東方盗賊伝~幻想入りした元賢者~   作:ときわきゅん

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序章
アレフガルドにて


[ラダトーム王都]

 

「勇者殿と賢者殿を捜索せよ!英雄を祝う宴の最中にその主賓が失踪など、ラダトーム王国の沽券に関わる!!何としてでも見つけ出すのだ!!」

 

 街の広場に号令の声が響く。

街や城の最低限の防衛兵力を残し、残りの兵士を、休暇中であろうとも招集した。命令を下すのはこの世界唯一の国、ラダトームの国王その人である。

 

 …アレフガルドと呼ばれるこの場所は、元々存在していた地上の世界を模して精霊ルビスが創造した世界である。未完成、未発達ながらも様々な生き物、魔物が住まう豊かな土地だ。

しかしそんなアレフガルドだが、何年も前からつい先日までの長い間、「大魔王ゾーマ」の手中に収められていたのだ。大魔王ゾーマは、その圧倒的な力でアレフガルドを闇で覆い支配して、手下を使って地上世界まで支配せんと侵略を開始した。

 

 しかし、大魔王ゾーマの野望はあと一歩のところでとん挫することになる。アレフガルドの天から降りてきた勇者一行が、ゾーマを打ち滅ぼしたからである。

長い間ゾーマの支配に怯えていたアレフガルドの住民は勇者たちをルビスの遣いと讃え、その活躍を歓び、ゾーマの支配からの脱却、再び光が射したことを祝った。

アレフガルド唯一の王国たるラダトームが、住民の想いを代表し、勇者たちを称賛し、宴を開くのは当然であろう。

住民たちは王都に集まり、楽団の奏でる「勇者のテーマ」に聞き入り、出される食事を楽しんだ。

国王は勇者に、古代より伝わる英雄への最大の称賛として「ロト」の称号を授けた。

王宮に迎え入れて、その武勇を称えることで兵たちの士気、国民に刺激を与え、活気ある国として復興を遂げようと考えていた。

 

 

 しかし、勇者と賢者の二人は、英雄には似つかわしくないほど、静かに、密かに、姿をくらませた。

 

 

 

[ラダトーム北の洞窟]

 

 二つの人影と、コツコツと石を彫る音だけが存在していた。かつては魔物も出た洞窟だが、ゾーマの消滅とともにその活動は極端に減っていた。

 そんな洞窟に、勇者と賢者は訪れていた。

 勇者は地面にしゃがみ込み、ノミと金槌を手に石に文字を彫りこんでいる。賢者はただじっと、勇者の後ろに立ってそれを眺めている。

 

 勇者が石碑を彫り終えたころに、ようやく賢者―名をソフィアという―が口を開く。

 

「ゾーマの最後の言葉を気にしているの?」

 

 立ち上がった勇者―名はソロという―が振り返り返答する。

 

「ああ。光ある限り闇もまたある、だったか。俺が老いてこの世をさったそのあとに、また闇から何者かが現れると奴は言った。その時のため、俺はこの血を残し、子孫へ向けてメッセージを残さねばと思ったんだ。」

 

「王都を離れたのも、それが理由?」

 

「そうだ。俺はあの後、王宮に招かれるだろう。おそらくは王女か、貴族の娘を娶り代々王宮で厚遇されるだろう。そうなれば、いつか第二のゾーマが現れたとき、真っ先に狙われてしまう。だから遠い地でひっそり暮らし、時が来るまで身を隠しておくんだ。」

 

 ソロはそれに…と続ける。

 

「王宮に閉じこもりっぱなしの生活なんて性に合わないな。見た目を変えて、安住の地を探しつつ、改めてこの世界を旅したいんだ。」

 

 それが本音でしょ?とソフィアは苦笑交じりに答え、ソロはまぁな、と笑い返す。

 

 

 「さて、ソフィアは今後はどうするんだ?」

 

 「そうね、私も旅しようかしら。服装も、そうね。こんなあからさまな賢者って装備じゃすぐに見つかってしまうし。」

 

 「ならいっそ、すごろく場で手に入れた[闇の衣]でも着たらどうだ?盗賊みたいだろ?」

 

 「やめてよ、カンダタさんの時のことは黒歴史なんだから」

 

 ソフィアがわざとむっと不機嫌そうな表情を作ると、ソロは悪かったと肩を竦める。

 

 「じゃあ、ここでソフィアとはお別れかな?」

 

 「…そうね、一緒にいるとばれてしまう可能性もあるでしょうし。」

 

 「…そうだな。それじゃ、もう行くよ。達者でな」

 

 「ええ、ソロも、元気で。」

 

 ………

 ……

 …

 

 

 洞窟の最深部に一人残ったソフィアは、今後の計画を考え出す。

 

 「割と、盗賊みたいな恰好するのも無しではないのよねぇ…」

 

 そう言いながらふくろを漁る。ナイフを取り出すとこの長い髪も切っておこうかしら、と首のあたりからバッサリと切り落とす。

 頭のサークレットも取り外し、銀の髪飾りを付けなおす。

 服もマントを脱ぎ棄てて、ソロに提案されていた闇の衣を身にまとった。

 

 そうして見た目を一新し、心機一転、ソフィアは新たに再興を始めたアレフガルドを巡ろうと、洞窟を後にした。

 

 

 

 [アレフガルドにて]

 

 

 ソフィアのアレフガルド放浪はとんとん拍子に進んだ。

 まず彼女はマイラの村に行って温泉を楽しみ、南へ向かってリムルダールへと向かった。

 魔法のカギを作りたい、と語る男性に鍵を授け、彼の夢の後押しをした。

 ガライの竪琴を返却し、メルキドで完成したゴーレムを見に行った。

 

 どの町の住人もゾーマ討伐前には見られなかった明るい顔で、幸せそうに暮らしていた。

 

 アレフガルドの再興の一歩を見届けたソフィアは満足し、自身も安住の地を探すべく、アレフガルドの放浪を続けた。

 

 

 [アレフガルド某所]

 

 ソフィアが旅を続けていると、とある山地にて異質な存在を感じ取った。

 気配をたどっていくと、空間にひずみがあるように見られた。

 

 「これは…何?見たこともない異様な現象。空間が遮断されている?いや、これは、[スキマ]のような……」

 

 しげしげとその歪みを眺めていると、突如、歪みに亀裂が入る。

 その亀裂から、徐々に[スキマ]が開いていく。

 

 その[スキマ]は両端がリボンで結ばれ、奥は暗く、さらに不気味なことに、数多くの目が存在した。

 

 「まさか、ゾーマとは別の脅威がアレフガルドに迫っているというの?」

 

 しかし、勇者の行方は分からず、ようやく平和を享受し始めた住人たちに伝えるのも憚られた。

 

 ゆえにソフィアは単身、その脅威を取り除かんと決意したその時。

 

 スキマに強大な引力が発生し、ソフィアや周りの草や石などを吸い込みはじめる。

 

 

 

 

 「ソロも、アレフガルドもようやく平和になったの。それを脅かすのなら、上等、私が食い止めて見せるわ」

 

  

 

 そうして、ソフィアはその引力に身を任せ、[スキマ]の中に飛び込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




皆さま初めまして。
作者のときわきゅんと申します。

東方×ドラクエを読んでみたいなぁと思いつつも、私の趣味にドンピシャなものがなかったのでいっそ自分で作ったろ!!と思い立って、執筆を始めました。

こちらプロローグなので、まだ東方要素はほぼないし、なんならドラクエ3のネタしかありませんが、次回以降から完全に東方の世界になる予定なので悪しからず。

私の妄想、拙い文章にお付き合いいただけますと私がとても喜びます。
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