悪の総統は楽しそうです   作:希望の踏み台

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悪の総統は楽しそうです

 

 

 

「ひゃっほー!!」

 

 屋上からパラシュートを開いて飛び降りた先にいたのは、Dクラスの問題児こと高円寺六助だったので、王馬はすかさず声を掛けた。

 

「ヤッホー高円寺ちゃん! 今日もいい天気だね!」

「おや、クレイジーボーイじゃないか。君は随分と楽しそうにしているねぇ」

「高円寺ちゃんに言われたらおしまいだなぁ。これぐらいなら怒られてクラスポイント減少で済むからへーきへーき」

「こればかりは彼に同情せざるを得ないよ。すまないが、レディ達が私を待っているのでね。先に行かせてもらうよ」

 

 高笑いしながら高円寺六助は去って行った。

 王馬は先生に見つかる前に一度寮に戻って支度を済ませようと思い、駆け足で帰る。

 その途中、Bクラスの一之瀬帆波に出会ったので、ゴキブリの玩具を投げつけてやった。後ろで悲鳴が聞こえたが、それは聞かなかったことにしよう。

 

 食パンを咥えたまま自室を出て、エレベーターを使わず階段で降りる。遅刻のチャイムがなる数分前で少し焦っていたところDクラスの綾小路清隆の背中が見えたので、背後からドロップキックをかました。

 が、喰らう寸前で躱されてしまい王馬は地面に体を打ちつけた。

 

「いたたっ……おはよう綾小路ちゃん」

「……何度も言うが、背面からドロップキックをしないでくれ」

「とか言って、毎回避けてくるじゃん。こっちがムキになってもしょうがないじゃん」

「お前は今すぐ病院に行くべきだと思うぞ」

 

 少し辛辣なことを言われた王馬は、全く懲りた様子もなく強打した部分を摩りながら立ち上がった。

 王馬は制服を払い、世間話をしながら綾小路と登校することにした。

 

「そういえば、どうして食パンを咥えたんだ?」

「みんな一度はやるでしょ? 食パンを咥えた美少女と衝突しようとするやつ」

「お前が咥える側でどうするんだ。それに、食パンはあのままでいいのか?」

 

 地面に放置された汚れた食パンを指差しながら言った。

 

「んー、まあ大丈夫じゃない?」

「流石にダメだろ。そこはちゃんと始末すべきだ」

「ちぇっ、やれやれ。これだから鈍感系主人公は」

「? 何の話だ?」

「分かってるくせに。チクショウッ!!」

 

 

 

 

 ──────────────

 

 

 

 王馬はCクラスの教室に入り、元気に挨拶をすると早速龍園翔に問い詰められた。

 

「おい王馬、お前今度は何をした」

「おはよう龍園ちゃん。どうしたの? 額に青筋なんか浮かべてさあ」

「とぼけんじゃねーよ!! 何屋上から飛び降りてんだよ!!」

「やっぱりバレてたかー。いやーゴメンゴメン! つい、出来心でやっちゃったよ☆」

 

 そう言うと、龍園は近くにあった筆箱を王馬に投げつけた。王馬はそれをひらりと回避して反撃用に用意していたパイを龍園の顔面目掛けて投げつけた。

 が、龍園はそれを避けて王馬に更なる攻撃を仕掛けてきたので王馬は咄嗟に煙玉を出す。そしてそれを使う……と見せ掛けて相手の動揺を誘い、防御が手薄になり油断したところを二つ目のパイでトドメを刺した。

 龍園の顔はパイで汚れて、クラスではどこかしらクスクスと笑い声が聞こえてきた。龍園はアルベルトからタオルを貰いパイを拭き取ると笑い声のした方を睥睨し一瞬で黙らせた。

 

「にしし……今日はオレの勝ちだね」

「次は俺が勝つ。今日の件については次の試験で成果を出せばチャラにしてやる」

「さっすが龍園ちゃん! 分かってるー!」

「……チッ、お前が単に馬鹿だったらそのムカつく面を凹ませられたのによ」

 

 結局、龍園は王馬に一杯手を食わされた形で事を終えた。

 

 

 入学当初、龍園はCクラスの王になると宣言した時、王馬と勝負をして惜しくも負けてしまった。それにより王馬はCクラスの王となった……なんて事はなく、お互い対等な立場として関係を築くことになり、事あるごとに喧嘩を吹っ掛けてはしてやったりやられたり。そんな日々が続く中、龍園はクラス内での威厳が保てず王馬に負けた時嘲笑されたりもするが、案外それがいい感じにクラスの雰囲気を作り上げていたりもする。

 ので、クラス内でのいざこざは少なく、試験の際は王馬もしっかり龍園に協力してくれたりもするので他クラスからは厄介な存在だと思われている。王馬と龍園の相性は最悪だが、コンビネーションは抜群なので本気を出せばAクラスにのし上がるのは夢のまた夢でもなかったり……。

 

 

 チャイムが鳴ると、みんなはそれぞれを席に座り担任から特別試験の内容を言い渡された。

 今回の特別試験は『クラス内投票』と言ったクラスの中から一人退学者を決めろという余りにも意味不明かつ理不尽なものであった。

 Cクラスの面々はそれを聞いた瞬間、真っ先に王馬小吉の名が心の中に思い浮かんだが、敢えて口には出さなかった。言わなくても一致する、まさに以心伝心の状態であったからである。

 

 担任の説明が終わると、みんなは一時間目の授業の準備に取り掛かった。

 王馬は龍園の側に駆け寄り、試験について話しをする。

 

「ねえねえ、龍園ちゃんは誰に投票する?」

「決まってんだろ。てめぇしかいねえよ」

「えぇー。オレはそこのツンデレステゴロ女がいいと思うけどなぁ」

「誰がツンデレよ!! 誰がっ!!」

「ステゴロも否定しろよ!」

 

 伊吹澪は王馬の胸ぐらを掴み睨めつけた。ツンデレしか否定しない伊吹に石崎大地は呆れ顔で突っ込んだ。この二人、芸人としてやっていけるのではと王馬は密かに思っている。

 

「それにしても、困りましたね龍園さん」

「ええ、そうですね。私はまだ退学になんてなりたくありません」

「クク、安心しろひより。お前を退学させる奴は俺が返り討ちにしてやる」

「綾小路ちゃん相手だと、すんなり負けると思うけどなー」(小声)

「ひよりの前だ。余計なことを言うんじゃねえ」

 

 龍園にそう言われた王馬は生返事をして自分の席に戻った。

 

 これから始まる新たな試験。他クラスの動向を推測しながら今回も楽しくなりそうだとほくそ笑む悪の総統が一人、この実力至上主義の教室にいた。

 

 




思いついたので書きました。後悔はしていません。
個人的に王馬と龍園って絶対面白い組み合わせだと思うんですよ。坂柳VS王馬の煽り合いも見てみたいものですね。

因みに、単発モノなので続編はありません。
御閲覧頂きまして誠に有難う御座いました。
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