正田エース   作:湯瀬 煉

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しばらくとのフラやりますので、お祝いをば。


来た

 よう、俺は藤井蓮。どこにでもいる普通の覇道神!

 

「ねえ、おかしいとは思わない?」

「ああ、はい。そうです、ね……?」

「解せないわ」

 

 …………駄目だ。ハーレム系主人公を意識してみたけど駄目だ。訳分からん。

 俺の部屋に入ると三人の美少女が、顔を付き合わせて何やら相談しているのだが、香純、先輩、櫻井、何このメンツ。

 

「先輩、人の部屋で何やってんすか」

「どうして私だけ指名するのかな。他にも共犯はいるでしょう」

「こういうことをするのは先輩か香純だけで、香純が困惑してるってことは消去法であんたしかいない事になるからだけど」

 

 ビシ、と言ってやると、先輩は感心したように頷いた。いや、そうじゃなくてさ。

 

「で、なんで俺の部屋でコソコソ話し込んでるんですかね」

「さあ、なんでか分かるかな、探偵くん」

 

 駄目だ。今日の先輩は鉄壁で何を言ってもはぐらかされる感じしかしない。

 そこで、一番話が分かるだろう櫻井に目を向けると、つーんとそっぽを向いていた。

 

「おーい、こら櫻井。なんだよお前まで」

「さあね。自分の胸に聞いてみたらどうかしら」

 

 おい、筋肉。この状況はどういう事なんだい。

 

 ………。

 …………。

 ………………。

 

 よく分からないことが分かった。

 パワー。

 

「俺の大胸筋は知らないってさ」

「きんにくんとか、古くない?」

 

 最近はまた売れてただろうがよ。

 と、どうでもいい小ネタを挟んだ上で、最後に香純に目を向けた。

 

「で、どういうことだ?」

「あー、それは、ね」

 

 生涯初かもしれない、香純はまともだという感想を抱きながらその言葉に耳を傾けたとき。

 

「こんの、バカチンがァッッ!!」

 

 何だこのバカ耳を済ました瞬間狙いすましやがったッ。

 

「なにすんだよバカ、アホ、このバカスミ!」

「何すんだよじゃないわよ。なに。お前は大切だとかなんとか言って結局アンタは、アンタってやつは〜っ!!」

 

 本格的に意味がわからん。

 

「そう、藤井くんがシラを切るなら、こうするしか無さそうね」

 

 という先輩の不穏なセリフとともに、櫻井が俺のベッドに緑色のよく分からないものを置いた。

 ……ああ、いや。知ってる。緑色のこれは。

 

「レンくん……わたし、わたし、汚されちゃったよう」

 

 カエルの着ぐるみを着た、ルサルカだった。

 

「あなたは元から汚れているわ。……この売女」

「私としてはもう一人の方が許せないけれど、あなたも同罪だから」

 

 憐れ、見事に櫻井と先輩からの殺意を受けて萎縮してしまっている。

 

「ねえ。蓮。『Deep One 虚無と夢幻のフラグメント』……知ってるよね?」

「え、ああ、まあ。今コラボしてるんだよな、Dies iraeの」

「……正確には、6月21日からスタートするわね」

 

 じいっと見つめてくる香純と俺の発言を鼻で笑いながら訂正する櫻井。いやおまえら、まさか。

 

「…………実装されなくて怒ってる、のか?」

「あったりまえでしょうがぁぁぁッ」

 

 キーン。

 香純はうるさい。さっきからホントなんなんだよ。

 

「別にいいだろ。本編からハブられたって訳でもないんだし」

「でも、コラボに採用されないヒロインなんて、あるかな? あの子には悪いけど、マリィちゃんは実装されて私たちがいないのはおかしいと思うの。櫻井さんはともかくとして」

「なんでですか、先輩! ベアトリスが行くなら私でもいいでしょう!? 綾瀬さんや氷室先輩はこう、守られる側だけど私は戦えるし」

 

 櫻井の発言がさらに火に油を注ぎ、無間の大焦熱地獄のように燃え盛る。女どうしの大喧嘩が始まりかけていた。俺の部屋で。

 

「っていうか、それならなんで俺の部屋に」

 

 というと、途端に櫻井や香純は静まり──先輩はどうどうと宣言した。

 

「マレウスへの嫌がらせとして、藤井くんの貞操を奪おうかなって。安心して、特別にマリィちゃんは参加させてあげる」

 

 ちょっとこれにはふらつきそうになる。いや、目眩がもうしている。

 

「いやおかしいでしょう! っていうかルサルカへの私怨でしょそれはッ」

「………ちょっと何言ってるのか分からない。ヴァルキュリアって人は今、ザミエル卿が扱いているし、マリィちゃんは正統派。つまり残った彼女は異端でしょう」

 

 いやほら。ルサルカは一応ヒロイン枠というか、そもそも、ほんとどうしてベアトリスってやつは選ばれたのだろう。

 

「とにかくだね。藤井蓮くん。あなたはあなたの聖剣で傷心の乙女を救いなさい」

「ちょっ、先輩、これドッキリじゃないの!? ホントに脱ごうとしないで、待っ──」

「先輩、あなたはじめからそのつもりで──!?」

「ヤる気がないならいいよ。私が藤井くんを貰ってあげる」

 

 

 女どもの絶叫が響く中、取り敢えず俺は、自室から速やかに退散した。

 

 

 

「……ってわけなんだが、お前のところも大概だな」

 

 救いを求めて訪れたのは、かつての仇敵、ラインハルト・ハイドリヒの部屋。なの、だが。

 

「どうしたキルヒアイゼン。今朝の覇気はどこへ行った。

 女とやらを教えてくれるのだろう。こうして待ってやっているのだから早く来い。……来られるものならばなァッッ!」

 

 なんというか、これは酷い。

 

「今朝からこれでな。己の動画を見せつけては、これが乙女だの、殿方を落とすには云々と語り始め、ついには激突した」

「………シスターは?」

「テレジア参戦を訴えデモを蜂起しようとした聖餐杯を鎮圧しに行っている」

 

 なんというか、これは酷い。

 

「まあなんだ、お互い頑張ろうな」

「なに、これより奮闘するのはあちら側の世界へ赴く彼女らだとも。多くの者が我らを知る機会を得た。ならば爪痕を残してもらわねばな」

 愉快げに喉を鳴らすこいつはいつも通りで、全身から歓喜を爆発させている。まあ確かに、どれだけ気を揉んでもなるようにしかならないわけで、自分の手では届かないところで戦うことになる彼女らのことはもどかしいが。信じるしかないんだろう。

 

 

 

 Deep One 虚無と夢幻のフラグメント

 Dies iraeコラボ、微睡む刹那の幻愁───2022年6月21日より、開催。




悔いはない
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