出す。
「うぉおおおおお!!」
雄叫びと共にジュウオウザワールドは走り出す。
未だに倒れたまま動かない春十の事を飛び越え、オータムに接近する。
「そんな攻撃、通用する訳ねぇだろ!!」
ガキィイ!!
飛び掛かった時の体勢のまま、オータムにジュウオウザガンロッドを振るうも、サポートアーム4本に阻まれてしまう。
地面に着地したと同時、残り4本とオータム自身の攻撃がやって来る。
多方向からの同時攻撃は、確実に身体の急所と呼ばれる幾つかの場所を、的確に狙っていた。
「このぉ!!ハァア!!」
ジュウオウザワールドは、絡めとられていたジュウオウザガンロッドをパワーで無理矢理解放すると、サポートアームの事を弾く。
「足りないねぇ!!」
ドゴォ!!
「ぐふっ!」
だが、オータム本人からの攻撃を避ける事は出来ず、胴体に強烈な一撃を貰ってしまう。
ISによって強化された強烈なパンチは、ジュウオウザワールドに大きなダメージが入る。
「オラァ!」
「くっ!」
ジュウオウザロッドを掴んでいた4本が、ジュウオウザワールドを襲う。
地面を蹴り、あえてオータムに接近する。
こうする事で、残りのサポートアームを使用した場合自傷するという状況を狙う。
「んなもんお見通しだ!」
オータムは機体の特性を熟知している。
相手が自滅狙いを狙ってくるという可能性も当然把握しており、それに対する対策もとっくのとうに出来ている。
もう攻撃を行った4本のサポートアームは床に突き刺さる。
だが、それが狙いである。
オータムは地面を蹴り跳躍し、床に刺さったアームを基点に身体の向きを大きく変え、残った4本のアームで攻撃を行う。
だが、
「こっちも、な!!」
ジュウオウザワールドは、こう来ることを予想していた。
オータムほどの実力者が、自分の機体の特性を熟知していない訳が無いと理解していた。
身体を捻り、ジュウオウザガンロッドを持ち替え、槍のようにオータムを突く。
「ハァア!」
「ぐふっ!」
的確に突かれたジュウオウザガンロッドは、オータムの喉元に直撃する。
ISを纏っている為、絶対防御が発生して生身の時ほどダメージは身体に入らないだろう。
だが、衝撃そのものは発生する。
オータムは苦悶の声を漏らし、空中での体勢か崩れる。
その結果として、ジュウオウザワールドに向かって来ていた攻撃も僅かにそれ、床に突き刺さる。
ドゴォ!!
「ハハハハッ!いいねいいねぇ!久々に倒しがいのある相手だぁ!!」
「…ただの戦闘狂か……」
オータムは心底嬉しそうな声を発すると、ジュウオウザワールドに向かって行く。
その様子を見て、思わず戦闘狂と呟いたジュウオウザワールドは、先程と違い後退をする。
「はっ!ちょこまかしても無駄だぞ!!」
オータムの攻撃はだんだんと激しくなっていく。
「くっ!このっ!」
ガキィン!ガキィン!ガキィイン!!
ジュウオウザガンロッドで攻撃を弾きつつ、後退する事で攻撃を捌いていく。
単純に接近戦では使用できる腕の数が多いオータムに、接近戦を挑むのは些か無謀に感じる。
クロコダイルフォームよりも、銃撃戦が出来るウルフフォームで戦うという選択も当然あった。
だが、操がクロコダイルフォームを選んだ理由は当然ある。
先ず第一に、此処は男子更衣室前であるという事。
此の限られたスペースでは、ウルフフォームの持ち味である残像を残すほどの超スピードが活かしにくい。
ならば、パワーに優れたクロコダイルフォームで戦った方がまだマシだと判断した。
そして第二に、先程よりも重大な理由がある。
それは、この場に気絶した春十がいるという事だ。
身に纏う白式も損傷しており、身の安全の確保が第一。
だが、この状況では春十の事を抱えて運んだり、ましてや治療を行う事など出来ない。
だからこそ接近する事で、オータムの意識を自分に向けさせ、春十を、ひいては他の生徒や来賓の人を被害から守るという選択をした。
操は春十が嫌いだ。
本音を言うんだったら、別に放っておいていいんじゃないかとすら感じている。
だが、先程学園長に頼まれたのだ。
生徒の安全を確保しろ、と。
それに反する訳にはいかない。
それに加え、操は動物戦隊ジュウオウジャーだ。
1人の命も救えなかったら、胸を張って仲間達と会えなくなる。
(まさか、あんなに嫌いで、怖かった織斑春十を守る事になるとはな…俺も、ちょっとは成長出来たのかな?)
マスクの下で、操は微笑を浮かべる。
ガキィン!ガキィン!ガキィイン!!
「どうしたどうしたぁ!?そんなんじゃ、勝てねぇぞぉ!!」
何度も何度も攻撃がジュウオウザワールドを襲う。
全てを完璧に避けきるのは非常に難しく、ジワジワとダメージが蓄積されていく。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
(まだ、まだ……もう少し、もう少しだけ……!!)
そうして耐え、後退し続ける事十数分。
漸くチャンスがやって来た。
場所としては、先程までと大きく変わるところなどない。
だが1つ、たった1つだけ、とても重要な変更点がある。
それは……
「ハァアアアア!!」
ジュウオウザワールドは雄叫びをあげ、オータムに向かって行く。
「ハハハ!そう来ないとなぁ!!」
オータムは笑い声をあげると、8本のサポートアームでジュウオウザワールドを攻撃する。
「ぐぅぅううう!!」
全身に攻撃を受けるも、ジュウオウザワールドは止まらない。
ジュウオウザガンロッドをオータムの腹部に押し当て、腕に力を籠める。
「うぉおおおおお!!」
そのパワーに、オータムの身体が壁際へと移動させられる。
「なっ!?てめぇ!!」
自分の身体が動かされている事に気が付いたオータム。
ガンガンとジュウオウザワールドを殴り、スラスターも使用しなんとか逃れようとするも、遅い。
「オラァア!!」
ガッシャアアアアン!!
気合いの方向と共に、ジュウオウザガンロッドを思いっ切り振り抜く。
オータムは壁を突き破り、開けた場所へと転がっていく。
場所が狭く、遠距離戦のウルフフォームが活かしづらいのなら、開けた場所へと移動させればいい。
先程十蔵から破壊許可を貰っていたので、気兼ねなく壁を突き破り無理矢理移動させるという事を選択出来たのだ。
無論、屋外に出してしまったら、そのまま逃走されるという可能性もあったし、別の場所への攻撃が開始される可能性もある。
逃走してくれるのなら万々歳だ。
情報が欲しくない訳では無い。
だが、第一として生徒や来賓たちに被害を出さない方が最優先だ。
逃げる場合、これ以上の交戦が無いので、これ以上の被害が出る可能性はかなり低くなる。
別の場所への攻撃が行われるかどうかは、半場賭けだった。
もし負けた場合、被害は大きくなってしまうだろう。
だが、ジュウオウザワールドは確信していた。
オータムという、戦闘狂は。
絶対に逃げたりターゲットを変えたりしない事を。
「てめぇ!よくも、やりやがったなぁ……!!」
事実、オータムはより凶暴性の増したような声を発しながら、身体を起こす。
見えないはずのその顔は、怒りで歪んでいるというのが簡単に分かる。
《ザワールド!》
《ウォーウォー!ウルフ―!》
「本能覚醒!」
ウルフフォームへと変身したジュウオウザワールドは、ジュウオウザガンロッドをガンモードへ変形させる。
「おいおい、そんな怖い声出すなよ。折角の綺麗な顔が台無しだぜ?」
珍しく挑発するような言葉を発する。
「黙れぇ!」
オータムは叫びをあげると、ジュウオウザワールドに向かって行く。
「ハッ!」
バァン!バァン!バァン!バァン!
ジュウオウザガンロッドによる射撃で、自分に向かってくるアームを的確に逸らす。
「チッ!」
オータムが舌打ちをすると同時、ジュウオウザワールドは地面を蹴りオータムの背後へと一瞬にして移動する。
「なっ!?」
バババババババババババババババババァン!!
オータムが反応するよりも早く、ジュウオウザガンロッドのリールを回転させ、連射。
大量の弾丸を至近距離から浴びせる。
「うわぁあああああああ!?!?」
避ける事が出来なかったオータムは、叫び声と共に吹き飛んでいく。
装甲からは火花が散り、ダメージを大きく受けた事が一目に分かる。
「ハッ!」
ジュウオウザワールドは再び地面を蹴ると、吹き飛んでいったオータムの着地予想点に先回りをする。
そして、こっちに向かってくるオータムに銃口を向けると、
バババババババババババババババババァン!!
再びリールを回し、オータムに向かって連射する。
さっきの連射は、地面に立っていた時に背後から撃たれた。
だが、今回は自分が吹き飛んでいく方向から、吹き飛んでいった時と同じ勢いの連射を受けたのだ。
単純に、その身に受ける威力は先程よりも上になる。
「ぐわぁああああ!?」
事実、先程よりもオータムは苦しそうな声を発し、吹き飛んでいく。
「く、ぅううう!!」
また反対側にまわられて、同じく連射され吹き飛んでいくわけには行かない。
1人射撃バドミントンの羽では無いのだから。
オータムはサポートアームを地面に突き刺し、威力を殺す。
「はぁ、はぁ、てめぇ、よくもやりやがったなぁ…!!」
「お前が『そんなんじゃ勝てない』とか言うから、攻め方を変えたんだよ」
激昂しているような声色で叫びながら、フラフラと立ち上がるオータム。
ジュウオウザワールドの長所の1つ。
それは、多彩な戦闘方法である。
近中遠全ての間合いで戦えるというのは、ありとあらゆる敵や状況でも戦えるのである。
また、万能型は特化型の得意分野での対決に持ち込まれると、どうしても勝てないという弱点が存在する。
だが、洗脳中だったとはいえジュウオウジャーの他メンバーと1対5の戦闘を行い、圧勝出来るほどの実力を有するジュウオウザワールドに、それは大きく当てはまらない。
負ける事があるとしたら、それはもはや万能型だの特化型だの言える敵ではない。
「くっそがぁあああああ!!」
バァン!バァン!バァン!バァン!バァン!
叫びながらジュウオウザワールドに攻撃しようとするオータムだが、それよりも早く、足元付近への射撃を行う。
正確に着弾し、フラフラだったオータムは再び倒れ込み、転がっていく。
「はぁ、はぁ、はぁ……クククククク!!アハハハハハハハハハ!!」
「……何がおかしい?」
ジュウオウザワールドが更に攻撃をしようとした時、不意にオータムが地面に転がったまま大笑いをし始めた。
警戒しながらジュウオウザガンロッドを構えると、オータムはゆっくりと立ち上がる。
「あああ……こんなにもちゃんと戦闘するのは、久しぶりだぁ!!さぁ、行くぜぇ!!」
オータムはそう叫ぶと、さっきまでよりも早い速度でジュウオウザワールドに突っ込んでいく。
「っ!!」
地面を蹴り、残像を残し一瞬で背後に移動すると、そのままの流れでジュウオウザガンロッドを構え、発砲する。
バァン!
だが、オータムは身体の向きを変えずにサポートアームで弾丸を撃ち落とす。
「っ!?」
(ISのハイパーセンサーか?いや、それも多分あるとは思うが、それだけだったらさっきまでの攻撃を避けられていなかった理由にならない…単発だったからか?それとも……)
「はっ!その程度かぁ!?もうそれは、通用しねぇぞぉ!!」
オータムは身体の向きを変え、ジュウオウザワールドに突っ込んでいく。
ジュウオウザワールドは再び地面を蹴り、背後に移動すると今度はリールを回し、連射を行う。
バババババババババババババババァン!!
さっきまでだったら、全弾当たっていたのと同じ攻撃。
だが。
「ぐっ!?このぉ!!」
この攻撃さえも、オータムはサポートアームで弾いた。
弾数が弾数なので全てを弾く事は出来なかったが、それでもかなりの量を弾く事に成功し、ダメージを抑える。
「っ!」
(やっぱり!この短い時間だけで、俺の戦い方、そして射撃の癖を理解されている!)
「これは…かなりの強敵だ…!!」
ジュウオウザワールドは地面を蹴り、距離を取る。
ここまでの戦闘で、オータムが接近戦メインだと理解したので、離れる事で体勢を整える。
「アハハハハ!どうしたどうしたぁ!手が割れたらそれで終わりかぁ!!」
装備は最初よりもボロボロになり、体力も削られているのにも関わらず、その動きは機敏だ。
さっきフラフラだったのは演技だというのか。
そう考えてしまう程、今のオータムの迫力は凄かった。
《ザワールド!》
《ウォーウォー!ライノース!》
「本能覚醒!」
ジュウオウザワールドはライノスフォームに変身すると、ジュウオウザガンロッドをフィッシングモードに変形。
ライノスラインを引っ張り出し、オータムに向かって振るう。
「ハァッ!!」
「チッ!このっ!」
オータムはサポートアームで受けるも、それは間違いだった。
「なっ!?」
サポートアームに、ライノスラインがぐるぐるに絡みついたからだ。
「フンッ!!」
ジュウオウザワールドは腕に力を籠めると、一本釣りの要領でサポートアームをへし折る。
バチィ!!
「ぐうっ!?」
引き裂かれた断面からスパークが散る。
ちぎれた先を手元に手繰り寄せたジュウオウザワールドは、それをそこらへんに放ると再びジュウオウザガンロッドを構える。
「てめぇ、よくもやったなぁ!」
オータムは叫び、ジュウオウザワールドはジュウオウザガンロッドを振るおうとする。
が、その直前
「操!避けろ!」
背後からのその声に、ジュウオウザワールドは瞬時に反応。
半ば倒れ込むような形でその場から避けると、その一瞬後にジュウオウザワールドが立っていた場所を通過する形で、オータムへの攻撃が行われる。
「ぐわぁあああ!?」
オータムはふっ飛んでいき、ジュウオウザワールドは攻撃が来た方向を向く。
「ラウラ!簪!」
そこには、今まさにレールカノンによる攻撃を行ったラウラと、山嵐を何時でも発射できるようにスタンバイしている簪だった。
「操さん!大丈夫ですか?」
「ああ、俺は大丈夫だ。楯無さんは?」
「学園長の所だ。避難確認をしているらしい」
「了解」
ジュウオウザワールドの隣にやって来たラウラと簪とその様な会話をした後、オータムに向き直る。
「ちっ…流石に3対1はマズいなぁ……」
ふっ飛ばされたオータムは、ゆっくりと立ち上がりながら小声でそう呟く。
(仕方ねぇ、アイツに頼る事になるのは、非常に、非常に!ひ!じょ!う!に!!気に食わねぇが、頼らざるを得ないようだ)
思考を纏めたオータムはバッと右手を掲げる。
その右手には、赤いボタンが1つだけ付いた黒い箱状のものという、何処か非常に古臭く感じるものだった。
「なんだそれは?」
レールカノン、やAICといった全ての行動に迅速に移れるようにしながら、ラウラがそう声を発する。
「これか?良いぜ、教えてやるよ…これはなぁ!アリーナに仕掛けた爆弾の起動スイッチだ!!」
「「「っ!?」」」
オータムの口から発せられた衝撃的な言葉に3人は驚くも、焦りはしない。
明らかにこちらが追い詰めているこの状況で、そんな言葉など口から出まかせの可能性の方が高い。
だからといって、確認しない訳にはいかない。
簪とラウラはアイコンタクトを取ると、手分けしてアリーナをハイパーセンサーによってアリーナをそれぞれ探索する。
一瞬後、簪がハッとした表情を浮かべ、慌てたような声を発する。
「っ!第一アリーナ、天井付近!!」
その言葉を聞き、ジュウオウザワールドは視線を第一アリーナに向ける。
「アレか!!」
変身した事による強化された視界には、確かに簪が示した位置に、前までは存在しなかった黒い四角形の物体が映った。
これが大和だったら、もっと鮮明に見えたのだろうが、ジュウオウザワールドにはこれが限界だった。
だが、ISのハイパーセンサーを使った簪がそう言うのなら間違いは無い。
「ひゃはははは!これで終わりだぁ!!」
「っ!貴様ぁ!!」
オータムのその言葉に、ラウラが反応するも、手の中にあるスイッチを押すのを妨害するのは非常に困難だ。
AICが使用できれば止める事は可能かもしれないが、絶大な集中力が必要であるAICを瞬時に発動させるのは、いくら現役軍人のラウラでも難しい。
その事もラウラは分かっているので、ワイヤーブレードでの妨害を試みるも、遅い。
オータムによって赤いスイッチを押されてしまう。
「ひゃはははははははははぁ!!」
「くっ!?」
その一瞬後、ワイヤーブレードによってスイッチが弾かれる。
弾かれたスイッチを、ジュウオウザワールドは回収する。
すると、赤いスイッチの下部に、同じく赤いデジタル数字が表示されている事に気が付いた。
『2:53』
これが本当で、さっき確認したものが本当に爆弾だったのだら、もう時間が無い。
「くっ!貴様ぁ!!」
「ハハハ!」
ラウラはオータムに攻撃を仕掛けるも、オータムは軽々とそれを避ける。
(アイツの助けを借りねぇといけねぇのは癪に障るが…これしかねぇからなぁ。それにしても、コイツ押した時点で連絡が行ってる筈なんだが…居ねぇなぁ……)
ラウラからの攻撃を躱しながらオータムはそんな事を考える。
「ハァア!!」
「ぐっ!?」
考え事をしているからか、ラウラの攻撃を一撃くらう。
さっきまでジュウオウザワールドにボコボコにされていたため、ダメージが残っている。
その為、たった一撃でもそこそこなダメージになるのだ。
「みっ!操さん!ど、どどどどうしましょう!?」
簪は焦ったような声を発し、ジュウオウザワールドに意見を求める。
ジュウオウザワールドは視線をアリーナに固定したまま、言葉を発する。
「簪、俺に考えがある。ラウラと一緒にオータムを拘束してくれ」
「オータム…巻紙礼子の本名ですか?」
「本名かは知らんが、さっき丁寧に教えてくれた」
「そうですか……操さん」
「なんだ?」
「後は、任せました!!」
簪は、ジュウオウザワールドなら、操ならなんとかしてくれると信じ、指示通りオータムの拘束へと向かう。
それを確認したジュウオウザワールドは、第一アリーナに向かって走り出す。
「はっ!今更何が出来るって言うんだ!!もう遅いんだよぉ!!」
そんなジュウオウザワールドに向かって、オータムは馬鹿にするような声を発する。
「遅い?そんなもん……知るかぁ!!」
「あ?」
「お前たちは知らないかもしれない!だけどな!この学園には、世界中から、ISに憧れたみんなが集まって来るんだ!中には、嫌な奴もいる!でも!みんな支え合って、目標に向かって努力してるんだ!そんなみんなの想いは、お前みたいな奴に、壊されていいものなんかじゃない!俺が、俺達が絶対に守る!」
ジュウオウザワールドは、その雄叫びと共にライノスラインをめいいっぱい伸ばし、アリーナに向かって放つ。
シュルルルルルルルルルルルル!!
激しい音と共に、普段使用している長さの何倍か分からない程長いライノスラインが放たれ、アリーナをグルグルに絡めとる。
そして、
「うぉおおおおおおおおおおおお!!」
精一杯の力でジュウオウザガンロッドを引く。
「なっ!?てめぇ、まさか!?」
「操さん!?」
「このまま、アリーナ毎釣り上げる!!」
ジュウオウザワールドが考え付いた解決方法は至ってシンプル。
アリーナに向かって爆弾を撤去する時間が無いんだったら、アリーナを爆発させても問題無いところに移動させればいい。
「はっ!そんな事出来る訳ねぇだろうが!!」
「出来る、出来ないじゃない!やるんだ!俺は、学園のみんなを、守る!!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
その咆哮と共に、アリーナが揺れ始める。
揺れは地面を伝わり、ジュウオウザワールドたちの足元も振動を始める。
「なっ!?てめぇ!!」
オータムは慌ててジュウオウザワールドを攻撃しようとするが、
「隙ありだ!!」
「ハァア!」
その隙に、AICによってその場に固定され、簪の攻撃を全身に受ける。
アラクネが強制解除され、生身となったオータムがそこらへんに転がる。
「確保!!」
「うん!」
すかさず2人によって、オータムは拘束される。
「くそがぁあああ!!」
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
オータムのその叫び声をかき消す勢いで、ジュウオウザワールドの叫び声が辺りに響く。
「絶対に、この学園を守る!」
〈踏ん張れ操!〉
〈前にビルと宇宙船釣った事もあるんだ!お前ならいける!〉
〈おお、ちょっと動いたぞ!いけいけぇ!!〉
操の妄想の犀男、狼男、鰐男も声援を掛けながら、ジュウオウザワールドの身体を引く。
その言葉に励まされ、更に身体に力を入れる。
「くっ、ううう!!」
だが、妄想の身体は直接的なサポートにはどうしてもならない。
あと1歩、あと1歩の力がどうしても足りない。
如何したものかと思考を超高速で巡らせていると、不意に直接的に身体を後ろに引かれた。
「っ!」
咄嗟に後ろを振り向くと、そこにはジュウオウザワールドの身体を引っ張っている、自身の専用機を展開した楯無と、訓練機であるラファール・リヴァイヴを身に纏ったナターシャと真耶だった。
避難誘導や、その後のチェックを終わらせた3人。
ナターシャと真耶は十蔵から訓練機の使用許可を特例で得て、楯無と共にやって来たのだ。
「「「……!!」」」
3人は真剣な表情を浮かべながら、同時に頷く。
今何をしているのか、どうしてこんな事をしているのかなどの説明は一切受けてない。
だけれども、ジュウオウザワールドの事を、操の事を信頼しているから。
説明も無しに、今こうやって協力しているのだ。
「っ!」
表情から、その考えを察したジュウオウザワールドも頷く事で答える。
そして、4人は改めて視線をアリーナに向けると、全身に力を入れ直し、アリーナを全力で引っ張る。
「「「「うぉおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
アリーナを釣り上げるのが遅れれば地上で爆発する。
もう既に時間は残されていない。
ここが、勝負どころだ。
「「「「ハァアアアアアアアアアアア!!!!」」」」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
遂にはアリーナ半分が持ち上がる。
「オラァアアアアアア!!」
身体の向きを変え、ジュウオウザガンロッドを振り抜く。
バキバキバキバキ!!
アリーナは激しい音と共に空中に舞う。
そして
ドガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!
アリーナは空中で爆発し、黒煙が発生する。
アリーナの残骸がIS学園の敷地中に落下してくる。
「あはは…こんな事になってたんですか…片付けが大変だ……」
「まぁまぁ山田先生、アレが地上じゃ無かっただけマシじゃないですか」
「っていうか、アリーナを釣り上げて折れたり壊れたりしないあのロッドはいったい…?」
真耶、楯無、ナターシャがそう呟く中、ジュウオウザワールドはラウラと簪に拘束されているオータムに向かって歩く。
オータムが信じられないといった表情を浮かべている中、膝を折り視線を合わせる。
「言っただろ?出来る出来ないじゃない、やるんだって。俺達が、絶対に守るって」
「っ!てめぇ…!!」
ジュウオウザワールドの言葉に、オータムは恨みがましい表情を浮かべる。
そんなもの、気にもしないように言葉を続ける。
「この
「くそがぁあああああ!!」
最後にオータムの叫びを残し、操達は校舎の中に戻っていく。
オータムの所属組織だったり、今回の目的等々分からない事が多い。
安全確保が出来た後、すぐさま緊急会議や被害確認をしなければならないだろう。
今のところの被害はオータムとの交戦時に空いた壁の穴と、地上で爆発させない為に空中に放ったアリーナ1個ぐらいだろうか。
(…破壊許可あったとはいえ、俺ぶっ壊し過ぎじゃね?)
操は苦笑いを浮かべながら、歩く事しか出来なかったのだった。
「フン、オータムの奴め…しくじったか」
そんな操達の様子を、遠くの方から見つめている少女が1人。
その身にはISを纏っており、顔の上半分はバイザーによって隠れている。
彼女は、オータムの仲間。
オータムが押したスイッチは爆弾を起動させるだけでなく、彼女への連絡も同時に行うものだったのだ。
その為、さっきからずっとIS学園を観察していた彼女だが、手を出さなかった理由は主に2つ。
1つは、彼女が此処に来た時にはもうオータムがかなりピンチになっていたからだ。
交戦して負けるなんてことを想定した訳では無いが、攻撃をする前にオータムが捕まる可能性の方が高かった。
だったら、わざわざ自分がいるという情報を与えるより、向こうの情報を収集する方が良いと判断したのだ。
「ククククク…あのボスは気に食わんが…これだけは感謝しておいてやる…」
自分の首元を触りながらそう呟く。
彼女の身体には、監視用ナノマシンが投入される予定だった。
だが、その直前に組織のトップが変わり、その計画は白紙になった。
なので、ここまで自由に行動が出来るという訳だ。
そして、彼女が手を出さなかったもう1つの理由。
それは……
「ジュウオウザワールド…門藤操…ハハハハハ!!本当に面白い奴だ……!!」
操の行動に、目を奪われていたからだ。
「ISのアリーナを釣り上げるという発想も!それを実際にやり遂げてしまう力も!自分がやり遂げるものに対する想いも!何もかも素晴らしい!」
操の突拍子もない発想や決断力に、彼女は惹かれた。
「ククククク…ハハハハハ!!いつか、お前とやり合うのが楽しみだ!!」
最後にその言葉を残し、彼女はIS学園から撤退する。
頭の中でオータムを見捨てた言い訳を考えつつも、その口元はとても嬉しそうに歪んでいた。
「なぁ、門藤操……………………兄さん」
IS学園学園祭特別イベント「アリーナ一本背負い」
参加条件
・学園長より破壊許可を得ている
・10年以上戦った経験がある
・地球を救った実績がある
・男性IS操縦者である
以上4つの条件を全て満たす方で、腕に自信のある方は是非!
次回も何時になるか分かりませんが、楽しみにしていてください!
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