雷人の詩   作:バリッか

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おかしな部分はご指摘いただくと幸いです







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『ギフトゲーム名 The PIED PIPER of HAMELIN

 

   ・プレイヤー一覧

         ・現時点で三九九九九九九外門・四〇〇〇〇〇〇外門・境界門の舞台区画に存在する参加者・主催者の全コミュニティ

 

   ・プレイヤー側・ホスト指定ゲームマスター

         ・太陽の運行者・星霊 白夜叉

 

   ・ホストマスター側 勝利条件

         ・全プレイヤーの屈服・及び殺害

 

   ・プレイヤー側 勝利条件

         一、ゲームマスターの打倒

         二、偽りの伝承を砕き、真実の伝承を掲げよ

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します

                     “グリムグリモワール・ハーメルン”印』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 空より幾つも落ちてくる黒い封書。

 その光景に沈黙していた会場だったが、しかし一人が恐怖を爆発させたことによって会場は大混乱に陥っていた。

 

「これが、魔王の襲来……!」

 

 舞台袖から飛び出した礼司は、空を見上げる。

 予言で知らされていたとはいえ、実際にその場に相対すれば緊張の一つもするというもの。

 何より、

 

「礼司、アレ」

 

 耀が示すのは、バルコニー。

 そこでは、今まさに黒い風の壁が膨張してあの場に居た白夜叉を除く面々を弾き飛ばしていたのだから。

 “サラマンドラ”は観客席側へ。そして、“ノーネーム”は舞台へとそれぞれ飛ばされた。

 幸いと言うべきか、主戦力が一つの場に集まれたことは僥倖だろう。

 着地した十六夜の元へと皆が揃った。

 

「逆廻君!状況は?!」

「白夜叉が閉じ込められたな。黒ウサギ、こいつは魔王の襲撃って事で良いんだな?」

「はい」

 

 真剣な表情で頷く黒ウサギ。この間にも、観客席は混乱の坩堝だ。我先にと魔王から逃れようと蜘蛛の子を散らすように逃げ回っている。

 

「白夜叉の“主催者権限”は破られてないんだよな?」

「はい。黒ウサギがジャッジマスターを務めている以上、誤魔化しは利きませんから」

「つまり、相手はルールに則った上でゲーム盤に現れてる訳だ…………ハッ、流石は魔王様。期待を裏切らねぇな」

「言ってる場合じゃないわよ。どうするの?ここで迎え撃つのかしら?」

「そうなる………が、全員で向かうのは宜しくないだろ。最悪の場合もある。それに、“サラマンドラ”の奴らも気になる。アイツら揃って、観客席の方に飛ばされたからな」

「では、黒ウサギがそちらへと参ります。その間は魔王には、十六夜さん、礼司さん、レティシア様の三人で備えてください。ジン坊ちゃんたちは、白夜叉様の方を御願いします」

「分かったよ」

「人探しなら、僕が回った方が速くないかな?」

「いえ、相手の力が分からない以上、最大戦力で当たるべきです」

 

 きっぱりと言い切った黒ウサギに、それ以上礼司は何も言わずに頷いた。

 一方で不満があるのか、飛鳥の眉間に皺が寄る。

 

「…………ふん、また面白い場面を外されるのね」

「そう言うなよ、お嬢様。“契約書類”には白夜叉がゲームマスターに指名されてる。あの状態でどんな影響があるのか確かめねぇとな」

「――――その御話、我々にも一枚かませていただいて宜しいですか?」

 

 一同が声に振り返れば、そこに居たのは舞台に上がってきた“ウィル・オ・ウィスプ”のジャックとアーシャだ。

 

「おおよその話は聞かせていただきました。僭越ながら魔王とのゲーム、我々もご助力させていただきます。良いですね、アーシャ」

「う、うん、頑張る」

 

 ジャックに背を押されながら、アーシャも頷く。

 突然の魔王とのゲームに緊張が隠せていないが、しかし一つでも戦力が多い事に越したことは無い。

 黒ウサギが頷き、指揮を執る。

 

「では、お二人は黒ウサギと共にサンドラ様の捜索を。そして指示を仰ぎます」

 

 これで、方針は決まった。後は、それぞれが全力を尽くすだけだ。

 時を同じくして、逃げ惑う観客が気付く。

 

「見ろ!魔王が降りてくるぞ!」

 

 境界壁の上より四つの影が降りてくる。同時に、一同はそれぞれの行動を開始した。

 

「よしっ!黒い奴と白い奴は俺がやる!礼司とレティシアは、デカいのと小さいのを任せるぞ!」

「了解した、主殿」

「二人とも、無理は禁物だよ」

 

 レティシアが淡々と返事をし、礼司は手刀を構える。

 そして、十六夜は第三宇宙速度をもって、一気に空へと飛び出していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 見た目と中身のギャップ。それは、箱庭を訪れて何度も礼司が体感した事実の一つ。

 十六夜が上空に迎撃に出たのと入れ違うように、レティシアと礼司の二人は、目の前に降りてきた二人?を相手取る事になる。

 一人は、まだら模様のワンピースを着た少女。そしてもう一人、というか人とは到底言えない陶器の巨兵。

 特に後者は、その体に開いた穴から空気を吸い込み、大気の渦を創り出すという中々に厄介なもの――――だった。

 そう、過去形なのだ。

 

「BRUUUUUUUUUM!!!」

「加減は無しだよッ!!!」

 

 雷速移動で上を取った礼司は、そのままジャック戦で使った右手の雷光の手刀を構え上から下への紫電一閃。

 一瞬の内に上空から舞台へと降り立った彼の一撃により、巨兵は天辺から最下部迄一刀両断。同時に落ちてきた特大の雷によってチリすら残さずに消し飛んでしまった。

 その様子を少女は、眺めその瞳を僅かに細める。

 

「へぇ……シュトロムを一撃、ね」

(流石だな、礼司……!)

 

 空を舞いながら、レティシアは内心で同士の実力を賛美する。

 シュトロム、嵐を冠する悪魔なのではと彼女は名前を聞いて判断していたのだが、今やその存在は文字取りチリと消えて風に去った。

 ならば、目の前の少女に集中するのみ。

 槍を携え、タイミングを計って、突撃。

 突然翼を閉じての急降下によって加速した穂先は少女の胸部を見事に捉え、

 

「やったか……!?」

「やってないわ」

 

 その鋭い穂先は、傷一つ付ける事無く少女の体を僅かに持ち上げてひしゃげていた。

 まるで、凄まじく硬い代物へとぶつけたかのような有様に、流石のレティシアも目を見開いて動きを止めてしまう。

 その瞬間、少女の手が槍を掴んだ。

 

「純血のヴァンパイア。手駒にするには、ちょうどいいわ」

 

 槍が引き寄せられ、少女の手より黒い風が発生する。

 暴風ではない。熱い、熱波という訳でもない。

 だが、振り払えない。まるで、見えない何かが体を蝕んでいくように、レティシアの体は固定され、その力が削ぎ落されていった。

 

(な、何だこの風は……!)

「もう、楽になって良い。さあ、目を――――」

 

 少女が言い切る前に極光が瞬いた。

 同時に、その小柄な体が横へと吹き飛びレティシアの体も解放される。

 

「レティシアさんは、僕らの仲間だよ。引き抜きは止めてもらおうか」

 

 ぐったりとした彼女を横抱きに、礼司は少女を睨みつける。

 先程の極光は、移動と同時に蹴りを少女へと叩き込んだ礼司の仕業だ。その破壊力は、並大抵の相手ならばこの時点でケリが付いている。

 だが、

 

「――――痛いじゃない」

 

 斑の少女に大きなダメージは見受けられない。

 

「痛い、痛いわ。さっきの槍よりも、ずっとずーーーっと。でも、許してあげようかしら。貴方が私に、跪くのなら」

「お断りだよ」

 

 生み出した黒雲にレティシアを寝かせてその場を離脱させ、真っ直ぐに礼司は少女を見返した。

 強敵だ。それも、並大抵のものではない。

 

(逆廻君並……いや、それ以上。若しくは、条件付きでの打倒。少なくとも、白夜叉さんみたいな()()()()()()

 

 冷静に相手を測りながら、礼司は全身に電流を走らせる。右手ピンポイントで雷を纏っていた時とは違う、現状の本気。

 だが、両者がぶつかる前に、更なる参戦者が現れる。

 少女と礼司が同時に顔を上げた。

 二人が見る先、この舞台区画一帯を照らすペンダントランプとはまた違う、太陽顔負けの輝きだ。

 

「サンドラさん」

 

 礼司がぽかんと見上げたのは、幼い北側の階層守護者サンドラ。

 だが、今はその幼さはなくその背に負った炎の龍紋と身に纏う炎が、この少女は強者であると声高に宣言していた。

 その姿を認め、少女は笑みを浮かべる。

 

「待っていたわ。逃げられたんじゃないかと心配していたけど」

「…………目的は何ですか、ハーメルンの魔王」

「あ、ソレは間違いよ。私のギフトネームは、“黒死斑の魔王(ブラック・パーチャー)”よ」

「…………二十四代目“火龍”サンドラ」

「あら、自己紹介ありがとう。そっちの貴方も、名乗ってもらえる?中々使えそうな手駒は、覚えておきたいの」

「……“ノーネーム”東礼司」

「“名無し(ノーネーム)”……?まあ、良いわ。それで、目的ね。一つは、太陽の主権者である白夜叉の身柄。二つは、星海龍王の遺骨。要するに貴女の着けている龍角が欲しいの。後は、めぼしい手駒かしら」

 

 だからちょうだい、と見た目にそぐわない蠱惑的な雰囲気でサンドラの龍角を魔王は欲する。

 しかし、欲されてもハイどうぞ、と渡せる代物ではない。それが、魔王となれば猶の事。

 

「…………成程、魔王を名乗るだけあって随分と太々しい。だけど、このような無体を見逃すわけにはいかない。秩序を守る者として、我らの御旗の下に誅してみせる」

「そう。立派なのね、フロアマスター」

 

 その直後に、業火と黒い風がぶつかり合う。

 ただそれだけで発生した衝撃が空間を歪ませ、余波だけでペンダントランプの悉くを粉砕してい仕舞った。

 だが、初撃がぶつかるだけで終わるものではない。これは、始まりの合図なのだから。

 

「ほら、遊びましょう」

 

 宙に浮かぶ魔王。その全身を黒い風が球体状となって覆い、風がサンドラへと迫る。

 無論、迎撃に炎が向かうが相殺が辛うじて。そしてこの間に、雷光が瞬いた。

 

「むっ」

 

 突っ込んだ礼司は、勢いのままに雷光を放つ右の貫手を放っていた。が、その鋭い一撃は黒い風の壁に阻まれて魔王には届かない。

 すぐさま、一歩離れて再び突撃。今度は両手の貫手を連続で交互に放つ。

 宛ら、重機関砲による連射。一発一発が雷速で放たれているのだから、その破壊力も異常そのものであり真面に喰らえば木端微塵にバラバラにされてしまうだろう。

 

「鬱陶しいわね」

 

 しかし、届かない。岩盤だろうと瞬く間に穴だらけにして粉砕してしまうだろう貫手の連打は、黒い風の壁を突破するには足りないのだ。

 反撃の黒い竜巻を躱して、礼司は空へと逃れていた。

 

「あの壁、厄介だな……」

「“ノーネーム”の方」

「礼司で良いよ、サンドラさん……あ、サンドラ様」

「今は緊急事態です。まずは、魔王の討伐を優先しましょう」

「……と言われても、現状僕もサンドラさんの攻撃も通ってる気がしないけどね」

 

 会話をしながら、礼司は落雷を、サンドラは業火をそれぞれ魔王へと叩き付けていた。

 だが、黒い風の壁はその防御を崩さない。

 

「とりあえず、僕が突っ込みます。サンドラさんは、援護を」

「無理はしないでくださいね」

 

 ジンの同士という事で心配するサンドラに頷き、礼司は再び突っ込んでいく。

 先程、シュトロムを粉砕した手刀による一撃。これもやはり届かない、が現状の礼司にとってはこの黒い風と同じく厄介な問題が付きまとっていた。

 

(何処まで発揮できるのか……)

 

 礼司自身は、先程から何度となく自分の全力を発揮しているつもりだ。

 にもかかわらず、己の内側の力の総量は、まだまだ余力があるぞと囁いてくる。

 これは、今までの彼の境遇の弊害。即ち、箱庭に来ても全力全開とは程遠い状況ばかりであったのだから礼司自身も自分の本気が分からないのだ。

 

(まだ?……もっと?)

 

 一撃一撃が、加速度的に速く、強く、鋭くなっていく。

 この状況に、魔王は目を細めた。

 未だに、黒い風の防御は破られていない。合間に飛んでくる火球も、生身で食らえば少しは効くかもしれないが、しかし防御を突破できる様子はない為、目下の脅威は目の前の相手。

 

(まだ本調子じゃないのかしら)

 

 僅かにだが、雷を纏う貫手が黒い風の防御に食い込めるようになってきている。

 しかし、場の状況はこの悠長な戦況を赦してはくれなかった。

 バルコニーから響く、魔笛の旋律。

 ただの笛の音ではない。高く、低く、奇妙な、それでいて聞いたものにはその音色が染み込むような独特のソレは、舞台会場のみならず境界壁の麓全てを塗り替えてしまいそうなほどに広がっていた。

 同時に、音が届いた参加者たちは暴徒と化しており、破壊活動や同士討ちを始めてしまっている。

 ここで、今回のゲームに繋がる。

 即ち、全参加者の屈服、及び殺害。魔笛の旋律を聞いた者たち錯乱し、屈服していく事になるのだ。

 このままでは、場が制圧されるのは時間の問題。だが、対処しようにも魔王に対抗する主力メンバーはそれぞれが各々の戦場に居る。とてもではないが離れられない。

 半ば勝敗が決する。そう思われた瞬間、礼司とはまた違う雷鳴が区画全域に鳴り響いた。

 魔笛の音色が掻き消され、場に居る者たちは音の方向を見る。

 

「そこまでです!!」

 

 幾度もの雷鳴を響かせるのは、軍神・帝釈天より授けられたギフト“疑似神格・金剛杵(ヴァジュラ・レプリカ)”。

 そして、ソレを掲げた黒ウサギの姿があった。

 

「“審判権限(ジャッジマスター)”の発動が受理されました!これよりギフトゲーム“The PIED PIPER of HAMELIN”は一時中断として審議決議を執ります!プレイヤー側、ホスト側は直ちに戦闘行為を中断し、交渉テーブルへの移行を準備してください!繰り返します――――」

 

 高らかに宣言された権限の発動。如何なる者も、箱庭のルールそのものを無視する事は出来ない。

 束の間の安息は、しかし同時にカウントダウンでもある。

 まだ、ゲームは始まったばかりなのだから。

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