イナズマイレブンに似た世界に転生した件について   作:よしたろうex

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  仕事を言い訳にはしたくないですが、更新がしばらく途絶えたら仕事が忙しいんだなと思って下さい。


お嬢様のお父様がいらっしゃる日

「父さん、母さん。地区予選1回戦突破したよ。」

 

 

 1回戦から次の日の朝、家族で食卓を囲む中俺はそう口にした。

 今になってあの激闘を振り返ると、結構危ない試合だったように思う。実際神楽の閃きと策がなければ完封されていたかもしれない。ホント、神楽サマサマの試合だったな。他にも、キラのシュートはやっぱり強烈だったし、影狼先輩のスピードもとてつもなかった。新島先輩の指示も、対策されていたとはいえ的確な指示だった。そしてなんと言っても鶴巻だな。試合前は結構緊張してたらしいけど、そんな緊張を吹き飛ばすいいSB(シュートブロック)だったよなぁ。

 ていうか今更だけど、俺超次元サッカーしたんだよな……。マジで夢のような至福の時間だった。これから先の人生、まだまだ試合出来ると思うと、今からワクワクしてくるな。

 

 そんな事を考えていると、俺の勝利報告に両親が反応する。

 

 

「あら、そうなの!おめでとう、和也。」

 

「すごいじゃないか!何点差だったんだ?」

 

「2-3で1点差。結構ギリギリだったよ。」

 

「へえ、僅差じゃないか。熱い試合だったんだな。」

 

「私も仕事が無ければ見に行けるのにねぇ。ごめんね、和也。」

 

「気にしないでよ。仕事ならしょうがないさ。」

 

 

 両親との会話から察する事ができるかも知れないが、両親はサッカーファンである。当然初めからそうだった訳じゃない。サッカーボールを買ってもらった時はサッカーなんて知らなかった訳だしな。ただ、その頃からサッカーに興味を持ったらしく、仕事で忙しい中ルールを地道に覚えていった。そして今では、テレビで海外のプロのサッカーの試合を見るサッカーファンになっている。いわゆる観戦勢ってやつだ。まさかここまではまるとは思いもしなかったな……。

 両親は共働きで普段から忙しい日々を送っている。だから俺の応援に行けないことを悔やんでいるんだろうけど、俺はその気持ちだけで十分だ。ほんとにいい親に恵まれたな、俺は。

 

 

「なんとか見に行けそうな日は見に行ってやるからな。」

 

「ホントに気にしなくていいって。それじゃ、行ってくるよ。」

 

 

 両親の温かい行ってらっしゃいを背に俺は学校へと向かった。

 

 

 

 

 

 

「2回戦の相手は楽郷中に決まったぞ。」

 

「楽郷中……、聞いたことないですね。」

 

 

 まあ知ってる中学なんて、この前話に出てきた御門中以外ないんだけどな。

 

 

「そうだな……。俺も詳しくはないんだが、なにやら悪魔のような監督がいるって話は聞いたことがあるぞ。」

 

「悪魔のような監督か、厄介やな。」

 

「そうなのか?」

 

「ああ。そういうやっちゃどんな作戦取ってくるか分からへんからな。」

 

 

 鶴巻と磯貝の会話を聞き、俺は影山の顔が思い浮かんだ。影山はイナイレに登場した、勝つためにどんな手段でも取る非常な男だ。まあ物語が進むにつれそういった一面は抑えられていったんだが……、それはまた別の話だ。とにかく、楽郷中の監督が影山のように番外戦術まで使ってくるような奴だとしたら、注意が必要だが……。

 

 

「ふん。偵察に行くわけでもないのに、ここで相手について話していたって無駄だろ。こんなことに時間を使うくらいなら、さっさと練習したらどうだ?」

 

「そうだな、影狼の言うとおりだ。今ここで話していたってしょうがない。早速練習に取り掛かろう。」

 

「「「はい!」」」

 

 

 確かに、憶測だけで決めつけても何も解決しない。それに、もし本当に番外戦術をしてくるならその時はその時だ。少なくとも殺人まではいかねぇだろ。……鉄骨落としとかしてこないよな?

 

 

 

 

 

「さて。早速だが、当分の練習は神楽を中心とした連携の強化だ。昨日の試合で皆も感じたと思うが、神楽の指示は素晴らしかった。だから、今後は神楽に指示を任せたいと思う。いけるか、神楽?」

 

「ええ、お任せくださいな!」

 

「期待してるわね、神楽ちゃん。」

 

 

 迷いもなく元気よく答える神楽を見るに、事前に話は通してあるみたいだな。これから先の戦いは神楽の指示で戦う様だ。まあ、昨日の試合を見て反対する奴はいないだろ。

 

 

「よし!2回戦突破に向けて練習だ!」

 

 

 

 

 

 

 

「皆気合はいってるね、和也。」

 

「ああ、昨日勝てたことによってモチベーションが上がっているんだろうな。」

 

「うん、僕も正直勝てるって思ってなかったからね。」

 

 

 練習の合間の休憩中、俺とキラと才治は木陰で休んでいた。神楽と新島先輩は作戦の打ち合わせをしており、他の面々もグラウンドでそれぞれ思い思いの休憩時間を過ごしている。

 

 

「才治君はさ、神楽ちゃんが作戦の指示を任されることについてどう思ってるの?幼馴染なんでしょ?」

 

「僕は神楽ちゃんがやりたいようにやればいいと思うよ。神楽ちゃんもこの話には納得してるみたいだし、昨日も大役を任されたって喜んでたから僕は何も言うことないよ。まあ、お父さんにばれた時のことを考えるとそうも言ってられないんだけどね……。」

 

「そういやそんな感じのこと言ってたな。神楽のお父さんはそんなに厳しいのか?」

 

「うん。天王寺東大(てんのうじとうだい)って人なんだけどね。神楽ちゃんに後継ぎとして成長してほしいから勉強に集中させたいって言ってスポーツをすることを禁止したんだ。でも神楽ちゃんはスポーツがしたいから、スポーツと呼べるかギリギリのものをいろいろやってたんだよ。これはスポーツじゃないって屁理屈でね。まあ、全部お父さんにばれちゃって、今では各スポーツを名指しで禁止してるんだ。」

 

「相当めんどくさいことしてるんだな。どっちも頑固ってわけだ。」

 

「あ、そっか。それでサッカーなのね。」

 

「うん。禁止されているスポーツの中にはサッカーはなかったからね。きっとお父さんもサッカーを知らなかったんだと思うよ。まあ、バレたら絶対アウトだろうけどね。あーあ、きっと今度は僕も怒られるんだろうな。」

 

「でも、才治君は神楽ちゃんがサッカーをすることを認めたんでしょ?自分が怒られるかもしれない中で。」

 

「押し切られるような形だったけどね。……正直、スポーツが出来なくて勉強ばっかりしてる神楽ちゃんが見るに堪えないくらい苦しそうだったんだ。だから口では反対していたけど、ホントは息抜きをさせてあげようってくらいの思いでいたんだ。ちょっとだけならって……。でも、昨日の試合で楽しそうに輝いている神楽ちゃんを見たら止めるに止められなくなっちゃって……。」

 

「そうだな。昨日の神楽はホントに生き生きしていたよな。」

 

 

 そこまで話したところで、才治はうつむき顔を曇らせる。

 

 

「みんなすごいよね……。必殺技も使えて……。僕も神楽ちゃんの役に立ちたいんだけどね、今のところ試合で足を引っ張ってばっかりだから……。」

 

「そうは言っても、才治君はサッカー初心者じゃない。初めはそんなものよ。」

 

「そうかもしれないけどさ、僕も神楽ちゃんの役に立ちたいんだ。神楽ちゃんが精一杯サッカーを楽しめるように……。そのためにはやっぱり強くならなきゃ……。」

 

 

 才治も悩んでいたんだな。きっと才治は格闘技をやっていて体つきがいいから、テクニックがあればすごい技もできると思うんだよなぁ。ただ、今すぐってなると確かに難しいかもしれない。……そうだ!

 

 

「なあ、才治。俺と一緒に必殺技を完成させないか?」

 

「えっ?坂上君と?」

 

「ああ!あー、この前見た海外の試合でブロックの2人技をやってたんだ。だからその技を俺と才治、お前とでやってみないか?そしたら試合でも活躍できると思うぜ。」

 

「坂上君……うん、分かった!やろう!」

 

「よし!決まりだな!さっそく特訓だ!」

 

「頑張ってね、2人とも!」

 

 

 まあ俺の技の知識は海外の試合じゃなくてゲームなんだけどな。とにかく、才治の身体能力と俺の知識があれば何か出来るはずだ。

 俺と才治が決意を新たにしキラがそれをニコニコと見つめていると、なにやら校門が騒がしくなってきた。何事かとそっちを見てみると、なにやらすごい高そうな車が止められている。

 

 

「あ、マズい!」

 

 

 そう言い放つと、才治は急いでみんなの元に走っていった。

 

 

「俺たちも行こう!」

 

「うん!」

 

 

 あんなに慌ててどうしたんだろうか。俺とキラが皆の元に着くと、皆の前に黒服の男たちに囲まれた高級そうな服を着たダンディな男性が立っていた。そして皆の一番前にいた神楽は、思わぬといった表情で声を漏らした。

 

 

「お、お父様……。」

 

「「「お父様!?」」

 

 

 おいおい、お父様ってついさっき話してたお父さんじゃないか!神楽からしてみればマズいんじゃないのか!?

 そう思い才治のほうを見ると明らかに青い顔をしている。

 

 

「神楽。何をしている。これはスポーツじゃないか。」

 

「お、お父様。これは……。」

 

「なんだ。またスポーツではないとでもいうつもりか?先ほどからずっと見ていたがどう見てもスポーツだろう。今度という今度は許さんぞ。さあ、さっさと帰って勉強の続きだ。」

 

 

 そういって神楽のお父さん、東大さんは神楽の手をつかみ連れて行こうとする。さすがに止めようとした時、才治が前に飛び出した。

 

 

「お父さん、待ってください!」

 

「伊能か。お前も何をしているんだ。神楽を止めてくれると思いそばに置いていたんだぞ。」

 

「違うんです!聞いてください、お父さん!神楽ちゃんのサッカーにかける気持ちは本物です!神楽ちゃんがサッカーを続けるのを認めてください!」

 

「才治……。」

 

「……ダメだ。それは認められない。さあ、行くぞ。神楽。」

 

「待ってください!ならせめて、せめて次の試合だけでもさせてあげてください!」

 

「……ほう?」

 

「そして神楽ちゃんの試合を見てあげてください!ずっと勉強ばっかりだったじゃないですか!これくらいはさせてあげてください!」

 

 

 東大さんは少し悩んだ素振りをした後才治と神楽を交互に見て、やがて諦めたかのように溜息を吐く。

 

 

「………はぁ。いいだろう。そこまで言うのなら次の試合まではやらせてやろう。予定があえば試合も見に行ってやる。」

 

「ほ、ホントですか!?ありがとうございます!」

 

 

 おお、才治がうまいことまとめたぞ。やるじゃないかあいつ。才治のお願いを聞き、東大さんは渋々といった感じで黒服と共に帰っていった。

 

 

「ありがとう才治。でもまさかもう見つかってしまうなんて……。」

 

「神楽、さっきの人は?」

 

 

 新島先輩の質問に、さっき才治から聞いた話と同じ話をする神楽。しかし、あんなに強硬手段に出るとは思わなかったな。そんなに勉強をさせたいんだろうか。

 

 

「才治のおかげで何とか次の試合までは許してもらえたけど、その先はどうなるか……。」

 

「だったら次の試合で見せてやればいいんじゃないか?」

 

「坂上……。どういうこと?」

 

「本気でやってるんだろ?サッカー。」

 

「ええ。最初はスポーツだからって理由で始めたけど、やっていくうちに面白いスポーツだって分かったの。わたくしはサッカーが好きで真剣にやっている。それは間違いないわ!」

 

「その気持ちを試合で表現するんだ。そしたらその姿を見て、もしかしたらサッカーを認めてくれるんじゃないか?」

 

「そうだよ、神楽ちゃん!神楽ちゃんのプレイは人を引き付けるんだ!大丈夫、昨日の試合のようにやればきっとわかってもらえるよ!」

 

「……そうね。やってみるわ!何もしないよりましよね!」

 

「……よし、決まりだな。皆!神楽のためにも2回戦、絶対に勝つぞ!」

 

 

 新島先輩たちも事情を聞いて神楽とチーム全体の危機だと理解したようで、皆気を引き締めていた。特に新島先輩は、神楽が辞めたらそもそも10人になるというプレッシャーもあり、目に見えて緊張しているようだった。ただ、その中でも南条先輩は神楽を鋭い目で見つめていたことは印象に残っている。

 やる気に満ち溢れた神楽と才治を中心に練習を再開した俺たちは遅くまで練習を続けた。特に俺と才治とついでにキラは必殺技の特訓、神楽も何かの特訓で夜遅くまで残って練習していた。そしてついに、神楽の運命がかかった地区予選2回戦の日を迎えた。




 絵描きの友人からキラの絵をいただいたのであらすじに載せておきました。

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