INFINITE・THE WORLD   作:ZZZ777

55 / 58
もはや恒例、裏。
何時もより短めです。

今回もお楽しみください!


会議の裏で

三人称side

 

 

操達が会議室で戦闘後の会議を行っている頃。

朝から教室に姿を見せず、避難誘導もせず、会議にも出席していない駄目教師、織斑千冬の姿は、寮長室にあった。

何時も常に散らかっているこの部屋ではあるが、今日はより一層散らかっていた。

 

 

積み重なり、悪臭を放っている脱ぎ捨てられた衣類。

ハエなどの虫が周囲を飛んでいる流しや空き酒瓶置き場。

その他にも使ったままで片付けていない小物や、部屋の隅に潜んでいるゴキブリなど。

とても人が住んでいるとは思えない…そして、寮長であるとは思えない汚部屋に、千冬は居る。

 

 

「んぐ、んぐ、んぐ、はぁ…」

 

 

ゴミにまみれて、もう何処にいるのか分からない状態だというのに、千冬は酒を飲んでいた。

休憩を挟まずにゴクゴクと缶ビールを飲み、口を離した頃には、もう缶の中身は無くなっていた。

 

 

「もう無くなったか…」

 

 

千冬は缶を数度振って中身が無くなった事を確認した千冬は、持っていた缶をそこらへんに捨てた。

中身が無いとはいえ、洗わないと数滴ビールが残っているし、匂いもキツイ。

それなのにも関わらず、千冬は本当にそのまま缶を捨てた。

 

 

「ちっ、もう無いか…」

 

 

千冬は周囲にもう酒が残っていない事に若干怒りを覚えながらそう呟くと、身体を伸ばしながら立ち上がった。

アルコールが入っている事、そして足の踏み場が無いくらいに部屋が散らかっている事が相まって、千冬はフラッと身体を揺らす。

 

 

「くっ…」

 

 

だが、腐っても世界最強。

体幹の強さだけで転ぶのを耐えた。

 

 

千冬が、朝から教室に姿を現さなかった理由。

それは単純明快で、昨日の夜からずっと、ずっっっっっと酒を飲んでいたからだ。

昨日の夜に酒を飲み始め、夜が更け日を跨いで日が昇り、事件が起き日がだんだんと沈んで来た今。

漸く千冬は酒を飲むのを止めた。

 

 

眠らずにずっと座っていたので身体は凝り固まっている。

千冬が少し動くだけで、身体がバキバキと音を立てる。

 

 

足元には大量の酒瓶や空き缶が転がっており、今の千冬の吐息はアルコールの臭いしかせず、零した酒が服に染み込んでいた。

 

 

「今、何時だ?」

 

 

カーテンを開けたのは、いったいどれくらい前なのか。

少なくともここ数ヶ月開けていないので、千冬は太陽の動きから大体の時間を察する事すら不可能だ。

時計を見て、時間を確認する。

 

 

「……朝か?夕方か?」

 

 

しかし、アナログ時計が故それだけを見ても今が朝方か夕方かが分からない。

千冬はチラリとカーテンと玄関を見比べる。

カーテンに近付き開けるよりも、玄関から外に出た方が移動が簡単だと判断。

玄関の方に向かう。

 

 

ゴミをかき分け、身だしなみを整えたりチェックしたりする事もせず、玄関から外に出る。

外に出ても寮の廊下なのだが、部屋の換気を余りにもしなさ過ぎて、空気が随分と新鮮に感じる。

ぼっさぼさの髪などを他人に見られないようにしながら寮の外に出る。

 

 

「夕方か……」

 

 

太陽の位置と空の色から大体の時刻を理解した千冬は、のそのそとした動作で部屋に戻っていく。

アリーナが1つ無くなっている事や、そもそも今日が学園祭である事などには気が付かなかったらしい。

そうして部屋の扉の前に戻って来た時、千冬は気が付いた。

扉に、1枚の封筒が張り付けられている事に。

 

 

「なんだ、これは」

 

 

千冬は怪訝そうな表情を浮かべながら、その封筒を剥がす。

コンビニやスーパーで簡単に買えるような、茶色で無地のもの。

差出人などの情報は一切書かれておらず、書いてあるのはたった2文だった。

 

 

『織斑千冬様へ

 織斑一夏について』

 

 

「っ!?」

 

 

その文を見た瞬間、千冬は両目を見開くと、とても素早い動きで扉を開け部屋に入っていった。

 

 

千冬がこんな、教師とは思えない部屋で、教師とは思えない飲んだくれになっているのには、当然理由がある。

それは夏休み前、臨海学校2日目の夜に束に言われた言葉。

『一夏は死んだ』『一夏を殺したのはお前たちだ』

その言葉は、時が経つにつれ比例するように千冬の中で枷のように、重く響いてく。

千冬から気力を奪い、こんな自堕落な人間へと変貌を遂げたのだ。

 

 

部屋に戻った千冬は、部屋で唯一しっかり座れるところこと、ベッドの上に行くと、封筒を開け中身を確認する。

中身はたった1枚の紙。

千冬はゴクリと唾を飲んでからその紙を開く。

 

 

『織斑千冬様へ

 

貴女は自分の弟の真実を篠ノ之束に聞いて、絶望しているのかもしれません。

しかし、それは事実ではありません。

貴女の敵となった篠ノ之束が、貴女の気力を奪うためについた嘘です。

 

織斑春十が織斑一夏を虐めていたという事実はなく、織斑一夏が死亡したという事実もありません。

本当ならば、織斑一夏の居場所などもお伝えしたいのですが、この情報も無料で得たわけではありませんので、対価を払っていただきます。

 

具体的に説明をしますと、我々の組織に加入して頂き、協力をして頂きます。

1つ注意ですが、加入した場合上からの命令は絶対です。

違反した場合、罰則が伴います。

 

1週間後の21:00に貴女の自宅にお伺いします。

この話に賛同して頂く場合は、ご帰宅をお願いします。

 

良い返事を期待しています。

 

             亡国企業』

 

 

どう考えても胡散臭い内容の手紙。

しかし、今の千冬にこの手紙の内容を疑うという思考は無かった。

 

どうして束との会話を知っているのか。

何故一夏の事を知っているのか。

いろいろツッコミを入れたくなる内容もある筈なのに、それもしない。

 

 

「一夏……」

 

 

千冬は濁り切った眼で、手紙の事を見つめていた。

なにを考えているのか、本人にしか分からない。

こうして時間は過ぎて行った。

 

 


 

 

「うん…んぁ?」

 

 

千冬が手紙を読んでいるのと同じ時刻。

オータムにボッコボコに負けた春十が、医務室で目を覚ました。

 

 

操が間に合わなければ、もしかしたら死んでいたかもしれなかった春十。

白式を展開していたとはいえ、かなりの重症だ。

全身を包帯でぐるぐる巻きにされており、腕には点滴が刺さっていた。

 

 

「医務室…?なんで…?」

 

 

長らく気絶してたため、意識が混濁しているようだ。

暫くボーッと天井を見上げていたが、次第に自分が何で気絶していたのかを思い出した。

 

 

「そうだ、俺は、オータムに……」

 

 

そう呟いた春十は、改めて自分の身体を見下ろす。

 

 

「クソが!なんであそこで主人公が勝てないんだよ!」

 

 

前々からずっと成長していない春十。

吐く言葉の内容にも成長が見られない。

 

 

「クソッ!クソッ!なんで誰も助けに来ねぇんだ!主人公のピンチだぞ!?」

 

 

原作での学園祭オータム戦では、なんやかんやで一夏のピンチに、楯無が駆け付け事なきを得た。

だがしかし、春十の戦闘中は増援は無く、敗北後に操がギリギリ間に合った形だ。

春十視点からすると、誰も助けに来なかったという事になる。

 

 

そもそも他人が助けに来る前提なのが、春十の今の実力の低さを暗に自分で認めているのだが、それに春十は気が付いていない。

 

 

「はぁ、はぁ、クッソ……」

 

 

叫び続け疲れたのか、肩で息をし始める春十。

ふと視線を周囲に向けると、白式の待機形態のガントレットが無い事に漸く気が付いた。

 

 

「あれ、白式は…!?」

 

 

慌てて視線を様々なところに向けるも、白式は見当たらない。

春十がオータムに敗北した際、白式もかなりのダメージが受けていたので、春十が医務室に運び込まれるのと同時に白式は整備室に運び込まれたのだ。

その為白式は(一応)無事なのだが、気絶していた春十がそれを知る筈も無い。

 

 

「あれ?そう言えばオータムはあの後どうなったんだ!?学園は!?」

 

 

そうして、ここまで来て春十は自分の敗北後、自分が戦っていた相手がどうなったのかが気になった。

普通だったら誰も助けに来なかった事を恨む前に気になる事だが、春十は目を覚ましてから暫くして漸く意識した。

 

 

今こうやって自分がIS学園の医務室に寝かされている事、特に爆発音などの戦闘を感じるものも無い。

取り敢えず戦闘が終わっている事は察せられるが、それ以上の情報は何もない。

 

 

「白式が持ってかれたか…?」

 

 

暫くの間、最悪の可能性に呆然としていたが、やがてその思考は変わっていく。

 

 

「どうでもいい…どうでもいい!あんな、あんな二次移行もしない欠陥機なんか!!」

 

 

春十はそう叫ぶと、包帯が巻かれている事など気にせずに…というより、包帯が巻かれている事を忘れているかのように、拳をベッドに振り落とした。

 

ギシィ!!

 

スプリングが悲鳴を上げるかのように軋む。

学園の備品なのだが、今の春十に…いや、通常時だったとしても、春十にそんな事を考える思考は無い。

 

 

「そうだ!そもそも俺が勝てないのは、アイツに問題があるんだ!俺が弱いんじゃない!アイツが弱いんだ!!」

 

 

甚だしいまでの責任転嫁。

それならば、他人のサポートを受けていたとはいえ、碌に訓練も受けていない状態で、しかも春十とは違い知識も殆どないなかで、白式で戦い抜けた原作の一夏よりも、春十の方が下だと言っているようなものである。

 

そう、かつて虐め、散々馬鹿にした一夏よりも、自分が下だと春十は認めたのだ。

しかし、その事実に春十は気が付かない。

そして白式が二次移行しない原因は、白式ではなく自分だという事にも。

 

 

「もっと、もっと強い専用機があれば…!!」

 

 

確かに白式はかなりのピーキー機体だ。

遠距離武器が無く、武装の追加も出来ない。

しかし、零落白夜という文字通り一撃必殺の技が使えるのだ。

ほぼ同じような性能で、第一世代型の暮桜で最強と呼ばれていた千冬の事を考えると、白式は長期戦は不可能だが、十分戦えるだけのポテンシャルは有している筈だ。

 

 

それなのにも関わらず、勝てはしないまでも惜しい勝負すら出来ないとなれば。

原因は春十の弱さだ。

 

 

「なんで、なんでだ!なんで主人公がこんなに活躍出来ねぇんだ!!」

 

 

春十はもう1度ベッドを殴ってから思考する。

そうする事約10分。

春十は不意に顔をあげた。

 

 

「そうだ…門藤操だ!アイツのせいだ!!あのバグがいるからだ!!」

 

 

そうして、何故か笑顔でそう声を発した。

 

 

確かに、操の振るう力は不具合(バグ)であるという事は事実だ。

しかし、春十という転生者の存在も、バグである。

春十はその事を棚に上げて思考をしている。

 

 

「俺に、俺にアイツを上回る力があれば…!!そう、もっと力が……!!」

 

 

そうして、春十は何かを悟ったような表情でそう呟く。

 

 

「そう、亡国企業みたいな……!!」

 

 

それから。

春十は救護教諭が部屋に来るまで。

狂ったように同じ内容を呟いていた。

その表情も、同じように狂っていた。

 

 


 

 

会議と同時刻。

戦闘開始時に避難をしていた来賓は、会議に参加していない警備員などに誘導されて、各々の国や企業への帰路についていた。

 

 

唐突に開始された戦闘。

それに対する不安はかなりのものだ。

特に、来賓の人達は戦闘慣れしている訳では無い。

つまり、急な戦闘に対する心構えが出来ていないのだ。

全員が全員、とても疲弊した様子で帰路についていた。

 

 

そして、来賓が帰路につくのと同時に、一般生徒への避難指示も解除。

ある程度自由に行動できるようになった。

がしかし、そこそこ遅い時間である事、教員達が会議をしているという事もあって、出来るだけ直ぐに寮の自室に帰る事を促された。

 

 

男子更衣室近くには近付く生徒は居なかった為、付近の壁が破壊されている事に気付く生徒は居なかった。

だが、流石に第一アリーナが丸々無くなり、周囲に残骸が大量に残されていたら、第一アリーナが破壊された事を…それ程までの戦闘が繰り広げられた事を、ほぼ全員が察した。

 

 

そうして、会議が終了し操達が各々の部屋に帰る頃。

生徒寮のとある一室で、2人の生徒が密会をしていた。

 

 

1人は黒髪ポニーテールで、もう1人は金髪ロング。

そう、篠ノ之箒とセシリア・オルコットである。

 

 

箒はISの開発者の妹だが、その姉から縁を切られ。

セシリアは専用機は国に没収され、代表候補生の資格を失い。

成績は落ち、夏休みには補習だらけだった。

特別な生徒から一転、ただの落ちこぼれになってしまった2人。

 

 

戦闘が始まった時、2人は足手纏いどころか只の犠牲にしかならないのに春十の所に行こうとしたのだ。

無論教員に止められ、とても強引に避難所に誘導(連行)された。

そう、緊急時なのにも関わらず無駄に教員の負担を増やしたのだ。

 

 

その時や戦闘終了後もいろいろやる事が多すぎて、まだ2人に説教は出来ていない。

その為、2人がそれだけ迷惑な行動をしたという事を、当人たちは理解していない。

まぁ説教して確実に理解するかと言われたら、首を横に振らざるを得ないのだが。

 

 

「クソ!アイツ等、私達が春十の元へ行くのを邪魔しやがった!!」

 

 

「全くですわ!本当、迷惑甚だしいですわ!」

 

 

現に、遠回りに自分達を助けてくれた教員を『アイツ等』と呼び、恨み節を吐いているのだから。

 

 

「どうしたら良い!?どうしたら春十や私達の邪魔をする害悪共を、どうしたら抹消できる!?」

 

 

箒は親の仇が目の前にいるのかと言わんばかりの表情を浮かべながら、絞り出すようにそう叫んだ。

そう、これが2人がこの部屋で密会している理由。

春十や自分達の邪魔をしている(と本人達が思い込んでいる)奴らを、どうやったら抹消するのかの相談である。

 

 

はっきり言おう、この2人は馬鹿である。

 

 

春十の事が好きな2人。

いや、好きというよりも、もはや崇拝や妄信に近い。

だからこそだろう。

冷静で客観的な思考が出来なくなっている。

 

 

春十や自分達が全ての中心だと考え、それに異を唱える者どころか、自分達が気に食わないもの全てを敵と認識する。

 

 

「特に、あの忌々しい門藤操を…!!」

 

 

「ああ、鈴の仇もあるしな!」

 

 

セシリアが親指の爪を噛みながらそう言い、箒がそれに賛同するように左の掌に右の拳を打ち付ける。

春十からクラス代表の座を奪い、クラスの中心になっているのが気に食わないのだろう。

 

 

だが、セシリアと鈴が専用機を使用したうえで3対1でフルボッコにされたのに、何故操に歯向かおうとするのか。

正々堂々と勝負し、負けたのが悔しいから自分を鍛えてリベンジをする。

というのなら理解できるし、それならば操も真剣勝負をしようとするだろう。

 

しかし、以前卑怯な手段を使っておきながら敗北し、それ以降特に鍛えもしなかった2人と、操は戦わないし、戦ったとしても負ける事は無い。

仮に闇討ちなどをしようとしても、ビットでの不意打ち射撃を避けれたように、操にその戦法は通用しない。

 

 

そしてなにより、操には仲間がいる。

箒とセシリアは今は利害が一致している為こうして協力をしているが、仮に目的を達成した場合、どちらが春十に相応しいのかで争うだろう。

しかし、操達は違う。

しっかりと仲間達との絆と信頼関係を築いている。

そういったところでも、操を超える事など不可能なのだ。

 

 

だが、この2人はそう言った事を理解していない。

理解しようともしない。

そして、自分達の実力の無さに目を向けず、他人に責任を擦り付けるだけ。

だからこそ成長しない。

そして成長しない理由を理解しようとせず、他人を攻撃するという悪循環に陥っている。

 

 

「もっと、もっと私に力があれば、邪魔者など簡単に蹴散らすことが出来るのに!!」

 

 

箒はもう1度悔しそうな表情をしながら拳を打ち付ける。

元より気に食わない事があれば直ぐに手を出すような性格だったが、その性格は悪循環の中で更に捻じ曲がったようだ。

 

邪魔者を蹴散らす。

箒の目的はそこで終わっている。

蹴散らした後どうしたいのか、その先が無い。

そして、蹴散らしたい理由も『自分達の邪魔をするから』だけだ。

目的も小さい。

 

 

「全くですわ!!」

 

 

箒の言葉に賛同するように、セシリアも憤激したような表情を浮かべる。

思考が捻じ曲がったのは、箒だけではなくセシリアもだ。

 

 

入学直後は女尊男卑に染まり切って喧嘩を吹っ掛ける程には、セシリアも元々かなり横暴で、暴力的だった。

その後のクラス代表決定戦で春十に負け、女尊男卑の考えを改め、春十に惚れた。

そこまでは良い。

チョロすぎるが良い。

だが、問題はここからだ。

 

 

春十に惚れる事で、暴力的な性格の箒や鈴と恋敵になった。

そんな2人と関わり、時にぶつかり合う事で次第にセシリアも影響を受け、次第に思考が同じようになっていった。

 

 

そうして、箒と同じように邪魔をするものを排除すればそれでいいという、最悪すぎる思考で落ち着いてしまった。

3対1で操にフルボッコで負けても、専用機を没収され代表候補生の肩書を剥奪されても、それは戻る事は無かった。

寧ろ、箒と同じような悪循環に陥り、余計に拗れ捻じ曲がったのだ。

もはや、どうして代表候補生を目指し、どのような努力を積んで来たのかも、忘れてしまったのかもしれない。

 

 

「クソッ!クソッ!どうすればいい、どうすれば……!!」

 

 

「本当に周囲には邪魔者ばかり……どうすれば……」

 

 

2人は思考を巡らせ、意見を交換し合うも、中々良い案は出ない。

只の一般生徒2人に出来る事などたかが知れている。

箒とセシリアに出来る最良の手は、更生し真面目に授業を受け、しっかりと訓練を積む事なのだが、最大限捻じ曲がったこの2人にはもはやそんな発想出てこないだろう。

もし出て来たとしても、今のこの2人なら

 

『そんな馬鹿馬鹿しい事するわけが無い』

 

と、その案を自分で速攻否定するだろう。

 

 

「どうすればいい?どうすれば力を……」

 

 

「そして、鈴さんという味方の救出も考えなくては…」

 

 

「必要か?あんな奴」

 

 

「箒さん、少々頭を冷やしてください。今、私達の周りには邪魔者しかいません。となれば、国に強制帰国させられたお馬鹿さんでも必要ではありません事?」

 

 

本当に頭が冷えていたら、この会話自体が馬鹿な事だと分かるものだが、残念ながらこの場にそれを指摘できる人間はいないし、この2人にその指摘を受け入れる程の余裕も無い。

『どうすればいい』と呟くだけの中身が無い会話を繰り広げていると、消灯時刻が過ぎた。

しかし、寮長の千冬が堕落している為見回りなどは殆どない。

そして、近くの部屋の生徒も、この2人に下手に注意をすると暴力を振るわれてしまうという事をここ半年くらいで理解しているので、結果として誰も注意に来ない。

 

 

その為、2人の意味の無い密談は更に続く。

明日は休みの為、起床時間を気にする必要は無い。

箒とセシリアなら、授業があっても気にしないのかもしれないが。

 

 

同じ様な内容を延々と語り、日を跨ぎ午前3時。

流石の2人もそろそろ眠くなってきた。

セシリアの部屋は本来別なのだが、誰も戻ってこないのでこのまま寝てしまおうと部屋の電気スイッチに向かった時。

 

 

♪~~♪~~

 

 

「私ですわね」

 

 

セシリアのスマホが着信音を鳴らした。

スマホを操作し、内容を確認する。

 

 

「っ!!鈴さんですわ!!」

 

 

「何っ!?」

 

 

噂をすればなんとやら。

数時間前話題に出ていた、件の鈴からだ。

 

 

「アイツ、久々だし何でこんな時間なんだ?」

 

 

「さぁ…?連絡手段をなかなか入手できず、入手しても監視のせいでこの時間しか使えなかった、とかではありませんか?」

 

 

「ああ、そうかもしれないな。私達とは違い、アイツは1人だからな。周囲の邪魔者の妨害も激しいのだろう」

 

 

そんな会話をしながら、セシリアは鈴からのメッセージを確認する。

読み進めていくと、その口元は嬉しそうに歪んでいく。

 

 

「どんな内容だ?」

 

 

「これですわ」

 

 

箒が内容を聞くと、セシリアが画面を箒に見せる。

すると、箒の表情もセシリアと同じような笑みへと変わっていく。

 

 

「ハハハハ!凄い!鈴の奴、やるじゃないか!!」

 

 

「ええ!よくこんな組織と連絡を取れました。でも、本当に信じていいのでしょうか?」

 

 

「フン、どうせこのまま過ごしていても、どうにもできないんだ。騙されたってどうでもいい。力を得れるのならな!!」

 

 

「確かにそうですわね!じゃあ、返事をしましょう」

 

 

セシリアは鈴に返事をすると、スマホを机の上に置く。

 

 

「じゃあ、そろそろ寝るとするか」

 

 

「そうですわね、そろそろ寝ましょう」

 

 

そうして、2人は先程までとは打って変わり上機嫌で眠りに付いたのだった。

 

 

 




不穏。
ただただ不穏。
もうこれ以上無いくらいに不穏。

次回も何時になるか分かりませんが、楽しみにしていてください!

評価や感想もよろしくお願いします!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。