少女の微睡、月香の夜。   作:かなしいな

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少女、狩人と成る。



※第七話、第一章閉幕です。


少女の後悔、狂気の原点。

斧の間合いに入らず、常に散弾を警戒し墓石を挟んで対峙する。

少女は男を倒すという決意を固めた後、何事も無く道中を越え、再び男の前に立っていた。

実に三度目の挑戦、だが少女は今回も男に対して一撃を入れられないでいる。

 

「攻める気概も無くしたか…」

 

言葉と共に放たれた散弾を墓石を盾にする事で間一髪躱し、動きを視る事に徹する。

少女は確かに攻めあぐねているが、焦っている様子は無い。

この戦いは捨てているのだろうか。

そんな少女に対して、男は斧を変形させ、更に攻撃を苛烈なものとする。

 

冷や汗をかく少女は、だがここでようやく攻めの手に出るようだ。

散弾銃を警戒していたのだろう、両手斧となればそれも封じられる。

何よりその大振りな攻撃は、躱し切る事さえ出来ればそれほど驚異では無いのだから。

 

「そこっ!」

「ヌゥッ…!」

 

少女は低く払われた斧を更に姿勢を低くする事で躱し、男の肩に今回初めての一撃を入れた。

浅いが、それは着実に少女が男の攻撃のタイミングを測れている証左でもある。

その傷を意に介さず、男は更に斧を振り回す。

両手で振るう斧を時には片手を軸にする事で振り回し、そして持ち直す事で少女のリズムを崩し始めた。

 

意図的に崩されたリズムは少女の戦闘に著しい影響を及ぼしており、攻撃の手も既に止めてしまっている。

対して男はそれを気にしてやる道理など無いと言わんばかりに構え直し、縦に横にと振り回す斧で少女を端まで追い込むと、逃がさぬように更に間合いを広げた。

 

そして───────

 

「終わりだ。」

「ぅぎぃっ…!?」

 

端まで追い込まれていた影響が出たか、低く薙ぎ払われた斧を先程と同様の躱し方をする余裕は無く、少女は左脚の膝から先を失った。

転がって行った少女の足と残った膝からは、止め処無く血が溢れ出す。

こうなれば決着はついたも同然だ。

崩したバランスはもう戻らず、体重移動にすら苦戦する少女が戦闘を続けられる筈も無い。

 

「っあ、ぐ、うぅっ…!」

 

興に乗るような事はさせまいと必死に声を押し殺す少女の努力は無駄なもので、男は感慨も無く少女の四肢を斬り飛ばした。

 

「フン…所詮矮小な獣風情という事か」

「ふっ、ふっ、ふーっ…」

 

犬のように浅く早い息を繰り返す少女は、既に虫の息だ。

右腕を肩から失くし、左腕は上腕の半ばから骨ごと断たれ、右足は膝の部分から潰れるように斬り裂かれている。

死を迎えていない事が不思議な程のダメージだが、少女の顔はみるみると青白く染まって行き、それに反して地面は赤々と濡れ続ける。

たとえ男が手を下さなくとも、少女は長く無いだろう。

 

「惨めだな、獣め。」

「ぼ、くは…獣じゃ、な────」

 

そして少女に、三度目の介錯が与えられた。

 

 

 

「────…まだまだ…!」

 

三度目の正直とは行かなかったが、まだまだ闘志は衰えていない様子だ。

今までよりも少しばかり早足で、少女は墓標からヤーナムへと向かって行った。

 

 

 

大玉を転がす大男と、今回は引火せず安全に大玉に火をつける事が出来た罹患者をすり抜け、少女は四度目の挑戦を開始した。

中心の広場から走り寄って来る男に対して、少女は銃を向けず静観を取る。

ゆっくりと右へと展開して行く少女は、どうやら散弾での狙いを定めさせず、斧を多用させる立ち回りを重視し始めたようだ。

散弾銃を撃った隙に横をすり抜け、攻撃を重ねるつもりなのだろう。

男も既にその意図に気が付いているようで、散弾銃を構える事はしない。

 

「浅知恵ばかりだな」

「ひ、ひどい言い草…」

 

言外にせず浅慮とまで言われた少女はショックを受けつつも、ノコギリ槍と短銃を構える。

斧を振り被り近寄る男に対し、少女は交差するように墓石を挟んで移動を始めた。

心の中で持ち主に頭を下げながら墓石の上部に足を掛け、それを蹴る事で横薙ぎの斧を躱すと、未変形のノコギリ槍で男の斧を構えた右腕を浅く斬り裂いた。

 

「や、やった…!ぶっつけ本番だったけど…」

「ほう…中々…」

 

思い描いていた通りに動き、そして攻撃を躱す事が出来たとその顔に僅かな喜色を浮かべる少女に対して、男はまるで品定めでもするような目を向ける。

狩りの腕こそまだまだ未熟の一言だが、遺志を己の力とした事で既に凡人とは一線を画す身体となっているのだ。

その身のこなしは軽くなって当然だが、男が見ているのはそれだけでは無いのだろうか。

 

「…フ、ハハハ…」

「……な、なんですか急に────っ!?」

 

少女が悪寒に従って下ろしていたノコギリ槍を素早く振り上げれば、大きな金属音を上げて斧とノコギリ槍がかち合う。

まるで腕の傷など存在していないかのようなその振りの速さに少女が目を見張っていると、男は立て続けに散弾銃を放った。

唐突な一撃、そして銃撃に反応しきれず、少女はまたしても足に銃弾を受けてしまう。

 

数発の鉛に撃ち抜かれた右足を引き摺るようにして墓石に隠れた少女は急いで輸血液を取り出し、注入している。

男は少女を徹底的に追い詰めるつもりなのか、それとも少女が輸血している事に気が付いていないのか、斧を下ろしたままゆっくりと少女に向かって行く。

 

「────…っ、はぁ…」

「…そこか、血の香りは」

 

そう言うと男は、先程まで少女がいた墓石へと斧を振り下ろす。

だが少女はそこにはいない、あるのは足から垂れていた大量の血痕とその場で割られている輸血液の瓶だ。

周囲を警戒しようと振り返る直前、男は真横から小石が跳ねる音を聞いた。

男は目に巻いた包帯で視覚を封じられている、それ故に嗅覚と聴覚を頼りにして獣を狩っているのだろう。

だからこその輸血液と、そして少女が意図して投げた小石だ。

 

そして少女は極力音を立てず、男の背後へと素早く迫った。

手に握られているのは変形したノコギリ槍だ。

少女は両手に持ったそれを振り被り、男の右肩へと振り下ろす。

男は間一髪でそれを察知したようで、急速に振り返り斧を薙いだ。

だが斧は一寸届かず、ノコギリ槍は男が僅かに仰け反った影響か男の右前腕へと命中した。

 

「ッグ、オォォッ!」

「んなっ!?」

 

男は少女の想定から大きく外れた膂力を持って、その前腕で少女を弾き飛ばして見せた。

とは言えダメージは大きい、斧を持つその右腕も、戦闘が始まった当初よりも低く構えられているように見える。

 

「…匂い立つなぁ…」

「はぁ…?」

「堪らぬ血で誘うものだ…」

 

男の独白ではなく、その言葉は少女に、ひいては獣へと向けられているのだろう。

少女からすればその言葉の意味はまだわからない、が───────

 

「えずくじゃあないか…」

「………」

「ハッハッハッ……ハッ、ハハハッ」

「こ、この…女の子に向かって臭いがどうのとか…!」

 

────意味がわからないと言うのは、ただ理解出来ないという訳でなく、曲解してしまうという意味での事だ。

少女は記憶喪失だ。

それ以前がどんなに聡明だったとしても、愚かだったとしても、今現在の少女に啓蒙的知恵は無い。

ヤーナムに於ける血という言葉の意味もまた、少女からすれば理解の遠いものなのだ。

故に先の男の言葉は、少女の耳には"臭っている"という罵倒にしか聞こえなかったらしい。

 

男の攻撃は腕に怪我を負っているにも関わらず激化し、更に少女を追い立てんとしている。

対して少女の攻撃も激化し、その攻撃には充分な怒りが乗っていた。

早い話、頭に来ているのである。

何もわからないまま武器を持たされ、殺されて助言者に助けを乞えば獣を狩れと言われ、狩った所でまだ足らないと言われ、獣狩りを続けても自身の目的もわからず。

挙句の果てにはこの街で臭いを指摘されたのだ。

下水橋の傍で、臭いを指摘されたのだ。

 

「…こんな所に!道があるのが!悪いんでしょう!」

 

夢で不満を吐露した少女だったが、ひょっとすればアレだけでは足りなかったのだろうか。

少女の目尻には、ほんの少しの涙粒のような光る物が見える。

 

だが臭いを気にするというのはこのヤーナムの中で言えば最も普遍的で、最も少女の常識に近いものなのだ。

少女の心中は荒れに荒れているが、残念な事にその荒れ方は少女が診療所で目を覚ましてから今までの時間の中で、最も少女──ここでは狩人の少女では無く、一般的な成熟を迎える少し手前の女性の事を言う──らしいものだった。

 

お互いがお互いに対して攻撃的になっているが、その戦闘の進行は遅遅としたものだ。

何せ少女は回避を覚え始め、男は気にする素振りを見せないとは言え右腕に二度攻撃を受けているのだから。

散弾は躱し、受けたとしても掠り傷程度。

そしてそれは少女が男に与えるダメージも同様だ。

 

だがここでようやく、戦況が動く。

少女はノコギリ槍を変形させ、ノコギリへと戻し短銃を取り出した。

男は未だ片手斧のままで少女に襲い掛かる。

そこに怒り────というより、拗ねているとは思えない程に冷静な"パリィ"が入った。

 

「グウッ!?」

「女の子への言葉遣いを、学んでくださいっ!」

 

正に裂帛の気合いと呼べるものを込め、少女は男に向かってノコギリ槍を薙ぎ払った。

男はまたしても斧で防御を試みるが、ダメージの大きい右腕では防ぎ切れず、腹部に重い一撃を受けてしまう。

幾ら強くても人間は人間だ、少女から見ればもう動けないようにしか見えないだろう。

だが男はまるで幽鬼のように立ち上がり、斧と散弾銃をその場に落とした。

 

「…か、勝った…?」

 

男はまだ倒れていない、だが武器を落としてしまっている時点で勝ちは決まっている。

既に戦う気力が残っていないのだろう。

少女はそう信じていた。

それ故にという訳では無いが、男は自身の体を抱え、もがき始める。

 

「グ、オ、オォッ…!

「えっ、な、何を…」

「ガアァァァッ!!」

 

叫び声と共に男の体が肥大化する。

その体は黒く太い剛毛に覆われており、その丸太のような腕の先にある手指には鋭い爪が生え揃っている。

頭は犬や猿のような形に変貌し、その顎には鋭い牙が並んでいた。

男は既に獣の病が進行し、獣へと成り果ててしまっていたのだ。

 

「オォォォォッ!」

「うわぁっ!?」

 

聖職者の獣程では無いが、その巨躯から繰り出される攻撃は少女からすれば一撃必殺にも等しいものだろう。

全力で回避を取っていた少女だったが、男の攻撃に合わせて下がった所に更に追撃が入る。

流石に予測がつかなかったのか、避け切れないその攻撃に対して、少女はノコギリ槍を盾にする事で対応した。

 

「うぐ…っ!」

「ウオォォッ!」

 

吹き飛ばされながらも少女が男の方を見れば、その足元には崩れた墓石が転がっている。

墓石の陰に隠れるのはもう無意味になってしまった。

そんな中少女が見付けたのは、墓地の隅にある階段だ。

登った先には恐らく聖堂街へ繋がる道があるのだろう。

 

「…っ!」

「ガァッ!グウッ!」

 

道を見付けたからには戦い続ける道理はない。

少女は男だった獣に向かって火炎瓶を投げ付けながら、階段へと駆けて行く。

そして階段を登り切った少女の目の前に現れたのは、大きな門扉だった。

残念な事に、押しても引いても開きはしない。

そうこうしている内に、少女の背後からは大きな足音が響いて来る。

 

「グオォォッ!!!」

「あぐっ!?」

 

逃げようとした獲物への怒りか、男は素早く少女に近付き、そしてその右拳を少女の腹部に向けて振り抜いた。

火炎瓶を取り出そうとしつつの回避は間に合わず、攻撃は見事に少女の腹へと吸い込まれて行く。

殴り飛ばされた先は墓地の方向、そこにある柵に激突し、少女は地面へと倒れ伏した。

だが直前まで物を取り出そうとしていたからか、少女の懐から一つの箱が転がり出す。

 

「ア、アァ、アァァァッ…!」

「────……?」

 

転がり出たのはリボンの幼女から預かったオルゴールだった。

元々回してあったからか、落ちた事で箱が開いたオルゴールは勝手にその音色を奏で始める。

その音色が耳に届いた瞬間、男は今までの勢いを急激に失い、頭を抱えて唸り始めた。

 

その行動を疑問に思いながらも、これ程の好機は失う訳には行かないと、少女は急いでノコギリ槍を変形させ構え直す。

そして両手で持ったそれを低く倒し、男に近寄った少女は、その膝と腕を足場にして一気に頭上まで駆け上った。

 

「これで、お願いっ…!」

「グ、ウォォッ!?ガアァッ!!」

 

少女は男の右肩、その鎖骨と項の間からノコギリ槍を突き入れる。

心臓付近まで至ったそれに、男は大きく怯み、直ぐにそれを抜こうともがき苦しんでいる。

少女はそれを許すまいと、更に奥へと押し込み掻き回し始めた。

 

「ガァァッ!グゥァァッ!!」

「んぐっ、うっ…!」

 

一心不乱に振り回された両拳の幾つかが少女に直撃するが、それでも少女はその手を緩めはしない。

トドメを刺すまでは絶対に離さないであろうその手にいよいよ根負けしてしまったのか、男の抵抗は段々と弱まって行く。

そしてそれは少女も同じだ。

最後の抵抗とばかりに振るわれた拳が先程殴られた腹部に撃ち込まれ、少女はノコギリ槍こそ離さなかったが、男の肩から落下してしまった。

 

「オォォォッ!!」

「……っ、やぁぁっ!」

 

お互いに絶好の機会を目の前にしており、そしてお互いが満身創痍の状態だ。

一撃でも受ければ倒れるという状況で、二人はそのどちらもが攻撃の一手を選んだ。

正気を失い獣に堕ち、そして致命傷とも言えるダメージを負った男の拳にキレは無い。

少女も少女で掠り傷による出血は馬鹿に出来ず、何より先程受けた拳は想像以上に少女の体幹に影響を与えている。

 

そして勝負が決する時が来た。

いよいよお互いの一撃が交差するかと言うその瞬間に、少女の体はクラリと傾く。

それは少女が意図して起こした挙動では無く、完全な誤算。

今までのダメージ、特に腹部に受けた大振りは足腰に効いており、少女にその気が無くとも体は勝手に倒れて行く。

だが男はそれに攻撃を合わせる事が出来ない、既にそんな軌道修正を出来る体では無いのだ。

完全な誤算が偶然にも、完璧な回避として作用していた。

 

カウンター気味に少女のノコギリ槍は男の右脇腹に命中する。

それは奇しくも、人間の姿を保っていた男にトドメを刺した一撃と同じ箇所だ。

既に立つ余力すら無くした少女は、男の生死もわからないまま前のめりに倒れて行く。

攻撃を空振り、脇腹に致命傷を受けた男もまた、前に倒れて行く。

そしてその最中、少女の耳に届いた音は────

 

「……ヴィオ、ラ…」

 

女の名前だ、それも少女はそれに聞き覚えがある。

その言葉とほぼ同時に、少女の中に血の遺志が流れ込む。

聖職者の獣より大きな波として流れ込むそれに息を乱しながらも、少女は少しずつ体を動かし始める。

既に体力も気力も底をついている体に鞭を打ち、少女は上体を起こした勢いのままに立ち上がった。

 

「……はっ、はっ……なんで、あの子の、お母さんの名前…」

 

振り返って見ても、男の体は既に消滅してしまっている。

獣となった者は死を迎えると粒子になってしまうのか、だが今までの罹患者は死体が残っていた。

そんな事ばかり考えてパンクしそうになっている少女は、ひとまず忘れない内にオルゴールを拾い上げる。

壊れていないか入念に確認し蓋を閉じて再び懐にしまい込むと、男が倒れ込んだであろう場所に鈍く光る何かが落ちているのを見付ける。

少女が近付いて拾ってみれば、それは家のものとは思えない程度には大型の鍵だった。

 

「……これ、ひょっとしてここの…?」

 

門扉に掛かっている錠前に鍵を挿してみれば思いの外スムーズに鍵は回り、錠前はカラリと外れてしまう。

自分が閉める事は無いとは言え誰かが閉めないとも限らない。

少女は鍵だけを回収し、錠前は門扉に掛けて奥へと進む────その前に

 

「…あ、灯り…」

 

聖職者の獣の時のように、もしかすれば灯りがあるかもしれない。

そう考えた少女は振り返って墓地の広場の方を見やる。

その途中、少女の視界の端に赤い光が映った。

目を凝らして見れば、それは赤い何かが光を反射しているようだ。

破れた柵の向こう、小さな段差にそれはあった。

そこに転がる女性の死体、その胸にあるのは大きな赤い宝石がついたブローチだ。

少女の頭に思い浮かぶその特徴は、間違い無く────

 

「……あの子の、お母さん…?」

 

ブローチをよくよく観察してみれば、しっかりと"ヴィオラ"という名が刻まれていた。

生きた状態で見付ける事が出来なかったという無念こそあれど、死体を運ぶような真似はとてもじゃないが少女には荷が重い。

少女はそのブローチだけを懐に仕舞い、せめてこれだけでもとその目を閉じてやってから広場へと降り、案の定現れていた灯りを灯した。

 

「…あの子の所が先、だよね…」

 

そう言って少女は走り出す、向かう先は当然家族を待っているリボンの幼女の家だ。

母親の死という事実を伝えるか否か、少女は迷っている。

だが伝えるにしろ伝えないにしろ、このブローチは渡すべきだ。

真相について"そういう事"として伝えなかったとしても、いつか打ち明ける事が出来る日も来るだろう。

 

案の定墓地の前まで寄って来ていた罹患者達を振り切り、橋の更に奥にある梯子を降りて行く。

真っ直ぐ進み、下水溜まりにある梯子を二つ登り、大男も無視して行く。

そうして少女はあっという間に目的地まで到着した。

 

「あの、僕です、獣狩りの」

「獣狩りの人、こんばんは。お母さんは見付かった?」

「えっと、あの…その…」

「何か、あったの?」

 

完全に言葉に詰まっていた少女だが、やがて懐からブローチを取り出した。

残酷な選択だが、伝える事にしたようだ。

嘘をついて希望を持たせるくらいなら、という事なのだろう。

 

「…っ、こ、これを…」

「……え、えっ…獣狩りさん、これ、本当なの…?」

「ごめん、なさい…」

 

少女は顔を上げる事が出来ず、次第に窓の奥から聞こえ始めた泣き声にも何も返せないでいる。

今まで罹患者の命を奪った事はあった、当然生きるための反撃であり、それは先程戦った男も同じで。

しかし救えなかった、間に合わなかったという経験は初めての事だ。

 

そこまで考えが及んだ所で、少女の頭には最悪の可能性が思い浮かぶ。

あの男が目の前にいる幼女の母親の名前を知っていた理由だ。

だが少女がそれを伝える事は出来ない。

簡単な話であり、複雑な感情。

少女は己のエゴで、目の前にいる"自身と対等な会話をしてくれる相手"に対して、"良い顔"をしたいのだ。

 

「お母、さん…お母さん…一人はいやだよう…」

「…っ、ごめんなさい、また来ますから…」

 

少女は結局逃げるようにその場を後にするしか無かった。

梯子の下には大男が待ち構えているが、降りて戦うような気力も無いため、少女は門扉を通って足の動くままに歩いて行く。

その途中で、少女の脳裏を一つの言葉が過ぎった。

 

"目覚めをやり直せる"

 

少女の頭に唐突に思い浮かんだその言葉は、下水道に繋がる建物にいた烏羽の狩人のものだ。

少女は何故その言葉を今思い出したのかと言えば、この現状を質の悪い悪夢として片付けたかったからだろう。

烏羽の狩人に渡されたあの紙を一枚取り出し、そこに刻まれたルーンを目に映し心の中でも思い浮かべる。

そして少女が一つ瞬きをすれば、そこはヤーナム市街の灯りの前だった。

 

「目覚めって、狩人の夢からって事…?」

 

元よりこのヤーナムに"今まで起きた事を無かった事にする"なんて都合の良い神秘的なものがある筈が無い。

それは少女も理解していたが、やはり藁にも縋る思いというものだろう。

少女は沈んだ心を隠さず大きな溜め息を吐きながら、灯りに手を翳し狩人の夢へと戻った。

 

 

 

「人形さん、遺志のやつ、お願いします…」

「わかりました。では、目を閉じていてください…」

 

そう言うと一度目と同じように人形は少女の右手を手に取り、変換しているのであろう血の遺志を注ぐ。

少女が感じている何かが流れ込むような感覚が弱まり、やがて消えると右手を握っていた冷たい感触も離れて行く。

 

「ありがとうございます、人形さん」

「狩人様に尽くす事が、私の存在理由ですので。」

 

礼を言った少女は再び墓標へと向かい、その手を翳す。

命を持たない人形の瞳には映る筈の無い色、まるで何かを憂うようなその色を、見えぬものとして無視しながら。

 

 

 

少女が転送されたのはヤーナム市街の灯りではなく、つい先程灯した墓地のものだった。

どうせ先に進むのだからと階段を上り、更に奥にある建物へと踏み入った。

何故か水が溜まっているその空間には木箱が乱雑に置かれており、奥には上へと続く梯子が掛けられている。

 

「また、梯子…」

 

少女はどうやら梯子に良い思いが無いようだが、進むにはこの梯子を登って行くしか無い。

渋々と手を掛け登って行った少女が辿り着いたのは、本棚に囲まれた小さな部屋だった。

何かの資料であろう紙や本が散乱しているその部屋の机に、少女は一枚のメモを見付ける。

 

『ビルゲンワースの蜘蛛が、あらゆる儀式を隠している

見えぬ我らの主も。ひどいことだ。頭の震えが止まらない』

 

「……ビルゲンワースの蜘蛛…?儀式を隠す…?見えぬ我らの主…?」

 

当然その膨大な情報を少女が受け止め、捌く事が出来る筈も無い。

少女の未だ繊細な脳は、一瞬にして茹だってしまった。

だが頭にこびり付くような強烈過ぎるその単語の数々を、少女はしっかりと記憶する事が出来た。

いずれ役立つ事もあるのかもしれない。

 

メモを手記に挟んだ少女は、部屋の奥に見える階段へと歩を進める。

そしてその階段の手前には、大きな箱が置いてあった。

少女の真っ白な知識でもわかるそれは、間違いなく宝箱と呼ばれるものだろう。

 

「あ、開けて良いのかな…?でも……ううん────…えいっ!」

 

少しの逡巡の後、少女は思い切って箱を開けた。

中に入っていたのは血晶石の工房道具だ、少女にはそれが何かわからないが、狩人の夢にある工房で似たような枢を幾つか見たのを思い出す。

ひょっとすればゲールマンが言っていた失われた工房道具の一つなのだろうかと、少女はそれを懐にしまい込んだ。

 

少女が階段を登り先を進めば、その奥にあったのは豪奢な装飾が施された両開きの扉だ。

両手を扉に添えた少女が強く力を込めると、扉はゆっくりと開いて行く。

何やら煙たいような香りが少女の鼻に届いたのは、両扉が完全に開いて直ぐの事だった。

開いた扉から進んで見れば、直ぐ目の前にはまだ灯されていない灯りがある。

これ幸いと近付く少女は灯りを灯すその時まで、真横に鎮座するそれに気付いていなかったのだ。

 

「よし、これで…」

「あ、あんた────」

「ひゃあぁぁぁっ!!?」

「ウワァァァァッ!!?」

 

最悪の邂逅、初対面からお互いがお互いに怯えきってしまった。

少女に声を掛け、そしてその少女の叫び声に反応して絶叫したのは赤い襤褸のローブを纏った何かだった。

よくよく見れば人の形が見て取れるが、黒過ぎるその色と所々が突き出たその骨格を人間として見る事は難しいだろう。

 

「ご、ごめんよ…脅かすつもりじゃなかったんだ…香のせいで匂いに気付かなくて…ヒヒ…」

「…えっ、あ、その…こちらこそ、ごめんなさい…?」

 

気弱そうなその声と口調は、どうやら少女の恐怖を和らげるには充分だったようだ。

格好こそ怪しいが、少女としても見目だけで人を決め付ける事はしたく無い。

 

「ひょっとしなくてもあんた、狩人さんかい?」

「は、はい…多分そうですけど…」

「そ、そうか良かった…ならお願いがあるんだ」

「お願い…」

 

その言葉に、少女は良い覚えが無い。

ただでさえつい先程、幼子とのお願いを聞き入れたは良いがその成果はあまりにも残酷なものであり、泣かせてしまったばかりなのだから。

故に少女は、そのお願い次第では断る事も視野に入れていた。

のだが───────

 

「獣狩りが始まって、まともなのは皆閉じ籠ってる。昔のように、いつものように、全てが終わるのを待ってるんだ…でも今回は異常だよ。実際、閉じ籠った連中にも犠牲が出始めてる」

「そ、そんな…どうにかならないんですか…?」

「あぁ、あぁ、安心してくれよ。だからこそのお願いなんだ、まともなやつを見付けたらこの場所を教えてやって欲しいんだよ」

 

どうやらこのローブの男は、この教会に人を集めたいようだ。

儀式的な何かでは無く、単純な善意。

やはり人は見掛けに寄らないものだ、少女はそう思いながらも男の話を聞いている。

 

「さっきから、女の悲鳴と獣臭い呻きばかりが増えてるんだ。恐らく、もうヤーナムはお終いだ…ヒヒッ…」

「えぇ…?」

 

勘違いだったかもしれない、男はこの絶望的状況で笑い声を発した。

だがそれは自嘲や哀しみから来るものなのだろう、笑い声こそ聞こえたものの、男は少女に対して生き残りを集めるという願いを善意から伝えている。

 

「でも、だから、まともな生き残りを見付けたらこの"オドン教会"を教えて欲しいんだ。ここは安全だ、獣避けの香もしっかりと焚かれてる。だから、何とかここに逃げて来いってさ…」

「獣避けの香…なるほど、さっきの匂いはそういう…」

 

少女からすればそれ程気になるような匂いでも無く、ただよく嗅げばある事はわかる程度のものだ。

だが獣にはそれが効くのだろう。

実際、奥に見える出入口であろう場所は開け放たれているにも関わらず、この教会には獣が侵入していないのだから。

 

「あんたに頼む話じゃないのはわかってるんだ、獣狩りのついでで良い…頼まれてくれないかな…」

「…わ、わかりました、任せてください!」

「あぁ、良かった、楽しみだなぁ…ヒヒッ」

「…う、うん、きっと大丈夫…多分」

 

そう言いつつ、少女は灯りに手を翳した。

一度夢へと戻った少女は、直ぐに墓標に手を翳す。

転送先はヤーナム市街、ギルバートの家の前だ。

 

「ギルバートさん、僕です!」

「ゴホッ…あぁ、狩人さんですか、聖堂街には辿り着けましたか…?」

「は、はい!それもこれもギルバートさんのおかげで…本当にありがとうございます!」

「そうでしたか…なら良かった、これで思い残す事はありませんね。」

「…え、な、何を…何を変な事言ってるんですか…?」

 

少女は驚愕と、そして疑念に抗う事無くギルバートに質問を向ける。

もしや聞き間違いでは無いか、そんな幻想すらもギルバートは否定した。

 

「私の事は、もう気にしなくて構いません…もう、お役に立てる事も無いでしょう」

「だから、何言ってるんですか…役に立たないなんて、むしろ助けられっぱなしで…僕と話してくれるだけでも助かってるのに…こ、これからだって!」

 

少女はギルバートの病が進行している事に気が付いている。

先程の咳も最初に会った時よりずっと酷いものに聞こえていた。

 

「そうだ!下水橋の先には教会があって、そこにいた人が生き残りを連れて来てくれって…ギルバートさんも行きましょう!獣狩りの香があるから…安全、だって…」

「いいえ、私の体ではもうそこに辿り着く事すら難しいでしょう」

「だったら僕が担いで連れて行きますよ!!」

 

言葉を、感情を、ギルバートがどうにか生きるのを諦めずにいてくれないかと荒らげる少女は、だがこれでも首を縦に振ってはくれないのだろうという自身の結論すらも否定しようとしていた。

当然その少女の提案も、ギルバートは肯定しない。

 

「お気持ちだけ頂いておきます…最後に、これを」

「最後なんて、嫌ですよ…」

「受け取ってはくれませんか?」

「────…っ、わかり、ました…」

 

涙で前も上手く見えない少女が受け取ったそれは、火炎放射器だ。

それも狩りに使われるであろうもので、恐らくはギルバートがこの夜での護身用にと持っていたもの。

それを渡すという事は、既に必要としない所まで来てしまっているのだろう。

これから獣が来襲したとしても、その時にはもう事切れているだろう、と。

 

「結局私には無為なものでしたが、あなたなら違うでしょう────ゴホッゴホッ、ゴフッ…」

「ギルバートさん!」

「…これは不治の病、一縷の望みでこの街を訪ね…怪しげな血に頼ってでも、今まで生き長らえ…そして、貴女という友人も出来た。」

 

少女も重々に理解していたであろうそれを、ギルバートは改めて語る。

これを最後とするつもりなのだろう。

もう悔いの無いように、少女が自分を諦められるように。

 

「…もう、充分ですよ。むしろ、獣の病に罹らぬ事を、感謝しています…せめて人のまま、死ねるのですから…」

「やだ…やだよぉ…」

「いつまでも私に構っていては、あなたの目的を果たせないでしょう…さぁ行って、あなたがやるべき事を、やりたい事をやれば良いのですから。」

「…っ……ぐじゅっ…今まで…ありがとう、ございました。僕、絶対夜明けを見ますから、ちゃんと自分の家も見付けて、帰ってみせますから」

「えぇ、ずっと応援していますとも。」

「……さようなら」

 

そして少女は、ギルバートの家を去る。

背を向けてから聞こえて来た重い咳は、せめて少女を最後まで心配させまいと耐えていたものなのだろうか。

だがそれを聞いても少女は振り返らずに、灯りに手を伸ばした。

 

再び夢を経由して、今度は墓地の灯りへと転送された少女は、その出口へと足を向ける。

向かうはあのリボンの幼女の家だ。

オドン教会を教えるというのもあるが、少女は一つ大事な用事を忘れていた。

まだオルゴールを返していないのだ、両親の思い出と言っていたこのオルゴールは、少女が何時までも預かっていて良いようなものでは無い筈だ。

 

墓地まで降りて行った少女は、やはり先程と同じ道で突っ切ろうとしているのか、下水橋側の出口へと走って行く。

罹患者達を躱し、下水道を走り、下水溜まりを抜け、大男を倒し。

そして梯子を登って辿り着いた家の窓からは、明かりが漏れていなかった。

赤いランタンも灯っておらず、周囲には誰も居ないのか静寂が漂うばかりだ。

 

「あ、あの!僕です!獣狩りです!」

 

返事は無い、ともすればただ少女が無視されているだけなのやもしれない。

何せ母の死を形見という形で突き付けられ、おまけにオルゴールは戻って来なかったのだ。

嫌われこそすれ、好かれる事は無く、恨まれ憎まれても文句は言えないだろう。

 

「えっと、オルゴール持って来たんです、僕預かってたの忘れちゃってて…それで、今返しに来て…」

 

返事は無い。

オルゴールを返すという言葉にすら、誰も応答はしない。

やはり中には誰も居ないのだろうか。

 

「……っ」

 

少女は梯子を素早く降りて行き下水道に着くと、少女に牙を剥くであろう者達に気付かれる心配もせず叫び始める。

 

「誰か!誰か居ませんか!小さな女の子を探してるんです!」

 

その声に動くのは大きく肥えた鴉と鼠、後は死体くらいのものか。

どれだけ叫ぼうと人の声は返らず、どれだけ走っても人の姿形は見えない。

 

「リボンを着けてて、僕よりもずっと小さくて…っ!家族想いの子で……お願い、誰か…!」

 

そうして少女はいよいよ下水道の端まで走って来てしまっていた。

目の前には梯子と、更に奥まで続く道。

その奥に見えるのは、何やら揺れ動く大きな影。

だが少女は意を決して、その道を進み始めた。

 

「フゴッ…フシュウッ……」

「えっ?」

「ブオォォォッ!!」

「ひぃぃぃっ!?」

 

少し歩いて行けば、その影は大きな豚だった事がわかる。

異常な大きさだ、少女の背丈など軽く越えており、人一人くらいなら丸呑み出来るだろう。

大きく吠えた豚は、少女に向かって突進を始める。

気付いたタイミングこそ遅かったが、少女は余裕を持って通路から抜け出し、梯子の方へ逸れる事で突進を躱した。

 

「い、急げ急げ…っ!」

 

少女は豚が振り返る前に、急いで梯子を登り始める。

だが逃げるという訳では無く、その豚が例え立ち上がったとしても届かないであろう高さまで登ると、懐を漁り始めた。

そして懐から出した手に握られていたのは火炎瓶だ。

男相手に幾つか投げ付けた事で、残りは精々が三つと言った所だろう。

少女は真下へと歩いて来る豚に向かって、それらを投げ付けた。

 

「ブモッ…ブゴォォッ…!」

「これでっ…トドメっ…!」

 

豚が大きく怯んだのを見て少女は梯子から手を放し、掛けていた足で梯子を踏み蹴る。

そして豚の真上まで跳ね飛んだ少女はノコギリ槍を変形させ、豚の脳天に向けて叩き付けた。

 

「…はぁ…よ、よし…これで奥に────…うわっ!?」

 

豚が絶命したのを確認し、いざ降りようとすれば、豚の死体は粒子となって消滅してしまう。

少女は上手く着地する事が出来たが、その足下には見覚えのある────いや、陰でしか見た事が無かったそれを見付けてしまう。

 

「…はぁっ、はぁっ…な、ぁっ…」

 

きっと染まる前は白かったのであろうリボンを拾おうとする手は上手く動かない、背中から徐々に広がった震えが足の先まで伝播する。

荒く早く繰り返される呼吸は脳から下される命令に反して全くリズムを整える事が出来ず、終いには酸欠を起こしてしまったのか、少女の視界にチカチカと白い火花が飛び始める。

そしていよいよ耐えられなくなった両脚は、膝から地面へ崩れ落ちた。

ようやく届いたその手で拾い上げたリボンは、間違いなくあの家にいた幼女の物で───────

 

「うぶっ…お、ぇぇ…げぇえっ……」

 

びしゃびしゃという水音を立てて、何も入っていない少女の胃から逆流した黄色い胃液が下水に混ざる。

胃が震え、喉が焼け、それでも嘔吐は止まらない。

少女の脳内では、何故という疑念と、それに対する自身で出した答えが延々と回り続けていた。

 

「げぷっ、うぇぇっ……な、んで…なん、で……」

 

ようやく止まったかに思えた嘔吐は、だが少女がそれを想像するだけで再開されてしまう。

 

「僕のせいで…僕の、僕のせいで…?」

 

酸欠と混乱で上手く働かない頭は、だが明瞭にその答えを紡ぎ出す。

そしていよいよ出始めたその結論は、自身の口から発せられる事で、少女の心にトドメを刺した。

 

「ぼ、くが…僕が…殺した…」

 

両手に握り締めたそのリボンからは温度などは伝わらず、わかるのは自身の胃液と豚の血液で濡れているという事。

何より、このリボンを染めた血は豚のものではなく、元の持ち主のものだという事だろう。

 

「あ、あぁ…あぁぁぁ……うぁぁぁ…」

 

胃液の嘔吐はようやく止まり、今度は両目から涙が溢れ出る。

身体中の水分が枯れてしまいそうな程に流されるそれは、たとえどれだけ流れた所でリボンに染み付いた血を洗い流す事は無く、少女の心に芽生えた狂気を腐らせる事も無い。

 

強く強く根を張ったそれを、少女が自ら取り除く事は万に一つの可能性すら無い程に、不可能と言い切れる話だ。

何故なら少女は気付かない、狂い切ったこの街で自身も狂ってしまうのだという事に。

何故なら少女は気付かない、既に狂い始めた自身でも、己が身一つを救うだけなら可能だという事に。

血と吐瀉物と涙に塗れたリボンを見つめる少女の心に、もう取り返しがつかない程大きな、大きな罅が入った。




少女狩人
名前:不明 性別:女性 年頃:若年(詳細不明)
過去:過酷な運命
レベル 18
 体力 10
持久力 12
 筋力 15
 技量 12
 血質  5
 神秘 14



少女の赤リボン

下水道の豚を殺した事で少女が手に入れた、所々に白が見えるリボン。
元は白かったであろうそれは、持ち主の血によって大半が赤黒く染まっている。

少女はこれを手放さない、自分の罪であり、そして自分への罰であると信じて疑わないからだ。
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