正田エース   作:湯瀬 煉

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戦神館勢書いてないなって思って。


甘粕正彦は現状が不満なようです

「正田エースというのであれば、正田作品のキャラクターが出るはずだろう。俺が出て来んのは道理に合わんのではないかね?」

 甘粕正彦は薄暗い円卓に並べられた椅子のひとつに座り、そう切り出した。メタ表現を含む発言はそれゆえに多くの者に理解されず、狂人の戯言と処理される。だが、ここにはそれを理解するものもいた。かつて夢をかいま見る者たちを嘲笑した悪魔は、()()()()()()を確かに持っていた。

「いやいや。もちろんアナタは人気ですよ、我が主。ただ、勢いのままに暴走しがちでしょう?」

 べんぼう、チェルノボーグ、サタン、ルシフェル、ルシファー……あらゆる悪魔の象徴の発する、蝿音のような不快感をもたらす声に、しかし主と呼ばれた男は笑った。

「ふっ。まあ、それは否定せんがな。事実、俺が神座とやらに顔を出せば、第一にやることは殴ることだろうよ。特に無慙とやらは気に入った。俺があのような男の覚悟を、勇気を、凶念を真正面から受けず何とする。あれこそ人間の輝きだと俺は信ずるゆえに、無論加減はせんし出来んだろうな」

「……で、周囲への配慮なんて特にしないで好きかって大暴してステージ大崩壊、と。ありありと光景が浮かびますね。しかも、そうなってもアナタも彼も止まるような性格じゃあない。この作品ではジャンル違いも甚だしいでしょう」

 決戦を思い描いたか、くくく、と笑う男から感じるのは、まさに狂気。きっと自分が負けることになったとしても、この男は笑顔で敗北を認め相手を讃えるのだろう。戦いは好まないが、戦いの中で相手に見せつけられる決意や勇気、そうした輝きはどうしようもなく愛してしまっている魔王であるがゆえに、こればかりは仕方がない。困窮、絶体絶命の中でなお立ち上がり、己の意志のままに突き進む人間を愛する盧生は、自らが召喚した悪魔の呆れ顔も気にせず一人、戦意を滾らせている。

「かくなる上は、やはり俺も座とやらに到達すべきか」

「いや無理でしょう。だってこの世界には神座そのものがないじゃないですか」

 カッ!! と目を見開きながら思い立った甘粕を、べんぼうは優しく抑えた。思いついたらやってみよう、の精神の塊である甘粕ならやりかねないし、甘粕が甘粕である以上成功しかねない。なぜなら彼こそは人類最初の盧生であり、邯鄲の踏破者なのだから。しかし成し遂げられてしまえば、本格的に手がつけられなくなるし、彼が神座入りした時の地獄絵図など思い描きたくもない。

「いやぁ、案外僕好みかもしれないけども」

 特に悲鳴とかで溢れてそうな世界なあたりが。

 彼の楽園(ぱらいぞ)を覇道でもって実現するのなら、それはどんな時代よりも混沌を極めるだろう。神秘は廃れず、魑魅魍魎が跋扈し、いつ何時死ぬかすら分からない、安寧のない世界が広がるのである。恐ろしいのが、これをこの男は善意で行ってしまうということ。そして自由型である以上、短期間でこの男を超える化け物が現れて座の交代が発生するのだろう。それはどんな輩なのか、見てみたい気持ちはある。

 とはいえ、立派な成人男性が目を爛々と輝かせて天地創造したいと宣う姿はあまり見てられるものでは無い。

「せめて妄想に留めておきましょうよ。その、アニメにハマりたての厨二病患者のような妄想もいかがなものかと思いますけどね 」

「構うまいよ。邯鄲に身を投じる輩など、厨二病患者とやらそう大差あるまい。違いがあるとするなら、自らにあてた設定をその場で実現できるかどうかというのみよ。でなくば、急段はおろか破段も出来ず終いだろう?」

「えー、だいぶ反感買いそうな反応ですねえ。まあ、たしかにそれはそうなんですが。ほら特に、高らかにロッズ・フロォム・ゴォォッド!  とか叫べる御仁」

 現実の法則よりも、己の夢こそ真なりと断言出来る人間はなかなかいない。正確にいえば己の妄想を実現出来るなどと心の底から信じられる者は大抵が狂人か可哀想な人であり、邯鄲法というものがあるとはいえ、それを実践しようとする時点で相当に頭のネジが緩んでいるとしか言いようがない。

 まあ、人類の普遍的無意識と邯鄲法によって召喚されている自分がいうのもアレだけれども。

 ネジが緩んでいる。どこか狂っている。ゆえ、常識外れの存在となりえる。それは夢界における常識だ。ならば、邯鄲の最高位、盧生がとんでもない狂人であり、厨二病を極めし者だと言われれば、さほど間違いでは無いようにも感じる。……いやもちろん、俺たちは皆厨二病だろう! と言われると否定したくなるけれど。

「まあ、ともあれ。アナタは扱いにくいんですよ。だから他のキャラクターと絡ませづらいというか、絡ませると面倒というか。

 出たいならば自重を覚えるべきなんじゃないかと。はい」

「ふはっ! ならば是非もないな」

 笑う甘粕のその言葉を聞いて、べんぼうは肩を落とす。この場合の“是非もなし”は、諦めの言葉では無いとわかるから。

「こちらから強引にお呼び立てしようではないか。

 なに、多少時間と空間を飛び越えることになるだろうが、不可能などないしそもそも俺は諦めん。

 これより正田エースの目玉企画は『甘粕の部屋』とするッ!」

 勢いよく椅子から立ち上がった甘粕は、直後に後頭部にゲンコツを食らった。無論、下手人はべんぼうでは無い。

「させるか阿呆。お前は大人しくしていてくれ」

 こういう時はお決まりの四四八である。

「……断ると言えば?」

「分かるまで言って聞かせてやる。貴様のような手合いは結局、何度も何度も指導してやらねば分からんからな」

「ふふふふ、ふはははははは! それでこそ俺の勇者だよ、柊四四八。さあ、ならば俺を止めてみせるがいいッ! 

 ふははははははははは───ッ!!」




無軌道に書きました。反省はしています。
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