孫悟飯は実力至上主義の教室へ。   作:PPキャンディ

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区切りが良いところが分からなくて、もう良いや最後まで書いちゃえとなったので、ちょっと長いです。

ちなみにファインモーションが育成入りするようですね。私はマチタンが育成入りしたら全力出す予定です。一体何時まで待てば良いのやら。


来た。殴った。勝った。

オレは再開発地区に辿り着いた後、花火の爆音と閃光があっちこっちで鳴り響く中、佐倉の現在位置を特定すべく数時間ほど駆けずり回る羽目になった。

 

(実物の花火なんて初めて見たが、打ち上げる場所って結構危険なんだな)

 

何度か爆風に煽られ吹き飛ばされたが、佐倉を探しているうちにだんだん花火が打ち上がる回数が減っていき、試射が終わったのか、やっと辺りは静かになった。

そして、花火が終わったからか、佐倉の位置情報の動きがやっと止まった。やはり電波障害とかがあったのだろう。

 

(ここからは大体10キロぐらいか。オレにとっては目と鼻の先だな)

 

オレは更に移動速度を上げて、位置情報が示す場所に向かう。

 

(そろそろ近くのはずだ。綾小路イヤーで周辺探査だ)

 

綾小路の鍛え上げられた耳は1キロ先のブラジャーのホックが外れる音すら捉えられる(誇張)

その耳が不審な会話をキャッチする。

 

「いや…もうやめて…」「すぐにお前も分かってくれる。俺だけがお前を幸せにしてやれるって」

 

それは佐倉の声、そしてもう片方は聞き覚えのない男の声だった。

 

「知って…………ほら、これで…………排卵され………………これで二人の愛の結晶を…………子供は何人が欲し………………男の子で、最終的には………………できるぐらいの人数」

 

男の声が小さくなってあまり聞き取れないが、状況は芳しくないようだ。

 

「………………い家を…………子ども部屋……………………お前の写真を……………使用人……………………ああ、やっと俺とシズクの二人きりの生活が始まるんだ。でも寂しがることはないよ。すぐに子供が出来るから賑やかになるさ。でも子供だけじゃなくて俺のこともちゃんと愛してくれないと怒っちゃうよ。ハハハ! はははは!! ハハハハハ!!! 俺のシズク! ああ! 俺のシズク!!」

 

興奮してきたのか男の声が大きくなっていき、笑い声まであげだした。

 

(聞こえてくる話の内容的にやはりストーカー野郎なのは間違いないな。佐倉にはオレが先に目をつけていたんだ!勝手に横から割り込んで来て何をほざいていやがる!)

 

位置情報の場所、そのすぐ傍にビルの屋上にオレは到着した。下を見下ろすとそこには衝撃の事態が展開されていた。

 

(なっ、なんだと!)

 

そこにはなんと佐倉に馬乗りになり、胸を揉みしだきながらベルトを外していくバードウォッチングのオッサンの姿があった。佐倉は恐怖のあまりか抵抗すら出来ず泣いている。佐倉はオレと違って戦闘のセの字も知らないようなか弱い女の子だ。それがあんな気持ち悪いオッサンに迫られたら怖くて仕方ないだろう。

 

(しかも、直揉み!直揉みだと!オレだって服の上からしかおっぱいを揉んだことがないのに直揉みとはどういう了見だ!どけ!それはオレのおっぱいだ!)

 

「俺のシズクがあんなクソみたいなガキどもに厭らしい目で見られて! この顔も胸も全部俺のものなのに!」

 

(違う!そのおっぱいはオレのだ!もはや疑うべくもない!ヤツこそが諸悪の根源!ストーカー野郎に間違いない!)

 

しかも男は汚らわしい怒りん棒を取り出し、佐倉の観音様に刺し込もうとする。佐倉は涙を流しながら悲痛の声を上げる。オレはそれを見てかつて無いほどの怒りが込み上げてくる。これほどまでに怒ったのはなけなしのポイントで買ってベッドの下に隠していたおっぱい全集を掘北に燃やされた時以来だ。この恨み晴らさずにいられるか。貧弱おっぱいの堀北が一級おっぱいソムリエのオレに対して変態呼ばわりして頭を土足で踏みつけてきたことも思い出されて、オレの怒りが有頂天になった。この怒りはしばらくおさまる事を知らない。

 

「もう…いや……いやなの……たすけて…………綾小路くん!」

 

そして、そんな佐倉の声を聞いたオレは、もはや平凡なふりは出来なかった。オレはオレのおっぱいを無断で揉まれたことへの怒りに、堀北への恨みを加算して男へと鉄拳を叩き込んだ。もちろん殺さないように、だが最大限の痛みを与えるという最高級の技術を使ってだ。ヤツには死すら生ぬるい。

 

(やっちまったな。これで平凡な学生の綾小路清隆はおしまいだ。だが、悔いはない。なぜならこれは佐倉のおっぱいを守る正義の戦いだからな)

 

「佐倉、言っただろ。オレを呼べ。オレが助けてやるって」

 

(せめてカッコをつけよう。ここで惚れさせれば、いやーん綾小路くんかっこいい~スキスキー!ワタシのおっぱい?いいよ、好きなだけ揉んで。これは綾小路くん専用だよ。とか言われるに違いない。ふむ、控えめに言っても天国だろう。我が人生に一片の悔いなし)

 

オレは右拳を天高く突き上げ、これから始まるラブストーリーへと思いを馳せる。

 

(おっと、いかんいかん。佐倉を介抱するのが先だ。オレは出来る男だからな)

 

山内に借りた美少女漫画を参考に、脱いだ上着を佐倉の身体にかっこよく掛けてやる。

 

「あ、綾小路くん…後ろ!」

 

「分かっているさ」

 

オレは振り向き、飛んできた弾丸を全て手で掴み取る。

見れば、ゴミ袋の山から抜け出した男がサブマシンガンでこちらを撃ってきたようだ。

 

「クソッ!お前もか!生徒会長といい、この学校は化け物ばかりかよ!」

 

「今どきのストーカーはそんなのまで持っているんだな。治安悪すぎだろうニホン」

 

「あ、綾小路くん、それ!足元に落ちてるそれを壊して!」

 

足元を見れば、端末のようなものが落ちていた。どうやら、この端末で佐倉を盗撮して脅していたのだろう。この恥ずかしい写真をばらまかれたくなければ俺の所に来い、ゲヘヘって事か。

 

「下衆め!」

 

男は慌てて端末を拾おうと転がりながら向かってくるが、それよりも早く、オレはそれを踏み潰して破壊した。

 

「な、なんてことをしてくれた!」

 

「お前の方こそ。オレの佐倉を泣かせた罪は重い。鉄拳制裁!漫画で覚えた見様見真似北斗百裂拳!!無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!!」

 

オレはストーカーのオッサンに連続で拳を叩き込む。もちろんこれも死なない程度には加減しているが、今後暫くは病院で身動きできないように命に別状のない部分の骨を丁寧に砕いていく。そしてトドメの一発だ。

 

「アリーデヴェルチ(おさらばでござる)」

 

未だにむき出しになっている奴の如意棒(オレより小さかった。勝ったなガハハ)へと、これは手加減をほぼ抜きにして叩き込んだ。その一撃によって、みすぼらしいソレは一片の欠片も残さず爆散してしまう。もちろんお稲荷さんも一緒にだ。

 

「刑務所でモテモテになるようにしてやった。今度からは入れられる側に回るんだな」

 

オレは倒れて痙攣している男をベルトで縛り上げ、動けなくした後に佐倉の様子を見る。佐倉は必死でここまで逃げてきたのだろう、制服が結構汚れていて、所々破けている箇所まである。

 

「オレの汚いハンカチで悪いが、汚れを取るのに使ってくれ」

 

(こういう時の対応は須藤から借りた漫画で読んでいる。ここはクールなオレで行こう)

 

「あ、綾小路くん…ありがとう、ございます」

 

「櫛田が言ってただろう。オレたちに敬語は不要だ」

 

佐倉と手分けして、彼女の制服の汚れを取っていると、銃声を聞きつけたのか警備員を名乗る犬型獣人がやってきた。古式ゆかしいニンジャスタイルとは懐かしい。ムラサキ先生を思い出す。

 

「そいつは、佐倉をストーカーしていた奴です。オレは佐倉が暴力を振るわれそうになったところに偶然居合わせて何とか止めたところです」

 

“綾小路くん、今回のこと、秘密にしてほしいんです”

 

警備員の姿を見た時、佐倉はオレに小声で言ってきた。

やはり、犯されるところだったというのは女子の尊厳的に知られたくないことなのだろう。

代わりに、オレの強さについても秘密にしてもらった。もしオレが銃も効かないほど強いなんて知られたら皆に怖がられてしまうからな。

 

なので、オレは事件を未然に防いだと説明した。ここらへんの監視カメラが何故か壊れていたそうで、警備員には特に怪しまれることはなかった。犯人を確保した警備員は、これから現場検証を行うから急いで立ち去るように指示してきたので、オレは佐倉を支えながらここを離れることにした。おっぱいが身体に密着してとても気持ちがいい。これだけでも助けに来たかいがあるな。

 

 

 

 

 

 

「損傷率…43%…任務遂行…困難…」

 

身体を腰から分断されて上半身のみになった量産型が、それでも這いずりながらビルの上まで移動し、立ち去る12号と男子生徒を射程に捉えた。二人がこちらに気づいた様子はない。

 

「稼働エネルギー…全エネルギー投入…」

 

量産型は現状では任務遂行が難しいと判断して、発射後はシステムダウンしてしまう程の全エネルギーを一点集中して撃ち込むことに決めた。もし避けられたとしても角度的にそれは地表を穿ち、学校敷地全体を跡形もなく吹き飛ばす事が可能だ。フラッペ博士は任務が終わった後は証拠を残さないように学校ごと破壊するように密かに命じていたのだ。もちろん、男が12号を連れ去ろうとすることなどお見通しで、男も始末するように言われていた。任務が失敗した以上、12号を連れ去るのは無理だろうが、せめて証拠は消さなければいけない。任務の失敗を予期したこの機体は、システムを自分でダウンさせて破壊されたように欺き、証拠消滅の機会を伺っていたのだ。

 

「全て…灰になってキエロ」

 

長いチャージが後少しで完了する。未だに12号たちは気づかない。それどころか、12号は男子生徒の腕に寄り添い、その横顔をうっとりと見ているだけだ。その愚かさに量産型はプログラムされていないはずの嘲笑の感情覚えた。

 

「人形が人間に恋をして報われるはずがない。それにその男も…これで死ぬ。無様に泣き叫ぶが良い、オリジナル」

 

道具のように生み出され、道具のように消費され、それでいてオリジナルに比べて失敗作だと言われ続けた自分があのオリジナルに一矢報いる。それを思うと無意識に口角が上がっていた。

 

(これが、“楽しい”…これが、感情?)

 

初めて湧き上がってくる感情に戸惑いを覚えながらも、量産型はその感情すら膨大なエネルギーに変えてビームを放とうとした。

 

 

 

だが、その直前、量産型の意識は唐突に闇に閉ざされた。

 

 

 

 

 

 

「ふー、危ないところだった。間一髪ってところかな」

 

ビームを放とうとしていた人造人間は無残にバラバラになっていた。

その横には金色の光に包まれ、金髪になった悟飯が立っていた。

 

「まったく、やるならきっちり最後まで片付けてほしいよ。こんな危険なの残していくなんて」

 

放課後になって現地まで見に来た悟飯は、倒された人造人間が全部機能を停止しているか確認して回っていた。案の定、1体がまだ稼働していて、高威力のビームを放つ寸前だったので、超サイヤ人になって一撃で破壊したのだ。

 

悟飯が下を見ると、こちらに気づいていた佐倉が綾小路に気付かれないように横目で見ている。

 

「(一つ貸しです)」

 

佐倉が口パクで伝えてきた。もし悟飯が居なかったら、佐倉が止めていたのだろう。だが、戦闘のセの字も知らないような民間人の綾小路くんを巻き込むのは流石の悟飯でも躊躇われたので、これで良かったのだろう。

 

当面の危機が去ったことに悟飯はようやく安堵の溜息をつくのだった。

 

 

 

 

 

 

「でも、綾小路くん…なんでここに来たんですか?」

 

現場を離れながら佐倉が不思議そうに聞いてきた。

 

「佐倉の様子がおかしいのは気づいていたからな。それで今日学校に来なかったので、勝手で悪いがお前の連絡先から位置情報を調べさせて貰った。そうしたらお前が人気のないここにいるから不審に思ってな。だが、もう少し早く来れていたらもっと良かったな。遅れてすまない」

 

「だ、ダメだよ!そんな、危ないよ!もし後数分でも早く来てたら大変なことになってたよ!」

 

「お、おう?なんだかよくわからないが大丈夫だ」

 

「も、もう…綾小路くんは自分の弱さを理解できてないからなぁ…危なっかしいよ」

 

佐倉が小声でよく分からないことを言っている。

 

(オレの弱さってなんだ?あれか?女の色気に弱いってことか?確かに腕に当たる佐倉のおっぱいの感触は最高だ。これだけで白米3杯は余裕だな。節約生活も右手の鍛錬も捗るな)

 

不思議そうにするオレを見て、佐倉は深い溜め息を付いた後、オレの目を真っ直ぐに見つめてきた。

 

「ワタシ、まだ人と関わるのは怖いです。男の人はみんな、ワタシを厭らしい目で見てくるし。…でも、綾小路くんだけは違った」

 

「オレは別に他の奴らと違うところなんてないぞ」

 

「目を見れば分かります。綾小路くんだけはワタシを厭らしい目で見なかった。暗く沈んだワタシを楽しませようとわざと戯けてくれて、それでワタシを助けるって言ってくれた」

 

(ふむ?いや、厭らしいことは何時だって考えてるぞ。なんなら今だってお前のおっぱいの事で頭がおっぱい、いや、いっぱいだ。もしやこれは仕事を長年放棄している表情筋の効果か?)

 

「綾小路くんの何時だって冷静な目、ワタシ、好きです…だから今度はワタシが綾小路くんの事を守れるようになります」

 

「無理はするな。誰だって得意不得意がある。幸い喧嘩は得意な方だ。お前はお前の得意なことで頑張ればいい」

 

「…綾小路くんはやっぱり優しいです。でもだからこそ傷ついて欲しくない」

 

(ふ、惚れたな)

 

オレは勝利を確信した。思わずコロンビアしそうになったが、ここは最後までクールに行くべきだ。

 

「もうそろそろ再審問の時間だ。佐倉は気をつけて変えるんだな。…綾小路清隆はクールに去るぜ」

 

佐倉に背を向け、オレの姿が逆光になるように光が指してくる方へと歩き始める。

 

「あ、綾小路くん!」

 

(やはり演出は大事だな。奇妙な冒険の漫画を貸してくれた須藤には感謝だ)

 

「そっち、学校とは逆だよ!」

 

ズッコケた。やばい、生徒会長と同じ轍を踏んでしまった。

 

「あと、綾小路くん、待って!…えっと、はむっ。過去の視覚データ書き出し…っと」

 

佐倉はポケットからUSBメモリを取り出すと、それを口に咥えながら何やらモゴモゴと言ってから、オレへと差し出してきた。

 

「えっと…これにあの事件の全部を撮影した動画を入れました。これを先生に見せれば…」

 

「動画…そんなものがあったのか?」

 

「うん…でも、それを見せてワタシのことがバレたら嫌だったから」

 

(ストーカーから逃げ回りながら徘徊していたなんてあまり知られたくないのだろうな)

 

「ところで、何で口に咥えたんだ」

 

「あ…その…そう、おまじない!うまくいくようにって」

 

そうかおまじないか。佐倉が舐めて必勝を祈願してくれたんだな。ならオレも必勝を祈願しておまじないをしても大丈夫だな。是非しよう。ヤバい、ドキドキしてきた。

オレが佐倉の可愛い唇と彼女に舐められたUSBメモリの差込口を見て興奮していたら、顔を真っ赤にした佐倉にUSBメモリを奪われた。

 

「やっぱり汚いですよね!拭きます!ごめんなさい!」

 

USBメモリは佐倉によって除菌シートで拭かれてしまった。なんてことだ。夢にまで見た美少女との間接キスが…。

 

愕然としていると佐倉がオレの手を取り、その中にUSBメモリを置く。そして佐倉はオレの手を両手で優しく包み、そのご立派な胸に抱き寄せた。

 

「綾小路くん、本当にありがとうございます。ワタシ、本当はもうダメだって諦めかけてたのに。綾小路くんが来てくれて、凄く嬉しかった。あのまま連れ去られてまた酷い目にあうんだって考えたら、凄く怖くて。綾小路くん、本当にありがとう」

 

「ふむ、何が何だか分からんが大丈夫だ、問題ない」

(おっぱいおっぱい柔らかいおっぱい柔らかいおっぱいオレは今、最高に幸せだーーーー)

 

おっぱいで頭がハッピーセットになったオレに佐倉が何か言っていた気がするが、とりあえず問題ない。おっぱいがあれば全ては解決する。

おっぱいの感触を反芻していると、佐倉が虚空を見上げて「アラームだ」と呟き、そして驚いた顔でオレを見てくる。

 

「あ、綾小路くん!再審問まであと3分だよ!」

 

「それも大丈夫だ、問題ない」

 

アラーム音なんて鳴らなかった気がするがマナーモードだったのか?だが問題ない。オレは佐倉から受け取ったUSBメモリを口に咥えて、全力全開のスピードで街を駆ける。ビルの壁面を蹴り、屋上まで一気に登り、そこからビルからビルへと八艘飛びしながら学校へと一直線に突き進む。そのスピードはまさに光の如く。このオレについてこれるものなど、もはや存在しない。弾丸よりも早く、音速の壁を突き受け、更にもっと先へと…。

 

 

「駆け抜ける!」

 

 

領 域 展 開 !!

 

 

そしてオレは向かう先に眩い光を幻視する。

 

 

「やっと見えた…スピードの向こう側。静かでどこまでも綺麗な、オレが見たかったもの…!!」

 

 

 

『先頭の景色は譲らない!』

 

 

 

オレはゴール(校舎)目指して一気に加速する。あと200メートル。校舎が見えた。生徒会室は3階。残り時間はあと5秒。廊下には生徒らがいる。昇降口から行っては間に合わない。

 

瞬時に判断したオレは、3階の窓目掛けて。

 

「跳っ躍!!」

 

一気に飛び込んだ。

 

飛び散るガラスを身に纏い、衝撃を上手く逃しながら生徒会室のドアを掴み、中へと乗り込む。

 

「ではこれから再審問を「ハァハァ…1年…Dクラス…ぜはっゲフッゴフッ綾小路清隆…です。ハァハァ…まだ間に合い…ますか」「あの、同じく佐倉愛里です。遅れてすいません」…まぁいい、座り給え」

 

流石のオレもこの距離をあの速度で走り抜けるとかなりキツかったな。息が乱れてしょうがない。だが、それでも間に合わせるのだから流石オレと言ったところ…あれ?なんでオレの隣に佐倉がいる?アイエー?もしかしたらトランスポーターでもあったのか?流石都会、未来だな。もしくはジェットフライヤーのホイポイカプセルでも持ってたのか。現実的にはそっちの方がありえる。息一つ乱してないもんな。納得した。

 

「では改めて、これから再審問を行う。DクラスはCクラスの主張を覆しうる新しい証拠はあるか?ないならそのまま結審へと移行するが」

 

「クッ…」

 

生徒会長の言葉に、何も用意できなかった堀北がクッコロする。その顔、動画に撮りたかった。

 

「あり、ます」

 

佐倉が手を挙げる。その顔は覚悟に満ちていて、昨日のような怯えはなかった。

 

「ほう…いい顔になったな。ならその証拠品を提出してくれ」

 

「はい。綾小路くん、あれを」

 

オレは佐倉の言葉に、彼女から預かっていたUSBメモリをウグッと口の更に奥から取り出して生徒会長に手渡す。生徒会長はそれを嫌そうな顔をして受け取り、ハンカチで拭き、PCへと差し込む。ちなみにそのハンカチは仕舞う前に傍に控えていた書紀ちゃんの手によって速やかにゴミ箱へと叩き込まれた。ふむ、彼女のおっぱいもふくよかでいいな。お団子ヘアもキュートで可愛いぞ。

 

「これは…動画ファイルか」

 

「はい。昨日は持ち合わせておりませんでしたが、事件当時の現場の映像を録画していたのでお持ちしました」

 

その言葉に石崎たちは驚いた顔をして震えだす。

 

「そうか、では再生させてもらおう」

 

動画は生徒会室に設置された大型モニターに映し出された。

 

 

 

 

 

 

特別棟の廊下。映像は時折、窓の外を見たりしながらも、フラフラと揺れつつ廊下を歩く様子を主観的に撮影されている。

 

「ふむ、これは目の高さだな。映像の動きからするとヘッドマウントカメラで取っているのか?」

 

「えっと、そのようなものです」

 

ヘッドマウントカメラとは頭部、主に耳の部分などに取り付ける事により、自分が見ているモノをそのまま録画することができるカメラのことだ。アクションカムとかの頭部設置専用カメラのようなものだ。

 

しばらく廊下を歩く映像が続くと、どこからか話し声が聞こえてくる。

 

『おい…どこまで…』

 

『もう少しだ……ここらへんでいいか』

 

漏れ聞こえてくる声は廊下の先の階段の下から聞こえるようだ。

 

『…なんだろう?』

 

佐倉はその声が気になったのか、少し足早で向かい、曲がり角から階段を覗き込む。

そこでは石崎、近藤、小宮の3人が須藤を取り囲み、口々に須藤へと罵倒を繰り返していた。

 

『獣人がバスケなんてやってんじゃねーよ!コートが獣臭くなるだろうが!』

 

『どうせあれだろ?プロになりたいのも許可証目当てだろう。不純なんだよ、俺たちみたいなマトモに活動してる奴に迷惑だと思わねーのか?』

 

『まぁどうせ、お前なんてプロになったとしてもすぐに暴力をふるって許可証取り消しになるんだろうがな!』

 

あまりにも口汚く須藤を罵る彼ら。須藤はそれでも唇を噛み締め、拳を強く握りしめて震えながら耐えていた。

 

『あれって…須藤…くん?』

 

どれだけ自分を罵倒されても手を出す様子がない須藤に業を煮やした近藤が一歩前に出る。

 

『それになんだっけ?ソン…ゴハン?あの田舎臭い薄らボケに、口先だけの自称優秀なバカ女の堀北、お調子者の池と馬鹿の山内、あとなんだっけ、ああ、能面顔の綾小路だったか。お前とつるんでる奴らってどいつもこいつもお前と同じクズばかりだよな』

 

その言葉に須藤は激怒の表情を浮かべ声を張り上げる。

 

『レギュラー取られて悔しいのは分かる。だから俺のことはいい。だがダチのことを悪く言うんじゃね!!』

 

『へっ!底辺のDクラスの連中なんてどれもまとめてクズだろうが!クズをクズって言って何が悪いんだよ!』

 

そう言って、近藤は須藤へと殴りかかろうとする。

 

だが、須藤はその言葉にブチ切れ。

 

『アイツらはクズじゃねーーー!!!』

 

近藤の顔面に拳を叩きつけた。

 

近藤の身体は派手に飛んで、壁へと叩きつけられる。

 

「ん?今のは…」

 

生徒会長はその様子に疑問を口にする。

 

その後、須藤は同じく殴りかかろうとする石崎と小宮をそれぞれ一発ずつ殴り飛ばす。

 

『おい…まさか一発で終わりかよ………。たくっ、そんな根性無しなのに突っかかってくるんじゃね―よ。今度またダチのことを悪く言いやがったら承知しね―からな!………ん?なんか変な匂いだな…気のせいか?』

 

それだけ言い残し、須藤は階下へと降りていった。

 

 

 

 

 

 

『…須藤のヤツ、行ったか?』

 

『ああ、全くいい気なもんだぜ』

 

そう言って石崎ら3人は何事もなかったように体を起こす。

 

『あいつ、俺らが人間だからって手加減してたみたいだな。全然痛くもなかったぜ』

 

『龍園さんのシゴキのおかげだな』

 

『だがこれでアイツもおしまいだな。それじゃ龍園さんに連絡すっから』

 

そう言って石崎は端末を取り出すと通話を始める。

 

『石崎っす。……はい。計画通り嵌めてやりました。………はい、待ってます。…おい、何時まで座り込んでる。龍圓さんがすぐ来るぞ』

 

『うひっ!』『はっはい!』

 

石崎の激で、座り込んで須藤を馬鹿にしてた小宮と近藤は慌てて立ち上がり直立不動で固まる。

 

『よう、お前ら』

 

『『『龍園さん!お疲れさまです!』』』

 

髪を肩まで伸ばしたサングラスの男と、その後ろに同じくサングラスをかけた筋骨隆々で巨体の黒人男が現れる。

恐らく前になっているロン毛の方が龍園だろう。

 

『11号、索敵しろ』

 

『………イエス…アクティブサーチ…生命反応…ゼロ…ノープロガガガッ…レム…言語機能にエラーが発生しました』

 

『よし………お前ら、上手くやったようだな』

 

『はい!挑発して殴るふりをしただけで、面白いぐらい乗ってきてくれました。こっちは手を出してません』

 

『そうか。………だが、鍛えすぎたな。怪我が殆どないじゃないか。おい、11号。ちょっと派手めに“プロレスごっこ”をしてやれ。ついでに周りもぶっ壊しとけ』

 

『オーダー…“プロレスごっこ”……イエス…イシザキ、ソーリー…』

 

『ちょちょちょ!マジっすか!』『アルベルトさんにやられたら俺ら死んじゃいます!』『うひぃ!!』

 

龍園の言葉に石崎達が青ざめて後退る。

 

『殺しはしないさ。ちょっと病院通いする程度だ。…やれ』

 

『ドントウォーリー…イシザキ…ペンギン村のプロレスごっこ…アンゼンダンイチ』

 

少し悲しそうな顔をした11号は、それでも前に出てその丸太のような太い腕を石崎に叩き込む。

殴り飛ばされた石崎は壁に叩きつけられ、激突の衝撃で壁の崩落が起きて瓦礫に埋もれてしまう。

 

それを見て固まってしまった小宮と近藤もすぐさま11号に殴り飛ばされ、天井に、床にと突き刺さる。

更に11号は埋もれた彼らを抜き出し、顔や体に何度も拳を叩きつける。

 

数十秒続いた暴行の果て、血まみれになり痙攣している3人を大事に床に寝かせると龍園へと向き直る。

 

『オーダークリア…メディカルチェック…ノープロガガレム』

 

『よし、後はそいつらを病院に叩き込んでおけ。俺は坂上に報告しておく』

 

そして龍園と3人を担いた黒人が去っていき、動画が終了した。

 

 

 

 

 

 

動画が終わり、生徒会室は静まり返っていた。

坂上先生は愕然とした顔をして固まり、石崎たちは顔を青ざめさせ震えている。

 

「これは…なんとも…」

 

生徒会長もこの内容は想像していなかったのか困惑した顔をしている。

 

「坂上先生。動画の最後に龍園くんが貴方に報告すると言っていましたが、この事を認識していた、という理解でよろしいでしょうか?」

 

その中で、面白そうに動画を見ていた茶柱先生がすかさず声を上げる。

 

「い、いや…私はこんな事があったなんて知らない。そ、そもそも、これは本当の事なのですか?捏造ではないんですか?」

 

「いや、これほど鮮明に映っていて捏造も何も無いでしょう。余程いいカメラを使っているようだ。全員の顔がしっかりと認識できる。これを捏造と呼ぶのはちょっと…。特にCクラスの山田アルベルト11号君のような特徴的な生徒の代役など用意するのは難しいでしょう」

 

真鍋先生は冷静に動画に映った生徒を一人一人拡大しながら、それぞれが本人に間違いないと説明する。

 

「須藤が殴った場面では彼らは自分から飛んで派手にやられたように見せているだけですね。実際に終わった後に殆ど傷がない。彼も無意識で手加減していたんでしょうね。獣人が『普通の人間』を殴れば、容易に死人が出ますから」

 

生徒会長も須藤の暴行について指摘し、そして石崎たちへと向き直る。

 

「さて、石崎、近藤、小宮。お前たちは自分たちの主張に嘘はないと宣言したな。だが、それは無抵抗だったという一部のみ。それらの怪我は須藤によるものではないとこの動画で証明されたわけだ。何か反論はあるかね?」

 

その言葉に石崎たちは項垂れ、無言で首を振るだけだった。

 

「では生徒会長として判決を下す」

 

その言葉にオレたちは居住まいを正す。

 

「今回、須藤は確かにCクラスの石崎、近藤、小宮を暴行したのは事実だ。だが、それはCクラスの計略によって起こされたものとみなし、厳重注意のみとする。これを教訓に暫くは安易な暴力行為は慎むように。…次に」

 

生徒会長がCクラスの3人に厳しい目を向ける。

 

「須藤を挑発し、計略を持って暴行に及ばせ、それによって訴えを起こした。ここまでなら特に問題はない。だが、話し合いの場で事実を捻じ曲げ、須藤の罪を重くするために怪我まで自分たちで用意したとなると話は別になる。それに校舎損壊の件もだな。よって、首謀者として龍園翔を10日間の停学。石崎、近藤、小宮の3名は5日間の停学。山田アルベルト11号は命令されていただけと判断して厳重注意と5日間の奉仕活動。そしてCクラスのクラスポイントを120ポイント没収とする。先生方もこれに異存はありませんか?」

 

「そんな!もう一度精査を!」

 

「往生際が悪いですよ、坂上先生。それに貴方には後ほど職員会議で色々聞かせていただくことになります」

 

生徒会長に詰め寄ろうとした坂上先生を、険しい顔をした真嶋先生が肩を掴み制止する。

石崎たち同様、項垂れた坂上先生は、真嶋先生に連れられ生徒会室から出ていった。それを茶柱先生はニヤニヤと笑いながら見送っていた。

 

 

 

こうして須藤の暴力事件はDクラスの逆転勝利で幕を閉じた。

 

 

 

「おい、綾小路。ゲンジューチュウイってなんだ?バケモンでも出てくんのか?」

 

………須藤、無駄に神妙な顔をしていたと思ったら意味がわかってなかったのか。

 

 

 

 

 

 

後日談。

 

再審問の翌日、オレはガラス損壊と土足の罪でクラスポイントを20減らされて堀北に頭を踏まれた。解せぬ…あ、そこ良い。もっと踏んでくれ。

 

クラスポイント

Dクラス 54→34

 

 

 

そしてオレたちの夏がやってくる。

 

 

 

 

 

 

寮の一室。

 

薄暗い部屋、綾小路清隆の写真が壁一面に隙間なく貼られ、床には寄せ集めの廃品から作られた大量の電子機器が転がっている。部屋に置かれた複数のモニターにはお手製の超小型スパイロボットからリアルタイムで送られてくる綾小路の映像が色んな角度から映し出されていた。そんな中、佐倉愛里はこれまた自作のメンテナンスベットに横たわり、自身の腹を開き、ハッキングで入手したドクターブルマによる人造人間の研究内容を元にジェネレーターに改良を加えていた。

 

「よし…これで………出力は上がる、はず。それにワタシは人間ベースだから修行もすれば、それでも強くなれるし。あの時見た金色の孫悟飯に少しでも対抗できるようにならないと」

 

(今は同じクラスだけど、何時クラス内で闘争があるか分からない。その時は少しでもワタシが時間を稼いで綾小路くんを逃さないと)

 

「綾小路くんは大丈夫だって言ってたけど、何故か破壊したはずの11号がCクラスにいるし、Bクラスにも強い子がいる。ワタシが綾小路くんを守らなきゃ。がんばれ、ワタシ。えい、えい、むん!」

 

佐倉は愛しい綾小路を守るため、『逃げないワタシ』になると固く心に誓うのだった。

 




とりあえず2巻部分はこれで終わりかな。

次章の内容は未だ考え中でまとまってません。
なので遅れるかも。

どうやら綾小路くんはお姫様枠になってしまったようです。
現状、最大戦闘力順に並べるとD>C>B>>>越えられない壁>>>Aです。
これは各クラスに求められている資質が違うからです。
つまり肉弾戦大好きなバトルマニアの指揮官なんて要らないんだよってことですね。

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