イナズマイレブンに似た世界に転生した件について 作:よしたろうex
試合は待ってはくれず、神楽を中心とした心配事が解決する前に試合が再開してしまう。キラから新島先輩にボールが渡り、そのまま敵陣へと上がっていく。
「わたくしのミスで取られた1点……。わたくしが取り返さなきゃ……。」
……なんか神楽がブツブツ言ってんな。何て言っているのかは分からないが、まあおそらく碌なことじゃないだろうな。だがしかし、神楽があの様子じゃチームの指示は新島先輩に任せたほうがいいんじゃなかろうか。
「磯貝、南条先輩にパスよ!」
「いや、そのまま上がって影狼にパスだ!」
「えっ!?」
「……どうやら、そっちのほうが良さそうやなぁ。了解やで、新島はん!」
神楽が出した指示は即座に新島先輩によって上書きされ、神楽の戸惑いをよそに磯貝は新島先輩の指示どおりに動く。そしてボールは影狼先輩に渡りシュート体制に移ろうとしたその時、敵のDFが立ちふさがる。
「ここで引いたほうが身のためだ。」
「はぁ!?ふざけんな!いいからそこをどけ!」
敵のDFは影狼先輩に冷たくそう言い放つが、当然監影狼先輩は引かず無理やりドリブルで突破しようとする。そんな影狼先輩に対し、敵のDFはどこかぎこちない動きながら刃物のように鋭いスライディングを放つ。
「『キラースライド』!」
無数の足が迫りくるかのようなこの必殺技は軽々しく影狼先輩を吹き飛ばし、ボールを奪い去る。
「ぐはっ!」
「影狼!」
あれは『キラースライド』!土門がよく使ってた技だな!いやしかし、改めてこう、リアルで見ると思うがめっちゃ危険な技だな。ゲームでのファウル率が高いのも納得だ。幸いふっ飛ばされた影狼先輩はまだピンピンしているが、この先も使われることを考えると不安だな。これもあの監督の仕業なのだろうか。そう思いあの監督を見ると、笑顔で拍手している。間違いない、というか分かりやすいな……。隠す気もねぇじゃん。
そして敵の反撃が始まり、キャプテンの川淵が上がってくる。こちらも当然素通しするわけもなく、川淵の前に鶴巻がブロックに行く。
「通さない!」
「……怪我したくなかったらどいたほうがいいですよ。」
「なんだと?どういう意味だ?」
「……こういうことです。」
川淵はそう小さくつぶやくと、なんと鶴巻の胸元辺りを目掛けてパスを出す。思わぬ行動に、鶴巻は戸惑いながらも胸でトラップしてしまう。
「な、なんだ?もらっちまっていいのか?」
「!!危ない、鶴巻!」
そのシチュエーションにとある技を思い浮かべた俺は咄嗟に声を上げるも鶴巻が反応できるわけもなく、そのまま川淵にボール越しに回し蹴りを食らってしまう。
「『ジャッジスルー』!」
「ぐはっ!」
回し蹴りを食らった鶴巻は大きくふっ飛ばされ、そこにはボールを持つ川淵が立っていた。
「鶴巻!!」
「鶴巻ちゃん!!」
「ぐっ……。お、俺は大丈夫っす!それより川淵は……?」
「もう遅いですよ。」
声のした方を見れば、すでに川淵が薬師寺先輩の前に立ち、ゴールを見据えていた。そして川淵はゴール前までの地面を凍らせ、その氷に向かってボールを蹴り出す。
「『フリーズショット』!」
蹴り出されたボールは地面の氷をまといながら、薬師寺先輩へと迫る。
「くっ、『バーニングキャッチ』!………うわぁ!」
薬師寺先輩が止めようと必殺技を放つも破られてしまい、楽郷中に追加点が入った。実力差による失点というよりはチーム全体のミスによる失点という形のため、本来ならば避けられた失点だ。故にこの失点は重く、必然的にその原因も浮き彫りになる。
「これで0-2。もう諦めたらどうです?どうやらそちらのチームは和を乱す人がいるようですし。そんな様子では私たちには勝てませんよ。」
腹が立つ物言いだが、言っていることはもっともだ。指揮官を信じられないチームに勝ちはない。だからこそ、新島先輩が神楽のもとに向かって行ったのは必然だろう。
「大丈夫かな、神楽ちゃん。このままだと潰れちゃうよ……。」
「……ああ。俺もあんなに父親に対するプレッシャーが大きいとは思ってなかったよ。見せつけてやろうなんて言わなけりゃ良かったかな。」
「……でも、いずれはそうならざるを得なくなっていたと思う。和也は悪くないよ。」
「そうかねぇ。……それより、今のままだと東大さんに認めてもらうことは残念ながら難しいだろうな。」
「うん、そうだね……。神楽ちゃんも、前の時みたいなプレーが出来ればいいんだけど……。」
「そうだな。前のときはあんなに………!!」
そうか、そうだったのか!前の試合と様子が違うのはプレッシャーのせいだと思っていたが、実際は少し違うものなのかもしれない!神楽は前の試合の自分を把握出来ていなかったとしたら……!
「?どうしたの、和也?」
「いや。……掛けるべき言葉が見つかったってだけさ。」
そこまで考えてから、俺は神楽の元へと向かった。親子の問題に口出しする気はないが、サッカーの問題には口出しさせてもらうぜ。まったく、こんな簡単なことに今更気が付くなんてな。円堂や天馬ならもっと早くに気づけるんだろうか。
「神楽。この試合の指示は今後俺が出そう。神楽はしばらく敵の様子を見ておいてくれ。」
「……!!」
直接的には言われていないものの、その言葉の意図はわたくしにも理解出来た。要するに指揮官を交代しろという話だ。
「まってください!わたくしにやらせてください!」
「……神楽、お前もわかっているんだろう?なぜ俺がこう言っているのか。」
「!それは……。」
「このままではチームだけでなく神楽、お前まで潰れてしまう。俺はキャプテンとして見過ごすわけにはいかない。……頼む、分かってくれ。」
新島先輩の言っていることは痛いほど分かっている。痛感している。わたくしの指示のせいで不利になっていることを。さっきの指示だって冷静に考えれば、南条先輩のほうがマークが多く、悪手であったことは明らかだった。
新島先輩の判断は正しい。わたくしが逆の立場だったらきっと同じ判断を下したと思う。それでもわたくしは引きたくない。引いてしまえば、お父様に指揮官として活躍する自分を見てもらえないから。だから新島先輩の提案を拒絶する言葉を発する。
「……分かりました。」
「……すまないな。」
…………しかし、その言葉は喉のすぐ手前で止まり、代わりに出たのは思ってもいない言葉だった。本当は続けさせてほしい、チャンスが欲しい、そんなことが言いたかった。だけど客観的に見たときに、いかにわたくしが惨めに映るかを考えてしまった。……ホント、いらないプライドだわ。
でも、このままじゃ……。お父様が見ている前でわたくしのプレイを見せつけて、サッカーを認めてもらわなければならないのに……。このままじゃ絶対に認めてもらえない。どうしよう、どうすれば………。
心の中で頭を抱え絶望するわたくしの下に一人の少年が駆け寄ってくる。
「神楽、お前サッカー楽しんでるのか?」
それは坂上だった。どこか大人びているように見えて、それでいて純粋にサッカーを楽しんでいる。そんな少年の場違いな問いかけに、わたくしはぶっきらぼうな返事をする。
「……別に、今は関係ないでしょう。」
「いいや、あるね。大ありさ。」
坂上の予想外の返答にわたくしは呆気にとられてしまった。
「大ありって……。そんなわけ無いでしょう。」
「じゃあ逆に聞くが、お前は父親に何を見せようとしていたんだ?」
「何って……。前回の試合みたいに、わたくしがチームの役に立っているところを……。」
そこまで言ったところで、坂上はため息を付き頭を抱えた。
「すまない、俺の言い方が悪かったんだな。俺は前回の試合の全力でサッカーを楽しんでいたお前を、父親に見せてやろうって言ってたんだ。」
「……え?ちょっ、ちょっと。どういうことなの?わたくしがサッカーを楽しんでいるところを見せるって……。そんなことをして一体何の意味が……。」
「坂上の言うとおりだよ!神楽ちゃん!」
混乱するわたくしの下にやってきたのは幼馴染の才治だった。普段からわたくしのSPとして1番近くにいた才治でさえ、坂上と同じ意見を述べる。
「僕が神楽ちゃんがサッカーをしているのを認めたのは、前回のあの試合があったからだよ!あの試合での楽しそうにサッカーをする神楽ちゃんを見て、僕は心が動かされたんだ!自身を持って!神楽ちゃん!僕は言ったはずだよ!君のプレイは人の心を動かすプレイなんだって!」
普段からは想像もできない、わたくしですら滅多に聞かない才治の大声での説得にわたくしの心は戸惑いを隠せなかった。わたくしが楽しんでいる姿が人の心を動かしていたなんて、到底信じられることじゃない。……それが才治から言われた言葉じゃなかったらの話だけど。
「でも、今更楽しくなんて言われても……。」
「じゃあ楽しくなる方法を教えてあげるよ!次の僕のプレイを見てて、神楽ちゃん!」
言いたいことだけ言い、才治はさっさと自分のポジションへ戻っていった。
「神楽、楽しむことは親のためだけじゃねぇ、自分のためにも必要なことなんだ。」
「わたくしのために……?」
「ああ。楽しむってのはサッカーを続けるためには絶対に必要なものだ。だって、楽しくない趣味を続けることは難しいだろ?中学生なら尚更だ。」
「ま、まぁ。それは……。」
坂上の言うとおりではあると思う。わたくしも嫌な勉強をずっと続けることは難しいと思う。まあ勉強は趣味ではないけれど……。
「だからさ、どうせやるんなら楽しんだほうが得だと思わないか?」
「坂上………。」
「おい、試合が再開するぞ!早くポジションにつけ!」
「おっと、やべぇやべぇ。もう戻らねぇと。」
ポジションに戻っていく坂上の背中を見ながら、先程言われたことを頭の中で考えていた。
……確かに、どうせやるなら楽しい方がずっといい。でも、今のわたくしはサッカーをお父様に認めてもらう為の道具としか思っていなかった。だからサッカーが好きだってことも楽しむことも忘れていたのね……。……とは言っても、今更意識したところで……。
ホイッスルが鳴り、試合が再開する。神楽の方を見ると何やら考え事をしている様子。試合中にすることじゃねぇが、まぁ状況が状況なだけに許されている感じもする。しかし、実質人数不利みたいなものであることに変わりはなく、新島先輩が必死に指示を飛ばすもなかなかうまくいかない。やがてボールは取られ、川淵がボールを持ちながら上がってくる。ただ、この状況は俺たちにとっても理想の展開だ。行くぜ、才治。俺たちで神楽の道を示すんだ。
「行くよ、坂上君!」
「おう!」
俺たちの前に来た川淵に対し、2人で円を描くように走り出す。そして、そのスピードにより川淵を中心とした巨大な渦巻を発生させる。
「「『サルガッソー』!!」」
そして、巨大な渦巻に飲み込まれ身動きが取れない川淵から、才治がボールを奪い取った。
「しまった!」
「やったよ!坂上君!」
「ああ!お前の力だ!」
「才治……いつの間にあんな技を……。」
神楽が啞然とした表情で呟く。そう、この『サルガッソー』こそ、俺と才治(ついでにキラも)で練習していた必殺技だ。少し不安だったが、敵のキャプテンである川淵からボールが取れたところを見るに、この技は実戦でも通用するようだ。
「神楽ちゃん!一番楽しいって感じる瞬間は努力が実ったときなんだよ!」
「努力が……。」
「うん!僕は全く必殺技が出来なかったけど、今こうして努力して使えるようになったんだ!これってすごく嬉しいし、すごく楽しいんだよ!」
ドリブルで上がりながら、神楽に思いを伝える才治。というか、あいつドリブル上手くなってないか?
「神楽ちゃんだって努力したでしょ!?僕知ってるんだよ!今ここでそれを発揮するんだ!大丈夫、神楽ちゃんなら出来るよ!」
「!努力したことを……。」
才治のやつ、神楽のコソ練に気付いてたのか。神楽はしばらく才治から言われた事を繰り返し口に出したあと、真剣な眼差しで新島先輩の方を向いた。
「新島先輩!」
「……いけるんだな?神楽!よし、伊能!神楽にパスだ!」
「はい!神楽ちゃん!」
新島先輩の指示により、才治から神楽へとパスが通る。先程までとは全然違う雰囲気の神楽はそのまま敵陣へと切り込んでいく。
(サッカーを好きだということを思い出した。楽しむ大切さは坂上が教えてくれた。楽しむ方法は才治が教えてくれた。あとはわたくしが実行するのみ!)
「通すかよ!」
(わたくしももっとサッカーが上手くなりたい。みんなの役に立ちたい。そんな思いからサッカーの試合を見て勉強して……。その中で見た必殺技に憧れて、放課後必死に努力して今ここに立っている!)
「『キラースライド』!」
「危ない、神楽ちゃん!」
敵のDFが『キラースライド』で神楽からボールを奪おうとしたその時、神楽が風のようなスピードで加速する。それは、そのまま敵のDFと衝突しそうになるほどの勢いだ。
「『そよかぜステップ』!」
しかしぶつかる直前で1回転し、DFの横をすり抜けるように鮮やかに通り抜け突破する。それはまるでそよ風の如くしなやかな動きだった。
「な、なんだと!?」
「やった………。できた!できたわ!」
「すごいよ!神楽ちゃん!」
まじかよ!神楽のやろう、『そよかぜステップ』を練習してやがったのか!こいつぁ驚きだぜ……。なんたってGOの主人公、天馬の代表的な技だからな。まさか目の前で見れるとは思いもしなかったぜ。
「影狼先輩!」
「はっ!1年だけにいい格好させるかよ!『バウンドフレイム』!」
「なに!?うわぁーー!!」
神楽から影狼先輩へとボールが渡り、放たれた『バウンドフレイム』は敵のGKに技を出させる隙を与えずゴールへと入っていった。
「よくやったぞ!影狼!神楽!才治!坂上!」
「やった……。やった、やったわ!」
「おめでとう神楽ちゃん!」
「えらいすごい必殺技やないか!ワイにも教えてーや!」
素晴らしいプレイを見せた神楽の周りにチームの皆が集まってくる。中心にいる神楽は少し照れくさそうに、しかし満面の笑みを浮かべていた。見ていて眩しくなるくらいのあの様子ならもう大丈夫だろう。サッカーを楽しむ気持ちも思い出しただろうさ。
……なんか後ろで羨ましそうに神楽を見ている薬師寺先輩がいるが、見なかったことにしよう。
「調子が戻ったみたいで良かったね。和也は神楽ちゃんに何を言えばいいのかわかっていたの?」
「いいや、バスの中でも言ったろ?あの瞬間までなんて声をかけたらいいか分かってなかったよ。まあかける言葉が見つかったのは、神楽の姿が昔の俺と重なって見えたからかな。」
そう、俺も過去ゲームに夢中になりすぎて、勝つことだけを考えるようになった。負ければ苛つく、勝つのが普通………そんな思考回路になっていた。だからゲームをやることが苦痛でしかなくなっていた。ゲームするのをやめようかと思ったほどだ。
そんなとき、友人の家で友人のプレイを横で見る機会があった。その時の友人のプレイは、ゲーム初心者ということもあり決して上手いと言えるものではなかった。
ただ、すごく楽しそうだった。俺が苦戦してイライラしながらプレイしていたところも、そいつは笑顔で苦戦するんだ。そして決まって俺にこういうんだ。
「このゲーム、面白いね!」って。
それで俺も思い出したんだ。ゲームは楽しんでするものだって。趣味は楽しめなくなったら辞めてしまうって。
「………ふーん。まあいいや。それよりあと2点だね。」
「ああ。あと2点で逆転だ。期待してるぜ。」
「うん!任せて!あんなラフプレーだらけのサッカーが間違ってるってこと、思い知らせなきゃ!」
「ああ、そうだな。」
さて、相手の監督はどんな感じかな?1点取られた以上、流石に少しは顔色も変わるだろうが……。
そう思いあの監督の顔を見たことを、俺は後悔することになる。何故なら、そこには寒気を抱くような不気味な笑みを、整った美しい笑みなのに何故か薄気味悪い笑みを浮かべた監督がいたからだ。
前半終了のホイッスルを聞きながら、俺は得もしれぬ恐怖を感じていた。
・キラースライド
原作では主に土門が使用。帝国の技という印象のほうが強いか。TP消費が少ない割に威力が高いが、ファウル率が高い技。総じて危険な技という印象だが、これよりもよっぽど危険な技がある気もしなくはない。威力は下の中。
・ジャッジスル-
原作では主に不動が使用。アニメでは無印とGOでは未登場。こちらも威力が高い代わりにファウル率が高い。ゲームでは試合中はファウルを取られるが、サッカーバトルは取られないため活躍していた。威力は下の中。
・フリーズショット
原作ではラファエレが使用。ゲームでは2から登場しており、どの作品においてもそこそこの威力を持つシュート技だった。総じてゲームでは影が薄いくせに、アニメではそんなこと知らないといわんばかりの好待遇を受けた技。威力は下の中。
・サルガッソー
原作では帝国学園の選手が使用。GO世代の必殺技であり、帝国や海王の選手が主に使用している。アニメとは違い、渦巻の真ん中で敵を固定させる技になっている。ゲームではりゅうざきが覚えたことが印象深いか。威力は下の中。
・そよかぜステップ
原作では我らが松風天馬が使用。GO世代を代表する必殺技であり、天馬の代名詞。主人公の初期技のため、進化系やらが多めに存在する。ゲームでは威力が低いが、天馬のドリブルが高く成功率は高め。威力は下の下。