駆けて行ったが、
「は?…ぬおおおおおお?!」
前足で大地を割るような一撃を放ってきたので、何とかいなす。
「おいおいおいおい!攻撃が苛烈すぎんだよ!ていうか何で俺にだけ来るんだ!ぬぅううう、おっらぁあああ!」
デロウスクローン(以下デロウス')は器用に後ろ足で体重を支えながら、前足で連打連打。
大太鼓でドラムロールでもやっているのかと思う程の腹に響く音が辺り一面に響き渡る。
「こいつ、俺達に全く見向きしねえ!何でマッチばっかり狙ってんだ?!」
「リュウさん!マッチ君の持ってる刀の銘って竜王でしたよね!」
「ああ、そうだが!…っておいおいまさか…
リュウが言ったことは強ち間違ってはいない。
デロウス'は産まれてから強敵に会った事がなかった。
たまにそこそこ(捕獲レベル60前後)の猛獣と実験も兼ねて戦う事があったが、苦戦もせずに逆に喰らってきた。
だが目の前の矮小な
こいつを倒し、喰らえば更なる高みへと目指せると本能で感じ取っているのだ。
周りの人間は放っておいてこの
「…上等だ、デロウスゥァァアアアアアア'!竜王の座は一つで十分だよなぁ!てめえの牙と俺の
「ゴギャァアアアアアア!」
後ろに鬼武者を顕現させながら渾身の威嚇を発動させるマッチに対し、大きく口を開き雄叫びをあげるデロウス'。
「フッ、火がついた漢を止めるのは野暮だな。俺達は子供達の護衛でもしながら観戦と洒落込もう」
「「賛成だ」」
三人はメリスマンやプキンの方へ行き、座り込む。
「ちょ、ちょっと!何でマッチ君を一人で戦わせてるんですか?!」
「んん?漢がタイマンで戦おうとしてんだ。第三者が手ぇ出したらいかんだろう」
「男にしか分からない意地って奴ね。男ってバカねえ」
プキンはオロオロしていたが、子供達に不安な思いはさせられないという意地で、内心はハラハラしながらも極力不安を感じさせないような笑顔でマッチの戦いを見守ることにする。
「居合…一気連閃!!次いで一気刀閃!ヌゥァアアアア!」
無数の斬撃を両前足に放ちダメージを与えた後、飛び上がり片翼を切り落として機動力を無くそうとしたが、間一髪で避けられた。
痛みを感じながらも反撃を加えるデロウス'。前足の連撃がマッチへと襲う。
「ぐわぁぁぁああああ!」
空中での攻撃を避けられず、近くの廃墟に猛スピードで突っ込んだ。
ガラガラと瓦礫が崩れてくるのを避け、デロウス´に向き合おうとしたが視界に飛び込んできたのは丸太のような足。
廃墟を構成していた鉄骨があろうとお構いなしに、大地を割る様な攻撃が連続でマッチを襲う。
一撃で意識を刈り取られる様な攻撃が連続で来ることで、逆に意識を保てている。
更にトドメを刺そうと異次元レーザーを溜め始める。
「グッ!クッソ、致命傷だけは…!んなっ!」
瓦礫諸共殴られたことにより、動けるようになりその場から居合の要領で移動をする。
原作ではレーザーのエネルギーを一箇所に纏めて放っていたが、散らして放ってきた。
さながらレーザービームが散弾銃の弾丸に変わった様。原作知識が足枷にもなった瞬間だった。
「ガァアアアアアアア!」
マッチの体を貫く無慈悲なレーザー。全身を襲い、穴だらけになり血が滴り落ちる。
両手足と胴体に穴が開き、更にダメージを軽減する為に竜王でいなそうとしたが異次元レーザーの威力が凄まじく、根本から消えた。辛うじて鞘だけは残っているが、既に原型は無い。
「マッチ君ー!」
プキンの絶叫が辺りに響き渡りその場にいる全員が助けようと動こうとしたが、踏みとどまった。
マッチの体が地に崩れ落ちる前に、大地を踏みしめ意識を保つ。
デロウス'の雄叫びが響き渡る。
「勝った…つもりか…?デロウス'よ…俺はまだ大地を踏みしめているぞ…?てめえ如きが俺の命を刈り取れるとでも思ったか…?ふざけんなぁ!決めた。てめえを俺の相棒にしてやるよ」
致命傷を負って、全身から血を流しながらも戦う意思は消していないマッチ。
折れた竜王を竜王へと向ける。
その姿を見たデロウス'は王者のDNAを思い出した。
「ガッハッハ!デロウス'をパートナーアニマルにするか!面白い!」
「良いね。八王になれる程の資質を持った者と最強になれる素質を持った者同士の戦いか!久しぶりだよ、ここまで暑くなれる戦いを見るのは!」
「マッチィ!てめえは何れこの俺の跡を継ぐ漢だ!こんな所で死ぬんじゃねえぞぉ!」
男連中は次第に熱くなってきたのか、激励を飛ばす。
「頑張りなよ、マッチ!あんたの勝利の未来を私に見せておくれ!」
「マッチ君、負けないで!皆で一緒にご飯食べるんでしょ!」
メリスマンとプキンからも激励を受け、何とか意識を保つ。
(とはいったもののかなりキツイな…。傷は後で治るが痛みが尋常じゃねぇ。何箇所も穴が開いていれば当然だが…)
【それでも儂の宿主か?はっ、軟弱だのう】
突然マッチの脳内に響き渡る声。
誰だと思ったが、直ぐに
(おいおい、グルメ細胞の悪魔か?ろくなもん食ってねえが死に際になって出てきたのか?)
【ああ、その通りだ。お主が死んでしまったら儂は出られなくなるからな。この先何億年かかるかも分からん。このチャンスを逃せば暫くはお主から出てこれんからのう…お主、儂を宿しておるからには敗北なぞ許さぬ!】
精神世界での邂逅を果たしたマッチと鬼武者。
(なるほどな。
【ほう、意外と冷静じゃのう。そうじゃ自食作用によって持たせておるが、あくまでも応急処置。この後美味い物でも食えばよかろうがそんな物は無かろう。じゃからこそお主が放つ一撃はお主史上最高最強の物をあのトカゲに放てぃ!】
「全く、無茶苦茶を言ってくれるな。だが…逆に燃えてくる…!」
自食作用が発動しエネルギーが最大値まで溜まり、その場に立ち上がって最後まで抗う意思を見せる。
「竜王デロウス´よ。てめぇは八王の血を継ぎ人間界でも最強に近い存在だろう…だが、勝つのは俺だ」
ニィと口を歪め、凄みのある笑みを浮かべる。
デロウス'は口を大きく開きキュイイイイイイという音を響かせながら、最大の異次元レーザーを溜め始める。
マッチは瞬時に脱力をし、居合の構えをする。
(竜王が折れているが、関係ねぇ。元々原作でも食欲のエネルギーを使う事で様々な技を出していたんだ。なら
刃が無い刀を納刀し、原作でいう王食晩餐の様なエネルギーが鞘から溢れ出る。
(熱い…これが食欲のエネルギー。食う気も無いのに食欲のエネルギーって言うのも変な話か。全てを手に入れるという強欲も含まれているか)
【そうじゃな。
(へえ、意外とストレートなネーミングなんだな)
強食欲のエネルギーが集中し、その熱量によって空間が歪み地響きの様な音が辺りに響く。
デロウス´もエネルギーが溜まり何時でも発射できるように準備する。
ピリピリとした空気が辺りに充満し、マッチの鬼武者が背後から幻のように出現した。
「動きませんね、メリスマンさん」
「次の一撃で決まるのよ。彼らは今相手の事以外見えていないわ」
廃墟の一角が崩れそうになっていた。それが崩れガタンという音が鳴った瞬間、事態が動いた。
デロウス´の異次元レーザーが文字通り光の速度で迫ってきた。
だが、マッチは迫りくる光の奔流の中とても落ち着いていた。
まるで日向が差し込む縁側の中、お茶を啜っているような和やかさだ。
「奥義
瞬間、異次元レーザーが
強食晩斬によるエネルギーは王食晩餐のエネルギーとは微妙に違う。
王食晩餐によって食われた物は対象を喰らったエネルギーでさらに強くなり、対象を喰らいつくすまで止まらない物だった。
強食晩斬によって切られた物はその
刀なら刃に、銃ならその銃身に、徒手空拳なら拳や脚に。
実際に攻撃する物に付与される。(消費して攻撃を加える物に付与されるようになる為、放たれた弾丸や矢に発射時に自動的に付与)
そして強食晩斬によって吸収されたエネルギーは、付与された物の破壊力を
攻撃が当たれば当たるほど破壊力が増していく。
強食晩斬は王食晩餐の様な自動での攻撃ではなく、全て手動で行われる。
これは攻撃した本人の技量に左右される為、この数億年の間使用者がいなかった。
【フハハハハハ!やはり儂の見立ては間違っていなかった!
「居合…竜皇
王では無く皇。複数の王がいるこの世界に対し、何れ皇として
森羅万象を斬り勝利を手にする姿はまだまだ未熟な皇だが、その背中は大きくその場にいた者に安心感を与えていた。
「俺の…勝ちだ。デロウス´」
既に強食晩斬のエネルギーが切れており柄と鍔の部分だけになっているが、納刀しキンという甲高い音が辺りに鳴り響くとデロウス´の体中に無数の切り傷が出来た。
ダメージが一気に重なりその場に崩れ落ちる。
辺りにデロウス´の血が流れ、小さくない血だまりを作る。
「デロウス´。俺と一緒に来ねえか?世界には俺より強い奴らがそこら中に居る。何れお前のオリジナルのデロウスにも会って戦ってみてえだろ?」
「グゥウウウ…グルァ」
マッチの強さと言葉、そしてその器に惚れたデロウス´はマッチに頭を垂れた。
「ははっ、一緒に来てくれるか?お前さんの名前は後で考えるかな。取り敢えず…疲れたな」
デロウス´と一緒にリュウ達の下へと戻る。
「マッチ君!早く治療しないと!」
「ああ、プキンさん…ごめんなさい、ちょっと…疲れたんで…寝ます」
そのままプキンの方へ倒れこみ気絶したマッチ。
朝早くから子供達を助け
「ちょ、ちょっと!」
「プキン!即席で治療するぞ、ついてこい!」
二人の再生屋の全力の治療を行った後、デロウス´の治療も行った。
子供達はリュウが用意した大型バスで事務所へと送り届けることに。
その後、ストラと再会した子供達はその顔を涙でぐちゃぐちゃにしながらも、生きていたことを喜び合った。
マッチが起きたのは三日後のことだった。
「ぐっ、イテテ…そうだ、デロウス´と戦った後倒れたんだったな」
【ようやく起きたか寝坊助が。まあお主の力であのトカゲと戦い従えたのだ、その点は褒めてやる】
「お褒めに与り光栄ですよっと。…何か力が漲っているような感じがするな」
【うむ、強食晩斬は王食晩餐とは違いエネルギーを喰らい破壊力に変換した後、残ったエネルギーは使用者に吸収される。適合食材が何であろうとそのエネルギーは適合し細胞の力が上がるのだ】
鬼武者との会話をしていると、扉が開きプキンが目を点にして驚いていた。
「あ、プキンさん。おはよう」
「……!」
脇目も振らずマッチに駆け寄りスピードそのままに抱き着いた。
「ぬぉっ!ちょっとプキンさん、大丈夫?」
「大丈夫じゃないわよ!三日も起きないし体中に穴が開いてるし骨まで見えてたし!しん゛ばいしだんだからぁ゛~!」
わんわんと泣き出したプキンの声が聞こえたのか、リュウ達大人組や助け出した子供達、組員達が駆けつけてきた。
小言やお褒めの言葉を半々位の割合でもらいながら、健診をすることに。
巻いていたドクターアロエを取ると傷がすっかり癒えていた。
全員が驚いていたがグルメ細胞の悪魔が話していたことをかいつまんで話すと、納得していた。
「強食晩斬か。王食晩餐なら聞いたことがあったが、そのような技があったとはな」
「そうねぇ。しかもマッチの話だと自動ではなく手動の操作。本人の力量に左右するっていう中々に難易度が高い技」
「悪魔の話だと、覚えている数億年の間には使ったものはいないそうでした」
マッチの事情説明などが終わり、今後の予定を話すことに。
何でもクローンの事を詳しく聞きたいと一龍から連絡があり、後日話すことに。
その時一龍の昔からの知り合いである美食人間国宝である節乃の料理を振る舞ってもらうことになり、子供達も連れてきてもいいということだった。
話し合いが終わり退室していく中、プキンとマッチが残った。
「本当にお疲れ様」
「ええ、相当疲れましたよ。本当に三途の川が見えた気がしました」
はっはっはと笑うマッチにプキンは微笑む。
「さて、私も戻るわね…そうだ」
パイプ椅子から座っていたプキンが退室しようとすると、忘れ物に気づいた時のように振り向いた。
「かっこよかったわよ。竜皇様♪」
頬を赤く染めながらマッチの頬にキスをした。
突然の事に目を白黒させるマッチを置いてパタパタと退室するプキン。
「マジかよ…」
額に手を当てながらベッドに倒れこむ。
もやもやしていたが、襲ってきた眠気に抗えず眠りに就いた。
さて、四天王のクローンの名前を考えなきゃね