1-1 スタートステップ
これは今から1年前のことだ。その頃の俺は親しい友人達と共に雑談に興じていた時、その時の友人の一人がこのような問いを投げかけてきたのだ。
『人は平等であるか否か』
その問いを聞いた瞬間、俺はコンマ1秒にも満たない速度で答えを脳が叩き出し、その答えを即座に口に出していた。
──平等に決まってるだろ。
その理由は明白だ。何故なら人とは過程はどうあれ終着点は等しく無であるのだから。……決して脳内に括弧つけた某裸エプロン先輩の姿が見えたからそう答えたとかそんな理由ではない。
その理由を聞いた他の友人達は納得していたが、その後にそれぞれの考えを述べていた。彼らのいっていることは俺の意見とは違ったが、それでも納得のいくものだった気がする。
しかしいきなりこんな日常のワンシーンが頭に浮かぶなんて、どうやら俺の中の†
俺がこれから3年間過ごすことになるであろう場所、東京高度育成高等学校へ。
◆
「Bクラス、か。誰だっけな、BクラスのBはバカのBとか言って笑ってたの」
俺だったわ。
といった感じで俺はくだらないことを考えつつ、自身に割り振られたクラスであるBクラスの教室へと向かっていた。
すると、背後から突然何者かに肩を叩かれた気がしたので振り向くと、俺の頬に人差し指らしきものが触れるのがわかった。
……要はあれだ、肩叩いてほっぺをツンツンするやつだ。
そんな事をしでかした下手人に向かって俺は文句を告げる。
「……入学早々何すんだよ」
「ごめんごめん。見知った顔があるものだからつい、ね」
「人違いだったらどうするつもりだよ……」
てへへと表情を一切変えずにふざけているこいつは、俺の中学校時代によく遊んでいた友人の一人で、事あるごとに人のほっぺにツンツンしてくるはた迷惑なやつだ。
「そういえばクラスは?」
「Bだ」
「あっ、バカのBじゃん」
「こいつ……っ!」
俺がさっき口に漏らしていた言葉を言いやがった。おかげで数人程度こっちの方を見てきたような気がするが、まあ気にしないようにしておこう。ひとまずは相手方のクラスを知っておくべく、俺はこいつに問いかけることにした。
「お前は?」
「Aクラスだって」
「成る程アホのAか」
「言うと思った」
視線の数が増えたような気がするが、気にせずに無表情のまま笑っているこいつと共にそれぞれの教室へと向かって歩く。
◆
Bクラスに入った俺は取り敢えず自分の席に座り、さて次はどうしようかと思案し始める。
というのも、俺が教室に入った時点で既にいくつかのコミュニティが形成されており、俺もそこに入りにいくべきかどうか悩んでいるところだ。
これが俺の性格がもうちょっと社交的だったら、あるいはお気楽度数
ともかく、俺の中のコミュニケーション能力を司る機関は既に休暇に入っており、このままでは確実に教室の隅で静かに本を読むだけの
それを回避するために、俺はなけなしの勇気を振り絞って席を立ち上がり、近くで談笑している3人の男女に声をかけた。
「楽しそうだな。俺も混ぜてくれないか?」
「いいよー」「だめー」「嫌だといったら?」
「えぇ……(困惑)」
今の俺の表情を見たら困惑と顔に書いてあるかの如く俺は困惑していた。それはもうマキシマム困惑していた。困惑しすぎて困惑するほどには困惑していた。
そんな俺を見かねたのか、駄目と言ってきた少女が笑いながら口を開いた。
「嘘嘘、冗談だよ」
と言ってきたので、なんだ冗談かとホッとしつつ、もう1人を見る。
「ごめんごめん、どんな反応がするか気になってな」
「そ、そうか」
どうやら俺をからかっていただけのようで、目の前の青年は人当たりのいい笑顔を浮かべてこちらを見つめてきた。
すると唯一いいよと言ってくれた少女が俺に向かって声をかける。
「そうだ、自己紹介しようよ! 私は
元気よく最初に名乗りを上げたのは、薄い桃色のロングヘアでスタイルがいい少女、一之瀬だった。恵まれた容姿をしており、人受けが良さそうだなと思った。
「私は
「そうなんだ! 釣りが趣味ってなかなか珍しいね」
「釣り糸を垂らして静かに魚を待っているのが落ち着くんだ。機会があったら一緒にやろうよ」
次に名乗ったのは、長い緑色の髪をピンクのヘアゴムで纏めている、同世代と比べたら小柄な少女である篝だった。まだ幼さが残っているその顔とか胴体とかは一部の紳士には需要がありそうだ。
そんな事を考えていたら、残っていたもう1人の男子生徒から声をかけられた。
「今おまえ割と不埒な事を考えたな?」
「え? いや、決してそんなことはない」
すみません、普通に不埒な事を考えていました。
しかしそんなことを素直に表情に出したら命中30の一撃必殺な目線が飛んでくる気がするのでなんとか『またオレ何かやっちゃいました?』と言わんばかりな表情を浮かべる。
「そうか、いきなり悪かったな俺は
「わかった。ユートだな? これから宜しく」
もう1人の男子生徒であるユートは、濃いめの紫髪の天然パーマというべき髪型と、黒縁の眼鏡が特徴的な男だった。細身の体型と眼鏡が相まって、理知的な人物といった印象をつけられた。
そして他の面子が自己紹介し終えたので俺も自己紹介すべく口を開いた。心なしか緊張してきたが、それでも俺は臆せずに自己紹介を始めた。
「俺は
「「「じゃあソウ(君)で」」」
なんとでも良いと呼んだら揃いも揃って俺のことをソウと呼ぶことにしたらしい。どうやらこいつらのコミュニケーション能力は俺のそれを遥かに凌駕しているらしい。妬ましいことだ。
さて、自己紹介も終わったことだし少々コミュを形成していくか。
「にしても、さっきまで随分と楽しそうだったけど何を話してたんだ?」
と先ほどまで話していた話題に関して聞いてみると、篝が俺に対して答えてくれた。
「さっきまではユートが面白い雑学を話してくれていたんだ」
「雑学?」
俺が聞き返すと、ユートは頷いて口を開いた。
「例えばそうだな……1円玉ってあるだろ? あれって実は一枚作るのに2円かかるらしいぞ」
そうだったのか、全く知らなかったな……てか1円作るのに2円かけてるってそれは……
「ただのアド損*1じゃねぇか」
「だよね〜私もそれ知った時そう思ったもん」
一之瀬が俺の言葉に同意し、篝とユートも頷いているところどうやらそう思ったのは俺だけじゃないらしい。
──一緒に過ごすことで絆が深まった気がする。
その後は適当に雑談を続けて、このクラスの担任の先生が来るのを待っていた。因みにその後も雑学語りは続き、その中でも特に印象に残ったのは割れ物とかを包んでるあのプチプチの正式名称は気泡緩衝材だということだ。
ここまで呼んでいただきありがとうございます。感想、評価等してくれるととても気分がハイになるのでよろしくお願いします。
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未読です(買ってきて♡)