正田エース   作:湯瀬 煉

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シュライバァァァァ!!! を書こうと思ったら偶然、思いついたので衝動書きしました。

Dies iraeの中だとあんまりキャラが掴めてない人の一人だったりします。変なところないといいな。


血濡れの歌姫

「Wer reitet so spät durch Nacht und Wind?

 Es ist der Vater mit seinem Kind;

 Er hat den Knaben wohl in dem Arm,

 Er faßt ihn sicher, er hält ihn warm.」

 

 楽しげに歌い上げる声がする。

 その声は天使のようで、しかし地獄から聞こえてくるような。

 劇場のど真ん中で、青年は大仰に腕を広げ、歌詞の世界観をまさに“語って”いた。

 

 アカペラ────歌い手の実力が最も示される歌唱法にて歌われる旋律の放ち手は、ヴォルフガング・シュライバー。

 

 聖槍十三騎士団、黒円卓第十二位・大隊長。《悪名高き狼(フローズヴィトニル)》と呼ばれる彼は、優れた歌姫でもある。

 歌に吸い寄せられれば最期。そのまま命を落とすことも十分有り得るため、彼の主君以外に気軽に近付く者などあまりいないのだが───。

 

「良い歌ですね。なんというのですか?」

 

 今宵は少し、違ったようである。

 

 

 ナーキッド。

 第一神座を生きた女であり、彼女もまた、歌姫と呼ぶに相応しい来歴を持つ。彼女が歌う歌は少々特殊なのだが、それは今は置いておいて。

 

「やあやあ、初めましてお姫様。歌の途中に声をかけるなんて、酷いじゃないか」

「ごめんなさい。あまりに良い歌だったものですから」

 

 頬をふくらませる美少年と美女という構図。

 舞台の中心に立つ白髪の軍人と舞台を見下ろす観客席の星姫。

 あまりに、絵画的で、神秘的な光景だった。

 

 

 しばらくして。

 二人は舞台の中央にちょこんと座って、話していた。

 

 シュライバーにとっては気まぐれだったし、すぐに殺してみても良かったのだが、不思議とその気は起きなかった。

 ヨクワカラナイ気持ちではあるものの、それを深堀りするつもりにはならない。ゆえに彼と彼女は今、平和な話し合いが出来るのであった。

 

 とはいっても、二人の共通点などひとつしかなく。話題も絞られる訳だが。

 

「なにか歌うかい?」

「そうは言っても。あなたの知っている歌を私は知りませんし………。どうしましょうか」

 

 白騎士は、大した問題では無いとコロコロと笑った。

 

即興(アドリブ)に決まってるだろう? 僕に着いてきてごらんよ」

 

 立ち上がり、手を差し出すシュライバー。星姫がその手を取り、その場限りの歌は美しく響いた。

 

 

 

 

 

「ここに来て数ヶ月いや、もう数年か。殺しても殺しきれぬこの場で悶々としていたはずだが、卿」

 

 おかしなモノを見た、というように、主君(ラインハルト)は目を細めた。犬のように彼の足元に跪き、笑顔を向けている。

 

 恭順な態度は常のそれ。しかしいつもと違う気配をまとう部下を、将が見逃すはずもない。

 

「何があった?」

「それはそれは、実に素晴らしい出会いを」

 

 白騎士の返答を受けて、ラインハルトの目が鋭いものに変わる。

 シュライバーが興味を惹かれるモノ。気にならないはずがない。

 是非、この手で()してみたい───

 

 と、一人たぎっていると、シュライバーはその意を汲んだように申し出た。

 

「もし宜しければ、後で紹介しましょう。きっとハイドリヒ卿も気に入ってくださる」

「ほぉ? 卿がそこまで言うか。………では楽しみに待つとしよう。些か、私も最近は退屈が過ぎるのでな」

 

 

 

 その数日後、黒円卓と星霊達による合同音楽会が開かれたのは、また別のお話。

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