都市伝説ハンター、リーフ行きます!   作:永夜 藤月

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活動報告にて、カントーの都市伝説を募集中です!


おつきみ山の幻風景

 ジム戦の翌日。

 

 ポケモンセンターでゆっくりと先日の疲れをとった私たちは、次の目的地・ハナダシティに向けて出発。ニビシティの東、3番道路と4番道路を進むこと1日半、おつきみ山の麓にあるポケモンセンターに到着した。

 

 おつきみ山は、その名のとおり月がよく見える場所として有名な山である。山といってもそこまで険しいわけではなく、きちんと登山道も整備されている。

 まあ、ニビシティからハナダシティに行くには必ずここを通らないといけないわけだから、当たり前といえば当たり前なんだけどね。

 

 さてと、もう夕方だから出発は明日にして、今日は早めにお休み……しようと思ってたんだけどなあ。

 

「そこの君、待ってくれよ! 君だけにいいお話があるんだ!」

 

 なんか絡まれた。ポケモンセンターの中なのに。大抵こういうのはロクなことにならないから無視が一番なんだけど、なんか勝手に喋り出したし。

 

「秘密のポケモン『コイキング』が、今ならたったの500円! どうだい、買わないか? 買うよね? 買うだろう?」

 

 この人、絶対やばい人だ。リーグ非公認のポケモンの販売は犯罪なんだけど。っていうか、全然秘密になってないし。周りの人にも聞こえちゃってるよ。あっ、警察に通報してる人もいる。

 

「あのー、それって犯罪ですよね?」

 

「何を言ってるんだ、バレなきゃ犯罪じゃないんだよ」

 

 どこの宇宙人かな? この様子を録画して上司に送りつけてやりたい。あれ、もうジュンサーさんが来た。到着早いな。

 

 その後、すぐに男は捕まって連行された。最後の最後まで訳の分からないこと言ってたよ。って、それよりも……

 

「到着がずいぶんと早かったですけど、何かあったんですか?」

 

「ええ、実は最近この近辺で不審者情報が多くあがっててね。中にはポケモンを盗まれたって話もあるし……っと、ごめんなさい、次の現場に行かなきゃいけないわ。協力ありがとう、あなたも気をつけてね」

 

 それだけ言うと、ジュンサーさんは去っていった。日曜日なのに夜も出勤とは、ご苦労様です。

 

 というかその不審者って、もしかしなくてもロケット団では? 確かおつきみ山で化石を狙ってるイベントがあったはず。うわあ、会いたくない。でも、あんまり旅を遅らせたくないんだよなあ……まあ、大丈夫でしょ。

 

 うん、明日、予定通りに出発しよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ぽかぽかとした春の陽気が気持ちいい。天気は晴れ。絶好の登山日和である。

 

 けれど悲しいことに、いくら天候がよくても今回の旅には関係ない。ニビシティとハナダシティを結ぶルートはずっと洞窟だからだ。外が暖かろうが寒かろうが洞窟内はいつでも薄ら寒い。暖かい方が多少はマシだけど。

 

 壁に等間隔に灯りが灯してあるため、洞窟内は意外と明るい。ゴツゴツしてて歩きづらいところもあるから、足元まで見えるのはありがたいな。野生のポケモンに急に襲われるようなことも減るからね。

 

 さて、洞窟に入ってから道なりにそこそこ進んできたけど、本当に何もない。野生のポケモンには会わないし、トレーナーは会ってもほとんど勝負しないし。いくら回復薬やきのみがあるからといって、こんな山の中でバトルをするのは気が引ける人が多いみたいだ。

 

 それにしても登ったり降ったりが多いせいで、地図がないと自分がどこにいるのかすぐわからなくなるな。一応はしごや階段にはそれぞれ個別に番号がついてるから、そこまで行って立て札を確認すれば現在地はすぐわかるんだけど。ただ道を歩いてるだけだと景色も変わり映えしないし。

 

 そんなことを考えながら歩いていると、なんだか奥の方が騒がしくなってきた。というか、叫び声が聞こえるんだけど。

 

 しばらくすると、黒い服を着た人たちが奥からやってきた。胸に大きなRの文字、間違いなくロケット団だ。でも、どこか様子がおかしい。私や他のトレーナーには目もくれず、一直線に出口へ向かって走り去ってしまった。まるで化け物でも見たような顔をしてたけど、いったい何があったんだろ? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう、だいぶ歩いたね。おっ、出口が見えてきた!」

 

 途中で軽食をとりながら洞窟内を歩くこと、半日。山の中腹にある山小屋までやってきた。時刻は夕方、ちょうどいい時間帯だ。

 

 ちなみに、おつきみ山を抜けるにはだいたい2日ほどかかるので、1日目の朝に麓を出発→ルートの中間にある山小屋で一晩明かす→翌日の夜に反対側の麓に到着、というのがセオリーだったりする。

 

 山小屋とはいえ利用者はかなり多いから、浴場もついているかなり立派な宿だ。前世じゃあ水の確保とか色々あるからこうはいかないけど、ポケモンがいればできることは多いからね。

 

 それじゃあ早速受付を済ませて、早めにお風呂に入ってきますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お嬢ちゃん、楽になってきたかい?」

 

「はぃ……ありがとうございます……」

 

 はい、見事にのぼせました。これまでの感じから体力には自信があったんだけど、やはり登山で使う筋肉は別のようで。まさか浴場で睡魔と戦うはめになるとは……。

 そのあとなんとか浴場を出たけど、頭がぼーっとしてるせいで足もフラフラしていたらしく、番頭のおばあさんが横になる場所を用意してくれたのだ。

 

 おばあさんのご厚意に甘えて団扇であおいでもらっていると、だんだんと意識もはっきりしてきた。

 

「すみません、こんなことまでしてもらって」

 

「いいのいいの。まだ時間が早いからお客さんも少ないしね。ゆっくり休んでいきな」

 

「いえ、そんな……もうだいぶ良くなりましたし」

 

「でも、まだ熱いだろう? 若いからといって、自分の体力を過信しちゃいかんよ」

 

「大丈夫ですって。ほら、ちゃんと立てますし」

 

 このままでは押し問答が続きそうだったので、しっかり回復したことを見せる。

 

「そうかい? ならいいんだけど……そうだ、ちょっと外に出て体を冷やしてきな。もしかしたら、いいものが見られるかもしれないよ」

 

「? 分かりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おばあさんの言葉に従って外に出ると、日はすでに沈んでいた。風はほとんどないが、少し肌寒い。薄着なだけなら寒かっただろうが、火照った体にはちょうどいい気温だった。

 

 しばらく辺りをうろついていると、小さな広場に着いた。中央には大きな池があり、水面には月が映っている。

 

 ふと空を見上げると、雲の隙間から月が顔を出していた。満月とまではいかないが、かなり丸に近づいている形だ。あと数日もすれば満月が見られるだろう。ここまで綺麗に見えるなんて、さすがおつきみ山だね。

 

「月、かぁ……いつか、アローラにも行けたらいいな」

 

 カントーの遥か南、4つの島からなるアローラ地方には、月に関する伝承が多く残っている。月の化身と伝わるルナアーラの伝説は、その最たるものだろう。

 

「月といえば……『つきのいし』って、本当に月の石なのかな?」

 

 ポケモンを進化させる不思議な石については、詳しいことはまだ分かっていない。せいぜい、石の種類によって見つかりやすい場所が違うことぐらいだ。

 

「『つきのいし』で進化するポケモンって、意外と多いんだよね。ニドリーナやニドリーノ、それに……」

 

「ピッピィ!」

 

 不意に足元から聞こえてきた鳴き声に反応して、ゆっくりと視線を下に向ける。するとそこには、1体のピッピがいた。

 

 ピッピはしばらく私を見つめたあと、池の方へ駆け出していった。池の周りには、いつの間にかたくさんのピッピたちが集まっている。

 

 そして、ここでしか見られない、夜の遊戯が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時には跳ね、時には踊り。またある時は手を繋ぎ。

 

 ピッピたちは満面の笑みで、夜のダンスを楽しんでいる。

 

 

 

 ────ああ、そうだった。どうして忘れてたんだろう。今日は月曜日。おつきみ山の広場ではまれに、ピッピのダンスが見られる日だ。

 

「おばあさんが言ってたいいものって、これのことだったんだ」

 

 薄く照らされる月明かりを浴び、ピッピたちの体は淡く光る。その光景は確かに幻想的で、美しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へくしゅん!」

 

 突然、大きなくしゃみが出てきた。目の前の光景に目を奪われているうちに、私の体はだいぶ冷えてきていたようだ。ダンスは最後まで見たかったけど風邪をひくわけにもいかないので、小走りで宿へと向かった。

 

 部屋で上着を羽織り、急いで広場まで戻る。しかし、そこにピッピたちの姿はもうなかった。そのことを残念に思いながらもせっかくなので池の周りを歩いていると、何やら光るものが落ちている。

 

 ゆっくりと拾い上げると、それは「つきのいし」だった。中央にある三日月模様は、いつ見ても不思議でしょうがない。ふと思い立って月にかざしてみると、いつもよりも少し輝いている気がした。

 

 その後もしばらく辺りを散策したが、他には何も見つからなかった。そのまま宿に戻ると、ロビーで再びおばあさんに出会った。

 

「おや、お嬢ちゃん。いいものは見れたかい?」

 

「はい、ちょうど見ることができました! 教えてくださりありがとうございます」

 

「そうかい、それならよかった。最近は昔ほど姿を見せてくれることが少なくてねぇ。どうやらお嬢ちゃんは、神様に好かれてるみたいだよ」

 

「いえ、そんな……大袈裟ですよ。たまたま運が良かっただけです」

 

「たまたまじゃないさ。その証拠に……ほら」

 

「え?」

 

 おばあさんが指を差した先。宿の入口から、1匹のピッピがこちらを覗いていた。こちらが視線を向けたことに気づいたのか、トタトタと駆け寄ってくる。そのまま私の足元までくると、私の足に抱きついてきた。

 

「わたしゃ長年ここで働いてるから、広場でピッピとトレーナーが仲良くなる様子は何度か見たことがある。けれど、ピッピがトレーナーに会うためにここまで来たことは一度もないよ。よほどお嬢ちゃんのことが気に入ったんだろうね」

 

 両手でそっと抱き上げると、ピッピはとびっきりの笑顔を見せてくれた。

 

「あなたも私といっしょに来てくれるの?」

 

「ピッ!」

 

 私の問いに、ピッピは笑顔で答える。

 

「そっか……ありがとう。それじゃあ、あなたの名前はルピィよ。これからよろしくね、ルピィ!」

 

「ピィ!」

 

 こうして、私に3匹目の仲間が加わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございました、いろいろお世話になりました」

 

「いいよいいよ、そんな堅苦しいのは。来たくなったらまた来なさいな」

 

「はい、ぜひ!」

 

 翌日。おばあさんに挨拶をして、ハナダシティ方面へ向かう。

 

 昨夜の光景を頭に浮かべながら、私は意気揚々と歩き出した。

 




実は今回、ちょっとしたネタや伏線を入れてました。1話の中で回収する伏線とかやってみたかったので。ただし、とってもわかりにくいので、初見で気づかれた方はすごいです。

さて、前回筆者が今後忙しくなると書きましたが、それが3月まで続きそうなので、それまで更新されなかったら察してください。

それと、リーフの口調について、1〜3話あたりはどこかで修正したいと思います。さすがに統一性がなさすぎるので。

感想等あれば、ご自由にお書きください。
筆者が非常に喜びます。

(ニビジム戦と比べて)今後のジム戦、どれぐらい描写すればいい?

  • もっといっぱい描写して!
  • 同じくらいの感じでOKです
  • もう少しコンパクトでもいいかな…
  • ナレーションで飛ばしていいよ
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