INFINITE・THE WORLD   作:ZZZ777

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今までにないくらい間が開きました…
本当に申し訳ありません…


不穏な行動

三人称side

 

 

千冬や春十達が朝のSHRに姿を見せなかった日から、1週間が経過した。

結局この1週間、4人全員ただの一度も姿を教室に見せなかった。

それだけでは無い。

休憩時間や放課後、はたまた休日など。

 

 

授業と関係ない場合だとしても、誰もその姿を見せていない。

食堂などの生活に必要な場所でも、だ。

 

 

しかも、連絡が無い。

千冬が音信不通なのは前から分かっていた事だが、まさかの春十達3人とも連絡が取れない。

部屋に行きマスターキーで錠を開けても、寮長室と同じく何かに引っ掛かってるのか開かないのだ。

 

 

毎日毎日4人の部屋に行き、僅かに開く扉から呼びかけていたのだが、これ以上同じ事をやり続けても意味が無いと判断。

無理矢理にでも部屋に突入する事にした。

 

 

最初にやって来たのは1年生寮寮長室。

つまり千冬の部屋だ。

1番最初に音信不通になったので、取り敢えず最初に来たのだ。

 

 

メンバーは真耶と十蔵、楯無に虚、つまり副担任(現担任代理)と学園長と生徒会会長と生徒会会計という、かなり立場が高めの4人だ。

こうまでしないといけないと判断したのは、一応千冬が世界最強だからだろう。

 

 

コンコンコンコン

 

 

「織斑先生?山田です。起きてますか?返事してください!織斑先生!」

 

 

取り敢えず真耶が、今までと同じように扉をノックしてから呼びかける。

だが、もはや当然のように反応が無い。

 

 

コンコンコンコン

 

 

「織斑先生?織斑先生!」

 

 

ドンドンドンドン!!

 

 

真耶の声が大きくなり、ノックの音も大きくなる。

だがしかし、それでも反応は無い。

 

 

「織斑先生、更識です。今から30秒以内に反応が無い場合、扉を壊してでも部屋に入りますよ」

 

 

今度は楯無がそう呼びかけるも、やはり反応は無い。

そこから、約束の30秒。

楯無はISを部分展開、蛇腹剣であるラスティー・ネイルを握りしめる。

 

 

「それじゃあ、壊しますね」

 

 

ラスティー・ネイルを振り上げたところで、最終勧告を行うも、反応は無い。

 

 

「ハァ!」

 

 

楯無はそのままラスティー・ネイルを振り下げ、扉を切り裂く。

 

 

ガラガラガラ

 

 

音を立てながら、扉だったものが床に崩れていき、部屋の中を確認出来るようになる。

 

 

「「「「汚っ!?」」」」

 

 

部屋の中の様子を確認した瞬間、全員が同時に同じ事を口に出した。

それこそ、千冬の安否がどうのこうのという此処に来た目的よりも先に出て来るほどであり、十蔵や虚といった、普段絶対にそんな事を言わない2人も言うほどだ。

本当に散らかっている。

 

 

足の踏み場もないくらいいろいろな物で散乱した床。

積み重なりかなりの高さを誇っている服。

もはや腐っている食べ物しか入っていない食器類。

蠅がたかっているキッチン。

そして、部屋のスペースの3分の1を埋めていると言っても過言ではない程の空の酒瓶。

あまりにも汚すぎる。

 

 

そして、一瞬遅れて楯無達の鼻に届く悪臭。

それはもう、まるで匂いの粒子が1個1個凶器を持っていて、鼻の粘膜を攻撃しているんじゃないか。

そう考えてしまう程に、あまりにも悪臭すぎる。

酸っぱくも苦い、混沌としたこの匂いは、数分嗅いでいるだけで気分が悪くなってくる。

 

 

「「「「……」」」」

 

 

4人が無言で鼻を押さえる。

そして、楯無が部分展開を解除し部屋の中に入る。

 

 

「織斑先生?いらっしゃいますか?」

 

 

部屋の扉を開けただけでは、ゴミが死角を生み出している為、部屋の全貌が良く分からない。

もしかしたら死角で寝ているかもしれないので、非常に気は進まないが部屋に入って確認するしかない。

覚悟を決めた真耶が部屋に入る。

床のゴミを避ける事はもはや不可能なので、踏んでも痛く無さそうな場所を選ぶ。

 

 

「織斑先生?織斑せんせーい?」

 

 

真耶は千冬の名を呼びながら部屋の奥に進んで行く。

 

 

「痛っ!?」

 

 

痛く無さそうだった場所でも、その下に潜んでいる鋭いものが足の裏に刺さったりしながらも、真耶は奥へ進む。

キッチンを一度のぞき、誰も居ないしただでさえキツイ匂いがより濃く充満しているのでそそくさと離れる。

 

 

「織斑先生?」

 

 

そもそもにして、寮長室は部屋数が多い訳では無い。

後は一番大きなゴミ山の向こうだけだ。

そして、そこを確認した瞬間。

真耶は驚きで両目を見開き、叫んだ。

 

 

「い、いません!織斑先生が、何処にも!!」

 

 

「「「っ!?」」」

 

 

楯無達も匂いや足元を気にせずに部屋に突入。

改めて部屋の中を確認する。

ここまでのゴミがため込まれているのだ。

確実に人は此処で生活を行っていた。

だが、真耶の報告の通り、部屋の主たる千冬の姿が何処にもなかった。

 

 

「っ!直ぐに織斑先生の痕跡を探します!虚ちゃん、手袋!!山田先生、学園長、他の教員のみなさんに通達をお願いします!織斑君達の部屋にも強制的に迅速に突入を!」

 

 

「は、はい!」

 

 

楯無の判断は早かった。

すぐさまに指示を出し、虚は手袋を取りに走り出し、十蔵と真耶は他の教員、そして申し訳ないと思いつつも万が一の戦闘要員として操達に強制突入の指示を出し、緊急会議の用意も進めさせておく。

 

手袋が必要なのは、不用意に指紋などを付けない為と、シンプルに素手でゴミをかき分け手掛かりを探すのが嫌だったからだ。

数分もしない間に虚が軍手を人数分持ってきた。

 

 

早速それを着用し、部屋の中を漁り始める。

 

 

「うわぁ、虫!」

 

 

「うっ…なんですか、このあまりにも臭い干からびたものは……」

 

 

漁れば漁るほど、千冬の痕跡とは関係が無い、気分が悪くなってくるものばかりが発掘される。

生きてるのと死んでいるのが混じった虫の群れ、もはやただのボロ雑巾以下に成り果てた衣服類、その他正体すら良く分からない何か分からないもの等々。

全くと言って良いほど千冬の痕跡が全く見つからない。

 

 

「これ、ゴミ捨て部屋では無いですよね…?」

 

 

「はい…間違いなく寮長室ですね……」

 

 

疲れたような表情を浮かべながらそう言葉を漏らす。

この疲労は、肉体の疲労というよりもこのゴミ部屋にそこそこな時間滞在し、尚且つゴミをかき分け漁るという行為に対する精神的な疲労だ。

IS学園に勤めている為一般の人達に比べればかなり高い精神力を持っているが、それでもここまで疲弊してしまう。

裏社会に生きている楯無と虚も、2人程では無いが疲労を見せているのが、いかに精神疲弊が凄まじいかを表している。

 

 

「ふぅ…そろそろ切り上げましょうか」

 

 

「そうですね…緊急会議用の準備も簡易的でいいのでしないといけませんし」

 

 

楯無が軽く伸びをしながらそう呟き、それに同調する様に真耶が反応する。

真耶の言った事は何も間違ってはいないのだが、それ以外にも一刻も早く、このジャングルの奥地以上の魔境ともいえるこの部屋から出たいという本音が滲み出ていた。

 

 

「虚ちゃん?そろそろ行くわよ?」

 

 

楯無達3人が部屋から出ようと立ち上がる中、虚はずっとしゃがんだままだった。

楯無が声を掛けても、手元にある何かを凝視したまま反応を示さない。

普段、主たる楯無の言葉には些細な事であっても(反対意見を含め)何かしらの反応を示す虚が、だ。

 

 

今までこんな事無かったので、流石に怪訝に思い楯無は虚に近付き、上から顔を覗き込む。

 

 

「虚ちゃーん?大丈夫ー?」

 

 

「ひゃいっ!?」

 

 

ここまでして、虚は漸く楯無の接近に気が付いた。

珍しくビクっと肩を震わせて反射的に言葉を漏らす。

 

 

「珍しいわね、虚ちゃんがそうなるなんて」

 

 

「す、すいません」

 

 

「別に怒ってないから良いわよ。それで、なにをそんなにジッと見ていたの?」

 

 

「これを……」

 

 

楯無が首を傾げながら尋ねると、虚は詳しい事は何も言わず手に持っているものを差し出した。

それは、そこらへんのコンビニで購入できそうなただの茶色の封筒と、男子小学生の机の中の奥の方からよく発掘されるようなぐちゃぐちゃに丸め込まれている1枚の紙だ。

 

 

「ええっと……?」

 

 

取り敢えず封筒の方に何もない事を確認した楯無は、ぐちゃぐちゃの紙の方に視線を向ける。

ついさっきまで虚が見ていたのにも関わらず、非常に読みにくい。

楯無は眉間に皺を寄せながら読み進めていく。

 

 

「っ!!」

 

 

そうして、全てを読み終えた時。

楯無は驚愕の表情を浮かべた後、ギリッと奥歯を噛み締める。

背後に居る真耶と十蔵からは、その表情を見る事は出来ない。

だが、その変わった雰囲気、そして若干震えている肩からその紙に書かれている内容がとても重要な何かであるという事が、簡単に分かる。

 

 

「更識会長?」

 

 

十蔵が名を呼ぶと、楯無はゆっくりと振り返った。

 

 

「……どうやら、かなり厄介な事になってるようです」

 

 

手に持っているぐしゃぐしゃの紙を、2人にも見せる。

その、亡国企業の名が記されている千冬宛の手紙を。

見せられた2人も、楯無と同じようなリアクションを取り、書いてある事を理解した。

すぐさま深刻な表情を浮かべ、思案する。

 

 

「その様ですね…まぁ、此処でうじうじ考えても埒が明きません。緊急会議の予定は入れてあるので、他の報告を聞いてから改めて考えましょう」

 

 

「そうした方が絶対に良いですね…」

 

 

「じゃあ、そろそろ戻って会議の用意を…」

 

 

「あ、ちょっと1つだけ…」

 

 

3人の発言を遮る形で、虚が遠慮がちに声を発する。

視線が向けられる中、虚は口を開いた。

 

 

「この部屋の片付け、どうしましょうか」

 

 

「「「……」」」

 

 

完全に意識を紙の方に持っていかれていた為、此処がゴミ溜めの汚部屋であるという事をすっかり忘れていた。

虫刺されに気が付く前は何ともなかったのに、気が付いた瞬間に痒くなるのと同じように。

匂いが酷いという事も思い出した。

 

 

「…操さんが家事得意だから、意見を聞こう」

 

 

「「「賛成」」」

 

 

知らない所で操の仕事が1個増えた。

だが、今の4人にその事を気遣う余裕は無かった。

そそくさと部屋の外に出ると、部屋の扉を閉める。

1歩出るだけで、空気がかなり美味しく感じる。

 

 

4人はほぼ同時に深呼吸をしたのち、いったん各々の部屋に戻り会議の準備をしてから、会議室に向かったのだった。

 

 


 

 

場所は変わり、1年生寮の非常階段付近。

ここには、先程十蔵から連絡を受けた万が一の場合の戦闘要員である、操、ラウラ、簪が待機をしていた。

何時、何処に呼ばれてもいいように移動がしやすい場所がいいだろうという事で、待機場所が此処になったのだ。

 

 

「腰が痛ぇ……」

 

 

操が遠い目をしながら、右手で腰を叩く。

1歩遅れて、今の自分の言動が限りなくおっさんくさいものだったと理解した。

 

 

(ヤバい……マジで最近急速なおっさん化が進んでる……トレーニングもうちょっと頑張ろう)

 

 

操が心の中でそう呟くと同時、ラウラと簪も口を開く。

 

 

「まぁ、ずっと立ちっぱなしだからな。確かに私も辛くなってきた」

 

 

「非常階段付近に椅子が置ける訳無いから、しょうがないんですけどね」

 

 

待機を開始してはや十数分。

現役軍人でも、その間歩いたりもせず同じ場所にずっと立ちっぱなしは流石に応えたようだ。

それに声を出していないものの、簪も疲れたような表情を浮かべている。

その反応を見て、操は内心安堵する。

 

 

「だけれども、何が起こったんだろうな。織斑は…君達の部屋に強制突入だなんて」

 

 

「ここ1週間ずっと欠席していたから、安否が流石に気になりだした頃だったが、わざわざ強制突入とは…理由の検討もつかないな」

 

 

「あ、1週間休んでたんですか?」

 

 

「ああ。というよりも、それよりも前から姿は見てないな。織斑君は学園祭の時にボコボコにやられてたのを見たのだが最後だし、残り2人に関しては学園祭の途中…だと思われる所から見てない」

 

 

「と思われる?」

 

 

「要は良く分からないタイミングだという事だ」

 

 

「なるほど」

 

 

3人がされた説明は

 

 

『織斑君達の部屋に強制突入する事になりました。危険は無いとは思いますが、万が一の為に待機をお願いします』

 

 

だけだった。

何故突入するのか、何が起こっているのか、そこらへんの詳しい説明がこれっぽっちもされていない。

こんな疑問を思うのも当然だ。

 

 

「確か、お姉ちゃんが今日仕事があるって言ってたけど…」

 

 

「楯無さんが?」

 

 

「はい」

 

 

「ふむ、関係があるのか、はたまた無いのか…検討もつかないな」

 

 

「あのさ、この話どんな角度から話しても『今は検討もつかない』で終わるから、詳しい説明があると信じて止めにしない?」

 

 

「確かにな」

 

 

「そうしましょう」

 

 

会話はここで一旦終了。

特に他の話題がある訳では無いので、操は先程誓ったトレーニングの見直しとシミュレーションを脳内で行い、ラウラはクラリッサからのメッセージを確認し、簪はソシャゲのログボを受け取る。

 

 

特に呼ばれる事は無く、数分後。

 

 

「ちょっと喉乾いたな…何か飲み物を買いに行って良いと思う?」

 

 

「うーん…寮近くの自販機程度だったら問題無いんじゃないか?」

 

 

「じゃあ行ってくるわ。2人とも、何かいる?」

 

 

「ブラックコーヒーで」

 

 

「あ、えっと…アップルジュースで」

 

 

「ん、分かった。なるべくチャチャッと…」

 

 

慌てて招集され、ずっと此処で待機していた為流石に喉が渇いてきた。

操が一瞬だけ離れ飲み物を買おうと1歩歩き出した時。

 

 

バタバタバタバタ!!

 

 

「「「ん?」」」

 

 

教員達が随分慌てた様子で走って来た。

 

 

「門藤君!更識さん!ボーデヴィッヒさん!」

 

 

「「「はい!」」」

 

 

「緊急会議です!」

 

 

「「「…はい?」」」

 

 

なにか戦闘が必要になったのかと思い、一気に引き締めた気が緩まった。

別に会議も重要な事だというのは3人とも言わなくても理解しているが、それにしたって急すぎる為、こんな反応になってしまうのも仕方が無い。

 

 

「か、会議!?会議ですか!?」

 

 

「会議です!急いでください!」

 

 

「な、何故会議なんですか!?碌に状況説明もされて無いのに!」

 

 

「会議室でしますから!」

 

 

「…分かりました!」

 

 

もう、肯定の返事をするしか無かった。

その返事を聞いた瞬間、教員達は慌ただしく駆けて行った。

 

 

「「「……」」」

 

 

嵐のように一瞬の出来事。

急げと言われているのに、3人は一瞬その場から動く事が出来なかった。

 

 

「…行くか!」

 

 

「そうだな!」

 

 

「行きましょう!」

 

 

操が1番最初に再起動し、ラウラと簪もそれに続く。

一旦自動販売機で小さいサイズの飲み物を購入し、一気に飲み干しゴミを捨ててから会議室へとダッシュで向かう。

 

 

「最近マジで会議室に行く事が多いな…寮、教室、アリーナの次位には会議室に居るんじゃないか?」

 

 

「食堂は?」

 

 

「俺よっぽどのこと無ければ自炊だし」

 

 

「「確かに」」

 

 

そんな会話をしながら、会議室に到着。

ノックして入室許可を貰い、中に入る。

操達の席3つ以外の席は、もう既に埋まっており、操達が最後だと示している。

 

 

「遅くなってすみません」

 

 

「いえ、大丈夫です。それよりも碌に説明も無いまま、急に戦闘待機や会議に参加をさせてしまいすいませんでした」

 

 

遅れてしまった事を謝罪する操だが、十蔵がそれよりも急な行動をさせてしまった事への謝罪をする。

取り敢えず操達は空いている席に座る。

それを確認した十蔵は口を開く。

 

 

「それでは、緊急会議を開始します。まず始めに、今回どのような経緯で会議をするに至ったのか、山田先生、お願いします」

 

 

「はい」

 

 

十蔵から指示を受けた真耶が立ち上がり、説明を開始する。

先ず千冬の部屋に強制突入する事になった経緯から、簡素的だがしっかりと要点を抑えた説明。

それを聞いている操達3人の心境は

 

 

(((先に言えただろそれくらい!)))

 

 

だった。

その後、千冬の部屋に千冬が居なかった為、春十達の部屋にも突入する判断をした事、そして万が一の為に自分達が駆り出された事を知った。

真耶の説明が終了した後は、春十達の部屋に突入した教師陣の説明に移る。

 

 

春十達の部屋はゴミに突っかかって開かないという事は無く、マスターキーを使用しスムーズに部屋に突入出来た。

だがしかし、何処にも春十、箒、セシリアの姿は無い。

IS学園の制服などは部屋に残っていたものの、私服やスマートフォン、財布といった私物、そしてISスーツに白式など戦闘に必須なものがごっそり無くなっていた。

 

 

「以上です」

 

 

「はい、ありがとうございました」

 

 

説明を終えた時、会議室の中の空気は今年度が始まって以来の最大の重苦しい空気になっていた。

元世界最強の教師に、世界で2人しかいない男性IS操縦者(専用機持ち)に、元国家代表候補生に篠ノ之束の元妹の計4人が、IS学園から綺麗さっぱりいなくなってしまったのだ。

正直言って、今までの言動のせいでこれっぽっちも悲しく無いのだが、流石にこれは緊急事態だ。

 

 

「今回の緊急会議は、織斑千冬、織斑春十、篠ノ之箒、セシリア・オルコットの計4人が行方不明になった事に関してです」

 

 

十蔵が改めて今回の会議の議題を明確にする。

 

 

「さて、みなさん知っているかと思いますが、IS学園は世界でもトップレベルの警備体制を取っています。そんな中で、4人の人間を誰にもバレずに、何の痕跡も残さずに拉致するのは不可能に近いと言っても過言ではありません」

 

 

世界で唯一のISの専門学校、それに世界のどの国や企業からも影響を受けない場所。

しかも、訓練機として有しているISの数は世界の正当な組織の中ではかなり上の方で、世界各国の代表や候補生、(一応英雄扱いをされていた)千冬などの重要人物も多数在籍し、生活しているのだ。

その警備レベルは、かなり高い。

 

 

の割に学園祭で結構簡単に襲撃を受けてしまったが、それは実行犯がオータム1人と最少人数だったので、侵入を許してしまったのだ。

だがしかし、人の誘拐は1人ではとても不可能、3人以上は欲しい筈だ。

しかも4人を誘拐するとなると、単純計算で12人、もしくは最大4回侵入しなければならない。

 

 

方法は様々な方法があるが、それでもやはり痕跡を1つも残さずにいるというのはほぼ不可能に近い。

特に、学園祭後警備が更に厳しくなった直後だから、尚更そうだ。

となると、4人が行方不明になったのは、誘拐などではなく……

 

 

「自分で、何処かに行った、そう考えるのが自然だという事ですね?」

 

 

「そう言う事になります」

 

 

操の言葉に、十蔵が頷く。

無論、それで確定させるのは危険な判断ではあるが、そうとしか考えられない。

何故そうなってしまったのか、何処に行ってしまったのかなど考えたい事は色々あるが、そんな答えが分からない無駄な議論をするための会議では無い。

具体的な対策の話し合いをしなければならない。

 

 

「さて、先ずは4人の捜索からです。何より4人を発見しなければなりません」

 

 

普段の素行がどうであれ、学園の関係者なのだ。

捜索をしなければならない。

特に春十は世界で2人しかいない男性IS操縦者であるし、何度も言うが千冬もあんなんでも元世界最強。

放っておけるわけが無い。

 

 

「と簡単に言っても、そもそも何の手掛かりも無い状況です。世界規模の捜索をするしかないのでは?」

 

 

「そうなると、IS学園だけでは不可能になるので、世界各国に協力を要請しないといけない…」

 

 

「つまりは、この事実の公表に繋がる訳ですが……」

 

 

事実の公表を渋っているのは、責任追及をされたくない訳では無い。

寧ろ、自分達の首であれば喜んで差し出すほどの覚悟はある。

それでもなお渋るのは、各国が捜査協力の見返りに何を求めるのかが分からないからだ。

いや、分からないとは言っても、殆ど確定のようなものなのかもしれない。

 

 

捜査機関を動かすとなると、莫大な金が必要になる。

となると、やはり何かの利益が無いと何処の国も協力しない訳で。

 

 

今の現状、世界各国がIS学園に求められるもので、1番利益が大きいとなると……

 

 

「俺かぁ」

 

 

操はため息をつきながらそう言葉を漏らす。

そう、春十が行方不明の今、遺伝子情報などのサンプルを自由に取れる男性IS操縦者は操だけだ。

そして男性IS操縦者のサンプルデータは、発見から半年以上が経過した今でもどの国も喉から手が出るほど欲しい筈だ。

つまり、IS学園に要求する対価として操を要求される可能性が非常に高いのだ。

 

 

今現在操はドイツ国籍ではあるものの、国家代表候補生という訳では無い。

ドイツも、操のデータに関しては入学前に数度動かした時のデータと、夏休みにシュヴァルツェア・ハーゼの基地でラウラと行った模擬戦のデータくらいしか持って無い。

庇ってくれる可能性は低い。

 

 

「そう、なってしまいますね……」

 

 

操の呟きに、十蔵が申し訳なさそうに反応を示す。

 

 

「門藤君が不本意なのならば、私達教員が全力を持って門藤君を守「いえ、その必要はありません」門藤君……」

 

 

正直に言って、操は4人の事があまり好きではない。

寧ろ嫌い寄りだ。

わざわざこの4人の為に、不確定要素ではあるが、自分の身を差し出すという事はしたくない。

 

 

でも、だけれども。

だからといって、完全に見捨てる理由にもならないのだ。

 

 

操は向こうで教わった。

生き物は互いに支え合わないと生きていけないという事を。

そして、この世界でもそうやって今まで、ラウラと協力してきたし、その精神を持っていたからこそ簪やティナ達とも絆を結べた。

 

 

「俺のデータくらいだったらいくらでも差し出します。だから、捜索を」

 

 

織斑一夏は、春十達からは虐められ、千冬には無視された。

一夏は自分を卑下する様な性格になり、殻に籠った。

 

 

門藤操になり卑屈の殻から抜け出しても、入学当初はやはり4人の事を毛嫌いしている節があった。

だが、織斑一夏と門藤操は違う。

今度こそ、今年から関わり始めた年の離れたクラスメイトと、年の近い教え子として4人としてかかわるべきだ。

何故なら、操は動物戦隊ジュウオウジャーなのだから。

 

 

操はそう考え、覚悟を決めた。

 

 

「……分かりました。確定した訳ではありませんが、もしもの時はお願いします。ですが、危険を感じたらいつでも頼って下さい」

 

 

「……はい」

 

 

十蔵の言葉に頷く操。

そして会議が故言葉に発する事は出来ないものの、ラウラや楯無達も十蔵と同じような表情を浮かべている。

それを見た操は、もう1回頷く。

 

 

(本当、良い人たちだな……今度こそ、ちゃんと話せたら良いな……)

 

 

その後、その他の対応を話し合うために会議は続き、終わったのは日付が変わった直後あたりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日本から遠く離れた孤島。

一見なにも無い無人島だが、その実巧妙にカモフラージュされているが、その実島全体が巨大な研究施設である。

行われている研究は薬品からISを含めた技術面、はたまた人体実験という多様で、表に出せない真っ黒な施設だ。

 

 

そんな施設は今現在、とても慌ただしかった。

理由は単純、現在仕事量がとても多く仕事が非常に忙しいからだ。

 

 

「数値は?」

 

 

「4体とも問題ありません」

 

 

「良し、このまま続ける」

 

 

「了解」

 

 

研究施設のとある部屋。

この部屋では今まさに実験が行われていた。

 

 

主任だと思われる人物が部下に指示を出している。

部下が操作をする設置タイプの端末からは管が伸びており、途中で5本に枝分かれして『あるもの』へと繋がっていた。

 

 

「しっかしまぁ、上はどうやってこいつ等を捕まえて来たんかねぇ」

 

 

主任はその『あるもの』を見ながらそうボヤく。

 

 

「あれ、主任も知らされていないんですか?」

 

 

「それは良いから手を動かせ」

 

 

「は、はい!すいません!」

 

 

その『あるもの』とは、一言で言うのならば生体ポット。

それが5つ。

 

 

どう考えても普通じゃない液体に、全裸で身体中にチューブが刺さっている少女が3人、少年が1人、成人女性が1人漬かっていた。

 

 

「投与を開始します」

 

 

部下のその言葉と同時に、全身のチューブから人物たちに向かって薬品が注ぎ込まれ始めた。

 

 

「何だかなぁ、いい顔と身体の女が4人全裸で目の前に居るのに、全くと言って良いほど興奮しねぇなぁ」

 

 

「そうですね…実験開始前の行為ではあれだけ昂ったのに」

 

 

「こうしなくても、単純に性処理道具として全然使えるのになぁ。名器が勿体ないぜ」

 

 

「まぁ、そこらへんは弄って無いので終わればまた使えるんじゃないですか?寧ろ意思が薄くなる分やりやすかったり」

 

 

「そうかもしれないな……」

 

 

そんな会話をする主任と部下の背後には、見るも無残な姿にまで分解された一機のISがあった。

分解し、適当に置かれていたパーツが地面に落下し、音が鳴る。

その音はまるで、悲鳴のように聞こえた。

 

 

 

 

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