都市伝説ハンター、リーフ行きます!   作:永夜 藤月

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私が都市伝説を追う理由

 前世の私は、それはそれはどっぷりと、ポケモンにハマっていた。ストーリー、キャラクター、育成、対戦……ありとあらゆる要素の、そのすべてが大好きだった。

 

 レート対戦が得意ではなかった私は、ポケモンの世界観にのめり込むようになっていた。そんな私が()()()()()を見つけるまでに、それほど時間は掛からなかった。

 

 都市伝説。

 

 この言葉の意味合いは広い。物語の裏設定から、開発の裏話まで。荒唐無稽な話から、ほぼ確実だと言われる話まである。子供向けゲームの裏に隠された大人もあっと驚くような設定や仕掛けの数々は、世界観をより深く味わわせてくれる。

 

 そして都市伝説は、無数のプレイヤーたちの思い思いの考察の産物である。公式が断言しないからこそ、プレイヤーたちは自由にその想像力を働かせるのだ。

 

 ネットの海に漂う数々の都市伝説は、私をさらにポケモンの世界へと引きずり込んだ。そうして新たな都市伝説を探し、考察する毎日を送っていたある日、ふとこんなことを思ったのだ。

 

「もしポケモンの世界に行ったら、都市伝説って存在するのかな?」

 

 その問いは、考察のしがいはあれど、答えは絶対に得られないものだ。けれど私は、その日からずっと、頭の片隅でそのことを思い浮かべていた。

 

 その数年後、癌が見つかり、入院治療の末、私は亡くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 とまあ、これが私の前世の顛末だね。30代半ばで末期癌とか運悪すぎない? ニートにもならずにちゃんと働いてたのに。まあ、そのおかげでこの世界に転生できたと考えるしかないか。あんまり暗いことは考えたくないし。

 

 そういうわけで、私はこの目で確かめたいのだ。生前、都市伝説と呼ばれていたものたちは、この世界ではどうなっているのかを。

 

 それなら研究職の方がいいんじゃないかって? 私も最初はそう思った。けれど、調べても調べても、そういう研究をやっているところがなかったんだよ。しいて言うなら、オーキド博士のポケモンの生態研究が一番近かったかな? 

 

 まあ、そういう感じだったから、だったら自分で新しい分野を作るしかないと思い立ったわけだ。でも、前例のない新しい研究って、えてして研究環境があまり整わないものじゃん。だから、いい機会があればな〜と思っていたんだよ。

 

 あるじゃないか、「10歳の旅立ち」という、恰好のフィールドワークの機会が。じゃあ、旅をしながら気になるものを見ていこうと。この世界がどこまで原作通りに進むのかを確かめるのにも、レッドやグリーンと同じタイミングで旅立つのが最適だしね。

 それで研究材料が集まったら、そっちの道に進もうかなと思ってる。ちょうどオーキド博士というトレーナーから研究者になった前例があるので、無理な話でもなさそうだし。あっ、初めて書く論文は博士に持ち込もうかな?

 

 つまり、そういうわけで、私は旅に出たのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さてと、結構な距離を歩いてきたと思うけど、日が陰ってきたし、そろそろ宿を探そうかな? 

 道路に宿なんてあるのかって? むしろなかったら大問題でしょう。いくら丈夫だとはいえ、10歳の子供に野宿なんてさせるもんじゃないし。ちゃんと一定の距離に宿が配置されているのだ。

 

 ちなみに、旅に出たばかりの10歳の子供に限り、どこの宿でも無料で宿泊できるようにポケモンリーグが手配していたりする。すごいな、ポケモンリーグ。ポケモンセンターのような回復サービスはないけど、泊まらせてもらえるだけありがたいよね。

 

 あっ、ちょうど宿が見えて来た。じゃあ、今日はあそこに泊まろうかな。しっかし、初日からこんなに歩くはめになるとは。この先大丈夫なのかな? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふわあぁ………………おはよう、フィア」

「……ブイ……ブ〜イ」

 

 みなさんおはようございます、リーフです。ああよく寝た。マサラタウンにさよならバイバイしてから、今日でちょうど4日だね。

 

 現在地はいまだに1番道路。別に私が遅いわけじゃないよ? マサラタウンからトキワシティまでの距離は、実は徒歩で7日分もあるのだ。

 ちょっと長くない? って思ったそこのあなた。私の前世の関東地方とこの世界のカントー地方の地図を重ねて考えてほしい。

 

 マサラタウン→静岡県下田市あたり。伊豆半島の端っこ。

 トキワシティ→静岡県三島市あたり。箱根の近く。

 

 これでなんとなくわかったかな? つまり前世でこの道を徒歩でいこうと思ったら、いくつも峠を越えなきゃならないのだ。だから、7日でも短いほうである。

 まあこの世界の1番道路は山道でもなんでもなく平坦な道だけど、それでもやっぱり元ネタに準ずるくらいの長さはあるんだよね。

 

 え、10歳の子供がそんな距離、休みながらでも歩けるわけない? お忘れかもしれないが、私はスーパーマサラ人なのである。初日は前世の感覚で不安になってたけど、今世でそんな心配はいらないのだ。誠に遺憾ながら。というか、マサラタウン出身じゃなくても、この世界の人は余裕でそれくらい歩いてるしね。

 

「あ、そうだ。フィア、今日はちょっと寄り道するからね」

「ブイ?」

 

 あぶないあぶない、なんのために朝早く起きたのか忘れるところだった。ここ3日間歩いてばっかだったからね。図鑑をうめるためにも、少し草むらに入ろうと思ってたんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フィア、たいあたり!」

 

「ブイ!」

 

 私のかけ声に合わせて、フィアが野生のポッポに“たいあたり”する。それをまともに食らって動けなくなったポッポに向かって、私はすかさずモンスターボールを投げた。赤い光とともにポッポを吸い込んだモンスターボールは、3回ほど揺れたあとにカチッ、という音が鳴り、動きを止めた。

 

「やった、捕まえた! フィア、お疲れ様!」

 

「ブイブイ!」

 

 バトルが終わるや否や私の胸に飛び込んできたフィアを片手で撫でつつ、もう片方の手でモンスターボールを拾い上げる。それを図鑑でスキャンしたあと、ポッポをボールから出し、野生に返す。

 

 何をやっているのかって? キャッチ&図鑑登録&リリースです。ポケモン図鑑がどうやってポケモンの情報を登録しているのか、みんなは気にならない? 実はこれ、ものすごくハイテクな機器だったりする。ボールを通してスキャンしたポケモンのデータから、どこに生息しているか、何を食べているかなどの情報を割り出しているのだ。

 

 ただ、詳しい内容の登録はボールに入ったポケモンでしかできないんだよね。もちろん見ただけのポケモンでも種類ぐらいは登録できるんだけど、図鑑というにはほど遠いから。必ず一度は捕まえないといけないのが難点かな。

 

 そもそも、一度捕まえたポケモンを逃がすこと自体、あまり褒められたことではない。ただ、捕まえるだけ捕まえて何もせずにそのままずっとボールの中に入れたまま、っていうのはもっと残酷なことだと思うから、捕まえた子たちに申し訳ないけど必要なことだと割り切っている。

 捕まえたらなるべくすぐに放すようにしてるし、一度ボールに入っただけで野生の心を忘れることはないはずだしね。

 

 よし、コラッタとポッポを捕まえたから、1番道路はこれでコンプリートしたかな。もうすぐ昼時だし、ここで昼ごはんを食べよう。

 草むらから少し離れたところにレジャーシートを敷き、バッグからお弁当を取り出す。今日のメニューはサンドイッチ。葉物野菜や卵が挟んである、私のお気に入りだ。

 

 うん? この世界の食事情? そういえば触れたことなかったね。

 まず、植物は前世の世界とほぼ同じだ。一部名前が違ったり、ポケモンにのみはたらく効用があったりするけど、味はほとんど変わらない。

 

 次に卵についてだけど、なんとポケモンのタマゴである。あっ、ちゃんと無精卵なのでご安心を。この世界では受精卵を「タマゴ」、無精卵を「卵」と表記して区別している。味はポケモンの種族によって変わるらしく、珍しいポケモンの卵は高値で取り引きされるそうな。

 

 最後にお肉ですが、まあ、お察しの通り……ポケモンのお肉です。この世界にはポケモン以外の動物は人間しかいないので。

 

 ちなみに、食用ポケモンの育成については資格が必要で、基本的に野生ポケモンの狩猟は禁止されている。昔、乱獲などで数が激減したことがあるポケモンに関しては、そもそも流通が禁止されている例もあったりするね。おそらく裏では売り捌いている人たちがいるんだろうけど。

 どこぞのマフィアとかね。

 

 そんなことを考えていると、私の手の中にあったはずのサンドイッチがいつのまにか私の腹の中に消えていた。フィアもきのみを食べ終わっていたので、シートを片付けて舗装道路まで歩く。

 

 そういえば、ポケモンのタマゴってそもそもどうやってできるんだろ? 原作ではつがいのメスがいつのまにか抱えていたって話ばっかりで、ポケモンが産むところは見たことないって書いてあったと思うけど。まあ今考えてもわかんないし、育て屋さんに行くことがあったら聞いてみようかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ほんとにあと3日でトキワシティに着くんだよね? マラソン大会とかでたまにある「あと何キロ詐欺」じゃないよね?




前回より文字数は少なめです。逆にどうして6000字も書けたんだろう?

余談ですが、マサラタウンの元ネタは諸説あり、私が採用した静岡県下田市説の他にも東京都町田市説や神奈川県の三浦半島説などがあります。私が調べた限り、町としてのモデルは町田市、地理的なモデルは下田市というのが通説のようです。現実世界とゲーム世界が類似しているというのも、ある意味都市伝説と言えるかもしれませんね。

ちなみに「あと何キロ詐欺」とは、マラソンで沿道の人に「あと3キロ!」と言われたあと、数百メートル後に別の人に「あと3キロ!」と言われて「どっちやねん!」となる現象。筆者の実体験です。
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