正田エース   作:湯瀬 煉

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クリスマスといえばDies irae。
クリスマスといえばテレジアさんの誕生日。
だったんですけど、………ね


聖夜だよ! 総員、玉座の元に集うべし!

 クリスマス───。その由来について語れぬ者がいようとも、その特別性を疑うことが出来る者はいまい。ならばこそあらゆるメディアはクリスマスを限定イベントとして扱い、ある者は愛する相手と過ごす時間とし、ある者は孤独を憂う時間とし、ある者はこのように浮かれる者らの横で労働に励むかもしれない。クリスマスという概念を知ってしまえば、それが当人にとってどのような日であれ、特別な日という認識からは免れない。

 そして私や、我が爪牙にしても、クリスマスという日を特別視せぬ者はいないだろう。

「テレジアの誕生日ではある。無論、彼女を言祝ぐ気持ちはある。だが──」

彼女を祝う声はよく聞こえる。よく愛されているのだろう。そのことを否定するつもりは毛頭ない。しかし忘れてはならない。我々にとってはより重要な日だったのではないだろうか。

「ラインハルト・ハイドリヒという人間が、黄金(わたし)という神殺しとして生まれ直した日。或いはカールの運命の終着点、命日と言い換えても良い。我ら双首領の記念日でもあるとは思わんかね、カール」

 黄金の瞳が捉える先には、長髪の男が座っている。疲弊しているような、爛々と輝くような笑みを常に浮かべているこの男の感情は不明で、ゆえ不気味でしかない。幽霊のような存在感と生物感の欠落を抱えた彼は、薄く唇を開いて笑った。

「ふふ……ふむ。まあ確かに、そうとも言えなくはないでしょうな。とはいえ、貴方には既に誕生日はあるわけで、ならば祝うのはそちらが適切でしょう。さらにいえば私のような陰気な男の命日を悼む物好きなど貴方しかいますまい。ゆえ、我らの記念日というにはあまりに弱いかと」

 黄金のたてがみ、黄金の瞳をもつ美男──黄金の獣は優美に笑った。盟友の思考回路なぞ読めているが、しかしならば、卿もまた、私の言うことなど読めているだろうよ、と。

「私がその理屈に納得すると思ったか?」

「否。貴方ならばこう返すでしょうな。“我らが待ち焦がれ、辿り着いたあの怒りの日を特別といわずなんと言うのか”と。ええ確かに、そこに嘘はつけない。私も貴方も、あの日、あの時、あそこへ至るがために駆け抜けてきた。我らの衝突こそ無かったものの……私が想像していた以上の喜びを得られた気がするよ。

 しかし、だからといって、我々で何をするのだね?」

 盟友の問いはもっともである。よもや、生殺与奪の権利を奪われ、あらゆる因果から解き放たれながらあらゆる因果に縛られたこの空間において、両雄の衝突を再現することも出来まい。水銀として──否、カール・クラフト=メルクリウスとしてハイドリヒと共に何かを催すということに異論はない。黄金の獣は輝ける太陽の如く煌めいているのだから、水銀の王はその影として寄り添い続けるのが相応しいだろう。

 問題は何をするか。何をするにも着いていく所存だが、ゴール無しに走ることは出来ない。

「ふむ、それも道理か。……では長らく忘れていたが、卿にミニスカサンタをやらせるか」

おのれ分からぬよハイドリヒ。

 何故そうなるのだ。違うだろう。もう少しやる事あるだろう、貴方は。この手の茶番劇は私が女神関連の話題で狂うのが常と思うのだが」

 困惑顔のメルクリウスに、面白いものを見たと笑う獣。ハイドリヒは、変なノリに入っていた。

「少々メタいぞ、カールよ。そもそも今宵、女神は卿の息子と濃密な時間を過ごしている。卿の出る幕は無い。

 なに、案ずるな。卿一人で変装させるわけではない」

 

 

 藤井蓮こと俺は、世界一哀しいクリスマスを過ごしていた。考えて欲しい。何が悲しくてクソ親父のミニスカサンタとクソ親父の親友が着ぐるみを着ている様を見なければならんのだろう。

「ツァラトゥストラよ、卿も着てはどうかね。なかなか暖かいぞ。このライオン着ぐるみは」

 整ったツラだけを露出させ、ふわふわの胴体と可愛らしいライオンのようなキャラクターの頭が見える着ぐるみを着ているのが、ラインハルト。そしてやたらとやせ細った、色白の素肌を晒したミニスカサンタ服の方がメルクリウスである。

「むしろ私の顔なのだから、ミニスカサンタなどどうかな?」

「どっちも嫌だよ。何でお前らの変なノリに俺が付き合わなきゃならないんだ」

俺の横にいるマリィも、高身長男性二人の衝撃の格好に固まっている。

「なんというか、感性が若くて、いいね……」

「ほら、マリィのフォローもだいぶ苦しいぞ」

何故だろう、マリィの言葉を聞いたメルクリウスが歓喜に震えているように見える。褒められてないと思うんだが、それでも嬉しいのだろうか。頬を赤くするな、変態野郎。

「でも……。レンのミニスカサンタは見てみたいかも」

 ちょっと待て。

「おや」

「風向きが変わったな」

 ジリジリと覇道神三柱ににじり寄られる俺。なんだろう、とても危険を感じるぞ、これは。

「じゃ、俺はここで。これから先輩の誕生日会なんでな。あばよ。」

 時を停められる俺を超える速度を持つやつはこの中にはいない。俺はマリィの手を引いて全力の遁走を開始した。

「ふははは、逃げ切れると思うなよ。貴様も私と同じ恥を味わうのだよ────!」

「来んな! 帰れ! そして二人だけでよろしくやってろォォォーーーッ!」




いつまでも水銀のノリはいくらでも書けてしまう。
それでも全盛期よりはウザさ控えめの偽クリウスになってしまっている感は否めないね。
時の流れを著しく感じた所存。
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