都市伝説ハンター、リーフ行きます!   作:永夜 藤月

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先日、感想欄にて「赤緑は金銀の2年前」と書きましたが、正しくは「3年前」でした。お詫びして訂正いたします。

また、活動報告にて本作に登場させる都市伝説の募集をしております。若干ネタバレになるかもしれませんが、興味のある方はぜひご覧ください。


橋とマニアとポケモンと

 ゴールデンボールブリッジ。

 

 ハナダシティの北、24番道路にあるこの橋は、その名の通り黄金の装飾が施された橋である。使われているのは本物の金ではなく金色の塗料だが、橋の床から手すり、欄干までも金なのが珍しいのか、これ目当ての観光客も一定数いる。

 

 また、5人のトレーナーとの勝ち抜きバトルも有名だ。回復なしの連戦という珍しいルールや達成すると高額な景品がもらえることで知られている。もちろん素通りすることもできるが、挑戦するトレーナーは多い。

 

 しかし、そんな名物イベントを行っているのがロケット団であるということは、まだ誰も知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フィア、でんこうせっか!」

 

「耐えろマンキー!」

 

 フィアの突進がマンキーの体に突き刺さる。マンキーもしばらく持ち堪えていたが、踏ん張りきれずに吹き飛ばされて倒れた。

 

「ブイブイ!」

 

「やったね、フィア!」

 

 現在、私はゴールデンボールブリッジの5人抜きに挑戦している。といっても今倒したのがちょうど5人目だったから、もう達成しちゃったね。

 ゲームと違って回復なしの連戦だったことには驚いたけど、割とスムーズに進んだ気がする。レベルが低めに設定されてたのかな? 

 

 さて、あとは景品を受け取るだけ……のはずだけど。多分それで終わらないんだろうなぁ。

 

「お見事ー! 5人抜き、おめでとう!」

 

 橋を渡りきったところで、そばにいた男性に声をかけられた。

 

「これが景品だ! 受け取ってくれ!」

 

 そして、景品を渡される。うん、ただの金の塊だね。それ以上でもそれ以下でもない。

 

「これは“きんのたま”だ! お店なんかで高く売れるぞ!」

 

 言うんじゃないよ! 心の中でも考えないようにしてたのに! というか、女の子に向かってそれを言っちゃうんだぁ……うわぁ……。

 

 内心ドン引きされていることにまったく気づいていないのか、男は饒舌に話を続ける。しかし、突然雰囲気がガラリと変わった。

 

「ところで、ここだけの話……ロケット団に入らないか?」

 

 来た。ロケット団への勧誘イベントだ。もしかしたらロケット団とは関係ないんじゃないかと思ってたけど、残念ながらそんなことはなかった。

 

 正直言うとこの5人抜きはすごく面白いイベントだし、できることなら無くしたくない。だけど、ロケット団を野放しにすることはできない。

 でも、通報するにしろ倒すにしろ、もう少し情報が欲しいな。ここは知らないふりをしよう。

 

「ロケット団って何ですか?」

 

「なんだ君、ロケット団を知らないのか? ロケット団は、カントーを始めとする様々な地方に影響力を持つ、巨大な組織さ! 私たちは実力のある人材を集めているんだ。君ならロケット団でも偉くなれる。入らないのはもったいないぞ!」

 

 なるほど、実力があると褒めて勘違いさせる感じか。でも、具体的なことは何も言ってない。どこぞの鬼の方が勧誘は上手かったな。あっちも断られてたけど。

 

 そしてしばらくは上機嫌だった男だが、自分の言葉に一向に靡かない私の様子を見て、徐々に口調が変わってきた。

 

「入りなよ。 入らないの? 入れよ!」

 

 段々と言葉遣いが荒くなる。最初のおおらかな印象は消え、眉間には大きな皺ができていた。

 

「……断るって顔してんな。それなら…………無理矢理入れてやる!」

 

 男はアーボとズバットを繰り出し、こちらに攻撃を仕掛けてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……えっと、これで終わりかな?」

 

「な、な、な……」

 

 私の目の前には、目を回したアーボとズバットが並んで倒れている。どちらも戦闘不能の状態だ。

 

 なんというか、呆気なかったね。ジムと比べるのも変な話だけど、そっちの方が100倍強かったよ。あと、私たちも少しは強くなったってことなのかな? 

 

「こんな強いなんて、最近の子供はどうなってるんだ⁇あいつらも子供にやられたっていうし……まさかこいつが⁉︎いや、赤帽子じゃないから違うか……。なんにせよ、このままじゃ……」

 

 男はひとしきり驚いたあと、何やらブツブツと呟いていた。って、ちょっと待って? 聞き捨てならない言葉が聞こえたんだけど? 

 

「赤帽子?」

 

「ああ、お月見山に行ったやつらが、赤帽子を被ったお前と同じくらいの子供にやられたと……って、そんなことはどうでもいい! くそう、俺の勧誘を断りやがって! 後悔するんじゃねえぞ! 覚えてろー!」

 

 あっ、行っちゃった。通報しようと思ってたのに。というか、ロケット団ってみんな「覚えてろー!」って言うんだよね。そんなこと言われてもいちいち覚えてられないんだけど。残念でも何でもないけど、もう会うこともないだろうし。

 

 それよりも、「赤帽子」って間違いなくレッドのことだよね? あの時のロケット団、なんか服の一部が焦げてるなーと思ったら、ピカの電撃を食らったのか。

 ただの攻撃の余波かもしれないけど、まさかトレーナーに向かって攻撃してたりしないよね……? 

 

 容赦ないレッドとピカの攻撃に少し寒気を覚えながら、歩き始める。目指すは24番道路の先、25番道路の岬。有名なポケモンマニア、マサキの家があるところだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゴールデンボールブリッジから歩くこと数時間。予想よりもずいぶんと早く岬に到着した。もう少し距離があると思ってたけど、結構ハナダシティに近いんだね。

 

 さて、当のマサキはというと。近所の人によると、何やら数日前から実験中とのこと。うん? 実験? 

 

 なんか嫌な予感がするけど気にしないことにして、家を訪ねる。電気がついているので在宅中のようだが、インターホンを鳴らしても反応はない。

 

 ますます嫌な予感がするが、せっかくここまで来たので心を決めて中に入る。

 

「失礼しまーす。マサキさんはいらっしゃいま……」

 

 

「こんにちわ! 僕ポケモン……って、ちゃうわい!」

 

 

 中から出てきたのは、ニドリーノ。二足歩行の、ニドリーノ。人間の言葉を話す、ニドリー……

 

 

「キャァァァァァ! シャベッタァァァァァ!」

 

 

 あっ、実は一度言ってみたかったんだよね、このセリフ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやあ嬢ちゃん、ありがとなあ。ホンマに助かったわあ」

 

 あの後、マサキの指示通りに分離装置を使い、「ポケモンになっちゃった事件」はあっさりと解決した。

 

「しっかし嬢ちゃんも、性格悪いで。玄関でニドリーノとくっついたわいを見た時、そんなに驚いてへんやったやろ。せやのにあんな大声だして……寿命が縮んだわあ」

 

「あれ、バレました? 結構普通の反応だと思ったんですけど」

 

「確かにそうやけど、嬢ちゃんのは明らかに棒読みやったで。普通の人なら騙されるかもしれんけど、コガネの人間はそうはいかんよ」

 

 そういえばマサキって、コガネシティの出身だったね。つまり大阪……ああ、そりゃ無理だわ。

 

「まあ、嬢ちゃんのおかげで危機が去ったのは確かやし、お礼はちゃんとせんとな。話を聞くに、次はクチバに行くんやろ? ほんなら、ええモンあげるわ」

 

 そうして手渡されたのは、2枚のチケットだった。

 

「これは?」

 

「もうすぐクチバの港に『サント・アンヌ号』っちゅう豪華な船が来るんやけど、そこで船上パーティーがあってな。ポケモントレーナーもぎょうさん来るらしいで。チケットもろたのはええんやけど、パーティーとか好きやないし。代わりに行って、遊んでえな」

 

「はあ。ところで、どうして2枚も?」

 

「ああ、そりゃあ、わいの親友のニシキっちゅうやつの分や。あいつもわいと同じでパーティーとか興味ないからな。気にせんでええよ。ほんなら、ありがとうな」

 

 それだけ言うと、マサキは何かの作業を始めてしまった。とりあえずその背中に向かってチケットのお礼を言い、家をあとにする。

 

 1枚は自分で使うとして、あと1枚はどうしようか……そんなことを考えながら、ハナダシティへ向けて歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、私が24番道路に来たのには、マサキに会うこと以外にもう一つ理由がある。それは、とあるポケモンを仲間にするためだ。

 リタとタイプが被っちゃうけど、そんなことは関係ない。都市伝説統一パーティー、それが私のコンセプトだからね。もちろん、フィアは例外だけど。

 

 ゲームでも出現率はそんなに低くないから、割とすぐに見つかるはず……あっ! 

 

「見つけた!」

 

 モサモサとした紫色の体毛に、大きな赤い目と長い触角。とあるポケモンにそっくりな見た目は、なるほど都市伝説ができるのも納得だ。

 

 そう、私の目当てのポケモンとは、コンパンである。

 

 よし、早速フィアに体力を削ってもらって……って、あれ? 

 

「コォン?」

 

 不思議なことに、コンパンは自分から私の方に近づいてきた。なまじこちらを害する気がないと分かるので、さらに困惑してしまう。野生のポケモンにしてはあまりにも警戒心が無さすぎるのだ。

 

「コン、コォン!」

 

「連れてって、ってこと?」

 

 私としてはありがたいのだけど……本当に? 半信半疑ながらもモンスターボールを取り出し、コンパンを中に入れる。すると、コンパンは抵抗する様子もなく私にゲットされた。

 

 なんだか拍子抜けだが、仲間になったからにはちゃんと挨拶しないと。コンパンを一度ボールから出し、両手で抱き上げる。

 

「それじゃあ、君の名前はフォルンだよ。よろしくね、フォルン!」

 

「コン!」

 

 こうして、私に新しい仲間が増えた。ちょっと気になることはあるけど、悪いことではないし、気にしなくてもいいかな。

 

 えっ、どうしてコンパンを探してたのかって? それは……まあ、また別の機会にでも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それで、24番道路での用事が全部終わったから、ゴールデンボールブリッジまで戻ってきたわけなんだけど。橋の中央に、何やら見覚えのある人影が見える。

 

 あっ、ちょうどこっちに気づいたみたい。

 

「………………!」

 

「レッド、また会ったね。そんなとこで立ち止まって、どうしたの?」

 

 遠くからでもよく見える、特徴的な赤帽子。そう、我らが主人公、レッドである。にしても、なんでこんなとこにいるんだろう? 

 

「………………?」

 

「あ──、そゆことか。えっとね、驚かずに聞いてほしいんだけど。実はあのイベントやってたの、ロケット団だったんだよ」

 

 うわ、すごい顔してる。あっ、そっか。お月見山で一度会ってるもんね、ロケット団。その時に何かあったのかな? 

 

「………………?」

 

「そう、私が倒したの。そしたらどっか行っちゃった。多分、もうこのイベントはやらないんじゃないかなあ」

 

「………………」

 

 バトル好きなのは知ってるけど、ここまでくると戦闘狂では……いや、そんなことはない。と思いたい。っと、そういえば……

 

「そうだ、これあげるよ!」

 

「………………?」

 

 レッドに手渡したのは、1枚のチケット。そう、マサキにもらった、サントアンヌ号のチケットだ。

 

「これ、この先の岬に住んでるマサキって人にもらったんだけど。クチバの港に停まってる『サントアンヌ号』っていうおっきな船に乗れるチケットなんだって。中にはトレーナーがいっぱいいるらしいよ」

 

「………………!」

 

 私の話を聞くや否や、レッドはすごく分かりやすく嬉しそうな顔をした。やっぱりバトルしたかったんだね。

 

 その後、お互いの近況を話してから私たちは別れた。心なしか、レッドが少し浮き足立ってた気がするな。

 

「今日はなんだか疲れたね。ゆっくり休もっか」

 

「ブイブイ!」

 

 ゆっくりと沈む綺麗な夕日に背を向けて、私たちはポケモンセンターへと歩き出した。

 




レッドさんがどんどんバトルジャンキーに……ドウシテコウナッタ
まあ、原作でも強さを求めて山籠りしてましたしね。

感想等あれば、ご自由にお書きください。
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