孫悟飯は実力至上主義の教室へ。 作:PPキャンディ
「綾小路くん、少しいいかしら」
来た。やはり来た。恐れていた事態が。
登校早々机に突っ伏して寝たふりをしていたオレのもとに、ヤツがやってきた。
面倒事に巻き込まれるのはごめんなのでオレは全力で嘘寝を敢行する。
「あなた、あれだけ寝ておいてまだ寝たりないと言うのね。いいわ、ならそのまま未来永劫眠らせてあげるわ」
嫌な予感がしてオレはすかさず声から反対方向に体を動かして床に転がる。
それとほぼ同時にオレの机に何かが突き刺さる音が響く。
「あら、起きてしまったのね」
起き上がり机を見ると、今までオレの頭があった位置に千枚通しが深々と突き刺さっていた。
「そんなもので刺されたら永眠してしまうぞ、堀北」
「だって貴方、私からの電話をずっと無視するほど眠たかったのでしょう」
「その電話のおかげで寝不足なんだけどな。いったい何時間かけ続けるつもりなんだよ」
「貴方が出ないのがいけないのよ。それにたったの4時間じゃない」
それをたったとは言わないと思うぞ。
オレは朝の4時からこいつのめざまし電話に起こされたのだ。もしこれが櫛田からの電話だったら1コール以内に出る自信があるが、こいつからの電話だと面倒事の匂いしかしないからな。
「それで…一体何をすればいいんだ」
「あら、ようやく自分の立場というものを理解できてきたのね。素直になってくれて嬉しいわ」
思わず口をついて出ようとした反論をなんとか抑え込む。どうせ言ったところで更に罵倒が飛んできて余計な時間をくうだけだ。ならとっとと終わらせてしまったほうがいい。
オレは堀北に連れられて平田と孫悟飯が話しているところに行く。
「…そういうわけで、一番成績が良かった悟飯くんに須藤くん達のテスト勉強を見てもらいたいんだ」
「分かったよ。僕でよけれ「ちょっといいかしら」堀北さん?」
堀北が会話に割り込む。
「小テストだけの結果で優秀だと思いこんで天狗になるなんてお笑いだわ」
「えっと、堀北さん、いきなりどうしたんだい」
平田くんが困惑しながら問いかける。
「分からないかしら?そこのどんくさそうな男より、私の方が優秀だと言っているのよ。そこの男はたまたま、そう、たまたま、小テストで運がよくいい点数を取れたようだけど。だからといってそれとこれとは話が違うわ」
小テストだけじゃなく、入試テストも負けてなかったか、おまえ。ずいぶんたまたまが続くんだな。
「いい?そこの愚鈍な田舎者にも分かるように教えてあげるけど、自分だけで理解するのと他人に勉強を教え理解させるのとは全く別物よ。あなた、今まで自宅学習で誰かに師事を受けたりしたことがないそうね。それで他人に教えることができるといえるのかしら?私は優秀な兄に勉強を教えて貰っていたので、教育のノウハウには自信があるわ」
今まで会話を交わしたことのない堀北にいきなり失礼極まりない罵倒をくらって孫悟飯のヤツ、固まってるぞ。
「特にあの3人は自分の名前すらマトモにかけるかどうか分からない類人猿なのよ。貴方には荷が勝ちすぎるわね。そうね、貴方には…」
そう言って堀北は教室を見渡し、朝のホームルーム前で皆が談笑している中でも一人ポツンと机に座っている二人の男女をそれぞれ指差す。
「あの男と、あの女ね。見るからに友達もいなさそうな孤独で可哀相な人だわ。あの二人あたりにしておきなさい。田舎者のあなたにでもコミュニケーションに困らないでしょ。ボッチにはボッチがお似合いよ」
そう言って踵を返して須藤の元に向かう堀北。
いや、ボッチって。お前がいうのか、ボッチ堀北。オレ?オレは親友がいっぱいいるからボッチじゃないぞ。本当だぞ。金を貸してからはまだ一言も喋ってない親友だけどな。
未だに呆然としている平田と孫悟飯に一言謝ってからオレも堀北の後を追った。
あ、今度は須藤と口論している。勘弁してくれ。
こうしてオレは堀北と三馬鹿、そして三馬鹿を説得してくれた櫛田の6人で勉強会をすることになった。
どうやら堀北は茶柱に孫悟飯の方が優秀だと言われたのがよっぽど堪えたらしい。
今回の中間テストで本来孫悟飯が教えるはずだった三馬鹿を自分が教え、孫悟飯が教えてる二人よりも高得点を取らせることによって自分の方が優秀だと証明したいらしい。
最初の数日は須藤達と口論が耐えなかったが、美少女(池曰くBクラスの一之瀬帆波というそうだ)に図書館を追い出されてから少しずつ自分の言動にも問題があることに気づいてくれた。そして須藤たちも少しずつ堀北に歩み寄ることで何とかマトモに勉強が続けれるようになった。
というかマトモに勉強できるようになるまで1週間もかかるとか、こいつら本当に高校生なのだろうか。
オレはその間、櫛田が実は天使なだけじゃなく、悪魔でもあったことが判明し、光と闇が両方そなわり櫛田が最強に見えてしまい、おっぱいを堪能して脅迫されるという、いかん、支離滅裂になってしまった。
つまり、なんだ。実は櫛田は人間と魔族のハーフだった。
オレは魔族化したダーク櫛田が連日の堀北のポンコツぶりにプッツン切れて屋上で罵詈雑言を叫んでいる所に運悪く遭遇してしまったのだ。
そしてオレは櫛田に腕を掴まれておっぱいを揉まされて、その事を脅迫材料として黙っているように言われたのだ。
おっぱいが揉みたいから抵抗しなかったわけじゃないぞ、本当だぞ。誰に言い訳しているんだオレは。
でも、あの後脅迫されると知ってたら開き直ってもっといっぱい揉んでいたのに勿体ない。
もう一度脅迫してくれないかな、櫛田。
そんな益体もないことを考えながら寮の外に水を買いに出たオレは、寮の裏手から何やら言い争う声が聞こえてきて、興味本位で覗き見してしまった。
堀北とメガネをかけた長身の男がいた。お前、本当に口論が好きなのな。ナイフみたいに尖って触るものはみんな傷つけるのか?
「鈴音。ここまで追ってくるとはな」
「もう、兄さんの知っている頃のダメな私とは違います。追いつくために来ました」
兄さん?よく見ると、男は堀北と見に行った部活説明会の時に生徒会の会長をしていると挨拶していた堀北だった。堀北堀北とわかりにくいので堀北は堀北兄と呼ぶことにする。わかりにくい。
「追いつく、か」
堀北兄はため息をついて掘北を見下す。
「Dクラスになったと聞いたが、3年前と何も変わらないな。ただ俺の背中を見ているだけで、お前は今もまだ自分の欠点にきづいていない。この学校を選んだのは失敗だったな」
「それは…何かの間違いです。すぐにAクラスに上がってみせます。そしたら…」
「孫悟飯におんぶに抱っこでAクラスまで連れて行ってもらうのか?それで俺に追いついたとでも言うつもりなのか」
「なっ!なんで!ここであの愚図の名前が出るんです兄さん!」
「なんだ、お前。一月も経つのにまだあの男の優秀さが理解できないのか?孫悟飯は本来なら学年主席でAクラスに配属されるべき人間だ。それが面接官の私的な怨恨で難癖を付けられてDクラスに配属されただけ。だがあの男がDクラスを率いるならAクラスに上がるのも不可能ではないだろうな。それだけのポテンシャルはある」
「あの木偶の坊ができるなら私ならもっと上手く出来ます!今も私はDクラスの最も劣ってる3人をあれに代わり指導しています。中間テストで私の優秀さは証明されます!」
「ふっ、お前がか?無理だな。お前が率いたらAクラスなど夢のまた夢だ。それどころかクラスはあっという間に全滅だ。ここはお前が考えているほど甘いところではない。考えを改めて修練せねば夏には死ぬことになるぞ」
「絶対に、絶対にたどり着きます…」
「無理だと言っただろう。本当に聞き分けのない妹だ」
堀北兄は一歩距離を詰め、無抵抗な妹の手首を掴み、強く壁に押し付ける。
「どんなにお前を避けたところで、俺の妹であることには変わりはない。お前がすぐ死ぬようなことがあれば、恥をかくのはこの俺だ。生徒会長権限で精神疾患ということにすれば軍送りは免除できる。今すぐこの学校を去れ」
「で、出来ません…。私は、絶対に私の力でAクラスに上がってみせます…」
「愚かだな、本当に。仕方ない。怪我でもなんとか免除まで持っていけるか」
「兄さん…私は…」
「お前には上を目指す力も資格もない。それを知れ」
堀北の身体が宙を舞う。そしてそれ目掛けて堀北兄の右拳が振り上げられる。
オレは直感的に危険だと判断して飛び出した。
ああ、また後で堀北に罵倒されるんだろうな。
オレは堀北兄の拳を受け止める。その衝撃で地面に亀裂が生じ、クレーター状に落ち窪む。
「何だ?お前は」
受け止められた拳を見て、堀北兄は瞬時に後ろへと飛び間合いを開ける。
「あ、綾小路くん!?」
「おい。今の威力、当たってたら確実に堀北は死んでたぞ。どういうつもりだ。兄妹だからってやって良いことと悪いことがある」
「流石に直接当てはしなかった。それよりも盗み聞きとは感心しないな」
堀北兄はいきなり現れたオレを警戒して構えを取る。
「やめて、綾小路くん…」
堀北が切羽詰まった声でオレを制止する。そんな弱った堀北なんてレアすぎてつい振り返って見てしまう。
その瞬間、オレの頭部に堀北兄のハイキックが叩き込まれる。その威力は人間離れしていて、レッドリボン軍の奴らなら頭部が爆散しているだろうし、ホワイトルームの奴らだって耐えれるのは上位の奴ぐらいだろう。
だが残念だ。
オレは特別性でな。
マトモに頭部に食らったのに身じろぎ一つしないオレを見て、堀北兄は更に数発身体にケリを入れながら再度間合いを開ける。
流石生徒会長といったところか。今まで戦った相手の中ではかなりの強さだ。だが産まれる時代を間違えたな。オレにはそんな攻撃など効きはしない。全く、敗北を知りたいぜ。
「なかなかにタフだな。それに俺の攻撃をすべて目で追っていた。どこで習ったんだ」
「ピアノと書道なら、近所のお姉さんから習ったな。小学生の時、西の都音楽コンクールで優勝したこともあるぞ。そんときブルマ夫妻から貰ったカプセルコーポレーションの記念品も持ってるけど見るか?」
「お前もDクラスか?中々ユニークな男だな。鈴音」
堀北兄は構えを解く。どうやらもう戦う気はなさそうだな。
「堀北と違って、無能なんでね」
「鈴音。お前に友達がいたとは、正直驚いた」
え、堀北って友達だったのか?初耳だ。なんだろうちょっと嬉しい。
「彼は…友達なんかじゃありません。ただのクラスメイトです」
ですよねー。知ってました。
即座に否定されるとがっくりきてしまう。
「相変わらず、孤高と孤独を履き違えているようだな。それからお前、綾小路。と呼ばれていたな。お前と、孫悟飯。少しは面白くなるかも知れないな」
残念だが思っているより孫悟飯はそこまで凄くないと思うぞ。少なくともさっきの攻撃の威力から考えると堀北兄の方が孫悟飯の数倍は強いだろう。
堀北兄は、わざわざオレの横を通り過ぎ、闇へと消えていく。
「上のクラスに上がりたかったら、死にものぐるいで足掻け。それしか方法はない」
なに、そのかっこいい去り方。今度真似してみよう。それにしてもそっちって…。
「兄さん、寮は反対よ」
堀北兄が真っ赤な顔で再びオレの横を疾風のように横切って走り去っていった。真似する時は方向に気をつけよう。
「お前の兄さん、あれ、相当強いだろう。殺気とか半端なかったし」
「ここに来るまでは空手5段、合気道4段だったわ。でもなんだかもっと強くなっているみたい。流石兄さん」
あの力はここに来てから3年で付けたのか。思ったよりここのカリキュラムってハードなのな。
「綾小路くん。あなたも何かやっていたでしょう。兄さんの攻撃を受けても平気なんて頑丈すぎるわ」
「言っただろう、ピアノと茶道をやってたって。あと頑丈なのはミスターサタン道場の通信講座のおかげだ」
「さっきは書道って言ってたわよ」
「…書道もやってたんだ」
「貴方…「あれ、堀北さんもいる?」…チッ」
「孫悟飯か」
寮の方から孫悟飯がこっちに向かってきていた。
「どうしたんだ、こんな時間に」
「いや、それは僕のセリフだと思うけど。えーと、そうだ、なんか大きい音がしたから様子を見に来たんだ」
どうやらさっきの音は存外に響いていたようだ。もしかしたら警備員とか来るかも知れない。早いところ戻ったほうが良いな。
「堀北。そろそろ帰るぞって…」
堀北がいたほうを見るとそこにはおらず、すでにスタスタと寮に向かっている。いくら嫌いな相手でも挨拶ぐらいしたほうが良いぞ。そんなんだから友達できないんだぞ。オレと違って。
「あ、堀北さん待って!」
孫悟飯が掘北を追いかけて何やら話しかけている。
「私を騙すつもりね。なんて卑怯なの。その手には乗らないわ!」
堀北の怒号がこっちにまで届いてきた。オレは孫悟飯に殴りかかろうとする掘北を慌てて止めて孫悟飯を先に帰らせる。
「おい、堀北。一体何を言われたんだ」
「クッ!あの卑怯者は私にテスト範囲が違うって騙そうとしたのよ。きっと別の所を勉強させてあの馬鹿たちを退学にして私の責任にするつもりなんだわ。そんな幼稚な手、引っかかるとでも思っているのかしら!屈辱だわ!なんで兄さんはあんなのを…」
歯をギリギリ軋ませて顔を怒りに歪ませる堀北。怒るならもっと可愛くプリプリと怒ってくれ。女の子の幻想が崩れるだろう。
それにしても、テスト範囲か…。
翌日、オレは朝一番で茶柱先生にテスト範囲のことを聞いて本当のことだと判明したが、他言を禁止されてしまった。解せぬ。
その後、テスト前日に茶柱先生に爆笑されながら「孫が言ったテスト範囲変更は本当のことだぞ」と伝えられて惚ける堀北のポンコツさがちょっと可愛いと思えてきましたマル。
前回、次からは2巻に入ると言ったな。あれは嘘だ。
決して2巻部分の執筆が遅れてるからではない。それも嘘だ。
次回こそは…。
とうことで中間テスト期間の綾小路くんサイドの話です。
ノリと勢いで書き上げました。割と楽しかったです。
戦闘力設定
綾小路くん 1万
堀北兄 1500
堀北 4
昼間の櫛田(太陽で弱体化) 20
夜間の櫛田(ダーク櫛田) 200
孫悟飯(通常時) 20億
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