桐谷龍夜という人物は割と苦労人である。同い年でボーダー隊員をやっている者は加古を含めて3人いるが3人とも一癖も二癖もある。
炒飯だけでなく、マイウェイをマイペースにモデルウォークする加古だけではない。
「旋空孤月」
場所は住宅が並ぶ市街地。屋根の上から飛び出してきた黒いロングコートを揺らしながら両手に持ったアタッカー用トリガー、孤月のオプショントリガー、旋空を放つ。
「それは読めてたよ、慶」
上空から放たれた旋空に対し、最低限の面積でシールド展開しながら後ろに下がる。
シールドは展開する面積を抑え、集中させればかなりの防御力を発揮する。旋空は孤月のリーチを瞬間的に伸ばすというもの。
男が放った二刀での旋空孤月は効果範囲が広く避けるのは難しい。龍夜は急所を集中して守り多少のダメージを受けることを前提とし男から距離を取った。
「だろうな。だけど、この距離なら俺の間合いだぞ」
黒いロングコートの男の名は太刀川慶。ボーダーの精鋭部隊の証であるA級部隊、太刀川隊の隊長である。
ボーダーには隊員同士を戦わせるランク戦というシステムが存在しており、部隊間でのチームランク戦と個人ランク戦がある。
この太刀川という男はチームでも個人でもボーダーでトップの男なのだ。
屋根から飛び降りた太刀川二刀の孤月を構える。龍夜も孤月を構える。2人の距離は剣士が斬り結ぶには遠い。
「旋空孤月」
「不意打ちならともかく正面からの旋空は効かないって」
太刀川の旋空の軌道が読めていたのか、龍夜は姿勢を低く下げる事で旋空を避ける。そして一気に距離を詰める。
近づく際、孤月を持っていない方の手でトリガーを展開する。
「ハウンド」
手の平には収まりきらないほどのトリオンキューブが展開され小さく分割される。
トリガーには幾つか種類があり、使用するトリガーによってその隊員の役割というものが変わる。
そして小さく分割されたトリオンキューブから弾が射出される。
射出された弾は大きく弧を描きながら太刀川へ襲いかかる。太刀川はシールドを大きく展開し弾に備える。
トリガーというのはその性質上同時に起動出来るトリガーは原則として二つまでだ。旋空のようなオプションでなければメイントリガーから一つ、サブトリガーから一つといった具合にだ。
太刀川は基本的に二刀の孤月を両手に持つ所謂二刀流の攻め重視のスタイル。
シールドを展開するという事は、その分太刀川の手数を減らす事になる。
龍夜は太刀川がシールドを展開したのを確認すると一気に加速して距離を詰め鍔迫り合いとなる。
そしてそれと同時に弧を描いていた弾が太刀川が展開したシールドに着弾する。
「バリバリのアタッカーの癖に弾トリガー使ってんじゃねぇよ、龍夜」
「お前らがしつこいからシューターになろうとしたのに俺がメンテ出してる間にトリガーセット無理矢理変えたんだろうが」
「こんな楽しいバトル出来るの迅とか小南以外だとお前くらいだしな」
「このバトル馬鹿が。これに負けたらレポート課題ちゃんとやれよ」
「勿論、俺が勝ったら課題手伝えよ」
激しい鍔迫り合いをしながら気楽に話す龍夜と太刀川。
使用するトリガーによって分かれるポジションは基本的には四つ。近接系トリガーを装備したアタッカー、弾トリガーを直接射出するシューター、銃を使って弾トリガーを放つガンナー、そしてスナイパーだ。
龍夜は最初孤月を使っていたが、学業を生贄に現在の実力を手に入れた太刀川やその他同時期に入隊したライバル達から逃げる為アタッカーを辞めている。
しかし、それでライバル達が諦めることは無くあの手この手で龍夜をアタッカーに戻そうとした。
最終的には龍夜が折れアタッカーに再転向する事となった。
「お前とやると結構長い時間やり合えるから楽しいんだよ」
「俺も嫌いじゃないけど、そろそろ切り上げないと課題やる時間が無くなるからな。仕留めさせてもらうぞ」
「わざと負けられると萎えるんだが」
「馬鹿、負けるのはお前だよ」
龍夜は弾トリガーも併用するが近接では孤月を両手で持ち戦う。状況次第では弾も併用するがゼロ距離での弾トリガーの使用は基本的にはしない。
太刀川と龍夜の孤月での戦いは基本的なスタイルの違いからか長引く。膠着した状況を変えるのがサブトリガーであったりオプショントリガーとなる。
旋空は発動するのに距離がいる為使えない為太刀川に決めてはない。
それに対して龍夜には弾トリガーがある為、旋空が使えない距離程度に離れれば一方的に太刀川を攻撃できる。
「この距離じゃ弾は使えないだろ?そう簡単に離れさせもしないし、少しでも隙を見せたら真っ二つだぞ」
「結構長い時間やったせいか疲れたか?」
「あ?」
突然の龍夜からの問いに思わず顔を顰める太刀川。
太刀川と龍夜が個人ランク戦を始めてそれなりの時間が経った。多少の疲れはあるかもしれないが太刀川としては気にする程度のものではないし、せっかく楽しくなっているのに疲れたのでお終いという事にはしたくない。
「置き弾あるの見落としてるぞ。ハウンド」
龍夜がそういうと龍夜の背後から弾が飛び出してくる。咄嗟の事でシールドの発動は間に合わず両腕が落とされてしまう太刀川。
そしてその隙を龍夜は逃す事無く、龍夜は太刀川を両断した。
「やられたぜ」
『太刀川、ダウン』
太刀川はそれだけ言い残すと機械的なアナウンスが響く。太刀川の課題をかけた2人の戦いは龍夜の勝利に終わった。
「いや〜、負けたぜ。それにしてもお前が置き弾使うとは思わなかったぜ」
個人ランク戦用のブースから出た太刀川は先に出ていた龍夜に声をかける。
「滅多に使わないし、個人ランク戦でしかける奴もあんまり居ないからね。決まって良かったよ」
「よし、今度は置き弾も頭入れとくからもっかいやろうぜ‼︎」
「いや、やめた方がいいよ」
「はぁ?なんでだよ。別に課題くらい後で「けーいー?」っ!?」
興奮気味で再びランク戦に誘う太刀川は突然肩を掴まれ固まってしまう。
錆びついたか機械のようにぎこちなく、ゆっくりと振り返るとそこには笑顔である筈なのに目が全く笑っていない男、忍田真史がいた。
ボーダーにおける幹部の1人、本部長という役職でありながら龍夜と太刀川の師にあたる人物だ。
「龍夜と約束したんだろ?ランク戦が終わったら課題をやるって」
「し、忍田さん。別に課題をやらないとは言ってないぞ。もう一戦だけしたらやるつもりだったんだ。本当だぞ‼︎」
「言い訳無用‼︎」
「あっ、ちょ。首、締っ、龍夜‼︎お前も手振ってないでなんとか、ちょ、忍田さん、みんな見てるし引きずるのだけ辞めてくれ」
襟首を掴まれズルズルと引きずられていく太刀川を笑顔で手を振りながら見送る龍夜。
携帯を見ると加古からメッセージが入っていた。内容を確認しようとしたら堤に肩を叩かれた。
顔を青白くさせながらも笑顔でサムズアップし、そのまま加古隊の作戦室へと向かう堤に無言の敬礼をし、続いて加古隊の作戦室へと向かった。
他のワートリ杯作品読ませて貰ったんすけどレベルたけぇ。なに?執筆能力ブラックトリガーなの?質の良いワートリ作品に出会えてホクホクです。
主人公の龍夜くんは加古と幼馴染で加古が料理を始めた頃から試食に付き合わされているのでチャーハンでは死にません。しかし、幼い頃の死んだ回数を含めるならとんでもない事になります。