孫悟飯は実力至上主義の教室へ。   作:PPキャンディ

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優秀な私がいるならもう解決したも同然ね

「それでは第1024回悪辣非道な孫悟飯の企みによって窮地に陥った須藤くんを優秀な私が救済する会議を開催します」

 

「なぁ、これってどこからツッコめばいいんだ?」

 

「聞くな須藤」

 

オレの部屋に急遽集まったのは今回問題になっている須藤、どことなく嬉しそうにそわそわしている堀北、それを見て苦笑を浮かべる櫛田、そしてオレの4人だ。

 

何故か皆が合鍵を持っていて、物が少ないという理由でここ最近はオレの部屋が溜まり場になっている。

 

「そろそろカーペットとか買おうぜ、ケツが痛くて仕方ねえ」

 

残念だがそんな金はない。インテリアを買うぐらいなら飯を買う。山菜定食は不味いからな。

 

「せめて座布団ぐらい買いなさい」

 

そんなものはいらん。ほら見ろ、櫛田がベッドに腰掛けてくれているじゃないか。座布団なんて買ったら櫛田の匂い付きの布団が堪能できなくなってしまう。

ああ、須藤はベッドに座るなよ、流石に殴るぞ。

 

「大体俺が殴ったのはCクラスの連中だぜ」

 

「きっと裏で孫悟飯が糸を引いているのよ」

 

きっぱりと即答する堀北。

 

「いやいやねーだろ、どういう理屈だよ。あいつは俺の退学を阻止してくれたんだぞ」

 

「上げて落とすのは策略の基本よ。あいつは私がAクラスに行くのを邪魔するためにCクラスを使ったのよ」

 

最近の堀北は孫悟飯を妬むあまり陰謀論な妄想が酷くなっているな。そんなに大好きな兄貴に孫悟飯をべた褒めされたのが気に食わないのか。

 

「ちなみに地球温暖化現象の理由は」

 

「孫悟飯が悪いわ」

 

「消費税が上がったのも」

 

「全部孫悟飯の仕業ね」

 

何でも聞いてこいとばかりに胸を張ってドヤ顔する堀北。

 

「綾小路。俺、相談する相手間違えたかも知れねぇ」

 

「大丈夫だ、オレもそう思ってる」

 

「あはは、ごめん、私もかな」

 

 

とにかく、話を戻さないと何時まで経っても終わらない。

 

 

「それで、事件の詳細を確認したいんだが」

 

「ああ、俺が夏の大会でレギュラー候補に選ばれてな。その事で話があるってCクラスの小宮と近藤が特別棟に呼び出しやがったんだよ。まぁ無視しても良かったんだが、部活中にも度々言い合ってたからいい加減ケリつけてやろうと思って。もちろん話し合いでだぜ?そしたら石崎ってヤツがそこで待ってやがったんだよ。小宮と近藤はそいつのダチでよ、サルの俺がレギュラーに選ばれたのが我慢ならなかったんだと。痛い目みたくなけりゃバスケ部を辞めて山に帰れと脅してきやがった。キレそうだったがなんとか我慢して断ったら、アイツら、殴りかかってきやがってさ。やられる前にやったってことだ」

 

駆け足な説明ではあったが一連の流れは理解できた。須藤もちゃんと説明できたとちょっと満足げだ。

 

そして堀北はと言うと。

 

「話は分かったわ。これで謎はすべて解けたわ。やっぱり孫悟飯が悪いのよ」

 

なぜそうなる。

 

真実はいつも一つ!と言いながらズビシッと明後日の方向に指を指しながらポーズを決めている堀北。

さてはこいつ、昨日テレビでやってたコナンの映画を見てたな。

 

ジトリと白い目を向けているオレたちに気づいたのか、堀北はコホンと咳払いをして居住まいを正すと話し出す。

 

「まず、それなら正当防衛を主張しましょう。そもそも相手は3人でこちらは1人よ。そういう状況なら弁護次第で十分持っていけるわ」

 

流石に恥ずかしかったのかちょっと頬が赤くなっている堀北。今日もポンコツ回路は絶好調のようだ。

 

「んで、それが悟飯とどういう関係になるんだ。悟飯は俺の恩人だしあんまり悪く言われるのは気分が良くねえ」

 

「教室で私達より前に、あの間抜けに最初説明していたわね。その時に同じように説明したのかしら」

 

「ああ、悟飯なら中間テストの時のようにズバッと何か良い解決方法を教えてくれるかもってな。結局、大人しく反省しろ、って断られたが」

 

それを見て、堀北が「無能な孫悟飯なんかに解決できる問題ではないわ。須藤くん、このクラスで一番優秀な私が貴方を救ってあげるわ。感謝しなさい」と、話の内容も分からないのに安請け合いしたんだよな。孫悟飯の鼻を明かしてやるって言いながらふんすふんすと鼻息を荒くしている堀北は結構可愛かった。

 

「だったら、あの下衆も正当防衛が主張できる状況だったのは理解しているはずよ。なのに断った。つまり私達のクラスが被害を受けるのを黙認したってことよ。これは明確な背任行為ね」

 

確かにそう取れなくもないな。正当防衛が成立するか否かは別として、なぜ孫悟飯は何も手を打とうとはしないんだ。

 

「私がAクラスに行くために日々精進していることはあのじゃがいも男も知っているわ。そんな私の下僕である綾小路くんの交友関係にある須藤くんを陥れることは私の手足を削ぐ行為よ。これは明確な宣戦布告と取っていいわね。きっとCクラスと内通して須藤くんにけしかけたに違いないわ」

 

「ああ、そういうのはもういいから」

 

櫛田が冷たい声で言う。お前、仮面外れてるぞ。

 

「それで、須藤くんはその事はちゃんと先生に説明したんだよね」

 

須藤に向き直った櫛田の顔はいつもの天使の笑顔。惚れ惚れする切り替えの速さだ。将来スパイとかに向いてるんじゃないか。女スパイ櫛田。エロくていいな。櫛田におねだりされたらどんな機密情報だろうがペラペラと喋ってしまいそうだ。

 

「ああ、説明したぜ。でもアイツら、俺から殴りかかってきたって言ってたんだよ。教師の野郎、誰も俺の話信じねーし。もうマジでわけわかんえーよ」

 

「それで、学校側は須藤の話を聞いてなんて言ったんだ」

 

「来週の火曜まで時間をやるから、その話が本当なら向こうが仕掛けてきたことを証明しろとさ。無理なら俺が悪いってことで夏休みまで停学。その上クラス全体のポイントもマイナスだってよ」

 

「やっとポイントが上向いてきたところなのにそれは痛いわね」

 

堀北はAクラスがまた遠ざかるわ、と嘆いている。

だが、須藤が焦っているのは停学になることやポイントがマイナスになることよりも、バスケのレギュラーが白紙になることだろう。千載一遇のチャンスだったのに、と悔しがっている。

 

「どうしたらいいんだよ、俺は」

 

「須藤くんが嘘をついていないって先生に訴えていくしかないんじゃないかな?だっておかしいよ、何も悪くない須藤くんの話が信じてもらえないなんて。そうだよね?」

 

櫛田は同意を求めてくるが、悪いがオレには良い返事をしてやれなかった。

 

「どうかな…そう話は単純じゃないと思うぞ」

 

「証拠がないものね。もちろんCクラスにも明確な証拠はないけれど、こちらは無傷であちらは全員怪我だらけ。これでこっちが先に殴りかかられたと言ってもポイントを減らされたくない嘘だとしか思われないわ」

 

「それは…そうかもしれねえけどよ」

 

堀北の久々に的確な説明に須藤の声も小さくなる。

 

「それに向こうが悪いとしても、須藤が一定の責任を問われる可能性は十分あるな」

 

「は?何でだよ。正当防衛だろ?なぁ?」

 

須藤は納得がいかないと声を張り上げる。

 

「向こうが3人だったという事を加味しても、須藤が相手を殴って、相手は須藤を殴れなかった。この事実は思っているより大きい。状況だけでみるなら向こうは無抵抗でやられたことになる。ただでさえ、正当防衛は相手がナイフなどで武装しているのでなければなかなか成立しにくいものだ。ましてや…」

 

須藤は獣人だしな。一応平等な事になっているここでは口には出せないが。

 

だがニホン自治区でだけで生きてきたであろう堀北達は何故正当防衛が難しいか理解できていないようだ。納得のいかない顔をしている。

 

「とにかく、まずは確実な証拠を見つけるしかないな」

 

そんな都合の良いものがあれば苦労しないんだろうがな。ところが、須藤は否定せずに考え込むような仕草を見せた。

 

「あるかもしれないぜ。もしかしたら俺の勘違いかも知れないんだけどよ…あいつらと喧嘩してた時に妙な匂いをかいだっつーか、そばに誰かいた気がするんだよな」

 

なんかいきなり変なことを言い出したぞ。匂いってなんだよ。

 

「匂いですって?」

 

同じく疑問に思った堀北が胡乱な目をして問い返す。

 

「ああ、俺は赤毛猿型獣人だがな。母親は狼型獣人なんだ。猿型と狼型のハーフって奴だな。だから鼻に関しては結構効くんだよ」

 

「それで誰かの匂いが…つまり目撃者がいたってこと?」

 

「ほんと、何となくなんだけどな。近くから匂いがしてさ。つーかそれがおかしい匂いだったんだよ」

 

「どうおかしいんだ?」

 

「いや、普通だとよ。人間って言い方悪いけど誰だってそれぞれの体臭ってのがあるんだよ。どんなに綺麗に体を洗ったって石鹸の匂いだけじゃなくそいつ独特の匂いがするんだ」

 

ズササっと慌てて須藤から距離を取る堀北と櫛田。いや、この狭い部屋だと意味ないと思うぞ。

 

「それが、そいつの場合、体臭そのものが全くしねぇんだよ。制服の匂いと石鹸とかシャンプーの匂いとか、そういうのだけだ。匂いの透明人間って言うのか。そんな感じなんだよ」

 

「よっぽど綺麗好きなのか?それも病的なほどに」

 

「いやそれにしたってなぁ。だから確信は持てねぇんだ」

 

目撃者か。確かにそれが本当で一部始終を見ていたのならそれは好材料だ。けど場合によっては須藤を更に追い込む結果にもなりかねない。例えば殴り倒した直後から目撃していた場合、須藤が先に仕掛けたと決定づける一打にもなってしまう。

 

「…俺はどうすりゃいいんだよ」

 

頭を抱え込んで項垂れる須藤。重い沈黙を嫌った櫛田が口を開く。

 

「須藤くんの無実を証明するためには、方法は大きく分けて二つ、一つは単純明快でCクラスの男の子たちが自分たちのウソを認めること。本当は須藤くんが悪いわけじゃないって認めさせるのが多分一番だから。そしてもう一つが、今須藤くんが言った目撃者を探すこと。もし須藤くんたちの喧嘩を誰かが見てたなら、きっと須藤くんの無実の証明になるはずだよ」

 

そんな櫛田は今、須藤から最大限距離を取ろうとベランダの外から顔だけこちらに出している。大丈夫だ、櫛田の匂いはいつも最高だからな。だから早く戻ってベッドに座ってくれ。

 

「目撃者を探すつってもよう、具体的にどうやって探すつもりだよ」

 

「一人一人地道に?もしくはクラス単位で聞いて回るとか」

 

「それで素直に名乗り出てくれるといいんだがな」

 

「あと綺麗好きなら女の子の可能性はあるな」

 

「ああ、確かにな。それにシャンプーや石鹸、あんまり男が使ってないやつの匂いだったな」

 

その言葉にまたもや櫛田と堀北は嫌そうな目を向ける。

 

「シャンプーとかってお気に入りってあるから。両方を同時に変えるなんてことは無いだろうし。須藤くん、明日から同じシャンプーとかボディーソープを使ってる人がいたら教えてくれない」

 

「すまねぇな、分かった。明日からは匂いに気をつけてみるぜ」

 

「でも、私の近くでは息しないでね」

 

「教室の中では呼吸禁止ね」

 

「そりゃねーぜ」

 

櫛田と堀北の容赦のない言葉に須藤は泣きそうな顔でボヤいた。

 

 

 

ところで須藤、櫛田の使ってるシャンプーとボディーソープを教えてくれないか?店が閉まる前に買ってこないといけないからな。

 




んがー、なんとか間に合った。(現在22時30分)
誤字脱字あったら後で修正します。

さて、本来なら最初の須藤くんとの話し合いには堀北さんは参加していないですが、この世界では悟飯に対抗するために須藤くんへ最初から協力的です。
決して話を圧縮するためとか言わないように。

では次回もがんばりゅ。

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