イナズマイレブンに似た世界に転生した件について 作:よしたろうex
時が流れ、俺たちは小学校を卒業し、俺たち3人は天竜中学校へと入ることになった。今日は天竜中学校の入学式だ。噂によるとサッカー部もあるらしいし、楽しみだ。
「いよいよだね、かずや。」
「ああ、この中学で俺たちのサッカーが始まるんだ。」
「私昨日眠れなかったの。楽しみで。」
「奇遇だな。俺もだ。」
朝早く、入学式が始まる前に俺たちはいつもの河川敷で待ち合わせをしていた。俺とキラが着いており、あとは鶴巻だけだ。俺とキラの気持ちは高ぶっていた。なんせ、やっと試合形式でサッカーができるのだから。結局キラの力のコントロールは、小学校卒業前にようやく完璧と呼べるものになった。そのため、小学校のうちにはまともなサッカーの試合もできなかった。
「お、早いな二人とも。やる気満々だな。」
「鶴巻、来たか。」
「おはよう、鶴巻君。昨日はよく眠れた?」
「ああ。しっかり寝て、今日元気出していかないとな。」
「さすが、まじめだな。」
世間話もそこそこに、俺たちは天竜中学校へと向かった。どんなサッカーが待っているんだろうか。ワクワクするぜ!
天竜中サッカー部のキャプテンこと、新島徹(にいじまとおる)は緊張した様子で今日を迎えていた。いつもの幸薄そうな顔は、さらにゆがんだ顔になっている。それもそうだろう。今この天竜サッカー部には部員が5人しかおらず、今年はいってくる新入生のうち最低6人も入部しなければ、サッカー部は活動不可能として廃部になってしまうからだ。そんな状況のため、新島はサッカー部室の中で祈るように座っていた。あまりにも切羽詰まった姿に、ピンクのポニーテールのチームメイト、東雲花音(しののめかのん)が声をかける。
「新島ちゃん。大丈夫……?」
「っ!あ、ああ……。大丈夫だ。悪いな……。」
「そ、そう……。」
明らかに大丈夫じゃなさそうな新島を不安げに見つめる東雲。新島は、入学式が進むにつれて明らかに緊張した顔つきになっていった。そんな時、部室のドアが開く音がした。
「!……なんだ、お前か。」
「はっ!なんだとはひどい言い草だな。新島。」
そういい部室に入ってきた背の高い猫背の男は、灰色のウルフカットと野獣のような鋭い眼光をした、チームメイトの竜ヶ崎影狼(りゅうがさきかげろう)だ。影狼もこの状況に危機感を覚えているはずだが、そんな様子は見せずいつものように飄々とした態度で部室に入ってくる。
「影狼ちゃん……。」
「……ふん。新島、こんな時から心配か?先が思いやられるな。」
「なんだと?お前は心配じゃないのか?このまま1年が入ってこなかったら、俺たち天竜中サッカー部は廃部なんだぞ!」
「そんなことはわかっている。俺が言いたいのは、俺たちが頑張るのは入学式が終わってからじゃないのかってことだ。」
「!それは確かにそうだが……。」
「いったん冷静になるんだな。そんな気持ちじゃ、肝心な時にうまくいかんぞ。」
「ああ、ありがとう影狼……。」
「ふん。それより今日は俺もここで待たせてもらうぞ。」
「あら、珍しいわね。影狼ちゃんが部室で待つなんて。いつもは山籠もりしてるのに。」
「ああ、いつもなら山にこもって修行しているところだがな……。まあ、虫の知らせというやつさ。きっと今年の新入部員は何かが違う……。くくっ、楽しみだ。」
そういい、獰猛な笑みを浮かべる影狼。独特な雰囲気を醸し出す彼には、3年の付き合いがある新島と東雲にも近寄りがたいものがあった。
「おい、南条と薬師寺はどうした?まだ来ていないのか?」
「あー、あいつらは来ないってさ。サッカー部なんかに新入部員が6人も入るわけないって言って、さっさと帰っていたよ。」
「なんだと?ちっ。根性なし共が。だからあいつらは嫌いなんだ。」
「まあまあ、影狼ちゃん。落ち着いて……。」
目に見えて不機嫌になった影狼をなだめるように東雲が声をかける。そのおかげもあってか、影狼は幾分か冷静にはなったものの、まだ怒りは収まり切ってはいないようだ。新島は部室の居心地の悪さを感じながらも、いつの間にか感じていた緊張はどこかに消えたようだ。
「とにかく、もうすぐ入学式も終わるはずだ。そっからが勝負だな。」
「うん。新入部員の確保、頑張ろうね。」
「ああ。影狼、お前も協力して……。ああ、やっぱいいや。」
「なんだ?手伝うことがあるなら手伝ってやらんこともないぞ?」
「いや、お前に新入生の相手をさせるとロクなことにならないと思ったからな。今回はおとなしくしててくれよ?」
「はっ、俺だってサッカーができなくなるのは嫌なんだ。そのくらいわきまえているさ。」
「ホントかよ……。」
そうこうしているうちに、入学式が終わりを迎える。天竜中では、入学式が終わった後は新入生は自由行動となっており、帰宅するものや部活の見学をするものなど様々だ。新島と東雲は正門に立ち、帰宅する人たちを勧誘するつもりだ。
「じゃあ影狼ちゃん。留守番よろしくねー。」
「けっ。俺は子供かよ……。」
そんなつぶやきを聞き逃しながら新島と東雲は部室を後にした。
ふぅ。長いようでそこまで長くもなかった入学式が終わった。なんか、結構ためになる話をしていた気もするが、俺の気持ちはサッカーにしか向いていなかった。どうやら、入学式が終わった後は自由に動けるらしいから、早速サッカー部を見に行きたいところだ。練習の風景とか見られるのだろうか。
「よし、さっそく行くぞ!キラ!鶴巻!」
「うん!」「おう!」
俺たちは校内マップに書かれた、サッカー部室の場所に向かって歩き出した。
「ここ、よね……?」
「おい坂上。ほんとにここであってんのか?」
そういうこいつらの前には、何十年も前に建てられたかのような古びた小屋があった。おそらく、こいつらはこの部屋が部室だということに違和感を持っているんだろう。それもそうだ、一般的な感覚ならば整備された一つの部屋のようなものを思い浮かぶだろう。こんなおんぼろな小屋が部室だと聞いても違和感がないのは、きっと円堂世代の部室を見ているからなんだろうな。
「ああ、間違いない。入るぞ。」
そういいドアをノックしようとしたとき扉が勝手に開き、中から背の高い猫背の人が出てきた。
「うわっ。」
「ん~?なんだお前ら。見知らぬ気配があると思ってきてみれば……。」
「け、気配って……。」
「誰だ?もしかして入部希望者か?」
部室にいたということは、サッカー部員なのだろうか?にしてもすごい威圧感だ。背が高いからというだけではなく、実力からくる威圧感に気おされながらも口を開く。
「はい、3人とも入部希望です。」
「ほー。そうかそうか、3人も……。」
そういい、俺たち3人を品定めするかのように見つめた後、口をニヤリと歪ませた。
「おい、お前たち3人グラウンドに来い。」
「えっ、グラウンドにですか?」
「ああ、入部テストだ。」
(わりぃな新島、俺はこの原石を確かめてみたくなった。)
「自己紹介が遅れたが、俺は竜ヶ崎影狼だ。影狼と呼んでくれてかまわない。今から行うテストは簡単だ。俺が蹴ったシュートをうまく対応して見せろ。ああ、言っとくが避けるのはなしだぞ。」
「は、はい。」
いきなりグラウンドに連れてこられ、そんなことを告げられた俺たち。この人のシュートをうまく対応すればいいらしい。俺とキラはたぶん何とかなるけど、鶴巻は大丈夫だろうか。
「じゃあ、まずはそこのお前からだ!これが止められるか!?」
そういい、俺にシュートする影狼先輩。瞬間、影狼先輩を取り巻く空気が変わり、すさまじいパワーとスピードを持つノーマルシュートが放たれた。
…だが、威力だけ見ればキラのシュートのほうが上だ。そう思い、両手を前に構えボールの到着を待つ。
「くっ!」
しかしボールに触れて分かったが、このシュートは見た目以上に重い。ボールをとりこぼしそうになりながらも、なんとか気合いで抑え込む。
「っ……よし!止めましたよ!これでいいんですよね!」
「ほぅ……。一発で止めた……。お前GKなのか。あのバカにも見せてやりたいもんだな。」
「え?」
「なんでもねぇ。お前は合格だ。次、そこの女!」
そういい放ち、次はキラに向けてシュートを放つ。というか、このシュート鶴巻は大丈夫だろうか?俺たちと練習してたところだけを見ると、全く対応できそうにないんだが。
「はっ!」
キラはそう声を漏らし、シュートを軽々しく蹴り返した。………蹴り返した!?あの重いシュートをか!?しかも軽々しく……。はぁ。こいつはすごい奴だと思っていたがここまでとは……。さすがに影狼先輩も予想外だったのか、ポカンとした表情で、蹴り返されたボールがグラウンドに転がっていくのを見ていた。しばらくすると影狼先輩は、現状を理解したのか表情を取り戻していく。その表情は何か面白いものを見つけたような顔だった。
「やるじゃないかお前!手加減していたとはいえ、俺のシュートを止めるどころか打ち返すとは!ポジションはどこだ!?いや、そのキック力ならFWか!FWだな?くくっ、まさか新学期早々こんな逸材に出会えるとは!今年は楽しくなりそうだ!」
「……どうも。ありがとうございます。」
やけにテンションが上がる影狼先輩と、それに反比例してテンションが下がるキラ。どうしたんだろうか?逸材だのなんだの言われたのが嫌だったのだろうか。
「よし、お前も合格だ!最後!そこの赤毛!」
「くっ、止めて見せる……!」
そしてついに、危惧していた鶴巻のターンになった。明らかに緊張した面持ちの鶴巻に対し、容赦なく先ほどと同じシュートを放つ影狼先輩。
「くっ……うわあああああ!」
シュートを止めるため、足でトラップを試みる鶴巻だったが、健闘むなしくシュートの勢いに負け吹き飛ばされてしまう。
「鶴巻!」「鶴巻君!」
「ありゃ。こっちはそこまで、か……。」
「ちょっと、影狼先輩!いくら入部テストとはいえ……」
「やめてくれ!加賀美さん!」
抗議を入れようとしたキラを止めたのは、他でもない鶴巻だった。
「鶴巻君……」
「今のは俺の実力不足が招いた結果だ……。影狼先輩は何も悪くない……。」
そう言って立ち上がった鶴巻は、まっすぐな目で影狼先輩を見つめる。
「もう一回……お願いします……。」
「!?鶴巻君!無茶よ!貴方体が……。」
「いいんだ。今体がどうにかなるよりも、今ここで入部テストに受かるほうが大事なんだ。確かに、お前たちのコネやらで入部自体はできるかもしれないが、もしそうなったら俺の気が収まらない。それに、今日無理だったとしても明日、明後日、合格できるまで挑戦する。それくらいの気持ちがあるんだ。頼む、俺にテストを受けさせてくれ。」
「鶴巻君……。……ねぇ、いいのかずや?あのままやらせて……。」
「……本人がそう言っているんだ。その思いを……尊重しよう。」
「………うん、わかった。」
「ありがとう、二人とも。……さあ、影狼先輩!もう一回、お願いします!」
「……いいだろう。その覚悟気に入ったぞ!」
そう息巻いて入部テストを再開する二人。しかし鶴巻の思いとは裏腹に、何度も何度もシュートに吹き飛ばされる。キラはそんな様子を見つめながら、どこか苦しそうに見守る。……過去に自分がやったことと重なって見えるからだろうか。その表情があまりにも痛々しいと感じた俺は、気が付いたらキラの肩に手を置いていた。
「!……ありがとう。」
そんなこんなで入団テストをつづけること30分、両者ともに疲れが見え始めた。
(こいつ、いい根性してるじゃねぇか。あまりにも他のやつらとレベルが違ったが……。なるほど、奴らが一緒にいるのはこの熱い根性が理由か。)
(ほんとだったらもうとっくに入部させてぇところだし、そもそも元々俺に入部を拒否する権利なんてねぇ。この入部テストだって実力を測るだけの茶番のようなものだ。だが、他ならぬ後輩が頼んできている以上、やめるわけにはいかねぇ。)
「いくぞ!」
「はい!」
正直見ているだけで辛いほど、鶴巻の体はフラフラだった。可能なら代わってやりたいほどだ。しかし、あいつがそれを拒む以上俺は見ていることしかできない。なにか、俺にもできることは……。そう思ったとき、ふと鶴巻の足にわずかだがエネルギーがたまっているのを感じた。今ならもしかしたら……。
「鶴巻!あの技だ!」
「あの技……?………はっ!」
(もしかして、この前練習中に教えてもらったアレか?「お前なら絶対ものにできる!」って言われて教えてもらったが、結局今の今まで習得できてないんだよな。でも、今の集中した状態なら出せるかもしれない!)
「はぁっ!」
影狼先輩が放ったシュートに対し、鶴巻はあえてシュートに飛び込むようにジャンプする。そして空中で右足に力を籠め、薙ぎ払うかのように回転し衝撃波を出す。すると、衝撃波の軌跡に沿って下から青い壁が飛び出してきた。
「『スピニングカット』!」
鶴巻の放った『スピニングカット』は影狼先輩が放ったシュートの勢いを完全に殺し、そして転がってきたボールを鶴巻はどこか信じられないといった動きで取る。
「や、やった……のか……?」
「……ああ!やったじゃないか鶴巻!できたんだな!『スピニングカット』!」
「すごいよ鶴巻君!ここ一番で成功させるなんて!」
「……や、やったぜーー!」
3人でやいのやいのしていると影狼先輩が声をかけてきた。
「やるじゃないか。見事、合格だ。お前の諦めない心がその技を完成させたんだ。」
「はい!ありがとうございました!」
そう答えた鶴巻の顔は、ここ最近で一番嬉しそうな顔だった。
「さて、テストに合格したことだし、入部を認める……と、言いたいんだがな。悪いが俺はキャプテンじゃないんだ。キャプテンは俺が呼んでくるから、部室で待っといてくれ。」
興奮していた俺たちも落ち着いたところで、影狼先輩がそう言った。なんだ、すぐに入部ってわけでもないのか。でもそりゃそうか。キャプテンには話を通しておかないとな。というか顧問の先生とかに確認をとるのが先なんじゃなかろうか。
「とりあえず、部室で待つか。」
「そうだね。どんな先輩がいるのかな。」
「きっと影狼先輩みたいにいい人たちだろうさ。」
どうやら鶴巻はすっかり影狼先輩になついた様だ。犬かな?そんな会話をしていると、キラの表情が沈んでいるのが見えた。どうも影狼先輩の話題が出てから気分があまりよくないようだ。俺は鶴巻と少し距離をとり、キラに話しかける。
「大丈夫か?もしかして、影狼先輩のこと嫌いなのか?」
「う、ううん。嫌いって程じゃないけど……。」
そこまで言って、少しため息をついた。
「影狼先輩がどうしても、自分の力を振りかざしたいだけの人に見えちゃってね。だから影狼先輩を見ていると、どうしても昔の自分を見ているようで好きになれないの……。」
「そんな人じゃないっていうのは入部テストの時の態度でわかってるはずなんだけどね……。ダメだよね、こんな気持ちじゃ。早く何とかしたいんだけど……。」
ふむ。今日会った感じ、影狼先輩は確かにすごい力を持っているんだろう。今日の入部テストの時もほんの一部の力しか出していないように感じた。キラはきっと、その力を自分勝手に使うところを想像しているんだ。力を得るとそうなってしまう人間を知っているから。
「いいんじゃないか?苦手なままで。」
「え?」
「人ってどうしても苦手なもんがあるだろ。それを焦って無理して克服しようとすると、きっと体壊れちまうよ。だからさ、苦手なものは苦手のまま、ゆっくり自分なりの対処法を探せばいいと思うぞ。それに、少なくとも今回のケースではな。」
「それに、影狼先輩とも会って間もないんだ。時間をかけて本当の影狼先輩を知っていけばいい。そうすれば、もしかしたらその悩みが根本的に解決するかもしれないだろ?」
「かずや……。」
しばらく考え込んで、やがてキラは顔を上げた。
「……うん、そうだね。かずやの言う通り、もう少し様子を見るよ。ありがとう!」
「ああ、元気になったならよかったよ。」
「おーい、何してんだ?行くぞー!」
鶴巻に呼びかけられ、俺たちはまた歩き出した。
・スピニングカット
アニメでもゲームでも割と見覚えのある技。アニメでは西垣や栗松が使用。ゲームでは無印で鬼道や一ノ瀬が覚えており、印象深い人も多いはず。威力は下の下。SBが可能。
超次元サッカーやるところまでやろうと思って書いてたら長くなってました。分けてもよかったですね。早く試合してほしいんですけど、メンバー集めでまだ3話くらいかかると思います。ご了承ください。