私…生まれ変わったらモブキャラになりたいな(なれるとは言ってない) 作:とんこつラーメン
「もういい。お前達には、ほとほと愛想が尽きた」
後ろを向き去って行こうとする白衣を着た眼鏡の老人。
その見た目から、明らかに『博士』と思わせる人物。
だが彼の表情は凄く固い。
「それはどういう意味かしら? ドクター・ペルゲ?」
「どういうも何も、そのまんまの意味じゃよスコール」
ペルゲと呼ばれた老人に尋ねるのは、金髪でスタイル抜群の美女。
だが、決してそれだけの存在は無いようで、全身からは言い知れない迫力を感じる。
「確かにワシはお前達とは協力に近い関係じゃった。それは認めよう」
「我々が貴方の研究資金と施設を提供し…」
「その見返りとして、ワシは技術提供や研究成果を出す契約をしていた。だがそれは、あくまでお前達がワシの研究に協力することが大前提だった筈だ。それだと言うのに…実際にはどうだ?」
ペルゲは侮蔑のような視線を送りながら溜息を吐く。
「ワシの開発したG-UNITを使いこなせないばかりか、お前達全員にPXシステムへの適性が全く無いと来ている。そのくせ、成果だけは寄越せと言ってくる。ふざけているのか? 流石のワシも我慢の限界というものだ」
「アナタのG-UNITは癖が強すぎる上に、PXシステムに至っては危険性が大き過ぎるのよ」
「何が危険性が大きいだ。科学の発展には危険はつきもの。これは今や常識! 危険無くして成功など有り得ん! 所詮は戦士でしかないお前達には永遠に理解出来んだろうがな」
「それで肝心の私達が傷ついたら本末転倒じゃない」
「システムに耐えられんお前達が悪い。適性さえあれば、多少の負担こそ有れど、パイロットはちゃんと生き延びた上でPXシステムの力を十全に発揮出来る。自分達の無能さを棚に上げて機械のせいにするとは…貴様も落ちたもんじゃな…スコールや」
「言わせておけば…!」
激情に駆られたスコールが、思わず懐から拳銃を取り出そうとした時、奥の方から眼鏡を掛けた初老の男性が歩いてきた。
「本当に、ここから出ていくつもりですか? 博士」
「カーンズか。まさか、お前もワシを止めに来たのか?」
スコールの事を手で制し、拳銃を降ろさせながらペルゲに近づいていく。
両手を広げ、何もする気が無いことをアピールしながら。
「いいえ…出ていくと言うのならば、お好きにどうぞ。元々、アナタは我々のメンバーではない。外部からの協力者と言う立場だった。故に、最低限の説得こそすれ、アナタを無理矢理に引き留める権利は持ち合わせてはいない」
「ほぉ…? お前にしては物分りがいいな」
「それ程でも。ですが…」
「なんじゃ?」
カーンズがポケットから一枚のディスクを取り出し、それをペルゲに見せつける。
「アナタの開発したG-UNITとPXシステムのデータのコピーは取らせて貰いました。別に構いませんよね?」
「ふん…それこそ好きにするといい。お前がコピーを取っていた事は最初から承知していたからな。尤も…」
クルリと振り返りながら眼鏡を光らせ、挑発するかのような笑みを浮かべた。
「お前達だけでG-UNITを開発し、PXシステムを完璧に使いこなせるようになるかは疑問じゃがな」
「あまり我々を舐めないでいただきたい。アナタもご存じのはずだ。私達はもう既に、あの『ゼロシステム』を搭載したISの開発に成功しているのです」
「格納庫の端の方にあった、あの真紅の全身装甲型ISか。あれは何処からどう見てもウィングゼロを意識したデザインだった。あの五人への対抗意識のつもりか?」
「さぁ…どうでしょうね?」
明らかに意味深な笑みを浮かべるカーンズ。
ペルゲにも、彼の思惑は読めていない。
「兎に角、ワシは今日限り、お前達と袂を分かつ」
「ジェミナス01と02も持って行くおつもりで?」
「当たり前だ。アレはワシが開発したISだぞ」
「そうですか…まぁ、いいでしょう。ところで、これからどこに行くのですか?」
「それをお前達に言う義理は無い。ただ…少し前に『昔の知り合い』から面白い連絡を受けてな。そいつらの所に行こうと思っている」
「昔の知り合い? まさか…」
「では、さらばだ。もう二度と会う事は無い…とは思うが、この世には絶対はない。もしかしたら、またどこまで会う事があるかもしれんな。その時はもう、ワシらは敵同士だろうが」
言いたい事を全て覆い得たのか、ドクター・ペルゲはそのまま背中を向けてから去って行った。
扉が閉まり、彼の姿が完全に消えたと同時に、スコールが問いかける。
「本当にこれで良かったの? 彼の頭脳は貴重よ?」
「分かっているとも。だが、あのまま下手にここに縛り続けていれば、いずれは獅子身中の虫にもなりかねない。流石にそれは御免被る」
「確かにそうかもしれないけど…」
だとしても、失ったものは非常に大きい。
これからの計画を否が応でも変更せざる負えなくなってくる。
(彼が向かおうとする場所…それは恐らく…)
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「どーもー」
「「「「「おぉー」」」」」
流石に登校日にはIS学園も授業は無くて、時間割も午前中だけで、やることも全校集会やら、教室での小難しい話やらだけ。
なので、あっという間に放課後になった。
折角と言うことで、おじいちゃんズと縁が深い私達で格納庫へと様子を見に行くことにした。
「お邪魔しますわ」
「幾ら空調が効いてるとは言え、よく白衣を着てられるわね…」
「あの人達だからねぇ…」
「ん? 科学者と言うのは、そんなもんではないのか?」
「いや…科学者=白衣と言う認識は安直だと思うぞ…」
篠ノ之さんが言うと説得力があるなー。
束さんも立派な科学者ではあるけど、全く白衣とか着てないしねー。
着ている姿を想像しにくいってのもあるけど。
「お疲れさまってことで、私達から差し入れを持ってきましたー。色んな味が入ってるアイスです」
「おー…そいつは有り難い」
「頭を使った後は、どうしても甘いものが恋しくなるからな」
やっぱりそうなんだ。
頭脳労働担当ってのも大変なんだなー。
「おい! そのバニラはワシのじゃ!」
「何を言っておるんじゃ! こういうのは早い者勝ちと相場が決まっとるんだ!」
「なら、ワシは無難にストロベリーにでもしておくか」
「私はチョコ味を頂こうか」
「なんと大人げない…抹茶味を貰おう」
こ…子供だ…。
完全に年寄りの姿をした中身子供だ…。
久し振りに見たな…無邪気なお爺ちゃんズ。
「セシリアよ。生まれ変わったティアーズの具合はどうじゃ? イギリスで試運転してきたんじゃろう?」
「はい。以前とは比較にならない程に機動性と運動性、そして火力が増加してましたわ。見事なまでにティアーズの弱点が改善されていて驚きましたわ」
忙しい中でも、ちゃんとやることはやってるんだ…偉いなぁ~…。
「鈴。お前も向こうで動かしてみたんだろう? どうだった?」
「変に距離を意識しなくてよくなった分、前よりも動かし易かったですね」
元となったシェンロンは近距離戦主体の機体だからね。
凰さんの性格ともマッチしてたんじゃないかな?
「シャルロット。ヘビーアームズを見てアルベールは何か言ってたか?」
「すっごい興奮してました…。まるで子供になったみたいに…」
大火力は男のロマンだもんね~。
幾つになっても童心だけは忘れられないんだろうな…。
「ラウラ。お前も少しはデスサイズを動かしてみたのか?」
「暇な時間にアリーナを借りて一応は…。ハイパージャマーの凄さに驚かされました。まるで透明人間になったみたいで…」
あの機能は、状況によっては完全に一方的だしなぁ…。
センサーにもレーダーにも表示されないってのはチートだよねぇ…。
「箒は流石に動かす機会が無いか。まぁ、別に焦る必要はない。二学期になってから思う存分に稼働させてくれたらいい」
「そうさせて貰います。正直、こんなにも二学期を待ち遠しいと思ったのは初めてです」
そっか…篠ノ之さんの場合は、私と同じで候補生じゃないからISの試運転をしたくても出来ないんだ。
私も二学期になってから頑張るつもりだし、ある意味じゃ同じようなもんなのかな?
「お嬢ちゃんはどうじゃ? 新しい家での新生活は?」
「新しい家って…織斑君達の家にいるのは夏休みの間だけですよ? でもまぁ…部屋も貸して貰って、快適に過ごさせては貰ってます」
ほんと…あそこまで良くして貰って頭が下がる思いだよぉ…。
いつか必ず、織斑君にも千冬さんにも恩返しをしなくちゃね。
「ところで…なんか今日はテンションが高くないですか?」
「言われてみればそうね。何かあったんですか?」
「ん? そう見えるか?」
見えますねぇ~。
だって、いつもは冷静沈着な老師Oですらうっすらと笑みを浮かべてるし。
これって絶対に何かあったってことでしょ?
「なぁに…ちょっとな。久し振りに昔の知り合いから連絡があっての」
「「「「「「昔の知り合い?」」」」」」
この人達の昔馴染みって言うと…トールギスのバーニアを作ったサングラスでハワイアンなおじいちゃん?
「もしかしたら、ここがまた賑やかになるかもしれんな」
「え?」
それって…IS学園に来るって事?
それは何と言うか…色んな意味で凄いな…。
誰が来るのかは全く予想出来ないけど。
「ね…ねぇ…佳織…ちょっといい?」
「ん? デュノアさん?」
いきなり小声で話しかけてきた。
皆には内緒のお話なのかな?
「実はさ…ラウラが制服と軍服以外の服を殆ど持ってなくて…今度、季節の私服でも買いに行こうと思ってるんだよね」
「え? そうなの?」
日本で暮らす事になったとはいえ、元からファッションとかにお金を使うようなタイプじゃないし…無理も無いのかも?
「よかったらなんだけど、佳織も一緒に来てラウラの服を選んでくれないかな? ボク一人だけで決めるよりはバリエーションが増えるだろうし、ラウラも喜ぶと思うし」
「私なんかで良かったら」
「ホント? やった!」
なんか急に女子高生らしい約束を取り付けてしまった。
でも別にいいよね。だって夏休みなんだし。
偶には、こんな青春っぽい事をしてもバチは当たらんでしょ。
「む…? なにやら佳織とシャルロットの距離が近いような…」
「まさか、こんな堂々と先駆けをして…!?」
「いい度胸じゃない…。でも、下手に邪魔したら佳織も悲しむだろうし…ぐぬぬ…!」
「ん? 佳織とシャルロットがどうかしたのか?」
皆にもすぐに気付かれてるし…鋭い。
乙女の勘はゼロシステムを上回っているのではなかろうか。
「ほっほっほっ…青春じゃなぁ…」
最後はドクターJのお爺ちゃんが締めちゃった!?