3-1 成果ゼロ
暴力というものは、最も安易な方法で人を傷つけることができる方法だと俺は思っている。世間じゃ心の傷だのなんだの云々言っているが、結局人は物理的な痛みというやつに弱い。
そして、この暴力というものは古今東西凡ゆる時代凡ゆる国で秩序という秩序を蹂躙し尽くしている。
故に社会は秩序を保つために個人及び暴力に法律という名の枷をかける。もしそれがなされていなければ、今頃俺は暴力至上主義の国でドンパチやっていることだろう。
この法という拘束力は、考え方には洗脳とも言い換えれるであろう教育という過程によって更に強固なものとなり、破ってしまう者はもはや目先の利益に囚われた者や感情を制御できない者、或いは抗えなぬ自分の
今の俺は時間の経過による精神的成長と、馬鹿でバカな奴や常に鉄仮面を被った奴、そして才能の無駄遣いに励んでいる
そう、あの時から俺は成長したんだ。中学の時の、先公を殴って病院送りにしたり舐めた口聞いたセンパイ共を病院送りにしたり他校の連中を病院送りにしたり気弱そうな奴から金品を巻き上げようとするカスを病院送りにしていたような頃とは違ってな。
「だから──今回は俺は悪くない! 何もやってねぇ!」
「嘘をつくなァァァァッ!」
◇
入学してから大体2ヶ月が経過し、月も変わったことなので6月となった。月が変わったといえば何を思い浮かべるかというと……そう、
ここまで0ポイントで頑張ってきた甲斐があった! これでまた1ヶ月0ポイントで頑張れる! そうウキウキしていた俺は、今日もまた一際早く登校してから昂る気持ちを胸に抱いて学生証カードを見た。
敷地内全面キャッシュレスを掲げる(特別掲げてない)この学園内において唯一お金を払う手段となり得る、所謂クレジットカードのようなものである学生証カードには月の初めに
そしてCPは同クラスに在籍する全員の言動によって上下するらしく、それ故に遅刻欠席居眠り雑談などを授業中に繰り返しているDクラスは最初の1000Pを一月で0にまで落としている。
最初の一月は仕様がよくわからなかったからというものや、特に学校側からプラスの評価をされるようなイベントも何もなかったから全てのクラスがポイントを減らしていたが、先月は違った。
一味も二味も違うこの学校のルールに順応するため、俺たちBクラスは一之瀬を委員長として一致団結する道を選んだ。そして互いが互いに減点されそうな要素を減らすために注意したあったり、CPを上げるために自己研鑽に励んでいたりしていた。
これだけでもポイントは上がっていそうだが、先月はそれだけではなく定期考査もあったのだ。それもクラスのほぼ全員がオール8割以上とかなりの出来ではないだろうか。
尤も、その定期考査において全問正解の満点獲得者は1年生の中に7人いるらしいが……まあ、特段気にする内容ではないだろう。その内に確定で4人が不正紛いのことをしていることも些事だろう。
兎も角、これで俺たちBクラスのポイントは上がっていると思っていた俺は、学校側からの1ヶ月の俺たちの評価を知るために学生証カードを見て絶句することとなった。
──所持ポイント0
俺は全てのポイントを一之瀬に預けて0ポイント生活なるものをしていた都合上、常に所持ポイントは0だった。だから月初めに所持ポイントを確認すれば、その時点でクラスポイントも簡単に逆算できるわけだ。だから、普通に考えるのなら俺たちBクラスのポイントは上がるどころか大幅に下がって0ポイントとなる。
……しかし、それは考えにくい。となると考えられるのは学校側のトラブルによってポイントが振り込まれていないという事くらいだろう。けれど、用意周到なこの学校で、そんなトラブルなど起きるだろうか?
悩みこそすれど、結局何かがわかったわけでも閃いた訳でもないので、ここは大人しく苦手な地理のお勉強をすることにした。
教科書や資料集にマーカーなどを引きながら読み進めていくと、教室のドアが開けられる音がした。
そちらの方へと目を向けてみると、篝とユートの姿があった。どうやら今日は2人できたようだ。
「おはよう、ソウ」
「相変わらず早いな」
「篝とユートか。おはよう」
ひとまず、キリがよかったのもあって俺はノートを閉じることにし、ポイントが振り込まれていないことについて2人に確認を取ることにした。
「そういえば、2人は今日ポイント入ってたのか?」
「いや、俺の方には入ってなかったな」
「本当? 私もポイント振り込まれてなかったんだよね」
「2人共か」
ということは、ウチはBクラスからCクラスに落ちてしまったのか、それとも学校側で何か不都合があったかのどっちかだろう。
その後俺たちは3人で今月どうするかなどと言ったことを話しながら、クラスのみんなが揃うのを待っていた。ちなみに、篝は買おうと思っていた釣具が買えなくなったと嘆いていたので、俺とユートはかがりを励ますことしかできなかった。
◆
「今日の伝達事項を伝えるね。みんなもうわかってると思うけど、実はトラブルがあって一年生にはポイントが振り込まれてないの。みんなには悪いけど、もうちょっとだけ待っててね」
「先生、そのことに関して質問いいですか?」
先生が伝達事項を伝え終えたであろうタイミングで、手を上げて尋ねたのは、我らが副委員長こと神崎だった。
「うん、どうしたのかな?」
「トラブルによって振り込まれていないことについての補填ポイント等はあるのでしょうか?」
「学校側から今回の件に関して補填のポイントを振り込むことはないよ。質問は以上でいいかな?」
「はい、ありがとうございました」
神崎の質問によって、どうやら所謂詫び石的なポイントはないということがわかった。このことは少し残念に思えるが、これをヒントに考えればトラブルがどう言ったものなのか推測できる気がした。
そもそも詫び石とはソーシャルゲーム等において、運営側の不手際によってユーザー側が被った不利益に対しての補填措置と考えると、それがないということは、学校側の不手際でないということが考えれるな。
そして先生は先程一年生“には”ポイントが振り込まれていないと言っており、裏を返せば2、3年生はしっかりとポイントが振り込まれているということになるだろう。
これらの推測をもとに考えを進めてみると、トラブルの原因というのは一年生の間で起きたトラブルであるということが推察できる。となれば、いったい誰が原因なのかというのは容易に想像できることだろう。
常日頃から暴力的な姿勢を見せるあの野郎こそ、今回の元凶に違いない。そう確信した俺は、どうやってあの野郎をとっちめるかということを考えながら授業の準備をし始める。
◆
時間が過ぎ去るのもあっという間で、気がつけば放課後になっていた。ひとまず俺はHRが終わると、すぐさま教室を出て、奴がいるDクラスの教室に向かおうとした。
すると、背後から何者かに右肩を叩かれる感覚があり、それに反応して振り返ると、またもや引っ掛かってしまったのか、魅音の人差し指が俺の頬にささった。
「…………」
「相変わらず引っ掛かってくれるね。学習能力足りてないんじゃない?」
うるさいと目で訴えながら、下手人である魅音を見ると、安心と信頼の無表情フェイズでじっとこちらを見返してきたので、しばし睨み合いになった。その睨み合いも数秒で中断させられるのだが。
「はいそこストップー。アツアツなのはいいけどー、TPOをー、わきまえてほしいなー」
「お似合いだなんて、そんな……」
「無表情でそれ言ってもシュールなだけだからな? ウケる」
由良の茶々入れに対して魅音は照れた仕草をし、俺はその魅音を見て鼻で笑うという構図が出来上がった。割といつメンが揃った気がするが、こいつらと茶番をするよりも大切なことがある。
「悪いけど、俺はもう行かせてもらう。今からDクラスの教室に行かなくちゃならないんだ」
「奇遇だね、実は私もそうなんだ」
「んー、多分私もそうかなー」
「てことは、目的地は一緒みたいだな」
それじゃあ一緒に行くかということで、俺たちは1年のDクラスの教室の前までやってきた。そういえば、自分から他クラスに行くことってなかなかないから新鮮だなと思い、扉を開けようとする手が緊張で少し震えてしまう。そんな俺を見かねてか、それともとっととあいつを引き摺り出すためか、由良は俺を押し退けて勢いよくDクラスの扉を開けた。
「ひーなーたー、ちょっと来てー」
間延びした声で由良がひなたのことを呼びかけると、教室内がざわめき立った。
主に男子の方から、僻みというか、妬みの視線を受けながらも、俺等3人と同じ中学出身のドアホことひなたが面倒臭そうな表情を浮かべてこちらの方へとやってきた。
「ったく、態々Dクラスまで何のようだ?」
「んー、取り敢えずーついてきてー」
とても堅気とは思えない様子で由良を睨むひなたに対し、睨まれている由良は怖気付く様子を見せずに、ひなたの制服を引っ張って連行して行った。途中何度かひなたは暴れていたが、やはり由良には勝てないのか、次第に抵抗をやめて大人しくついてくるようになった。
暫く歩き十数分くらい経った頃、俺たちは旧校舎へと訪れていた。こちらは人気が少なく、監視カメラがないそうなので、色々と悪用できるとは由良の言葉だ。
実際に周囲を見渡してみると、学内至る所にあった監視カメラは一つも見つけられなかった。勿論、隠しカメラがある可能性も捨てきれないので、監視カメラがないからとここで校則に触れるようなことをするのは危険だろう。
「……はぁ、こんなところに呼び出して何がしたいんだ?」
「そら何って、ナニよ」「何……ナニ?」
「オーケーお前らは黙ってろ」
あまりにも鬱陶しく思ったのか、青筋を立てながらこちらを睨んでくるひなた。そんな雰囲気だからこうやって疑われるのだろう。
「実はさー、この2人がー、ポイントが振られてない原因がー、ひなたにあるんじゃないかって思ってるんだよねー」
「……は? それマ?」
「「マ」」
困惑した表情のひなたに対し、俺と魅音の2人は揃って首を縦に振った。まあいきなり言われて困惑するのも仕方のないことなので、ここは懇切丁寧に説明してやるとしよう。
「トラブルでポイント配布されない。補填はない。振られてないの1年だけ。ドゥーユーアンダスタン?」
「そうだな……ひとまず1発殴らせろ。話はそれからだ」
「ファッ⁉︎」
あまりにもキレ散らかした
「それで、何か心当たりとかはある?」
「……いや、特にはないな。というか、真っ先に俺のところに来たお前らの信頼に涙が出てくるよ」
「前科だらけの野郎が何言ってんだか。何処の誰だっけ? 路地裏の不良全員ボコして一掃したの」
「ぐっ……」
「後は女子の着替えを覗きしてた教師を骨折するまで殴ってたね」
「うぐっ……」
「挙句の果てにはー、他校の不良をー完膚なきまでにーボコボコにしてたよねー」
「ぐはっ……」
流れるような口撃、俺じゃ見逃しちゃうね。
とはいえどう考えてもひなたの自業自得なので、†悔い改めて†もらうとしよう。
「というわけで何かやらかしたこととかあれば言ってくれ」
「……はぁー、俺は──」
◆
そして、冒頭部分の独白につながるわけだ。……自分で言っておいてアレだが、冒頭部分って何だ?
「んー、本当に何もないみたいだねー」
何が面白いのか、ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべながら言った由良の言葉によって、ひとまずこの場は落ち着くこととなった。
正直なところ割とノリとテンションと悪ノリだけで突っ走っているので、まあとりあえず絡みに行くか程度の考えで行っただけなのでこれ以上はやめておく。
「話も落ち着いたことだし、ひとついいかな?」
そう言って話を切り出してきたのは魅音で、何やら面倒ごとの気配を感じさせるような雰囲気を纏っていた。いつも思っているが、何故表情を変えずにそう言った雰囲気を出すことができるのか、甚だ謎ではある。
「どうしたのー」
「ポイントが配布されなかったけど、ひなたは大丈夫なの? Dクラスって先月の
魅音の疑問を聞き、確かにそろそろ厳しいんじゃないかとも思ったが、よくよく考えれば俺がここまでポイントを使用せずに生活できているから大丈夫だろう。
「まぁ、確かにそろそろきついかもな。最悪俺も山菜定食とか頼ったほうがいいかもしれないレベルだ」
「マジ? 最初の10万はどうしたんだよ」
「……お前と違ってサ店だのカラオケだの行ってたから色々と金がかかってんだよ」
いや、カラオケとか別に行かなくてもいいだろう。
俺もクラスメイトから度々カラオケ等に誘われることもあるが、ただ歌うためだけにポイントを使うくらいなら浪費するポイントと時間を勉強やら運動やらに充てたほうが余程有意義だと思う。
べ、別に俺が(自主的に)禁欲的(?)な生活をしてるのに他の奴らが呑気に遊んでるのが妬ましいとかお、思ってねえし?
「本当にきつかったらー、いつでも言ってねー。最悪の場合ー、私がポイントあげるからー」
「……最悪頼るかもしれん」
「「え? 同級生から
「おい! 声ハモらせて言うんじゃねぇ! 確かに自分でも思ったけどなぁ!」
「側から見たらー、事案って奴だよねー」
──馬鹿みたいな話をして絆が深まった気がする。
高度育成高等学校在学生データベース
氏名:赫鐘由良
クラス:1年C組
部活動:無所属
誕生日:10月31日
評価
学力:A
知性:B+
判断力:A
身体能力:B -
協調性:D -
面接官からのコメント
学力、運動面に関しては非常に高い水準を小、中学で保ち続けたその能力からAクラス配属が妥当かと思われるが、欠席率の高さや、学外で起こされたとされる数多くの問題行動を鑑みて、Cクラスにて改善を望む。
担任メモ
特段問題点などを見受けられないので、その能力を活かしてCクラスを支えることを望みます。
大変遅くなりましたが、失踪はしていません。
仮に番外編(ifストーリー)を書く場合のネタ
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オリキャラ達が本編と別クラス√
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オリキャラ全員集結√
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ネームド+オリキャラ全員集結√
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Bクラスギスギス√
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芽吹君不在√