妹紅に連れられてやってきたのは「甘味処」と書かれた店だった。甘味処とは言うが、昼前から夕暮れまで営業しているらしく、スイーツだけでは無くちゃんとしたランチなども扱っているらしい。私は最初、1番安いものを選ぼうとしたが、
「それが食べたいのかい?もし安いものを、なんて考えてるなら要らぬ世話だよ。お金には困ってないんだ、ちゃんとした昼食を取りな。ほら、この焼き鮭定食なんかおすすめだよ。」
なんて言われたものだから、私は焼き鮭定食を頼むことにした。対して妹紅は白玉ぜんざいを注文していた。
「妹紅こそ、それだけで良いの?私ばかり申し訳ないわ。」
「あー、いや、良いんだ。私はそんなしっかり食べなくても良い体質でね。朝軽く食べたから今はそれで十分なのさ。」
妹紅が目を逸らしながらした返事で、この話は打ち切り、店員に注文をお願いした。
〜少女食事中〜
「そういえばソフィア。あんたの話を聞きたいな。」
「私の居た土地の?」
食事中、まぁ妹紅はとうに白玉ぜんざいを食べ終わっていたけれど、ふと私に尋ねてきた。
「そうだ。私は最初、ただの外来人かと思って接していたんだが、一緒にいるうち段々と違和感を抱き始めてな。」
「違和感?」
「あぁ、まずあんたを見つけた時は何も思ってなかった。寝起きで惚けて居たのかもしれないが。違和感を抱いたんだ。その後数時間ほどあの竹林をうろついていたと聞いた時だ。」
「……?なにかおかしな事でもあった?」
「あぁ……、というのも、さっき話したが、ここは理性のない弱小妖怪を除き、妖と人が共存する理想郷だ。つまり、理性のない弱小妖怪は野生の獣みたいに襲ってくるんだ。そしてあの竹林にはそういうのがいくらか住み着いてる。」
「…でも、私は1度も襲われてないわね。」
「そう、そこだ。アイツらは理性が無いとは言え、本能的に勝てないと分かった相手には余程近寄らない。並の人間なら襲われちまうが、ソフィアは1度も襲われていない。だから、あんた、普通の人間では無いだろ?ってな。」
……なるほど。考えてもみなかった。まぁ、別に隠してる訳でもないし、話しても問題はないでしょうね。
「わかったわ。軽く説明しましょう。私がいた土地はアレフガルドと呼ばれる大陸よ。そこには魔物が多くいて、私はその魔物たちと戦う魔法使い。自慢するわけじゃないけど、あそこで私の右に出るほどの魔法使いはそう居ないでしょうね。」
「なるほど!優秀な魔法使いだったのか、ならそこいらの有象無象の小妖が襲わないのもよくわかるな。先も言ったが、アイツらは危険察知の本能だけは優秀でな。」
「ということは、ここいらの妖怪はアレフガルドの魔物より力は劣るのね。」
つまり、小妖たちはアレフガルドに害をなさない。迷い込んだとこでそこいらの魔物にすらかなわず餌にしかならない。少なくともそれだけは確かだろう。
「……ところで妹紅。私からも質問していい?」
「あぁ、なんだ?」
「そこらの小妖は、という言い方が気になるわね。つまり、もっと恐ろしい妖怪、ないし実力者はいるのね?……たとえば、妹紅ほど力を持つモノが。」
「………まぁ、わかるか。そうだよ。この幻想郷にはそこらの弱小なんか塵のように吹き飛ばせる奴らが沢山いるし、私もその内の1人だ。」
「やっぱりね。貴女の口ぶりだと、少なくとも『貴女と一緒にいる間は妖怪に襲われる心配がない』ことがわかる。だから貴女はあの竹林の護衛かつ案内人をやってるのよね。」
「…そういうことになる。」
「じゃあ妹紅、貴女は…」
「あぁ!そうだ、ソフィアは魔法使いなんだよな。」
質問を遮られてしまった。あまり、自分のことはつつかれたくないらしいわね。聞きたいことがあれば、もっと親しくなってからね。
「……えぇ、そうよ。私は魔法使い。あそこでは賢者とも呼ばれていたわ。」
「賢者ね、まぁいい。幻想郷にもいくらか魔法使いが居るんだ。もしかしたら、そいつらとなら幾分話が合うかもな、と思ったんだよ。」
「そうなの?幻想郷にも……。」
「そうそう、なんなら、今から行く博麗神社にもよく入り浸ってるのが1人いる。まだ駆け出しらしいが、成長著しく、凄まじい突破力を持つ奴だ。もしかしたら、今もいるかもな。」
「へぇ!ますます神社に行ってみる必要があるわね。」
「よし。そうと決まれば、飯を食ったら早速行くか。まぁ私はこの後にも用事があるから、人里の出口までだけどね。安心してくれ、そこからは一本道だ。」
「わかったわ。忙しい中ありがとう。」
そういって話を打ち切り、私は残りの食事に手を伸ばした。
……………
私たちは会計を済ませて店を後にした。
食事は非常に美味しく、また、食中にも有用な話を聞けた。
「さ、じゃあ神社に向かおうか。」
そう言った妹紅に連れられて歩みを進めて行く。
「ところで、さっきの話だけど」
「うん?」
「妹紅は幻想郷には実力者が沢山いると言ったけど、要注意みたいな人達はいるの?」
妹紅は歩きながら腕を組み、「うーん」と唸りつつ考える。
「そうだな、歩きながらいくらか紹介しよう。まず、太陽の花畑と呼ばれる土地にいる、風見幽香。単体のスペックが桁違いに強い。花畑を管理していて、まれにこの里にも訪れる。理不尽に襲いかかることは余程無いが、彼女が大事にしている花に下手に触れたりして怒りを買うと、圧倒的なまでの暴力の並の波に押し流されるだろう。
次に、吸血鬼 レミリア・スカーレット。紅魔館と呼ばれる真っ赤な屋敷の主だ。吸血鬼だから生活リズムが異なり基本的に夜型で、屋敷から出ることもそう多くない。が、気まぐれな性格で、こいつに関しても怒らせるとマズイが、怒る基準すら曖昧だ。さらにその妹に、精神状態が不安定なフランドール・スカーレット。ほとんど屋敷の奥から出てこないが、万一にも出会ってしまえば、狂気に犯され制御不能の破壊の能力に木っ端みじんにされちまうだろう。
また、鬼の伊吹萃香。こいつ自体は陽気な性格の呑兵衛なんだが、その分人への好き嫌いが明確に出やすく、自由気ままで神出鬼没。そもそも 鬼 という種族がかなり強力だ。」
と、その後もつらつらと説明を続けてくれる。そしてーー
「そして、この幻想郷の創設者。妖怪の賢者とも呼ばれる八雲紫。一応この土地の維持が目的だから無意味に秩序を乱すことはしない。が、まぁ何を考えてるのかよく分からんやつで、態度や表情、言い回しがいちいち胡散臭い。おまけに妖としても随分と強力だから、万が一にも戦闘は避けるべきだ。おそらく…あんたが迷い込んだきっかけの[スキマ]もこいつによるものだ。」
ドクン、と心臓が鳴ったような気がした。
こうも早く、転移の原因のヒントを得られると思っていなかった。確実とは言えないだろうが、私はこの情報を心に深く刻み込んだ。
「……とまぁ、パッと思いつくのはこれくらいかな。大妖怪ってのは理性があるから無秩序に暴れたりはしないが、もし出会ったのなら怒らせないよう関わり方に気をつけるべきだ。全員悪い奴らじゃ無いんだが……、まぁ、注意するにこしたことは無いよ。」
そう言って、妹紅は話を切り上げる。
「ありがとう。参考になったわ。」
「なら良かった。さ、もうすぐ門だよ。出るまではついて行ってやるからさ。」
「重ね重ねありがとう。お陰で助かったわ。いつかお礼をしなくちゃ。」
などと話ながら、守衛さんに挨拶をしつつ門を出る。
「あとは一本道だ。お礼、楽しみにしておくよ。」
「えぇ。また会いましょう。」
そうして、妹紅と別れて神社をめざして歩き始める。
まずは神社へ。迷い込んだ外来人は皆行くと言うし、何かもっも有益な話、出会いがあるかもしれない。
少しばかり胸を弾ませながら先を行く。
……………
「行ったか。」
面白いやつだった。人間でありながら、里の人たちとは違う、どこぞの素敵な巫女さんや魔法使い、どっかのメイドや常識破りの緑巫女に似た雰囲気の外来人だった。
「さ。結構時間も経っちまったな。輝夜を待たせちまってる。」
なんて、蓬莱人なんだから、たかが数時間程度さして気にもしてないだろうけど、独りごちる。
そう思い踵を返して竹林へ戻ろうとする。と。
「はぁーい。蓬莱人さん。お加減はどう?」
……あぁ、胡散臭い話し声が聞こえてきた。こいつも大概神出鬼没だ。嫌だな、反応したくない。
「おや?1000年生きてきてついに難聴?老化が始まってるのかしら。」
蓬莱人なんだから、老化なんて無いのに。人が未だに少し気にしてることにずけずけと踏み込んできやがる。
「……なんだい?幻想郷の賢者さんよ。」
後ろを振り返ると、それは不気味な[スキマ]から上半身を乗り出して、八雲紫 が、そこに居た。
キャラの喋り方とかを原作に忠実に再現したい欲があるんですけど、そこ拘りすぎるとむしろ何も書けなくなるので、あまり気にしないことにしました。
ご寛恕賜りますよう、お願いします。
投稿頻度もすっとろいですが、完結させる意思はあるので何卒