振り抜かれた少女の腕には、一振りの刀があった。純白に輝くそれは、まるで、鏡のように少女の顔を刀身に写し出している。
呆然とする亡霊の首を薙ぎ、こびりついた血を払う。やれやれ、と言わんんばかりに首を左右に振り、不敵に唇を釣り上げ、腰に手を宛てる。
「よっわ、あの頃の方が百倍強かったよ、君達」
礼に乗っ取る意味はない、仕方ないがね。
腕を振り上げるより前に亡霊の懐に潜り込み、胴を一閃、ずり落ちる胴を横目に、次の獲物の首を刈る。
大きく刀を振りかぶり、体重を乗せた一撃で騎士の体を二分にする。飛びかかってきたもう一匹を下からの切り上げで切り捨て、もう片方に同じ様な刀を呼ぶ。
(下級の剣精霊しか呼べんとは……私の力も落ちたものだ)
あの頃の自分ではない。その事実を手に持つ刀が否応なしに教えてくれる。自分には剣精霊しか呼べない、それ以外を呼ぼう物なら恐ろしいまでの対価を支払わざる終えなくなってしまう。
あの日味わった剣の重み、そして、真っ赤に燃え盛る炎のような刀身を思い出す。
ーーーーーーーーーーーズブリ
脇腹から焼けるような痛みが伝わる。亡霊の一匹が、折れた剣で私の腹を突き刺していた。
「う、ぐぅ……!」
身をよじり、亡霊の頭を薙ぐ。ドクドクとコータルオイルめいた黒い液体が傷口から溢れだし、ホールに染みを作る。
「っハァッ、ハァッ……うぅ」
傷口を手で抑え、よろよろと膝を着く。コータルオイルはどろどろとした粘りけを保ちながら、ゆっくりと床を這いずり回る。不意に黒い水溜まりがぴくりと動き、まるで意思を持ったかのように震え出す。
「戻れ……クソッ、寝過ぎたか……?」
悪態をつくと、水溜まりは逆再生のように傷口に戻り、静かになる。
ゆっくりと立ち上がり、刀を正眼に構え、言葉を紡ぐ。
「来たれ焔よ、我が身を焼きて、その力、示したまえ……!」
それこそ燃えるような激しい痛みが体全身を駆け巡り、そして、刀身に焔が宿る。ごうごうと燃え盛る炎、殺気を込めた瞳でこちらに飛びかかってくる亡霊の大群。少女は痛みに顔をしかめながら、刀を大降りに振るったのだった……。
炎が屋敷に引火し、鎌首をもたげた炎が屋敷をばりばりとむさぼり食う。少ないとはいえ、頭数だけはそろっていた亡霊達が一瞬にして塵に帰り、寂れた玄関ホールだけが取り残された。
「くっ……やれ、やれだよ……全く……ッ」
よろよろと立ち上がり、覚束無い足取りで今だ玄関を守る役目を担うボロボロのドアを蹴り開け、漆黒の闇を紅く照らす月が昇る夜の森を、少女はとぼとぼと森の体内に飲み込まれていった。
戦闘は苦手ですね……(汗)精進いたします。