都市伝説ハンター、リーフ行きます!   作:永夜 藤月

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祝、レジェアル発売!

それと、Twitter始めました。小説の進捗状況や、考察なんかを書き込もうと思います。
→@Nagaya_Tougetsu


サント・アンヌ号(前編)

 ホウエン地方のカイナシティで建造されたサント・アンヌ号は、年に一度だけクチバシティを訪れる、この世界でも随一の規模を誇る豪華客船だ。

 内部には数百にものぼる客室のほか、スポーツジムやプール、カジノをはじめとするさまざまな施設が存在する。

 

 ゲームでは一度だけしか乗ることができないのだが、詳しく探索せずに船を降りてしまった人もいたのではないだろうか。

 特に貴重な道具があるわけではないが、ここにはトレーナーがたくさんいる。ここでレベル上げをするかしないかで、クチバジムの難易度は大きく変わったことだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわ〜! 昨日も見たけど、やっぱりでっかいなあ。いったい何人乗れるんだろ?」

「………………」

 

 さて、私は今、レッドと共にサント・アンヌ号の搭乗口に並んでいる。昨日はクチバシティに着いた後でいつものようにポケモンセンターに行ったのだが、そこでレッドと出会ったので、今日ここまで一緒に来たのだ。

 

 しばらくすると私たちの順番が回ってきたので、乗組員にチケットを見せて船に乗る。すると奥から、見覚えのある人物が歩いてきた。

 

「ボンジュール! レッドにリーフ!」

「………………!」

「おはよう、グリーン!」

 

 というか、あの茶色いギザギザ頭は本当に目立つね。遠くからでもよく見えるよ。

 

「こんなところでも会うなんて……って、あれ? お前ら、招待されてたっけ?」

「いや。されてないけど、ある人にパーティー興味ないから遊んできなってチケット譲られたんだよね」

 

 でも、確かにグリーンとはよく会うなあ。基本的にグリーンは私たちの一歩先を行ってるけど、22番道路みたいに寄り道もしてるだろうからね。そのせい……にしては頻度が高すぎる気がしなくもないけど。

 

「ふ〜ん。ところで、ポケモン図鑑のデータは集まったか? 俺なんかもう40種類捕まえたぜ!」

「⁉︎」

「え、早くない⁉︎ここまでの道中に、そんなにたくさんポケモンいたっけ?」

 

 どこまで寄り道したの⁉︎というか、それでも私たちより旅のスピード早いんだ。私たちと何が違うんだろ? 

 

「道一本違うだけで住んでるポケモンも全く違うからな! ちゃんと草むら入って探してみろよ!」

 

 レッドは知らないけど、私も結構いろんなところに行ってるんだけどなあ。どこでこの差が……うーん。いや、分からん。

 

「まあ、図鑑はいいや。ポケモンはちゃんと育ててんだろ? ちょうど向こうにバトルフィールドがあるからな。どれだけ育ったか、俺が見てやるよ!」

「………………!」

 

 おっ、ライバル戦のフラグが立った。レッドもやる気だし、じゃあ私はこの辺で────

 

「あっ、リーフ! どうせ暇だろ? お前が審判しろよな!」

 

 お(いとま)できなかった。こうなったらしょうがない、ちょっと付き合うか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えーっと、手持ちの数だけど。4対4でいい?」

「ああ、いいぜ」

「………………(コクリ)」

 

 2人とも、いつの間にか手持ちが増えてるね。特にレッド、前はピカだけじゃなかったっけ? 誰が新しく加わったのかは何となくわかるけど、そうだとしたらゲームで見たあのパーティーにどんどん近づいてるのかな? 

 

 そして、2人がそれぞれ自分のポケモンを出す。グリーンの先鋒はピジョン。以前見たポッポの進化系で、体もそこそこ大きくより鳥ポケモンらしい姿になっている。

 対してレッドが出したのはリザード。全身真っ赤な体からは、トカゲらしく鋭い爪や牙が生えている。尻尾には炎が揺らめいており、二本足で地面を踏みしめるその姿は勇ましい。

 

 2体が向かい合い、2人がこちらを見る。準備ができたようだ。

 

「それじゃあ…………、始め!」

 

 瞬間、2体が動き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先手を取ったのはリザード。素早くピジョンの懐にもぐりこみ、爪を振るう。だが、ピジョンは難なくそれを避け、空へと逃げる。そして体勢を整えると、大きく翼を広げた。

 

「やれ、ピジョン!」

 

「ピィ……ジョッ!」

 

 “エアカッター”

 

 鋭い空気の刃がリザードを襲う。それに対し、リザードは冷静に爪を構える。

 

「……リザ! きりさく!」

 

「ザァ!」

 

 そしてレッドの指示と同時、爪を振るって風の刃を切り裂く。最初はすべての攻撃をいなしてるのかと思ってたけど、どうやら避けられるものは避け、最低限の分だけ切り裂いているみたいだ。どちらにせよ、高い集中力を必要とすることには変わりはないけど。

 

 そうして猛攻をしのぎ切ったリザードだが、もちろんグリーンがそれを黙って眺めているわけがない。攻撃が止んでリザードの集中が切れるタイミングを見計らい、ピジョンに翼を広げて突っ込ませる。

 

 “つばめがえし”

 

 グリーンの狙い通り、ピジョンの攻撃がリザードの体に突き刺さる! そのままリザードは吹き飛ばされた。しかし、ただではやられない。結構ダメージを負ったようだけど、なんとか耐えている。

 

「へえ、これを耐えるのか! 思ったより育ててるみたいだな。だが、それじゃあ俺様は倒せねーぜ!」

 

「ジョォ!」

 

 グリーンの声に呼応するようにピジョンは再び翼を広げ、風の刃を作り出す。対するリザードだが、先程と同じように爪を構え──地面に突き刺した。

 

「潜れ、リザ!」

 

「ザッ!」

 

 “あなをほる”

 

 瞬間、リザードがいたところに“エアカッター”が降り注ぐが、そこには穴が一つあるのみで、リザードの姿はない。うまく回避したみたいだ。

 

 そしてここで、バトルの動きが止まる。ピジョンは地面の下にいるリザードに手が出せないが、リザードも空を飛んでいるピジョンには攻撃できないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しばらくの逡巡の後、先に動いたのはグリーンだった。ピジョンをボールへ戻し、別のボールを投げる。

 出てきたのはラッタ。ほぼ全身が薄茶色で口からお腹にかけてが白く、尻尾には筋が何本も入っている。少し丸みを帯びた体と、上下ともに大きな前歯が特徴的なポケモンだ。

 

 そして、レッドも動く。ラッタが出てきた場所に合わせ、リザードが地面から勢いよく飛び出した! たちまちラッタはリザードの攻撃を受け、遠くに飛ばされる。これはかなりのダメージが入った……と思ったのだが。

 

「突っ込め、ラッタ!」

 

「ラァ!」

 

 “でんこうせっか”

 

 なんとラッタはすぐに体勢を立て直し、気づいた時にはリザードに肉薄していた。慌ててリザードが腕を振り上げるが、地面から飛び出した後に着地した直後で、動きが遅い。

 

 “とっしん”

 

「タァ!」

 

「ザ……ァ……」

 

 ラッタの攻撃をモロに食らい吹き飛ばされたリザードは、目を回して倒れた。

 

「リザード、戦闘不能!」

 

「…………お疲れ、リザ。頼んだ、フッシー!」

 

 次にレッドが繰り出したのは、フシギソウ。緑色の体と背中の蕾を四本足で支えている。私の前世の生物に例えると、カエルが花の蕾を背負ったような何とも不思議な姿のポケモンだ。

 

「いけ、はっぱカッター!」

 

「ッシ!」

 

 フシギソウが体を振り、先の尖った葉っぱがラッタに迫る。だが、ラッタには当たらない。

 

「そんな簡単に当たるかよ! やれ、ラッタ!」

 

「ラァ!」

 

 ついにフシギソウの目の前にまで近づいたラッタが、口を大きく開けて襲いかかる。

 

 “ひっさつまえば”

 

 強靭な前歯がフシギソウの体に突き刺さった! だが、フシギソウもやられてばかりではない。

 

「……今だ、フッシー!」

 

「ッシィ!」

 

 “つるのムチ”

 

 フシギソウは痛みに耐えながら蔓を操り、ラッタの体に絡めていく。そして空中に振り上げた後、思いっきり地面に叩きつけた! これにはラッタも起き上がれない。しかし、フシギソウもまたダメージが大きく、そのまま立ち上がることはなかった。

 

「ラッタ、フシギソウ、共に戦闘不能!」

 

 これで3対2、グリーンが一歩リードした形だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カメェ!」

 

 レッドの3体目はカメール。名前の通り亀がモチーフのポケモンだけど、四本足ではなく二本足で立っている。水色の尻尾はぐるぐる巻きになっており、おそらく渦潮を表しているのだろう。

 

「ピィイ!」

 

 対してグリーンは、再びピジョンを繰り出す。2回目とはいえ、体力の消耗がほとんどないのがレッドにとってはきついところだ。

 

「ピジョン、先手必勝だ!」

 

「ガメ、突っ込め!」

 

 

 “でんこうせっか”

 

 “アクアジェット”

 

 2人の声と同時かそれよりも早く2体が動き出し、正面からぶつかり合う。どちらもタイプ一致の先制技、威力は同じ。となると最終的な威力は攻撃に依存するけど、ほとんど差はないのか拮抗している。

 

 埒があかないと見たのか、ピジョンが空へと舞う。すかさずカメールが口元に水のエネルギーを集めて“みずのはどう”を放つが、ピジョンは旋回してこれを回避。翼を広げて“エアカッター”の準備を始める。

 

「もう一度突っ込め!」

 

「メェ!」

 

 だが、流石にレッドも何度も同じ手を食らうようなことはしない。技を放つ直前の溜めの時間を狙い、自らが作り出した水流に乗ってカメールが再びピジョンに突撃する! 

 

「カァ……メェエエエエエ!」

 

 “アクアジェット”

 

「ピ……ジョ……」

 

 まともに攻撃を受けたピジョンは墜落。そのまま倒れ伏した。

 

「ピジョン、戦闘不能!」

 

「……なかなかやるじゃねーか、レッド」

 

 ピジョンをボールに戻しながら、そう呟くグリーン。一見すると強がりのように見えるが、残りの手持ちの数は同じ。カメールが消耗していることを考えると、まだまだグリーンの方が有利だ。

 

「だがな、勝つのはこの俺様だ!」

 

 そして、グリーンの手から新たなボールが投げられる。出てきたのはユンゲラー。細長い髭や額の星印が特徴の、高い特攻を持つポケモンだ。手に持っているスプーンは、エスパータイプの象徴のようなものだろう。

 

「やれ、ユンゲラー!」

 

「ガメ、こっちもだ!」

 

 

 “サイケこうせん”

 

 “みずのはどう”

 

 双方の技が衝突する。始めは拮抗しているように見えたけど、やはり特攻の高さの差か。念動力の光線が水のエネルギー球を貫き、カメールの体に突き刺さった。

 

「カメェ‼︎」

 

「ッ、耐えろ!」

 

 レッドの期待に答えようと、カメールはなんとか攻撃を耐え凌ぐ。体勢を立て直して前を見据えるが、そこにユンゲラーの姿はない。慌てて周囲を見渡しても、そこには何もいない。それどころか、天地がひっくり返っていた。

 

「メェ⁉︎」

 

「そのまま叩きつけろ!」

 

 知らず知らずのうちにユンゲラーの“ねんりき”によって逆さまに浮かされていたカメールは、グリーンの指示と共に地面に向かって急降下。咄嗟に固い甲羅に籠ろうとするが念力によって阻まれ、そのまま叩きつけられた。

 

「カメール、戦闘不能!」

 

「……お疲れ様、ガメ」

 

 いよいよ最後の1体となったレッド。自然と体が強張(こわば)り、緊張が走る。しかし、その顔に焦りは見えない。自身が最も信頼する相棒が、まだ残っているから。

 

「勝負はここから────頼んだ、ピカ!」

 

「ピッカァ!」

 

 バトルもいよいよ、大詰めだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「捉えろ、ユンゲラー!」

 

「させるな、ピカ!」

 

 ユンゲラーは狙いを定め、カメールと同じように“ねんりき”でピカチュウを操ろうとする。しかし、素早く動き回るピカチュウに翻弄され、なかなか焦点が定まらない。

 

「懐に潜り込むんだ!」

 

「ちっ……壁を張れ!」

 

 

 “でんこうせっか”

 

 “リフレクター”

 

 ピカチュウの攻撃が当たる直前、ユンゲラーはギリギリで壁を張り、ダメージを半減することに成功する。物理防御の低いユンゲラーのことだ、あと少し遅ければ倒されていたことだろう。

 

 攻撃を耐えたユンゲラーは、お返しとばかりに“サイケこうせん”を放つ。至近距離のため当たると思ったのだが、ピカチュウは身を(よじ)ってこれを回避。ユンゲラーから距離を取ることもなく、その場で尻尾を振り上げる。

 

「あれは……避けろユンゲラー!」

 

 その動きが何の技を意味するのか、気づいたグリーンが指示を飛ばす。しかし、ユンゲラーが動き出すよりも早く、ピカチュウが尻尾を振り下ろす! 

 

「チュウ……ピッカァ!」

 

 “かわらわり”

 

 次の瞬間、ユンゲラーを守っていた透明な壁が叩き割られ、そのままピカチュウの尻尾がユンゲラーの頭に直撃。ユンゲラーは目を回し、地面に倒れ伏した。

 

「ユンゲラー、戦闘不能!」

 

「ピッカ!」

 

 どうだ、と言わんばかりにピカチュウが胸を張る。しかし、ユンゲラーをボールに戻しながらそれを眺めるグリーンの顔は、あくまでも冷静だった。

 

「壁の対策までしてたのか。それにその威力……まあいい。それでこそ、潰しがいがあるってもんだ‼︎」

 

 そして、グリーンの最後の1体が、咆哮を上げる。

 

 

「ガォオオオオオオ!」

 

 

 鋭い目付きに牙と爪、獅子を彷彿とさせる立派なたてがみ。赤と橙を基調とした体色は、炎を操る力を示唆するものだろう。四つ足で立つ威風堂々としたその姿は、不思議と貫禄を感じさせてくれる。

 

 ────でんせつポケモン、ウインディ。

 

 その称号に恥じない存在感と威圧力が、そこにはあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ッ‼︎ いけっ、ピカ!」

 

「ピッカァ!」

 

 ウインディのただならぬ雰囲気を感じ取ったのか、レッドがすぐに指示を飛ばす。ピカチュウもそれに応え、ここまで温存していた必殺の電撃をウインディに浴びせようとする。

 

「焼き尽くせ、ウインディ!」

 

「ガオオ!」

 

 それを予想していたのか、グリーンの指示も早い。ウインディは体内で練り上げた炎を、口元に溜め込んでいく。そして、2体が同時に、己の最大限のパワーを込めた技を放つ! 

 

「ピィカァ……ヂィイイイ!」

 

「グオゥ……ガオオオオオ!」

 

 

 “10まんボルト”

 

 “かえんほうしゃ”

 

 電撃と灼熱の炎が激しくぶつかり合い、辺りに眩い光を発する。ウインディが優勢かに思えたが、ピカチュウも気迫では負けていない。自らの力を振り絞り、互角の戦いに持ち込んでいる。

 

 ……だが、やはり持久力の差か。徐々に電撃の威力が弱まり、炎の勢いが増していく。ピカチュウが押されているのだ。

 

「そのままいけ、ウインディ!」

 

「負けるな、ピカ!」

 

 2人が自分のポケモンに声をかける。その声を受けて一度ピカチュウが盛り返したが、焼け石に水だった。ウインディの勢いはとどまるところを知らず、どんどんと大きくなる。そしてついに電撃を打ち破り、ピカチュウの体を捉えた。

 

「ピィ……カァ……」

 

 ドサッ、という音を立てて、ピカチュウが倒れ伏す。

 

「ピカチュウ、戦闘不能! よってこの勝負、グリーンの勝ち!」

 

 こうしてサント・アンヌ号のライバル戦は、グリーンの勝利で幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば、グリーンはどうしてこの船に乗ってたの?」

 

 対戦後、ポケモンたちを回復させるため、私たちは船内の診療所に来ていた。そして治療を待つ間、ふと気になったことをグリーンに聞いてみた。

 

「ん? ああ、じいさんの代理だよ。今は少し忙しくてマサラから出られないからって、俺が泊まってた宿にチケットだけ送ってきてな。まったく、研究の合間に時間ぐらい作れねーのかよ」

 

 どうやら、元々招待されていたのはオーキド博士だったらしい。そりゃ呼ぶよね、超有名人だもん。ピカブイではグリーン本人が招待されてたけど、この世界じゃあグリーンの知名度はまだ高くないからね。

 

「そういや、居合切りの名人がこの船に乗ってるっていうからよ。会ってみたら、これがただの船酔い親父! でもこの技がまた使えるんだよなー! お前らも会ってみるといいぜ! ……お、治療が終わったみてーだ」

 

 グリーンが自分のポケモンを受け取りに行く。話を聞く限りここでの用事は済んだみたいだし、次にグリーンと会うのは………………あ‼︎

 

「グリーン!」

 

「うわ、何だよ急に!」

 

 咄嗟に叫んでしまったものの、言葉に詰まる。

 

「えーっと……その……怪我や病気には、気をつけてね!」

 

「? おう。よくわかんねーけど……じゃー、あばよ!」

 

 そう言って、グリーンは船を降りていった。レッドから急にどうしたの? という視線を向けられるが、なんでもないと首を振る。

 

 この後グリーンを襲うであろう悲劇。今の私の行動がそれにどのような影響を及ぼすかは、まだ分からない。だが、無駄ではなかったと思いたい。次にグリーンと出会ったとき、それは明らかになるだろう。

 

 ……気持ちを切り替えよう。レッドは船内にいるトレーナーとバトルしに行くみたいだし、私はグリーンの言っていた「居合切りの名人」に会いに行こうかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 燦々と空で輝く太陽。どこまでも続く広い海。海鳥を誘なう潮風が、私の頬を優しく撫でる。ああ、気持ちがいい……。

 

 えっ、居合切りの名人? 思い出させないでよ、せっかく忘れてたのに。いやね、その名人ってのがこの船の船長でさ。それであの後、船長室に行ったわけなんだけど。

 

 

 

 ────誰が他人がゴミ箱に(自主規制)ているのを間近で見せられるハメになると思うよ⁉︎

 

 

 

 背中をさする度にキラキラと……やば、思い出しちゃった。

 居合切り? なんとか教えてもらったよ。漂う臭いや気分の悪さと格闘しながらね。ホントによく耐えたよ、私もフィアも。

 

 ちなみにこの世界での秘伝技は、バトルで用いられる4つの技とは異なる部類に入る。そのため本来その技を覚えることのできないポケモンも使うことができ、逆に“いあいぎり”を覚えていても草を切れない、なんてこともある。

 正しい方法でなければ使うことのできない、文字通りの「秘伝技」なのだ。

 

 まあ「すべてのポケモンが使える」っていうのは“いあいぎり”や“いわくだき”などの技に限った話だけど。もちろん“そらをとぶ”や“なみのり”みたいに、使えるポケモンが限られている技もあるからね。

 

 そんなこんなで、無事(?)フィアが“いあいぎり”を習得した。そういえば、技を披露してくれた船長さんのポケモンが、船長さんを心配してあたふたしててなんか可愛かったな。あっ、それを思い出したらちょっと気分が楽になった。

 

「よし、もうすぐ昼過ぎだし、何か食べ物でも探しに行こっかな」

 

 確かパーティー会場に食事が出てるはず、そう思って歩き出したときだった。

 

「失礼ですが、リーフ様でしょうか?」

 

 初めて聞く声だと思いながら声のした方を振り向くと、そこには爽やかな笑みを浮かべる男性が静かに佇んでいた。格好から察するに、ウェイターだろうか。

 

「はい、そうですが……何の御用でしょうか?」

 

「ぜひあなた様とお話をしたいと言われるお客様がいらっしゃいまして。もしよろしければ、お時間をいただけないでしょうか?」

 

 話をしたい? 私と? もちろん心当たりはまったくない。不思議に思いながらも、特に断る理由もないので了承する。

 

「はい、大丈夫です」

 

「ありがとうございます。では、ご案内いたします」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こちらでございます」

 

 そうして案内されたのは、とある客室だった。ウェイターさんはドアの前まで来るとドアノブに手をかけ、静かにドアを開けて中に入る。

 

 

 ……? 今、何かおかしかったような。

 

 

 どこか違和感を覚えつつも、彼の後に続いて中に入る。するとそこにウェイターさんの姿はなかった。その代わり、部屋の中央にあるテーブルを挟んだ向こう側で、一人の男性がこちらを向いて立っていた。

 

「………………え⁉︎」

 

 私は驚きのあまり、声をあげてしまった。

 

「驚かせてすまない。先程のウェイターだが、あれは私の変装だ。訳あってあの姿で声を掛けさせてもらった」

 

 確かにそれも驚いた。よくよく考えてみれば、彼は部屋に入る前にノックをしなかった。中にいる人物と親しい間柄なのであればあり得なくもないことだけど、客とスタッフという関係上、その可能性は低い。だとすればあれは、中に誰もいないとわかった上での行動だ。

 

 でも、違う。私が驚いた本当の理由は、それではない。今、私の目の前にいる男性の顔を、私は知っている。それこそ、彼がどんな人物か、そして()()()()()()()()人物なのかを。

 

「話の内容が内容のため、君にわざわざここまで来てもらったのだ。とりあえず、そこに座ってくれ」

 

 促されるがままに椅子に腰掛けると、彼も私の向かいに座った。一呼吸ついた後、改めてテーブルの奥に座る相手を見る。

 

 年は30ほどだろうか。黒髪黒目で、前髪はすべて右側に流して整えられている。服装は上下ともに焦茶色のスーツ。上には薄茶色のトレンチコートを羽織っている。

 

「そういえば、まだ自己紹介をしていなかったか」

 

 そう言うと彼はコートの中から手帳のようなものを取り出し、それを開いて私に見せる。そこには彼の顔写真と共に、彼の個人情報と肩書き、そして所属する組織の識別番号……『No.836』の文字。そう、のちに彼は、こう呼ばれることとなる────

 

 

 

 

 

「私は国際警察の捜査官。単刀直入に言おう、君がロケット団について見聞きしたことを、すべて教えてほしい」

 

 

 

 ────コードネーム、「ハンサム」と。

 




そこそこ物語が進んできたので、ここで一旦手持ち紹介を。

《リーフ》
フィア(イーブイ)
リタ(トランセル)
ルピィ(ピッピ)
フォルン(コンパン)

《レッド》
ピカ(ピカチュウ)
リザ(リザード)
フッシー(フシギソウ)
ガメ(カメール)

《グリーン》
ピジョン
ラッタ
ユンゲラー
ウインディ

こうして見るとリーフのパーティー、パワーがほとんどないなあ。搦め手が得意なポケモンばかりとも言えるけど。

感想等あれば、ぜひお書きください。
筆者が非常に喜びます。
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