春、それは出会いの季節。入学や入社、クラス替えなど人間関係の構築に最も重要な季節だ。
ただし、それは春という季節の一側面でしかない。出会いの季節は別れの季節でもある。クラス替え程度ならまだしも、入学や入社により今までの人間関係が引き継げないものも多いだろう。俺もその例にもれず、すべての人間関係が消え去ってしまった。地元を離れ、地方の大学へ行くことが決まったとき気づいてしまったのだ、あ、ここ友達も知り合い誰も居ねえ…と。もともとたいそうな人間関係を構築していたわけではないが、それでも数少ない友人たちと別れ、私は孤独に大学生活へと望むこととなった。
しかし、それでも春は出会いの季節なのだ。もしかしたら彼女ができるかもしれないという淡い期待と孤独の不安を胸に抱きつつ、入学式へ向かう。
そんな中で出会ったのが、先輩だった。
・・・
大学構内へ入ろうとすると、サークルの勧誘のためか人が多く存在し、チラシなどを配っている。ノルマでもあるのかと思わせんばかりに来る人来る人へと熱心にチラシを配るさまは少し怖い。しかし、そんな怖さとは裏腹にチラシを配る際にはあっちに行けばいいよ、など親切に教えてくれる。チラシには~~サークル新歓!○○教室!などと書かれている。自分と同じ新入生であろう先に来ていた人々はみな、手に多くのチラシを持ち構内へと入っていく。案内されるままに構内へ入り、流されるままに説明を受け、資料をもらい、なんだかよくわからないうちに入学式が始まり、終わった。長い物には巻かれろとよく言うが、巻かれた結果得たものは無でした。ぜんぜんわからない、俺たちは雰囲気で入学式をやってる。
入学式が終わり、何をすればいいかわからないまま、とりあえずもらった資料をよく読もうと座れる場所を探す。ちょうど机もある場所が空いていたためそこに座った。大学内ではまだチラシ配りをしているのか上級生らしい多くの人があっちこっちへと移動し、新入生に声をかけては離れを繰り返している。そんな風景をぼーっと眺めながら、どの資料から読んだものかなどと考えつつ資料を机に置いていると話しかけられた。
話しかけてきた人は美人な女性だった。濡羽色の長い髪、目じりが吊り上がった猫のように大きい目、肌は雪のように透き通っており色白だ。思わず見惚れてしまいそうになる。
「新入生だよね?資料広げてどうかしたの?なにかわからないことでもあった?」
「い、いや、とりあえず読んでおこうかなって思って…」
声も小さく、少しどもってしまった。
「そうなんだ、えらいね」
そう言うと、彼女は隣の席へ座ってきた。心拍数が上がる。緊張からか手汗もにじみ、体温も上がっている気がする。なぜ、なぜ隣へ!?なんかいい匂いする!?彼女できるかもなんて考えていたが、急に女性が、それもとんでもなく美人が隣へ来ると思うことはただ一つで、怖い、ただひたすらに怖い。いや、嬉しいという感情がないわけではないがそれ以上に疑問と恐怖が湧く。美人局?宗教勧誘?怪しい壺とか絵画?
「な、なにかようですか?」
「資料広げてたし、なにかわからないことでもあったのかな?って思って。余計なお世話だったかな…?」
そう言い、少し不安げな顔をする彼女。
すみません、いい人でした。心の中でいろいろ疑ったのが申し訳ないです。ほんとすみません。孤独、新しい土地、急な展開、といろいろあり少し警戒心が強くなりすぎていたのかもしれない。
世の中そんなに捨てたもんじゃないよね!。
「いや、ありがとうございます。でも、とくにわからないところとかはなくて、ちょっと資料読んどこうかなって思って」
嘘である、いや、正確に言うならよくわからないまま入学式が終わったためどこまで説明されたかもわからなく、所謂、わからないところがわからない状況だ。まあ、とはいっていも流石に資料を読めばどうにかなるだろう、最悪、事務局とかに電話すればいいだろう。
少し、沈黙があったのちに彼女から会話が切り出された。
「そっか、あ、サークルとかはもう決めた?」
「いや、まだです」
「そかそか、新歓でいろいろやってるから気軽に見てったほうがいいよ、ご飯とかも食べれるし」
「あ、それは助かりますね、いろいろ見てみます」
「あ、よかったらうちのサークルの新歓も来ない?」
「えと、じゃあ、行かせていただきます」
い、行きたくない。今日はもう疲れたし、帰りたい、横になりたい、寝たい。しかし、こんな直球に誘われてしまっては断りづらい。というか、こんなきれいな人に頼まれて断れる人いる?いや、いない。
「どこでやるんですか?」
「準備とかもあるし、また追々伝えるね。じゃあ、連絡先交換しようか」
唐突の提案に声をあげて驚きそうになる。彼女できたらいいなぁ、なんて思ってたがまさかこんなにはやく女性の連絡先、それもこんな美人のを手に入れることができるとは。先ほどまでの憂鬱な気分はどこへやら、テンションが上がってきた。新歓だろうとなんだろうと行かせていただきます。
連絡先を好感した後は彼女と別れ、しばらくした後に新歓は後日やること、場所などを伝えられた。
テンションが上がっていた俺はこの時、ところどころあった違和感に気づくことができなかった。
・・・
後日、うきうきとした気分で大学へ向かう。少し迷ったが、入学式の時に貰った構内の地図を参考にし新歓が行われるという教室についた。教室内は人が集まってわいわいしてる…と思いきや、騒がしさはなくむしろその逆で静けさだけが辺りに満ちていた。この時、すこし嫌な予感があったが、行くと約束してしまった手前、今更帰るというのは後味が悪い。すこし、勇気を出し教室の扉を開く。
教室の中には、先輩がいた。正確に言うなら、
この時、少しづつ違和感に気づき始めた。
なぜ、他の人たちがチラシを配りながら勧誘をしていたのに先輩は
猛烈に嫌な予感がする。
「あの、他に人はいないんですか…?遅れてるとかですかね…?」
「いないけど?」
恐る恐る聞いた質問に返ってきたのは、さも当然といった返答だった。怖えよ、馬鹿。
「…そういえば、何のサークルなんですか?」
「決まってないよ」
サークルの新歓に行って、何のサークルか聞いた返答が決まってないって、そんなことある?あっていい訳ねえだろ。そうだ、帰ろう。今すぐ帰ろう。
「あ、そういえば、ちょっと今日用事があって…申し訳ないんですけど帰りますね」
そう言って、そそくさ帰ろうとすると
「ダウト、君、下宿してるし、地元から出てそんなすぐに用事なんてないでしょ?」
「な、なんで地元出てるってわかるんですか?」
「だって君、新歓でご飯たべれるって言われたとき、助かりますって言ったじゃん。下宿してるからご飯の用意とかなかったんじゃない?私もそうだったからわかるよ」
笑みを浮かべながら言う彼女は少し怖い。今すぐ帰りたい気持ちでいっぱいです。しかし、言い訳もむなしく言い破られ退路を断たれた。物理的にも。彼女はほらほらと言い、俺を席に座らせ、その後扉を閉めた。
「あ、サークルなんだけど、厳密に言うとサークルじゃないんだ」
「…同好会ってことですか?」
「そうだね、人数的に同好会になるのかな?君と同好会を作りたいんだ」
「なんで俺なんですか…?」
そう聞くと彼女は恥ずかしそうしながら俺にこう言った。
「一目ぼれしたから」
拝啓、故郷のお父さんお母さん。僕はもしかしたらやばい人に目をつけられたのかもしれません。
続くかは正直わかんないです。できれば続けたい。というか、もう一つもいい加減に続きを書きたい。