昼休みが終わってからも授業は続く。とはいえ初回の授業ではどの教科もやはり進むことがなく、午後の授業も方針を伝えるだけで終わり、放課後となった。
今日はどうやって過ごそうと考えていたら、不意に昼休みの時に流された放送の内容を思い出した。
部活動の説明会。
そのことを思い出した俺はふらりと散歩でもしようかなと言う数刻前に浮かんだ考えをすぐさま投げ捨て、すぐさま体育館へと向かった。
別に特段部活動に参加したいわけではないが、面白そうな部活とかないかな、なんて軽い気持ちで行ってみることにしたのだ。
すると道中、背後から声をかけられた。
「ソウ、お前も説明会に行くところか?」
声をかけてきたのはユートだ。どうやらユートも説明会に興味があるらしく、ちょうど向かっているところだったようだ。
聞かれたことに対して俺が頷くと、ユートが「それじゃあ一緒に行かないか?」と提案してくれたので、俺は「良いな、それ。一緒に行こうぜ」と返答したことで、2人で向かうこととなった。
◆
「──以上で美術部の紹介を終わります」
結論から言って、残念ながら俺の琴線に触れるようなものはなかった。今紹介されたばかりの美術部を除いては。
昔からの絵を描くのはそこそこ好きで、中学の頃に美術部に入っていたことがあったから、高校でも美術部に入ろうかどうか悩んでいたところ、説明を聞いてみるととても入りたい気持ちになった。
どうやらこの学校の美術部は著名な画家を講師に招いていたり、毎年数人の生徒が何かしらの賞を受賞していたりとかなり魅力的な要素があった。
だからといって、すぐに美術部に入りたくなるかどうかは別問題である。
確かに入りたい気持ちはあるが、いざ美術部に入れば画材だななんだので色々とお金……ポイントが掛かることは目に見えている。
なんとなく嫌な予感がしてポイントは貯めているが、ここで部活動のためにポイントを切るかどうか、俺はそこで揺れているが故に美術部に入るかどうか葛藤しているのであった。
すると、隣で今まで話を一緒に聞いていたユート*1が「何か入りたい部活でもあったか?」と声をかけてきたので、「現状は美術部に入るかどうか検討中ってところだ」と返せば、「そうか、美術部か」とつぶやいていた。「そう言うお前はどうなんだ?」と今度は俺が質問すると、数秒の間を開けた後に、口を開いた。
「俺は特になかったな。まあ気が変わったらって感じだな」
「そうか」
と短く返して、壇上の方に目線を向ける。
先程まで様々な先輩たちがそれぞれの部活動の内容について語っていた場所に、1人の男子生徒が静かに佇んでいた。
既に数分が経過しても始まらないので、数人の生徒たちは「カンペ持ってきてないんですかー?」などといったヤジを飛ばしていた。俺も一瞬ヤジを飛ばそうかと思ったけどやめておいた。そんなことをしたらこの先に痛い目を見るような気がしただ。
最初はその先輩を揶揄うような声はいくつも上がっていたが、ノーリアクションのまま時間が経過すると共に、萎えてきたのかヤジはいつしか上がらなくなっていた。
それを見計らったかのように先輩は俺たちに向かって語り始めた。
「私は、生徒会長の
──生徒会長。それは全ての生徒の頂点に立つ存在であり、学校という環境において絶対的権限を持つ者だ。
もちろん全部の学校の生徒会長がそうだとは思わないが、少なくとも俺の中学校ではそうだった。そして多分この学校でもそうなのだろうなと、生徒会長の話をぼんやりと聞きながら漠然と考えていた。
生徒会長の話していた内容は生徒会の勧誘といったものだが、どうやら生半可な気持ちで行くことはダメらしい。この学校は進学校、意識高い系の学校だから、生徒会も意識高い系のものだと言うことだろう。
正直生徒会というものに興味はなく、思ったのはせいぜい
ふと気になって、隣に座っているユートの方をチラリとみると、真剣な眼差しで生徒会長の話を聞いていた。生徒会に入りたいのだろうかと思い、生徒会長の話が終わって少ししてから声をかけてみた。
「なあ、随分と真剣に話を聞いていたけど、もしかして生徒会に入りたいのか?」
「ああ、叶うことなら入りたいな。そういうお前はどうなんだ?」
「興味ないね」
聞き返されてしまったので即答しておくと、「お前はどこの元ソルジャーだよ」とツッコミを入れられてしまった。
──一緒に過ごしたことで絆が深まった気がする。
◆
あの後ユートと別れた俺は、日が落ちつつあるというのにも関わらず、学校の敷地内にあるホームセンターだのスーパーだのといった店を片っ端から見て回っているところだった。
いろいろな店を見て回ってきたが、どうやら食品類や歯ブラシ等の生活必需品は一部が0ポイントで置かれている店がいくつもあった。しかし、普通に学校で過ごす上では全く必要のない本や絵具、私服などは何軒回ってみても無料で置いてある店は一切なかった。
本に関してはまだ図書館がある為まだ不自由はあまりないかもしれないが、それでも他の娯楽物はポイントを支払わなければ入手することは不可能なようだ。
そう結論づけた俺は、途中にやった店の食品等を詰めたレジ袋を持って寮へと戻ることにした。
その道中、眼鏡をかけた知的な印象と、近寄り難さ感じさせる男子生徒──生徒会長の堀北先輩と、おっとりとした雰囲気で、所謂お団子ヘアの女子生徒──生徒会書記の
「お疲れ様です! 生徒会長!」と言って挨拶するような関係でもキャラでもないので、ひとまずは邪魔にならないように端の方によって軽く会釈をしておく。
通り過ぎたことを確認してから俺は自分の寮へと戻る為にまた歩き始めるタイミングだった、背後から威厳を感じる冷徹な声が聞こえてきた。
「待て。見ない顔だな、一年生か?」
声をかけられたので振り返ると、こちらのことを値踏みするかのように見てくる生徒会長と、「どうしたんですか?」と困惑している書記の姿が見えた。
どう返そうかと考えたが、特に嘘をついたり黙っていたりする必要もないので、「はい、そうです」とだけ返しておいた。……生徒会長のあまりの威圧感に、自分の声が裏返らなかったからどうか心配だったが、杞憂だったようだ。
「入学して2日で何故そこまで
堀北先輩の言葉を聞いた橘先輩は「え?」と疑問の声を漏らして、俺の持つ荷物をチラリと見て「あっ」と声を漏らしていた。俺の持つ荷物は無料の商品ばかりで、そのラベルが貼られている商品もかなり入っていたから驚いたのだろう。
しかし何故と聞かれてしまったか。YES NOで答えれる疑問文ならまだ簡単だが、WHYで聞かれてしまうと返答するのがとても難しく感じるのは俺だけだろうか。いや、俺だけではない。
……くだらないこと考えてないで大人しく質問に答えておこう。
「理由は至極単純です。
「ほう?」
理由を答えると続きを催促されたので、俺は更なる理由を答え始めた。
「この学校では最初に10万ポイントが配布されました。これを使えばよほど無駄遣いをしない限りは数ヶ月は持つでしょう。それに加えて毎月ポイントを振り込まれるとなれば生活するには困りません。ですが、初日にコンビニで発見したこれらと同じような、無料の商品。これを見て俺は思いました」
──もし他にも無料のものがあれば、0ポイントで生活できるのでは?
──それができたらポイントを節約できてお得なのでは?
「そう考えた俺は今日、色々な店を巡って無料の商品を探し、そして見つけて買った(?)ものがこれらというわけです」
俺の素晴らしい理由を聞いた2人の反応はというと、橘先輩はなんとも言えないような微妙な表情を浮かべている一方、堀北会長はニヤリと笑みを浮かべていた。すいません会長、怖いです。
「成る程、なかなか面白い理由だ。お前の名前は?」
「一年Bクラス、芽吹創です」
「ならば芽吹、お前に1つ問わせてもらう。お前はこの学校のポイント制度についてどう思っている?」
堀北先輩の質問を聞いて、いったいどういうことだと思い考え始める。
この学校のポイント制度、つまりは今俺が所持している現金がわりのポイントのことだろう。ただふわっとしたことを言うと、凄いなとしか思わなかったが、昨日今日で見つけた様々な節約できる要素、あとは昨日ひなた達が言ってたことを思い出し、それらを踏まえて考えると、やがて一つの答えに辿り着いた。
「……凄い制度ですね」
「何故そう思った?」
結局は凄い制度だと思った俺の言葉に興味深いと言った雰囲気で聞いてくる堀北先輩に対して、先ほど叩き出した完璧な答えを語ることにした。
「これは俺の友人が言っていたことなんですが」と前置きしてから俺は話し始めた。
「初日に振り込まれた10万ポイントというのは、あれはあくまで現時点での俺らの評価であって、上下する可能性があると言っていました。これを元に、無料商品でポイントを節約できた場合のことも考えると、個々人の実力差が出て、最終的に
アドと評価の両方を稼げた者は大量のポイントを保有し、逆にポイントを浪費し評価を落とした者は所持するポイントがどんどん減っていくというのが、このポイント生活が引き起こす現象だと俺は判断した。
チラリと堀北先輩の顔を見てみると、何やら感心したような表情を浮かべていた。隣の橘先輩も驚いた表情をしている辺り、どうやら俺の回答はいい線いっているみたいだ。
流れが来ているようなので、畳み掛けるように、俺は自分の意見を締め括ることにした。
──これらがさすことはつまり……
「このポイント制度は──無料商品を多く見つけれた人がすごいってことですね!」
最後の最後で何かがずっこける音が聞こえた。
◆
(そういえば資料で見たことがあったな。面接試験において、途中過程までは割としっかりしているものの、最後の最後でふわっとした答えを出した者がいたと。ついでにいうと、“諸事情”によってBクラスになった生徒がいたと。もしかしたら……いや、もしかしなくてもこの芽吹という生徒のことだろう)
何やら考え込んでいる生徒会長を前に、俺はそろそろ帰りたいなと思っていた。いい加減手に持っている荷物を自室に置いて楽になりたいからだ。
今までずっと荷物を持ちながら受け答えしてたけど、腕が疲れてプルプルいってきてる。そろそろ限界かもしれない。
そう思っていたら、考えがまとまったのか、ようやく堀北先輩がフッ、と笑いながら口を開いたのだ。
「普通の生徒ならば10万という学生には多すぎる大金に浮かれ、多少知恵が回る者は無料商品をヒントにポイントの核心に迫っていくものだが──まさか無料商品そのものに注目するとは思いもしなかった。どうやらお前はなかなか変わった視点を持っているらしい。橘、まだ書記と庶務の枠が空いていたな?」
「はい。現時点ではまだ希望者は現れてはいません」
「芽吹、もしお前が生徒会を希望するのなら歓迎するぞ?」
「会長!? いきなり何を!?」
これは生徒会に誘われていると言うことなのか? もしそうだとするのならばそれは喜ばしいことなのだろう。何せ生徒会長直々のオファーなのだから。そしてそうだとするのなら、俺の答えはただ一つに集約される。
「興味ないので遠慮しておきます」
「ええっ!?」
俺の回答が予想できなかったのか、いちいちオーバーなリアクションをする橘先輩だった。正直言ってちょっとうるさ……元気な人だなと思う。
俺の答えを聞いて堀北先輩は「そうか」と短く返してきた。まあ希望するのならって言っていたから強制はしないと言う意味だろう。
「また気が変わったらいつでも言ってくれ。席が余っていればすぐにお前を採用しよう」
「機会があればそうします」
そう言って、もう話が終わりそうになったの雰囲気を感じたので帰ろうとした時だ、ふと思いついたことを言ってみる。
「あの、先輩方、もし宜しければ連絡先を交換してくれませんか?」
「いいだろう。話を聞かせてもらった礼だ」
「私もいいですよ」
こうして俺は無事に堀北先輩と橘先輩の2人の連絡先を入手することに成功した。
入学2日目にして生徒会長と連絡先を交換できた生徒なんてそうそういないんじゃなかろうかと1人上機嫌になりながら、俺は帰路についた。
どう言うわけか生徒会長に認めれた芽吹創。多分幸運(1d/100)でクリティカル出たんでしょう(適当)
一応の補足を書いておきますと、芽吹はアイデアでクリティカルを出しても
よう実の好きな巻
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1〜2巻
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3巻
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4巻
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未読です(買ってきて♡)