──定期テスト。それは俺たち学生にとっては忌むべきものであったり通過点であったりと、何らかの形で意識せざるを得ないモノ。
ある者はこのテストで地獄を見ないように必死こいて勉強したり、逆に地獄から目を逸らして娯楽という名の現実逃避に走る者もいるだろうし、このテストで自分の実力を知らしめたりするような者も居るだろう。
そしてこの俺こと芽吹創は、今の今までに一度として勝つことがなかった相手である由良や、中学時代の青春を共に駆けた俺の元彼女の魅音、夜になれば拳を振り上げる問題児のひなたの3人と、誰が最も点を取れるかという、学生によくありがちな勝負で自分の力を知らしめようとしていた。
俺はポイントを使用しない生活を極力送っている都合上、どうしても余りがちになる放課後の時間全てを費やしてこの数日間猛勉強した。筆舌し難いあの内容を猛勉強という3文字で片付けてしまえるのは不服だが、とにかく猛勉強した。そして、その間に俺のもう一つの武器である人脈を使って、苦手科目の対策に取り組み、さらには“切り札”を用意していた。これだけの材料が揃えば、俺の勝利は確定的と言えるだろう。
対して他の3人はどうかというと、魅音は持ち前の頭脳を使ってひたすら自己研鑽に励んでおり、さらには“秘密兵器”を用意したようだ。由良はというと、勉強に関して不安な点が無いらしく、さらには“禁じ手”などを用意する事で自分を完璧に仕上げ、さらには姑息な事に俺たち他の3人の妨害をしてきたのだ。最後にひなたは魅音から勉強を教わりつつ、なんやかんやあって“最終兵器”を用意したそうだ。
どうやら全員何かしらのビックリ要素は用意してきたらしいが、俺からすれば誰が最早何をしようと関係ない。ただぶっちぎりで頂点の座を戴くのみだ! そうお思いながら、俺は目の前の空欄を埋めるためにペンを走らせた。
結論から言おう、4人全員満点でこの話は流れた。
◆
「「「「イカサマ(ー)だ! イカサマをしたな(ー)!」」」」
ひなたの部屋のテーブルを間に向かい合う俺たちは、互いに指を指し合いながら大声を上げていた。全員が全員何かしらの不正をしたのだと確信しての所業だった。
「いや、いや。百歩……違うな、万歩譲って由良が満点なのはいい。それにしたっておかしな気もするが、それよりかはひなたが満点を取ることの方が怪しい!」
「確かに、最後にやった勉強会でも数学の応用問題を汗水垂らしながら必死こいて解こうとして、結局は不正解だったひなたが満点というのは、ちょっと信じられない」
「何だとテメェら! 特にソウ! お前散々変更されたテスト範囲に苦戦してやがったよなぁ? 前日なんて話しかけてきた奴ら全員無視してまで教科書と睨めっこしてたらしいじゃねぇか。それも世界が終わったような、今にも死にそうな面だったそうじゃねぇか」
「前回のテストは小テストだったから納得がいくけどー、科目ごとのテストでーソウが最も苦手な暗記分野の地歴も満点って言うのはー怪しく見えるかなー」
「「……んだとごらぁ!」」
そんな感じで始まった世にも醜い言い争いは十数分にも渡ったのだが、ぶっちゃけ全員最初から答えがわかっていたので、誰から折れるかというだけの本当にしょうもない争いだった。
この不毛な争いに終止符を打ったのは、現時点で1番環境が優れている者である、世蔵魅音だった。
「……まあ、ここまで無駄に話してきたけどさ、もう聞くよ? どうやって手に入れたの? 私は3年生から貰ったけど」
「2年生からー」「クラスメイトから」
「生徒会長から」
「「「……生徒会長から(ー)っ!?」」」
どうやら全員別々の手段を用いて例のブツ、テストの過去問を入手したわけである。尚各々話を聞いてから推察していくと、まず由良のクラス──Cクラスが最初に集団として動き始め、上級生から過去問を入手する事に成功したのだが、その事を風の噂で聞いた魅音はAクラスの面々を含む他生徒全員を出し抜くために過去問入手に励んだ。その間に俺はしれっと過去問を入手し、ひなたはDクラスの誰かが入手した過去問をテスト前日に配布された。
「……てか由良。お前Cクラスの情報漏らして大丈夫なのかよ? 下手したら龍園とか言う猿山の大将気取りの野郎に何かされるんじゃねえか?」
「心配ないよー。私の方がー多分強いしー」
ただし日光のない場所に限る、と言う言葉を由良は付け足すべきだと思う。字面だけ見たら吸血鬼だなこりゃ……
「てか他の連中もどうなんだよ? そんな他クラスも有利になる事をベラベラと喋って大丈夫か? 油断してると俺たちDクラスがアッサリ首位を持ってくぜ?」
「乗り気じゃないくせによく言うねー。本当はAクラスになる利点がないからどうでもいいとか思ってるんでしょー?」
「身内のコネで就職するつもりだろ? マジでセコいなコイツ」
「他のみんながさっさと上り詰めるために頑張っているのに、1人だけ裏道ゴールするのは本当に姑息。恥を知ったら?」
「うるせぇ! お前らも大体そんな考えだろうがっ!」
「「「当然(ー)」」」
その後はギャーギャー騒ぎ立てるひなたを抑えたり、由良が悪ふざけをしてひなたの顔に落書きしたり、それを見た魅音が無表情で肩を震わせていたり、この光景のカオスさに軽く頭痛を覚えたりと、兎も角さまざまなことがあったが、まあ特に語ることでもないので割愛しておく。
──一緒に騒いだことで絆が深まった気がする。
◆
あの後色々話をしてから解散という流れになったので、俺は寮の自室に戻る前にスーパーで何か買い物をしようと思った。と言っても買い物をするのは0ポイントの食材だけだ。ポイントを持っていないんだからしょうがないなーうん。
「まあ明日にはポイント振り込まれるんだけどな」
「
普通に返してきたのは、買い物に同行してきた魅音だ。因みに由良はまだひなたの部屋に居座り、ひなたと何かするらしいけど俺の知るところではないので割愛させてもらう。
「ナイナイ。ウチのクラスメイトは全員優等生だぞ?」
「ソウを除いてね」
「おい!」
軽く戯れ合いながらも、俺たちは目的地のスーパーへと辿り着き、それぞれの籠にそれぞれの買いたいものを入れていった。
その最中、珍しく無料のプランがあったので手に取ろうとするも、同じくプリンを取ろうとしていた魅音の手と重なり合って睨み合いなったりと言うこともあった。間違っても頬は赤らめると言ったアオハル的展開は無い。
「悪いな、これもじゃんけんの結果だ。諦めてくれ」
「あそこでチョキをパーにしてれば」
「たらればの話はやめとけ。そんなのやってたらキリがない」
上機嫌になりながらも店内を巡っていく。今日は幸運なことに、結構状態のいい無料食材が置いてあった。いつもはもっと形が悪かったり消費期限秒読みだったりととんでもないものばかりだったので、余計にそう感じる。
「いつも思ってるんだけど、その0ポイント生活っていつになったら終わるの?」
「まあ限界を感じるまではやってみる。ただまあ、最後の一月くらいはパーっと盛大に浪費したいとは思ってる」
「わかる」
最後の一月は何しようか。まずは最新のゲーム機を買って遊んでみるのもいいし、ちょっとお高めなサ店やレストランで美味い飯を食って、あとはポイントがない可哀想な奴らを跪かせてみるとか色々やってみたいことはある。……その為にもいつか一之瀬からポイントを取り返す手段を考えないとな。
「最後の一月、私は4人で盛大なパーティでも開きたいかな」
「それなら、最後まで退学にならないようにしないとな」
「……そうだね」
相も変わらずの無表情ではあるが、心なしか魅音が嬉しそうに見えたのは、きっと見間違いではないのだろう。そんな彼女を悲しませない為にも、俺は退学にならないように努めなくては。そう心に決めた。
「おや、こんな時間に会うとは奇遇ですね」
「それにしても、今日は本当についているな。見ろよ魅音、豚肉もあるし鶏肉もある」
「え、あ、うん。確かに今日は幸運だね。けど、どっちか一つって書いてあるよ?」
だから悩ましいんだよなと呻きつつも、チラリと買い物カゴを見てみる。するとそこには、米と卵、それからネギが入っていた。これらの材料に加え、自室の冷蔵庫にひき肉があると言うことは、即ち炒飯を作れと言う神からの啓示と言えなくもない。
ならばこそ、炒飯と相性のいい料理で、男子高校生たる俺が好きなもの……唐揚げを作るべきなんじゃあないか?
「……一月経っても変わりませんね。まあ、構いません。それでは魅音さん、まだ明日」
「鶏肉にするか」
「……いいの?」
「ああ。正直色々後が怖いけど、今はこれでいいな」
こうして買い物を終えた俺たちは薄暗い夜道を通って、各々の部屋へと帰っていくのであった。
マスターデュエルとか言う神ゲーが始まってしまったので投稿が若干遅れてしまいました。そしてこれからも投稿頻度は不定期にはなると思います。
というわけで遂に単行本第一巻の内容が終わりました。次回からは単行本第二巻の内容に入っていこうと思ってます。
もしよろしければ感想、評価付与等お願いします。
この作品で現状1番好きなオリキャラ
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芽吹創
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篝京香
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浅乃悠人
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椎名ひなた
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世蔵魅音
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赫鐘由良