私…生まれ変わったらモブキャラになりたいな(なれるとは言ってない) 作:とんこつラーメン
基本的に麺類全般が大好物な私ですが、やっぱり一番はラーメン一択です。
豚骨も味噌も醤油も塩も皆大好きです。
開催目的が本気で意味不明だった織斑君のクラス代表就任パーティーから次の日。
私は教室の自分の机にてゲーム&ウォッチのスーパーマリオをやっていた。
いつものように、隣りには布仏さんも一緒だ。
「なんだか教室が騒がしいけど、何かあったのかな?…っと、危うくぶつかる所だった…」
「隣のクラスに中国からの転入生が来るらしいよ~。あ、そこに1UPキノコあるよ~」
「隣のクラスって二組の事だよね? 自分達のクラスじゃないのに、どうしてああも盛り上がれるんだろう?」
「さぁ~? かおりん、時間が危なくなってきたよ~」
「やば。ちょっとスピードアップね」
そういや昨夜、一階で手続きしてたっけ。
私には関係ないから忘れてたや。
「ギリギリセーフ…」
「なんとかゴール出来たね~」
小休止する為にポーズをかけると、教室の入り口の所にツインテールの女の子が腕を組んで立っていた。
別に今来る必要性は全く無いのに、どうしてやって来るんだろう?
惚れてる男に一秒でも早く会いたいから?
その感覚…微塵も理解出来ないわ。
「なんか言ってるね~」
「織斑君達と話してる…知り合いかな?」
なんて、本当は全部知ってるんだけどね。
関わりたくないから、敢えて知らんぷりを通させて貰う。
ポケーっと様子を眺めていると、彼女達の話がこっちにまで聞こえてきた。
「中国の代表候補生…ねぇ…」
「凄いねー」
「世界で1、2を争うぐらいに多くの人口を誇る大国で代表候補生になれたんだから、その実力は本物かもしれないね」
ただし、実力が高いから性格もいいとは限らないとする。
もしもそうなったら、この世界にいる国家代表や代表候補生は皆揃って聖人君子って事になるから。
実際はそんな事、全く無いんだけどねー。
「ちらっと聞こえてきたけど、クラス対抗戦ってのがあるんだ…」
「興味あるの?」
「全然」
それどころか、当日に試合会場に足を運ぶかどうかも怪しい。
確実に襲撃されるって分かっている所に行くとか正気の沙汰じゃないしね。
「「あ」」
そんな事を話していると、チャイナガールの背後に織斑先生が腕を組んで立っていた。
あれは…普通に怒ってますな。
バチコーン!!
そんな炸裂音が教室の中に響き渡り、全員の動きが一瞬だけ止まった。
「うわー…痛そーだねー…」
「いつも思うけど、あの出席簿ってどんな材質で出来てるのかしら…」
「超合金Z?」
「普通に有り得そう」
「かおりんは何だと思う?」
「オリハルコンかヒヒイロカネ」
「どっちも伝説の金属だー」
「もしくはミスリルとか」
「それも有り得そうだねー」
半分冗談だけど、それでも相当に固い材質なのは間違いなさそう。
あれだけ鈍器として使ってるのに、罅割れどころか曲がったりもしてないんだし。
「そろそろ席に付かないと」
「そだねー」
先生が来たことで流石に危機感を覚えたのか、布仏さんは自分の席に戻って行った。
といっても、そこまで離れてる訳じゃないんだけど。
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なんか授業中にチョロイン×2が織斑先生からの有り難い打撃属性の攻撃を受けてたけど、私には関係ないので放置する。
ちゃんと授業を受けていればいいだけなのに、どうしてそれが出来ないの?
そんなわけで、お昼です。
「かおりーん。お昼どうするー?」
「そうだなー…」
なんかもう最近は恒例になりつつある、布仏さんと一緒に食堂へと向かう道すがら、なにやら中で騒いでいる一団がおりましたとさ。
「あれって……」
「今朝の子とおりむーたちだねー」
どう考えても碌な事じゃない。
私のゴーストが告げている。今日は食堂に行くべきではないと。
一刻も早くタチコマに乗って逃げるべきだと。
タチコマ…いないんだけどね。
「…今日は売店で適当に何か買ってから、中庭で一緒に食べようか…」
「さんせー。私も、なんだか嫌な予感がするんだよねー」
「気が合うね」
「えへへ…」
可愛いなコノヤロー。天使か。
いや、同級生だったわ。
「ということで……」
「回れ―…右!」
私達はすぐに来た道を戻ってから、食堂から離れて売店まで行くことに。
ここの売店のメニューも中々に侮れないから恐ろしいんだよね…。
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・・・
・・
・
「あ……」
俺が注文の品を待ちつつ並んでいると、ふと人込みに紛れて見覚えのある後姿を見つけた。
「あれは…仲森さんか……」
あの授業以降、俺は全く彼女と話していない。
布仏さんが近くにいるから行き難いってのもあるが、本当はあの時に言われた一言がずっと胸に刺さっていたからだ。
(私に構わないで…か)
今までの人生の中で、あんなにも誰かから拒絶されたことは一度も無かった。
無かっただけに、物凄くショックだった。
別に、自分が全ての人達から好かれるような人間だなんて自惚れてはいないが、あんな風な事を言われたのが初めてだった。
(…女の子の顔に傷をつけたんだから、一言謝れば済むって話じゃないよな…)
千冬姉の腕の中でぐったりとして、頭から血を流していた彼女の顔は今でも思い出せる。
ワザとしたわけじゃないけど、それでも自分のしたことが結果で彼女を傷つけた。
その事実だけは絶対に覆らない。
「どうすれば…仲森さんに許して貰えるかな……」
あの時、仲森さんは『気にしなくていい』と言った。
それはつまり『どうでもいい』ということだ。
俺はまだ…彼女から許されてはいない。
「おい一夏。何をボーっとしている?」
「一夏さん? 注文の品が来ましたわよ?」
「え? あ…あぁ。そうだな」
箒とセシリアに話しかけられてから我に返る。
目の前にあるトレーを受け取りながら、俺はある事を思い出していた。
(そういや…仲森さんって千冬姉と妙に仲が良かったよな…)
千冬姉は、その性格とかからよく二種類の反応をされる事が多い。
一つは尊敬。もう一つは畏怖。
この学園にいる大半の女子達は千冬姉の事を尊敬しているみたいだけど、仲森さんだけは違ったように見えた。
なんというか…まるで昔からの知り合いの近所のお姉さんと話をしているような、そんな感じ。
(…千冬姉に聞けば、何か分かるかな…)
もしも時間が空けば、放課後にでも千冬姉に聞きに行くか…?
その後、席を取って待っていてくれた鈴とも合流をして、食事をしながら色々と話をしたが、その間もずっと俺の頭の中はどうしたら仲森さんに許して貰えるかを考えていた。
そして、放課後の時間が箒やセシリアとの特訓で潰れた事を知って地味に落ち込んだ。
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・・・
・・
・
「むぅ…このカツサンド…舐めてたわね…」
中庭に設けてあるテラス席にて、私は布仏さんと向かい合うようにして座って昼食を食べていた。
私が買ったのはカツサンドと緑茶。
メニュー自体には別におかしな部分は無いけど、味がぶっ飛んでた。
めちゃくちゃ美味しい。
カツは揚げたててサクサクしてるし、それを挟んでいるパンもモチモチふわふわ。
掛かっているソースも濃厚で申し分なし。
「この焼きそばパンも美味しいよ~」
「うん。見た目で分かる」
麺の一本一本にまで染み渡っている濃厚ソース。
こっちのとはまた別の種類のソースの匂いが鼻孔を刺激する。
これは間違いなく、売り出す直前まで焼きそばを焼いていたと確信できる。
ここまでやって美味しくない訳が無い。
「かおりんのカツサンドも美味しそうだねー…じゅるり」
「…一口食べる?」
「いいのっ!?」
「うん。その代り、そっちの焼きそばパンも一口食べさせて」
「もっちろん! はい!」
「……え?」
唐突に焼きそばパンをこっちに向ける布仏さん。
これはもしやアレですか? 一昔前のカップルが良くやっていた『アーン』というやつなのでは?
ぬ…布仏さん…中々の策士……。
「どうしたの?」
…じゃないか。これは普通に天然でやってるわ。
彼女は裏と表の顔のギャップが激しすぎるのよね…反応に困る。
「い…いただきます…」
なんだか妙に注目を受けているような気もするけど、ここで断ったら悪いような気がするし、なにより断る勇気が無いヘタレな佳織ちゃんなのです。
「あむ……んんっ!?」
う…美味い! 焼きそばパンって初めて食べるけど、炭水化物×炭水化物のカップリングがここまで抜群だったなんて!
これは…お好み焼きをおかずにして白米を食べる大阪の人達の気持ちが少しだけ分かったかもしれない…。
「じゃ…じゃあ…こっちも」
「わーい! あむ!」
私も布仏さんを真似して、カツサンドを彼女の方に向ける。
すると、何の躊躇いも無くパクッと食べた。
この子に羞恥心は無いの…?
「美味しい~! カツがサクサクだよ~!」
「それはなにより」
食べさせ合いっこなんて生まれて初めてだよ…なんか今になって急に恥ずかしくなってきた…。
(百合だ)
(中庭に美しい百合の花が咲いてる)
(尊い…♡)
やっぱ注目されてない? 視線が生暖かいような気がするんだけど。
「あら? そこにいるのは…本音?」
「お姉ちゃん?」
お姉ちゃんとな?
そう言えば、黛先輩が布仏さんにはお姉さんがいる的な事を話してたような気が。
ってことは、この人がそうなんだ。
「本音と一緒にいるのは…もしかして、あなたが仲森佳織さんですか?」
「あ…はい。初めまして」
三つ編み眼鏡とは、またなんとも妹さんとは真逆な姿ですこと。
だけど、似ている所は似ている感じがする。
「初めまして。本音の姉で三年の布仏虚と申します」
「これはどうもご丁寧に…」
優雅に挨拶をされてしまって、思わず恐縮。
同じ高校生でも、一年と三年でここまで差が出るものなのね…。
「本音からいつも話は伺っています。この子と仲良くしてくれて、ありがとうございます」
「い…いえ…こっちの方こそありがとうと言うか…」
どうも上手に言葉が出てこない。
昔から、上級生や会社の上司とかと話のは苦手だったしなー。
「仲森さん、そのペンダントは……」
「これですか?」
そういや、この人も整備班だって織斑先生が言ってたっけ。
だとしたら、トールギスの調査にも協力してくれたのかな?
「…どうやら、無事にあなたの手に渡ったようですね」
「お蔭様で」
やっぱりそうなんだ。
ここは一言お礼を言っておかないといけないだろうけど、事情を知らない布仏さんの前で言うのはどうなんだろう?
「大事にしてあげてくださいね」
「…努力します」
大事にする云々以前に、私が機体に殺される可能性の方が高いですけど。
いや、高いって言うよりは確定と言った方が正しいかも。
「それでは、そろそろ行きますね」
「おねーちゃん。またねー」
去りゆく先輩にお辞儀をしながら、ふと疑問に思った。
『またね』とは、これいかに?
幾ら姉妹とはいえ、一年と三年とじゃプライベート以外じゃ中々に会う機会なんて無いんじゃないの?
「布仏さん。またねってどういう意味?」
「放課後に生徒会室で会おうねって意味だよー」
「え? 布仏さんって生徒会に入ってるの?」
「そだよー」
…意外だ。意外過ぎる。
まさか、布仏さんが生徒会メンバーだったとは。
「因みに役職は?」
「書記だよー」
そ…想像が出来ない…。
「よかったら、放課後に遊びに来る?」
「いや…生徒会室って、そんな気軽に行っていい場所じゃ…」
「大丈夫だと思うよ?」
「…そこまで言うのなら」
「やったー!」
まぁ…あれだよね。布仏さんのお姉さんにまだちゃんとお礼を言ってないしね。
それを言うついでに、ちょっとだけ見学でもすればいいよね。
だが、この時の私はまだ知らなかった。
この『ちょっとだけ』の油断が招く悲劇を。
また変なフラグが立ちました。
そして、本音ちゃんとは着実にラブラブに。