都市伝説ハンター、リーフ行きます!   作:永夜 藤月

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初連載。エタらないよう頑張ります。


旅立ちのプロローグ

 異世界転生。そんな言葉がある。

 なんでも、死んだら別の世界に生まれ変わるという意味らしい。

 まあ、あくまで物語の中で使われる言葉で、現実的に考えてそんなことはありえない────

 

 ────そう思っていた時期が、私にもありました。

 

 

 

 いやね、なんかおかしいな〜と思ったことはあったんだよ。知らないはずの知識を知ってたり、住んでる町に見覚えがあったり。まさか8歳の誕生日の朝に前世の記憶が戻ってくるとは夢にも思わないじゃん。

 

 というか、記憶が戻るってこんな感じなんだ。物語じゃよく令嬢とかに憑依して憑依元の記憶がなくなってたりするけど、私にはちゃんとこの世界で生きてきた記憶がある。別人ではなく、私のものとして。

 

 他にもいろいろ気になることはあるけど、まずは一言叫ばせてほしい。

 

「ここって、ポケモンの世界じゃーん!!!」

 

 もちろん声量は抑えたよ。近所迷惑になるから。

 それよりも、ポケモンだよポケモン。あの超大人気ゲームの世界なんだよ、ここは。ゲームの中でしか動いていなかったあのポケモンたちが、この世界では生きているんだよ。記憶が戻ったときに混乱や困惑よりも歓喜が勝った私の気持ち、わかるよね? 

 

 ちなみに私は生前、ガチ対戦にも手を出していた。レート2000いったことなかったけど。読み合いが苦手だったから……

 

 それはさておき。今の私は8歳。つまり、2年後には博士からポケモンをもらって、旅に出るのだ。よく考えたら10歳の子供に一人旅させるって、この世界けっこう厳しい? まあその分、子供はみんな早熟だけど。

 

 えっ、10歳になった子供はみんな旅立つのかって? さすがにそんなことはないよ。研究者とか志望の人は普通に高校に行ってるし。この世界では10歳で義務教育を終えるから、そこから進路が分かれるわけだ。

 

「リーフ? 朝ごはんよ〜」

 

 あっ、お母さんが呼んでる。そうそう、この世界での私の名前は、何を隠そう「リーフ」なのである。そしてこの町はマサラタウン。それって主人公なのでは? と思うかもしれないが、だぶんそうではないと私は思っている。なぜなら────

 

「………………」

 

 自分の席で黙々と朝食をとっている、赤帽子の少年。ポケモンをプレイしたことのある人なら誰もが知っているであろう「赤・緑」の主人公、レッドである。なんと驚くことに、レッドと私は双子の兄妹なのだ。

 そんなわけなので、おそらく私は主人公ではない。と思いたい。

 

 いや、旅をするのはいいんだよ? いろんなポケモンと会いたいし、生前から気になってた()()()()も確かめたいし。でもね、だからといって危険なことに首突っ込みたくはないんだよね。

 この世界がどこまで原作と一緒なのかはわからないけど、町でたまに“Rの文字が入った服を着てる変なやつ”の話を耳にするから、ロケット団がいるのは確定だし。ごくたまにだから、大手を振って歩いてるわけじゃなさそうだけど。

 

 まあとりあえず、こればっかりは今考えても分かることじゃないから、素直に2年後を待ちますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────長かった! 長かったよ2年! すぐ近くにポケモンがいるのに、生殺し状態は辛かった……! 

 いや、もちろん授業で触れ合えるポケモンもいるし、お母さんのポケモンを触らせてもらったりもするんだけど。昔、研究所で仲良くなった子もいたりしたしね。あの子、元気にしてるかな……。

 

 何が言いたいのかというと、やっぱり自分のポケモンってのは格別じゃない? 

 

 とりあえず、そんな我慢も今日まで。10歳の4月1日。ようやくポケモンがもらえるのだ! エイプリルフールじゃないよ? 

 

 どんなポケモンがもらえるんだろ。やっぱりフシギダネ、ヒトカゲ、ゼニガメの3匹かな? どの子も可愛いし……楽しみ!」

「………………」

「え゛っ、声に出てた⁉︎うわ、恥ずかしい……!」

「………………、………………」

「いや、気にするよ。旅に出るんだし…………うん? いつものこと?」

「………………」

「え、私そんな目で見られてたの⁉︎」

 

 なんと、まさか私が珍獣のように見られていたとは。あ、現在、オーキド博士の研究所に、レッドといっしょに向かっている最中だよ。ゲームじゃあ民家と研究所しかなかったマサラタウンだけど、そんな規模で町なんて名乗れるはずもないので、現実では普通に地方の一都市ぐらいの大きさがある。都会とまではいえないけどね。

 

 え、なんでレッドと会話できてるのかだって? いやあ、不思議なことに、なんとなく言いたいことがわかるのですよ。なぜって言われても説明できないけど。とっても不思議だね(フシギダネ)。はいそこ、寒いとかいわない。

 

 そんなこんなで、研究所に到着。前世ではよく見た自動ドアだけど、この町ではここだけでは? 

 中に入ると、研究員の一人が出迎えてくれた。当たり前だけど研究所もゲームより格段に広い。オーキド博士の専門が「ポケモンの生態」だから、他の分野よりも使う機材が多いのだ。たくさんのポケモンを飼育できるだけの広いスペースも必要だし。

 

 初めて目にする機械類を横目で眺めていたら、いつのまにか博士のいる部屋の前まで来ていた。ここまで案内してくれた研究員にお礼を言い、ドアを開ける。

 

 中では白衣をまとった初老の男性と、私たちと同じくらいの年の少年が話をしていた。私たちが入ってきたのに気づいたのか、男性がこちらを向く。本やテレビでよく見かけるその人物は、前世でもこの世界でも知らない人の方が少ないであろう、超有名人。

 彼こそが────

 

「おお、レッドにリーフ! よく来たのお!」

 

 ────オーキド・ユキナリ。学会の最高権威とも称される、ポケモンの生態研究の第一人者である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すまんが少し待ってくれんか。準備がまだできてないんじゃ」

 

 そう言うと博士は、部屋の奥へと向かっていった。すると私たちに、先程まで博士と話していた少年────グリーンが話しかけてきた。

 

「よおって、そういえばお前らに会うのは久々だな」

「………………(コクリ)」

「グリーン、久しぶり!」

「レッドお前、相変わらず無口だな。俺様がいなくて退屈だっただろ?」

「………………」

「そうかそうか、俺様に会えてうれしいよな」

「ちょっと、無視しないでよ」

「あれ、リーフいたのか?」

「最初からいたよ! というかわざとでしょ⁉︎」

「いやだって、お前の相手するの疲れるし。レッドもそう思ってるぞ」

「いやいや、そんなことないでしょ。ねえレッド?」

「………………(スッ)」

「頼むからこっち向いて? 「こいつは俺の手にはおえない」みたいな雰囲気出さないで?」

「諦めろ、事実だから」

「そんなあ」

 

 私の何がいけないというのか。あれか、オタク特有の早口か。確かに記憶が戻る前から健在だったし、たまにグリーンを付き合わせてたけど。ポケモンへの愛は止められないからね、仕方ない。

 

 ちなみにグリーンと会うのは久々と言ったけど、だいたい1年ぶりかな? 原作通りカロスに留学してたからね。あの名(迷?)言を聞けるかなと思ったけど、聞けなかった。まあ自分から黒歴史は作りたくないだろうしね。

 

 それからしばらく3人(声を出してるのは2人)で他愛のない話をしていると、大きな箱を抱えた博士が戻ってきた。

 

「いやあ、大変じゃった。元気がいいのも考えものじゃな」

 

 博士が何やら独り言を呟きながら箱を開けると、中には2つのモンスターボールが────

 

「え⁉︎」

 

 ────なかった。いや違う、博士が箱を開けた瞬間に飛び出したんだ。いやいや、ポケモンってボールの中でもあんなに動けるの⁉︎確かにピカブイとかそうだったけど! 

 

 しばらく部屋の中で飛び跳ねていたモンスターボールはレッドと私の前でひとりでに止まり、中からポケモンが飛び出した。

 

「ピッカ!」

「ブイ!」

「………………!」

「え! この子って……」

 

 レッドと私に飛びついてきたのは、私たちが昔研究所で遊んだ時に仲良くなったピカチュウとイーブイだった。

 

「おお、話には聞いていたが、すごく懐いておるのう。実はその2匹は少々気難しくてな。今までトレーナーがいなかったんじゃが、数年前に相性のいい子供が見つかったと研究員に言われての。それが君たちだと言うから、その子たちは君たちに任せようと思ったんじゃ」

 

 そんなことを博士が言っていたようだが、まったく耳に入ってこなかった。今このタイミングでこの子が出てきたということは、この子が私の相棒ってことでいいんだよね? 本当にいいの? 

 

「……私といっしょに、来てくれるの?」

 

「ブイ!」

 

 私の腕の中にいるイーブイは、つぶらな瞳で私を見つめ、前足でぽんぽんと私の頬を叩いてくる。

 

 最初のポケモンが主人公の相棒となるシーンは、前世で何回も見た。それはシリーズを経るごとに、より感動的な、運命的な出会いを感じさせてくれる演出になっていった。私も新しい作品をプレイするときは、毎回「よろしくね?」と画面に話しかけていたものだ。

 

 今、私が体験している出会いは、それ以上の感動を、運命を感じさせてくれた。この子は、文字通り、私の一生の相棒なのだ。そう思えば思うほど、この子への愛おしさが溢れてくる。

 

 ああ、本当に、この出会いは運命なのだろう。こんなに素敵で輝かしい出会いは、そうそう味わえるものではない。

 

「ねえ、イーブイ。前から思ってたんだ、あなたが私の相棒ならいいのに、って。ずっと考えてたんだ、あなたが相棒ならどんな名前がいいかな、って。あなたの名前を、今ここで、つけてもいいかな?」

 

「ブイブイ!」

 

「ふふ、ありがとう。それじゃあ、フィア。あなたの名前は、フィアだよ。よろしくね、フィア?」

 

「ブイ!」

 

 この日の出会いを、感動を、私は一生忘れないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、イーブイ────フィアを博士からもらったあと、私たちは研究所内にあるバトルフィールドに来ていた。

 というのもあのあと、原作通りに博士からポケモン図鑑を渡されたのだが、お母さんにフィアを見せるためにいったん帰ろうとしたとき、これまた原作通りにグリーンがレッドに「せっかく新しいポケモンをもらったんだし、俺様とバトルしようぜ!」と言い出したのだ。

 そしてレッドが了承し、今に至るというわけである。

 

 え、お前はバトルしないのかって? 私も気になってグリーンに聞いたのだけど、逆にバトルしたかったのかと聞かれてしまった。たしかに積極的にバトルしようとは思ってないしね。レッドはやる気満々だけど。

 

 ちなみに、グリーンはすでにポケモンを持っている。本来なら10歳にならないとポケモンは持てないんだけど、保護者の了承があれば5歳から持てるんだよね。原作で出てくる「たんぱんこぞう」とか「えんじ」とかがわかりやすい例かな。私たちは必要なかったけど、グリーンは留学してたから。ポケモンがいた方がなにかと都合がよかったんだろうね。

 

 閑話休題(それはさておき)。今、私の目の前では、レッドのピカチュウ(ピカと名付けたらしい)とグリーンのガーディが向かい合っている。私はというと、テレビで何度も見たことはあるものの、生でポケモンバトルを目にするのはこれが初めてなので、内心少しわくわくしていた。

 

「レッド、準備はいいか?」

「………………(コクッ)」

「じゃあ、いくぜ!」

 

 先手を取ったのはグリーン。ガーディは一気にピカチュウとの距離をつめ、わざを繰り出そうとする。それに対して、レッドの反応は早かった。

 

「ピカ、でんこうせっか!」

 

 当たり前のことだが、ポケモンと目と目で会話できる人などごくわずかしかいない。そのためレッドはピカチュウへの指示を口にするのだが、普段が無口な分、すごく珍しいものを見た気分になる。とはいえ、いつかは言葉なしでも会話できるようになるのだろう。ポケマスでも「言葉は不要」って言ってたし。

 

 そんなことを考えているうちに、ガーディをかわしたピカチュウが、後ろからガーディに“たいあたり”した。しかし、ガーディはすぐに体勢を立て直し、ピカチュウを見据える。

 

「ガーディ、ひのこ!」

 

「……ピカ! でんきショック!」

 

 お互いの技がぶつかり合い、爆発する。ピカチュウの方が少し押されているようだ。2つのわざの威力はほとんど同じなはずなので、単純に経験の差か、それともレッドの判断が遅かったからか。分が悪いと感じたのか、レッドはピカチュウを後ろに下がらせる。しかし────

 

「………………⁉︎」

 

「ピカ⁉︎」

 

 ピカチュウが下がる寸前。煙の向こうからガーディが現れ、ピカチュウに“かみつく”を繰り出す。

 

「ピッ……」

 

「いいぞガーディ! そのまま上に放り投げろ!」

 

「ガゥ!」

 

 突如として空中に投げ出されたピカチュウに、体勢を整えることはできない。トドメに“ひのこ”を食らい、地面に落ちて戦闘不能になった。

 

「よっしゃ、勝ったぜ! やったな、ガーディ!」

「ガゥガゥ!」

 

「………………(ナデナデ)」

「ピッカァ……」

 

 勝ったグリーンは喜び、ガーディとハイタッチしていた。対して負けたレッドはピカチュウを労っていた。

 まあ、そもそもガーディとピカチュウには経験の差がある。ピカチュウに至っては、これが初めてのバトルなのだ。一撃でやられたりしなかっただけ、善戦した方である。

 

 そして、かくいう私は、ゲームとは違うポケモンバトルに大興奮していた。アニポケのような躍動感のあるバトルは、見ていてとてもドキドキするのだ。私もこんなバトルがしてみたいな、とも思った。

 

 その後、私とレッドは一旦家に帰る予定だったのだが、グリーンは研究所からそのまま旅立つ予定だったらしく、親への挨拶もすでに済ませていた。というか、レッドとバトルするためだけに研究所にいたらしい。

 研究所の出口でグリーンを見送り、レッドと共に家に帰る。お母さんにピカとフィアを見せ、自室に置いておいたバッグを背負い、玄関を出る。

 

「いい? 怪しい人には気をつけるのよ? いざとなったら()しちゃいなさい。自分の身を大切にね」

「お母さん、それぜったいあとで問題になるやつだよね⁉︎」

「何を言ってるのよ、正当防衛ならまったく問題ないわ。ねえレッド?」

「………………(コクリ)」

「いや、そうじゃなくて……うん、もういいや」

「………………?」

 

 あれ? 私がおかしいの? 

 いやね、百歩譲って伸すことはいいんだよ。襲ってくる不審者が悪いんだし。でもね、それを私たち……マサラタウンの人間がやるってことが、どういうことかわかってるのかな⁉︎他の町じゃあ「イシツブテ合戦」なんて文化はないんだよ?? 

 

 はい、ここまで言えばみなさんお察しだと思いますが、私リーフ、もれなくスーパーマサラ人の仲間入りをしております。ウレシクネエ……。

 

 え? 何か問題あるのかって? たしかに体が丈夫なのはいいことだし、多少の無茶は効くので便利なんだけど……なんかこう、人間を辞めた気になるというか……。

 この世界の人間自体、前世の人間よりも丈夫なのは事実だけど、スーパーマサラ人はその比じゃないから。前世が運動神経が良くも悪くもないフツーの女性だった身としては、いろいろと複雑なんだよね。ヨメノモライテ、イルノカナ……。

 

 こればっかりは考えてもしょうがないから、頭の片隅にでも追いやっておこう。

 

「じゃあ、行ってくる。お母さん、元気でね!」

「………………!」

 

「ええ、いってらっしゃい!」

 

 こうして私たちは、マサラタウンを旅立った。これから始まる冒険に、思いを馳せて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、現在私は1番道路を歩いている。ゲームでは段差があってまっすぐ進めないから草むらを通りながら曲がりくねった道を進んでいたけど、そんなのは獣道とほとんど変わらないわけで。現実では、マサラタウンとトキワシティをつなぐ舗装された道路が1本通っていて、その両脇に草むらが生い茂っている感じだね。

 

 えっ、レッドはどうしたのかって? 先に行っちゃったよ。マサラタウンを出たときはいっしょだったんだけど、グリーンに負けたのがよほど悔しかったのか、ずいぶんと早歩きで。私がついていけなかったから、別れることにしたんだ。まあ、そもそも旅の目的が違うから、いつかは別れる予定だったけど。思ったよりも早かったな。

 

 うん? 私の旅の目的? そういえば言ってなかったな。いい機会だし、ここで宣言しておこう。私が旅に出た、その理由。それは────

 

「この世界で、この目で、都市伝説を、確かめたい!!!!」

 

 どうしてこんな理由なのかって? そのわけは、私の前世まで遡る。

 




お読みいただきありがとうございます。

タイトル回収に6000字も使いました。ドウシテコウナッタ……。
最初に考えていた設定はもっと軽かったのに、あれよあれよという間にどんどん膨らんでいきやがりました。
主人公もモブの予定だったんだけどなあ……。

何すればいいかわからないので、とりあえずピカチュウとガーディのデータを載せておきます。



【種族】ピカチュウ
【特性】せいでんき
【レベル】6

【技】
・たいあたり
・なきごえ
・でんきショック
・でんこうせっか



【種族】ガーディ
【特性】いかく
【レベル】8

【技】
・ひのこ
・にらみつける
・とおぼえ
・かみつく



感想等ありましたら、どうぞお書きください。
筆者が非常に喜びます。

それでは、また次回。
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