境界の守り手達   作:木野兎刃(元:万屋よっちゃん)

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という訳でワートリ杯参加させて頂きます。

漫画はちゃんと読んで無くて、アニメ見て勢いだけでBBFを買った男です。

よろしくお願いします。


その男、勇者か悪魔か

プロローグ

 

界境防衛機関『ボーダー』。近界民から人々を守る為に少年少女達が訓練や任務に勤しんでいる。そんなボーダーには幾つかの都市伝説が存在する。

 

本部長が司令の車を真っ二つにしたとか、精鋭部隊の隊長が酔ってポストと戦ったとか、ボーダー推薦で大学入学した事で親が泣いて喜んだとか。

 

そんな様々な噂が実しやかに囁かれているボーダーだが、一部の隊員の間ではある種の名物となっているものがある。

 

 

「堤さん、堤さん⁉︎」

 

 

そんなボーダーの一室で悲鳴ともとれる叫び声がこだまする。空となった皿の前に突っ伏し倒れ込む男、堤大地。

 

 

「あら?いつもと趣向を変えてみたのだけど駄目だったかしら」

 

 

キッチンから出てきて倒れ込む堤を見て呟く加古望。彼女の趣味は創作料理。厳密に言えば創作炒飯を振る舞うのが趣味である。

 

幼い頃から料理をしてきただけあり、その腕前は確かなもので振る舞われる炒飯は絶品であるものが多い。しかし、ボーダー隊員の中ではある種のホラーとして有名である。

 

「加古さん、今回堤が食った炒飯はどんなもんなんだ?」

 

 

「炒飯って基本しょっぱいものでしょ?堤くん最近疲れてるみたいだったし甘いものでも食べてもらおうと思って塩胡椒じゃなくて砂糖を使ってみたの」

 

倒れた堤を肩を叩きながら恐る恐る炒飯の内容を聞く男、柿崎国治。柿崎の問いに満面の笑みで答える加古。

 

ボーダーで有名となっている理由はここにある。加古の創作炒飯はアレンジが独特なのだ。7割の確率で絶品の炒飯が出てくるのだが、3割の確率で外れが出てしまう。

 

たかが3割だが、されど3割。加古の炒飯を食した者の多くはこの3割を引き続けている。

 

 

「それでね、砂糖だけじゃ甘味が足りないと思って生クリームとかも色々出してみたの。でも………そんなに美味しく無かったかしら」

 

 

加古は決して悪意から創作炒飯を振る舞っているわけではない。善意、純然たる善意から炒飯を振る舞っている。

 

そんな善意で振る舞った炒飯の感想を笑顔で求めてくるのだ。不味いと言える者はボーダーに存在しなかった。

 

ある隊員には炒飯という単語だけで全てが伝わるというほど悪評が目立つ加古の創作炒飯だが、そんな大外れな創作炒飯をものともしない男がいた。

 

 

「別に不味くは無いよ。個人的には甘いのよりかは塩味効いてる方が好き」

 

 

「龍夜君は感想だけじゃなくて改善点も言ってくれるから助かるわ」

 

 

その男の名は桐谷龍夜。加古と同い年の隊員である。

 

 

「ザキくん食べないの?食わないなら貰っていい?」

 

 

「あら?お腹空いてたの。なら新しく思いついたレシピあるから少し待っててくれる?」

 

 

そう言いながら鼻歌を歌いキッチンへと向かう加古。

 

加古が調理を開始したのを確認すると柿崎は小声で龍夜に話しかけた。

 

 

「あの、本当に平気なんですか?」

 

 

「望ちゃんの料理は昔から食べてるからな〜。もう慣れたかな。昔に比べたら上手くなった方だよ」

 

 

「そ、そうなんすか」

 

 

そう語る龍夜の背中には哀愁のような何かが漂っていた。冷や汗を流しながら龍夜の話に頷く柿崎。

 

 

「この後防衛任務だろ?食べてやるから皿貸しな」

 

 

「桐谷さん……………」

 

 

救世主はここにいたのかと、柿崎の表情はパッと明るくなる。柿崎は気がつけば龍夜の前に皿を差し出していた。

 

 

「誘ったの俺だし、もし死なれたら照屋ちゃんに怒られちゃうし」

 

 

「別に文香はそんな事で怒らないですよ」

 

 

特にリアクションを取る事無く、炒飯を平らげていく龍夜に若干引き気味の柿崎だが、ある種の尊敬の念を覚え始めていた。

 

 

「出来たわよ〜ってあら?駄目じゃない、龍夜くん。それ柿崎君の分でしょ」

 

 

「照屋ちゃんから呼ばれたみたいだよ。なんか任務前に打ち合わせしたい事があるんだって」

 

 

「そうなの?それならしょうがないわね」

 

 

「そ、そうなんですよ加古さん。炒飯はまた今度ご馳走になりますね」

 

 

柿崎は加古に頭を下げ、部屋を出る柿崎。

 

 

「それで?その炒飯はどんなの?」

 

 

「塩味効いてる方が良いって言ったでしょ?だからちょっと高めの岩塩とか色々な塩を混ぜてみたの。どうかな」

 

 

「ちょっと塩の効きが強いかな?さっき出した甘味炒飯と合わせればちょうどよくなるかも。今度堤に食わせてあげてよ」

 

 

「そうね、甘いのと塩辛いのって交互に食べると良いみたいな事聞いた気がするし次はその線で試してみるわ」

 

 

「それじゃ、俺は堤を諏訪隊の作戦室まで連れてくよ。ご馳走様でした」

 

 

「お粗末さま」

 

 

手を合わせながら感想を述べる龍夜。そして龍夜は倒れて動けなくなっている堤の肩を担ぎ部屋を出た。

 

その後堤を諏訪隊の作戦室まで届けた龍夜。加古の炒飯を食べた後だというのに平然としているその姿は一部の隊員から勇者と言われている。

しかし、加古のチャレンジ精神を諌めない事から魔王に供物を捧げる悪魔とも言われていた。

 

これはそんな勇者とも悪魔とも言われている桐谷龍夜の物語である。

 




主人公の桐谷龍夜は加古ちゃんや、二宮くんと同い年ですが、入隊時期は小南達旧ボーダー組とほぼ同時期ですが若干遅れての入隊です。

ポジションとか所属隊は次回以降明かしていくつもりなのでよろしくお願いします。
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